やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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 じゅうさんわーーーですッ
 リアルタイムでアイデアがボツ続きの遊び人です。

 木虎編が思ったより長くなりそう・・・・・・です。もしかしたら他のワートリ女子も長くなるかもです。
 なるべく創意工夫を凝らしますので、お付き合いいただけたら幸いです。

***
 ヒロイン選挙を継続中です!!
 詳しくは活動報告へお願いします!!
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 そしてありがたい・・・・・そして申し訳ないことに誤字報告を行ってくださった粉雪吹雪様 久遠秋人様 本当にありがとうございます。
 本当に、本当に助かっています。極力なくなるように努めますので本当にごめんなさいっ。

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 それと今回の副音声は少し長いです。・・・・・・が、本編で語られることのない嵐山と比企谷の出会いを少しだけ入れてみました。興味がある人はぜひ後書きもお読みください!!*******

 それではどうぞ!!




十三話>>『大事な後輩なの』

 『ボーダー』式鬼ごっこ。

 そんなふざけた名称を考えたのは、言うまでもなく『 』(くうはく)だ。

 ただの戦闘ではなく、遊び――つまりゲームを取り入れるという発想は、ゲーマーならではと言ったところだろうか。

 

 これは八幡が銃手(ガンナー)を用い始めた時よく行っていた訓練である。

 とまあ、何やらオリジナリティあふれる訓練方法と思うかもしれないが、ぶっちゃけ鬼ごっこである必要はない。

 

 今回重要視すべきなのは、木虎が銃手(ガンナー)であるということ、接近戦を学びたいということ、そして、勝利条件が手で触る(・・・・)ということである。

 

 鬼ごっこと言う名称にしたのは、単に、八幡が木虎のプライドへの配慮からなのだ。

 八幡が木虎を攻撃せず、トリガーすら限定的にしなければならない(・・・・・・・・・)この訓練において、それを素直に受け入れられるように考慮した結果である。

 木虎が鬼ならばそれから逃げるのは必須であり、鬼に攻撃などもってのほかだ。

 これならばまあ、納得できない理由でもないだろう。

 

 どこぞの漫画では、鬼ごっこの必勝法は鬼退治などと豪語しているが、それが許されるのは昔話の桃太郎だけだと思いたい。

 

 そしてこのゲームの肝を『 』(くうはく)は八幡へ後のように説明した。

 

 

『ここで重要なのはルールの限定だ』

 

『――えーと? ・・・・・・どういう意味だ?』

 

『ランク戦ってのはよくも悪くもなんでもありだろ。それじゃ選択肢が多すぎて考えて戦う(・・・・・)ってことを学べない。もちろん考えずに経験だけでその場の最適解を導き出せるほうが強いのは確かだが・・・・・・それプラス考えられる奴の方が強いに決まってる』

 

『あー言いたいことは分かるが、ピンとこないな』

 

『・・・・・・トリガーの悪い、ところ。・・・・・・とりあえず、誰でも――そこそこ戦え・・・・・・ちゃう・・・・・・』

 

『白の言う通りだ。学ぶってのには順序がある。学校と同じだ。テストばっかりやれば確かに復習で次はいい点が取れるかもしれないが、それじゃあ過程で得られる大事なもの(・・・・・・・・・・・・)を学べない』

 

『いいこと言ってるけど一つ言わせてくれ。・・・・・・不登校が何言ってんだ?』

 

『・・・・・・。なんか説明したくなくなったわー。後は実戦で(・・・)何とか理解してくれ』

 

『・・・・・・うっ・・・・・・グスッ・・・・・・』

 

『ごめん。悪い、悪かったから、続きを願いします』

 

 

 その後『 』(くうはく)との戦闘で、八幡は空達が何を言いたかったのか理解したが、圧倒的不利な状況、さらには相手のホームグラウンドであるゲームという基盤によって、数十回とぼこぼこにされたのは三人しか知らないことである。

 付け加えるなら、『鬼ごっこ』なんてゲーム要素を取り入れた最初の理由は、八幡を自分たちのステージに引っ張り込んでボコボコにするためだったりと、その後の大げんかにつながったりしたのだが、それはまあいいだろう。

 

 

 この段階で、木虎は八幡の意図をくみ取れずにいた。

 ルールはなんとなく理解した。恐らく自身がなめられていることも。

 あのセリフ。『トリガーはよく考えて選べよ』それを考慮するなら、何か作戦の様なものを用意して戦えと言っているのかもしれなかった。

「比企谷先輩、あの・・・・・・これって何か意味あるんですか? 普通に戦うだけでいいと思うんですけど」

 ――ん。と振り向く八幡は、その行為に軽く称賛を与える。

 木虎のそれは正しい。

 相手の意図が分からないからと言って、それを自身だけで考える必要などない。なぜなら、これはあくまで訓練なのだから。

 

 逆に言えば、これを一人で考えて、適当な答えを導きだそうものなら、八幡はこのまま帰ったことだろう。

 

「まあ確かに意味はあるんだが、そんな深く考えなくていいぞ。今回に至っては俺は攻撃しない――つまり防御に徹する。これならお前の銃手(ガンナー)としての腕も見れるし、接近戦もしやすいだろ。とりあえず精一杯試してみろよ。案外簡単に終わって自信がつくかもしれないだろ」

「わかり、ました」

 すべてを話しているわけではないだろう。ただ間違ったことも言っていない。

 ただ、確かにそれなら木虎の実力を最大限に見れる。

 

 お互い全力を出せば、木虎は使い物にならない接近戦など使用しない。さらに言えばその場しのぎにしかならない使ったことすら無いトリガーも使わないだろう。

 だが今回、木虎は『鬼ごっこ』に勝てるトリガーをセットすればいい。《テレポート》だろうと《カメレオン》だろうと、何を使っても構わないのだ。

 相手が攻撃しないことと、トリオンが消費しない訓練モードを加味するに、むしろそちらのほうが八幡の狙いなのだろう。

 

 それはつまり――戦闘に対して、しっかりとした理論建てをさせるため。

 

 八幡の後ろ、何をセットするか真剣に考えている木虎を見るに、八幡の狙い――というより目的はとりあえずうまくいっている。

 根が真面目なのだろう。意図を理解しているというよりは、とりあえず全力を尽くすという風に思考している。

(心が強い子だな。まあだからこそのこの事態だろうが・・・・・・)

 

 そんな八幡の肩を、ツンツンと。

 振り返ると、そこには綾辻が上目遣いで八幡を見ていた。

「・・・・・・」

 無言で、ただその場においていたく自然に、八幡は距離をとった。

 いや、もうほんと、計画的じゃなないところが逆にあざとい。

 八幡は綾辻遥という少女に対する警戒度を上げた。と、何やらシリアスな雰囲気を八幡は出しているが周りから見ればそれは茶番以外の何物でもないのだが、っていうか――警戒度って何? みたいな感じである。

 

 そんな八幡のそれを木虎から距離をとったと勘違いしたのか、そのままズイズイ近づいてくる綾辻に、八幡は苦い顔を浮かべたくなる。

「ねぇ、なんで『鬼ごっこ』・・・・・・だっけ? 私初めて聞いたんだけど?」

「んぁ? あ、ああ、そうだな。この場合鬼ごっこである必要はないんだが・・・・・・」

 と、答えながら、八幡は綾辻遥という少女がなんとなくつかめてきた。

 

 好奇心旺盛な天然者。過去に八幡を見つけるためにいろんなところに顔を出していたのは、そのいろんな人に聞いた。

 自身が抱く疑問に素直で、そのためなら少しばかり考えなしな天然具合もここまでくればなんとなく分かる。

 異性に対してこの距離間。『ボーダー』という組織を加味しても、学生であるならばもう少し距離を開けるべきじゃないだろうか・・・・・・。

 言うまでもなくこれを、好意と勘違いする八幡ではない。むしろ八幡にとって綾辻は少し苦手なタイプになるだろう。

 

「じゃあなんで? もしかして無理やり連れてきたから怒って? そのことならごめんなさい。だからちゃんとと教えてあげてほしい。大事な後輩なの」

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

(ついでに、後輩想い・・・・・・ね)

 本当に――八幡はこういうタイプ(・・・・・・・)にはつくづく弱い。

 

「大丈夫だ、真面目にやってる。どうやら今回は強くすることが目的じゃないらしいからな。少し遠回りになるが、それには目をつむってくれ」

「えっ・・・・・・強くすることが目的じゃないって・・・・・・」

「あれ? 嵐山さんから聞いてないのか。短期間で都合よく強くする方法なんてねぇよ。そもそも、それならなんで外部の人間である俺をよんだんだよ。外部の人間じゃないとできない(・・・・・・・・・・・・・・)事だからだろうが」

 あえて遠回しに言うような八幡の物言いに、頭の中で迅を浮かべる綾辻だが、彼と八幡で全然違うなと考え直す。

 迅の場合は、自分のペースに相手を巻き込んだりするためだが、八幡は単純にひねくれているからだろう。

 考え方だけじゃなく話し方までひねくれてるとは、もはや擁護のしようもない。

 

「木虎には才能がある、が――それだけに今を焦ってる。チームを抜けるなんて相当だ。だからそれを何とか解消してくれ、ってのが嵐山さんの依頼だろう。本当に面倒な事(・・・・)任せてくれたって感じだわ」

「ええ!? 嵐山さんそういうつもりで比企谷君呼んだの!?」

「いや、そこは気づいとけよ。普通に考えれば短期間でつよくなるよりよっぽど現実的だ。チームメイトの声じゃ届かなかったんだろ? まー良くも悪くもお前らは優しすぎるからな、木虎のプライドじゃ、それが逆に嫌だった――というよりも申し訳なかったんだろうぜ」

「・・・・・・そうだったんだ。私木虎ちゃんが元気になれるならと思ってて・・・・・・」

「別に責めてるわけじゃねーよ・・・・・。適材適所だ。俺も嵐山さんには世話になってるし、これぐらいならまあ、やってやらんこともない。連れてきかたは卑怯だと思ったけどな・・・・・・」

 濁った眼を少し淀ませながら言う八幡に、綾辻は――フフッと可愛らしく笑みを浮かべる。

 

「じゃあ任せちゃおうかな。頑張れっ!」

「仕事の応援なんて有り難みがないからいらん・・・・・・」

 

 その切り返しにブーたれる綾辻を押しのけながら、八幡も準備を始めた。

 

 

   ▲▽▲▽▲▽

 

 

「準備はいいか? ルールを軽くおさらいしとくと、お前はの勝利条件は手で触る。俺の勝利条件は十分間逃げ切ることだ。お前はトリガーも攻撃もなんでもあり、俺は《シールド》と《アステロイド》だけ。そして攻撃不可――ってことでいいな」

 

 まるで自身の不利など存在しませんとでもいうように、木虎有利なルールをつらつらと並べる。

 手で触るというのがシビアだが、この空間はトリオン切れがないというだけでダメージは入る。ぶっ倒してから悠々とタッチと言うのももちろんありだ。

 それを踏まえれば、流石に負けるはずがないというのが木虎の感想だった。

「問題ありません」

 ツンと言う感じで答える木虎を見るに、流石に八幡のこれにはイラっと来たのだろう。

 ここまでされれば木虎じゃなくてもムカつくだろうが。

 

「そんじゃ合図よろしく」

 気軽に言った八幡の言葉のすぐ後に、

「『訓練開始します』」

 どこからか、綾辻の声がそこへ響いた。

 それと同時に――。

 

 ――《ステルス》――オン・・・・・・。

 

 まず初めに、木虎はその場から消えた。

 今では珍しくもないトリガー《カメレオン》。

 当然だろう。

 鬼ごっこ。相手の攻撃不可。無尽蔵のトリオン。そのような条件が揃っていて、このトリガーを使わないほうがむしろ疑問だ。

 

(まぁ、だからこそ・・・・・・)

 そう、だからこそ・・・・・・。

 

「悪手以外の何物でもないけどな」

 

「――ッ!?」

 そっと、真正面から近づき、八幡の体へ伸ばした手は、ものの見事に(くう)をきる。

 なんで・・・・・・? そんな疑問を思い浮かべる前に再度伸ばした木虎の手は、八幡に見えてるかの如く(・・・・・・・・)回避される。

 

(なっ! ・・・・・・音? それとも気配? 違う、その程度じゃこんなことはできない)

 二人はだんだんとスピードを上げていき、すでに全力の鬼ごっこが開始されている。

 と言っても、木虎の姿はまるっきり見えないのだから、八幡が何やら一人で動いているぐらいにしか周りは見えない。

 見ている綾辻や嵐山は、それが可笑しくて仕方ない。

 

 だっておかしい(・・・・)だろ――。

 

 どうして見えない木虎のそれから比企谷は逃げ続けられているのかと。

 

「そろそろ一分だが、手を変えなくてもいいのか?」

 見えていたら二人のそれは完全に熱戦間違いなしのバトルにまでになっていた。

 手で触ることを一度諦め、足技などを交えた単純な戦闘。うまくいけばその過程で触れる、と考えた木虎の作戦である。にもかかわらず、八幡は手以外には素直に防御し、手だけは絶対触れないようによけ続ける始末。

 確かに、このまま続けても木虎の勝利はありえないだろう。

 

 スーっと。八幡の声に応じるように、木虎は姿を現した。

「もしかして、それが噂の比企谷先輩のサイドエフェクトですか・・・・・・」

 息切れしてる様子はない。 

 トリオン体で疲れを感じることは多々あるが、それはあくまで精神的にだ。今回のそれは木虎もそこまで気を張っていたわけではないのだろう。

 

「えっ、なに? 噂? なんで毎回俺の知らないところでそんな事になってんだよ・・・・・・」

 

 答える気はなし。

 それでも、木虎は自身の考えが正しいだろうと予測をつけていた。

 そしてそれはあっていた。『思考投影』による《視覚共有》。戦闘するにあたって、敵の視線――その一点さえ取得できればその攻防で負けることなどありえない。

 もちろん、八幡が長年そのサイドエフェクトと向き合っていたからこその芸当であり、八幡の戦闘的才能あっての事だろうが・・・・・・。過去、入隊初期の風間との戦いで、それのみで風間を圧倒したことを考慮すれば、その洗練具合は説明するまでもない。

 

「相手の思考をかすめ取るあなたのサイドエフェクトなら、私は視覚を奪い取ります。それならさっきの事にも説明がつきますし」

「へーなんかサブキャラみたいな能力だな。ほんとにそんなことができればだけど・・・・・・」

「嘘が下手ですね」

「正直者なんだよ」

 

 舌打ちしそうになるそれを堪えながら、木虎は自身の銃型トリガーを八幡に向ける。

 確かに《カメレオン》が効かなかったのは嬉しくない誤算だ。だが、ルールを開示してきたのが八幡だけに、それを想定してないことはありえないと思っていたのも事実。

 

 ――なら、別にそんなものじゃなくても・・・・・・ッ。

 

 木虎は、勝つために自身の引き金を八幡へ引いた。

 

 

   ▲▽▲▽▲▽

 

 

 八幡は思う。

 木虎藍はプライドが高いのは周りの知るところだ。

 しかし思い違いをしてはいけないのは、ただプライドが高いだけではないということ。

 今でこそ『A級としては』実力が追いついていないが、彼女が優秀で有能なのは誰が見ても一目瞭然である。

 まあ彼女を八幡が知ったのはつい先ほどなので、何とも言いがたいのだが、自身の考察は大方当たっているだろうと予想がついていた。

 

(本当に強いな・・・・・・)

 そう、彼女は強い。力でなくその心が。

 今この瞬間にも何かを掴もうとしている。

 

 ――なんでも良い。なんでも良いから自身が強くなる何かを・・・・・・。

 

 普通なら挫折するだろう。周りの期待に押しつぶされることだってあったはずだ。

だって、彼女はまだ中学生になったばかりの少女なのだから。

 癇癪を起して、駄々をこねて、周りに八つ当たりしても誰も責めない。

 『ボーダー』の戦闘員の平均年齢を考えると、それこそ日常茶飯事なのだ。

 

 それでも――。

(それでも何とか・・・・・・前に進もうと思ってる、か・・・・・・)

 

 八幡は自身の昔を思い出しながら、だからこそ彼女に称賛を送る。

 当時の八幡は、八つ当たり気味に『ボーダー』を憎み、誰も頼ろうとすらしない。本当にガキだった。

(だから嵐山さんの願いを聞いたんだけど・・・・・・)

 

 八幡は、木虎が撃った《アステロイド》を、『銃弾打ち(ビリアード)』で撃ち落しながら、自身の考えが最近変わってきていると改めて自覚する。

 

 攻撃をしながら突っ込んでくる木虎を見て、八幡も下がる。

 本来なら銃手(ガンナー)が接近してくるなど愚の骨頂だが、今回はその限りではない。むしろ八幡の『銃弾打ち(ビリアード)』を考えると、『至近距離で撃ちまくる』が正解だろう。

(――っ、上手いな・・・・・・、いつも間にか角に押されていたのか)

 気づかぬうちに、というほどでもないが、木虎は八幡は角へ誘導することへ成功する。

 流石は期待の新人と言ったところだろう。単に戦いなれている。

 

 ダンッ、と。それを期に木虎は八幡の元へダッシュする。

 攻撃は飛んでこない。相手が移動できないように牽制しつつ、一気に詰め寄る。

 

 ――勝った!!

 

 勝利を確信した。やはりハンデが大きかったのだ。これは当たり前の結果だと。

 安堵と笑みを浮かべる木虎へ、

「そういえば・・・・・・《スコーピオン》を使い始めたんだったな」

 八幡はその状況を危機とすら感じていないように、

「ちょっと銃手(ガンナー)の戦い方見とくか?」

 気軽に口にする。

 

 何を言ってる? そう思うより前に、木虎の表情は驚きへと変わる。

(なんでっ!? ――自分から・・・・・・ッ)

 

 今まで逃げ回っていた八幡が、自身から木虎へ向かってきたのだ。

 考えるまでもなくチャンスで、絶好の機会。木虎は迷うことなくトリガーを向ける。

 が、その瞬間――。

 

「うそッ・・・・・・っっ!!」 

 思わず声を漏らしてしまうほどに、木虎はその光景に驚きを隠せなかった。

 八幡は撃ってきたのだ、木虎へ向かって。

 ただ、木虎本人ではなく、その銃型トリガーに向かって。 

「・・・・・・っく、この――ッ」

 銃を向ける――が、その瞬間に弾かれる。

 木虎が八幡を捕捉し、引き金を引く前に。八幡の《アステロイド》が銃を弾く。

(反応が早すぎるッ!? 確かに、威力がそもそも足りない銃型トリガーでは、『武器破壊』は確かにできない。でも、だからって銃口を曲げに来るなんてッ!)

 木虎は思う。

 これこそがオンリーワンだ。

 これが唯一ノーマルトリガーでS級の男だ。

(レベルが違いすぎる・・・・・・ッ) 

 

 木虎は迫る八幡を押し戻すように銃を構える。だが遅い。

 『不可視の弾丸(インヴィジビレ)』と言われるほどの速射性を持つ八幡と木虎では、あまりに初動の差がありすぎる。

 『思考投影』によって木虎の『撃つという意思』をそのままアクセスできる八幡にとっては、イージーすぎる行為だ。

 

「じゃあ――」

 木虎の目の前で・・・・・・文字通り手が届くような距離で、

「あと六分だな」 

 比企谷八幡は、残りタイムを口にする。

 

 まるで、自身が十分間逃げ切ることは確実というように。

 木虎の目の前でそう言った。

 

 

 

 




『副音声』

綾辻『はーい。それでは副音声開始です。この度はまたしても私、綾辻遥と――』
嵐山『嵐山准でお送りしたいと思う!』
綾辻『はいっ! この度、木虎編とちょくちょく名売っているということで、嵐山隊総出で、副音声を行いたいと思います!』
嵐山『といっても、基本二人態勢で、二回か三回に分けて行う方針だな』
綾辻『誰と誰が組むかはお楽しみでっ! ・・・・・・ではさてさて嵐山先輩、もしここに来ることがあるなら是非とも聞きたかったことがあるのですがいいでしょうか?』
嵐山『ん? まぁ俺は副音声初めてだからな、綾辻がうまく回してくれるなら質問ぐらい問題ないぞ!』
綾辻『では聞きます。嵐山さんと比企谷くん、いつ知り合ったんですか?』
嵐山『・・・・・・、・・・・・・』
綾辻『あ、あれ? 聞いちゃいけないことだったですか? ・・・・・・そ、それとも副音声でもアウトとか!?』
嵐山『あ、いや、そうじゃないんだ。突然すぎて驚って感じかな。あれは俺にも少し苦い思い出・・・・・・というか、あまりない出会い方だったからな』
綾辻『え? お二人とも今すごく仲がいいようですけど、最初の頃は不仲だったんですか?』
嵐山『いや、そうじゃなくてな・・・・・・。覚えてるかはわからないが、まだ柿崎が嵐山隊にいた頃に、記者会見で俺が言ったことが最初と言えば最初になるのかな』
綾辻『柿崎先輩がいた頃の・・・・・・』
嵐山『俺はある会見で、家族のために『ボーダー』に入った、と言ったんだ。比企谷はそれを見て、『ボーダー』へ入ることを考え始めたと言っていた。俺が知ったのは小南から話を聞いていたからだが、玉狛へ用事がある時にたまたま知り合うことができてな・・・・・。その時、俺が話しかけたときの、あいつの第一声がな』
綾辻『な、なんて言ったんですか』
嵐山『俺の顔を見て『大変ですよね。おもい者《物》背負っていて』、そう言われたんだ』
綾辻『・・・・・・』
嵐山『あの時の俺は、家族と民間人、両方を守ろう守ろうと必死だったんだ。会見ではああいったけど、心の中では自分が否定されるか怖かった』
綾辻『そ、それは・・・・・・あの時の嵐山先輩はまだ高校生だったわけですし・・・・・・』
嵐山『そうだな。それをあいつは会見の時の俺を見てそう思ったらしい。続きの言葉は『家族に絞った方がいいですよ』とそう言われたよ』
綾辻『す、すごいですね。初対面の人にそこまで・・・・・・』
嵐山『いや、後から聞いたんだが、あの時の俺の笑顔が相当にやばかったらしい、小南もそう言っていたしな。今思えば、比企谷は小南からお願いされていたんだろ』
綾辻『お願い――?』
嵐山『そうだ。もちろんその後比企谷のそれに対して俺は怒りを向けた。そして年甲斐もなく怒鳴ったよ。――お前に何が分かるんだってな。その後、比企谷は失言だったと素直に認めて謝罪してきた』
綾辻『・・・・・・でも、それに何の意味が・・・・・・(それに嵐山先輩がそこまで怒るなんて)』
嵐山『――綾辻、今俺が怒るなんてありえない、って思っただろ?』
綾辻『――!?』
嵐山『要はそれが狙いだったんだろ。さんざん怒鳴ったからか、俺はその後良い感じに吹っ切れてな。『ボーダー』と『家族』、それをしっかり割り切ることができた。ため込んでいたものが全部出てきたみたいだったよ』
綾辻『なるほど。嵐山さんの優しさを見抜いていた、と言う事ですか? 始めて会う人なのに!?』
嵐山『どうだろうな。単に周りから聞いていただけかもしれないな。まーその後俺から良くかかわりに行ったかな。最初は嫌な顔もよくされたが今では仲良しだぞ』
綾辻『それは見てればわかりますよ。アイコンタクトだけで比企谷君、嵐山さんの真の要望を分かっちゃたんですから』
嵐山『まっ、あれぐらいは俺の雰囲気を感じ取ってもらえば比企谷なら当然だ。あいつは、人の心をよく見てる。比企谷否定するだろうが、無意識で、いつも何かに気を使っている感じがする』
綾辻『なんとなくわかります。私はまだ少ししか話ってないのでそこまでは分かりませんけど・・・・・・』
嵐山『遊びに誘ったり、食事に行ったりといろいろやったんだけど、なかなかうまくいかないんだ。いつか誰かが、あいつのそういった『警戒』を解いてくれる奴が出てきてくれると嬉しいよ』
綾辻『そうですね・・・・・・。(きっと、比企谷君は嵐山さんの気持ちを分かってる。だから感謝として、今回引き受けてくれたと思うな)』
嵐山『長くなったな。この辺で副音声は終わっておくか?』
綾辻『えっあ・・・・・・はいっ! 時間をすっかり忘れてました。本編に触れられなかったです・・・・・・これ、怒られますかね・・・・・・?』
嵐山『それについては大丈夫だろ。・・・・・・・と、思いたいな』
綾辻『て、てことで副音声は終了しますっ! 次回もよろしくお願いしますね!』
嵐山『ああ、よろしく頼むよ』
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