やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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はいはい十七話ですぅー。

一話一話を三部構成で書いているのですが、最近それだとどうしても内容が薄くなるなーと思ってます。
場面転換も小まめになっちゃいますし、どうしようか悩みどころの私です。
もっと地の文でキャラクターの心情へ寄るべきか、会話文でぱっぱと話を進めるべきか・・・・・・小説ってそこらへんが難しいですよね笑

さて! 毎度のことでもはやわざとかと思われる誤字を修正してくださる皆様方っ
久遠秋人様 苺タルト様 
本当にありがとうございます!!


今話も楽しんでいただけたら幸いです
それではどうぞ!!





十七話>>『改めて比企谷八幡だ。』

 

 

「で、誰なんですか? ヌボーッとした人は」

 

 開口一番がそれだった。

 平塚静に、彼女が顧問をする部活に連れられて来た八幡は、教室にいた一人の美少女にそう言われた。

 とりあえず突っ込むべきかと判断した八幡だが、何かを発する前にその対象を変えるほかなかった。

「ああ、彼は比企谷八幡。新しい入部希望者だよ」

 

「ちげぇだろ馬鹿野郎」

 思わず悪態どころか教師に対してはアウトな発言をとってしまった。

 しかも、正確には言わされてしまった。

 

「ふむ、君はもう少し賢いと思っていたのだがやはり対人経験が不足気味だな。それとも自分の首を自ら絞めるのが好きなマゾなのかね?」

(どんだけこの人俺を部活に入れたいんだよ!)

 

 学校とは、『口が悪い』『態度が悪い』で生徒を何かと強制的に言うことを聞かせられる理不尽な社会だ――という建前を振り回してくる平塚静に八幡は思わず心の中でツッコんだ。

 

「言ってる意味がわかりませんよ先生。そして()()()、喧嘩売ってんなら買うぞ? それと入部希望者じゃなく見学だ」

 八幡は楽しそうに心理戦をするバトルジャンキーな平塚静を適当に流しつつ、いきなり失礼極まりないことを言ってのけた学校の有名人へ言葉を返す。

「あら、なぜあなたは私の名前を知っているのかしら? 返答によっては入部と見学問わず別の場所へ行くことをお勧めするのだけれど」

「よし分かった、俺が悪かった。だからスマホをしまえ。ストーカーじゃないからな? な? てかお前自分が有名人だって自覚がねーのかよ」

 依然怪しげな目を向けてくる美少女――雪ノ下雪乃。

 女の武器を迷わず使おうとするその少女へ、八幡は開始数秒で負けを認めた。

 

 その一連の流れを見た平塚は軽く苦笑し、未だ警戒を解かない雪ノ下へと声をかける。

「そう無碍にしないでくれたまえ。見ての通りこいつは女を襲えるほど根性は持ってないよ雪ノ下。それに比企谷は私の推薦だ。よければ数日見てくれないか」

「・・・・・・平塚先生がおっしゃるのであれば信用しますが、その下卑た視線を向けられるのに数日も耐える自信は私にはありません。未熟な私を許してください」

「いや、君ならば問題ない。耐えてくれ」

 

 確か、口車にのせられないと気合を入れたのだ。茶番なのは確実だ。

 そう易々と同じ手に―― 

「オイコラ。黙って聞いてれば言いたい放題。そろそろ切れるぞこの野郎」

 まだ数十秒。八幡は同じミスを繰り返した。

 ハッとした表情を浮かべる八幡に対し、平塚静は勝ち誇った表情を前面に浮かべてた。

 それはとてつもなくいい笑顔だった。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

「それで、ここは何部なんだよ」

 

 ――あとは任せた。

 と教室を後にした平塚静によって、八幡は逃げるタイミングを失ってしまった。

 流石にここでバックレるわけにはいかないだろう。もとはと言えば、自分で蒔いた種である。

 それに、今後のためにも罰は受けましたと言う免罪符が必要だ。

 

「呆れたわね。あなた、知らない部活の見学に来たの?」

「知らない部活だからこそ見学に来ると思うんだが・・・・・・? それはそれとして半ば強制だったからな、展開についていけてないんだよ」

「・・・・・・そう。ならゲームをしましょう。ここが何部か当ててみなさい」

 悪い奴ではなさそうだった。口が悪いのは見た通りなのだが、ちゃんと相手を見ていってる。

 八幡はむしろ()()()()()()()()()()()()()、と言う感じがぬぐえない。

 

 考えすぎかもしれないが、『 』(くうはく)を普段相手にしているとこういった考えが抜けなくなるのだ。

 まぁ、それはなしにしてもゲームと言われれば燃えてしまうのは完全にあいつらの影響を受けているなと八幡は軽く笑う。

 

「質問はありか?」

「そうね。一回までなら認めるわ」

 ――そうか、と一言呟き、八幡はあたりを見回す。

 教室自体に変わりはない。どこにでもある空き教室と言った感じだった。

 雪ノ下は先ほどから文庫本を片手に読書しているが、それ以外に特筆すべきものがない。

(なるほどな・・・・・・分からん。なら――)

 

「わかった決めたぞ。()()()()()()か?」

「・・・・・その心は?」

 

「教室にはめぼしいものがない。だが、お前は恐らくこの状況からでも推測できるモノでなければゲームにしないだろう。であるなら、相談部、文芸部など特に物を必要としない部活ってわけだ。・・・・・・それで質問の答えは?」

「及第点ってとこかしらね? 答えは奉仕部よ」

 雪ノ下は勝ち誇ように口にする。

 そこまで聞いて――ニヤリ、と八幡は笑みを浮かべた。

 ちょろすぎる。後二、三手考えていたのにすべて破棄するしかないらしい。

 

 そしてここまでくれば当然――

「ありがな教えてくれて。ゲームの回答を言おう、ここは奉仕部だ」

 ゲームの答えを口にする。

 

 八幡の言葉に、雪ノ下は意味が分からないという風に首を傾げる。

「何を言っているのかしら? あなたはすでに答えを言ったわ。それとも何かしら、何回でも答えを言っていいと思っているの? 仮にそうだとしてもすでに私が言ったあとでは無効なのは当然でしょ?」

 八幡はそれを聞いて――よくしゃべるな、と感想が浮かんだ。

 負けず嫌いの典型だ。しかも頭が良いとは手に負えない。まあ、だからこそプライドを刺激すればそこでおわる。

 

「意味が分からないのはこっちのセリフだ」

 八幡はやれやれと言った風に腕を振りながら。

「俺はまだ『一回の質問権』しか使ってないぞ?」

「・・・・・・だから、さっきから何、を・・・・・・ッ!?」

 そこまで言って雪ノ下は気づいた。

「だからな、俺はまだ質問しかしていないだろ? ゲームって言ったのはお前だ雪ノ下。なら仮にお前が()()()()()()()俺が答えを言うまでは、ゲームの終了条件は満たされない・・・・・・だろ?」

「――ッ、そんな口八丁が通じるとでも?」

「逆に聞くぞ? 言い訳は本当にそれでいいのか?」

「・・・・・・っ!!」

 雪ノ下は黙るしかない。なぜなら八幡は口にしているのだ『質問の答えは?』と。雪ノ下が聞き逃す可能性のある語尾に・・・・・・。だがそれでいい。

 今回のキモはそれを雪ノ下にそれと認めさせる事。

 そうすれば雪ノ下の中に広がるのは()()()()()と言う事だけ。

 つまりそれはこれ以上雪ノ下が喋ると自身の失態を認めると同義。プライドが高いほどドツボに嵌る嫌がらせ。

 

 だからこそ、八幡は勝ち誇ったように雪ノ下へと顔を向け。

 

「改めて比企谷八幡だ。数日だが一応言っておくか。よろしくな」

 

 先ほどまでの意趣返しを完了させた。

 

 

   ▲▽▲▽▲▽ 

 

 

「てなことがあったんだよ」

「なるほど、愉快な学校だな。どんな不思議学校(ファンタジー)だよ。てかその教師面白いな。ハチの思考を潰してくるなんてなかなかできないだろ。――あ、ハチ白のフォローよろ、5秒でいい」

 

 二人の声の傍ら。

 カチカチ、カチカチ、と。光るデスクトップの前でマウスを動かす音が耳に残る。

 

「・・・・・・ハチ兄の・・・・・学校、楽しそう・・・・・・」

「それは勘違いだぞ白。俺は休み時間と言う地獄をいかに乗り越えるか一喜一憂してるからな。――おっと、スキル溜まったぞ、使うタイミングの指示は任せる」

「にしても奉仕部か・・・・・・入部するのか?」

「入りたいか入りたくないかで言えばもちろん後者だが、平塚先生がなんで俺をあの場所に連れて行ったのかも気になってんだよ」

「確かにな――今そいつにスキル使えば倒しきれるぞ」

 

 純粋な疑問だった。

 平塚静が声をかけた生徒は他にもいることを八幡は知っている。しかしそれだとおかしい。

 あの教室――奉仕部にいたのが雪ノ下雪乃だけと言うのには違和感しか覚えない。

(もちろん、声をかけたが入部しなかった、と言う可能性があるかもだけどけどな・・・・・・・)

 雪ノ下と言う存在と平塚静の性格を考慮すればその答えでは納得できない。

 

「まあ五分五分ってところだ。あの先生がなんで俺を入れたいかが予想つか無いし。恐らくうまい具合に『ボーダー』を言い訳にして活動時間を譲歩する感じでまとまると思うが――って、え? 相手耐えたんだが、てかおい! 俺敵のスキルくらって死んだぞ!?」

「妹にはちゃんと話しとけよ。お前が一番優先すべきことなんだろ?」

「・・・・・・妹、大事に・・・・・・しなきゃ、めっ・・・・・・」

「なにいい話風にまとめてんだ? お前ら俺を捨て駒に使っただろコラ」

 

 目の前のPCに映る「DEATH」の文字がうかんでいる。

 今日は妹が友人の家に泊まるということで、八幡はオールで空達がゲームをやるのに付き合っているのだ。

 ちなみにサイドエフェクトの使用は禁止されている。理由は簡単、つまらなくなるからだそうだ。

 それをなしにしても八幡はサイドエフェクトをそう易々とは使わないが。

 

 確か、ぶっ続けで10時間はマウスを動かし続けているのだが、空と白の集中力が切れる様子はない。

 そんな中。 

 ――にしても、と空は口にして。

「ハチが知らぬ間にリア充街道を走ってるとはなー。あー捨て駒程度じゃおさまらねー」

「・・・・・・ハチ兄・・・・・・ずっとボッチって、言った、のに・・・・・・」

「――は? なんで俺がリア充になってんだよ」

 軽く目をつむり、ソファーに横になりながら八幡は答えた。

 時間はもうすぐ朝日が昇ろうとしている。

 徹夜慣れはしているとはいえ、ここまで長くゲームをやれば流石に八幡もきつい。

 

「はっ!! 一日に何人もの美少女と知り合いやがって!! しかも妹と教師も入れて女としか喋ってねーじゃねーか!! 裏切者が!」

 そんな空の叫びを聞いて、八幡は納得したように――はいはいと手を振った。

「おい白。どうやら空もお疲れらしいぞ。今の話を聞いてうらやましいとか・・・・・・そろそろゲームも終わらせたほうが良いな、寝させてあげとけ」

 八幡が納得したのは空の現状についてだった。

 可哀そうに。引きこもりは美少女がいかに危険な存在か理解していないらしい。

 八幡は本気で空の事を心配していた。

 こうなってはここには白しか頼る相手はいない。

 兄の暴走を止められるのはいつだって妹だけなのだ。

 

「ふふふ、ハチ兄・・・・・・美少女とだけ、話す・・・・・・逆説的に、白も、美少女・・・・・」

「・・・・・・。よし分かったお前らもう寝ろ? マジで何徹してんだよ。てか白はすでに完全無欠の美人さんだろ・・・・・・何を今更」

「てめぇー!! ハチ! 何白に色目使ってんだクソ野郎っ!!!」

「あーもううるせー!! 早く寝ろよこのシスコンがっ!」

 カップ麵の残骸を見る限り三徹は確定なのだが、一日すら待たなかった八幡からすれば化け物じみたゲーマー魂である。

 絡み自体はめんどくさい以外の何物でもないのだが。

 

 微かに聞こえるゲームのBGMが変わった。

 恐らく『 』(くうはく)が勝利したのだろう。

 二人は八幡の言葉を一応聞いていたのか、ゾンビのように自室のベットへ向かっていった。

 あのような状態だったというのにゲームだけは確実に勝ってくるのだからさすがは都市伝説である。

 

「・・・・・・それにしても美少女、ね」

 学校での雪ノ下との会話を思い出しながら、八幡はいやいやと首を振るった。

 

 

『えーっと確か・・・・・・比企笑い君と言ったわよね? あなたは私に恋慕を抱いているという認識でいいのかしら』 

 その言葉に八幡は目の前の少女の頭を本気で心配した。

 

『笑い方が気持ち悪いって揶揄ってんのか? 負けた腹いせとか見苦しいぞ。それになんで俺がお前に好意を抱いてる前提なんだよ』

『あらごめんなさい。私どうでもいい人の名前覚えるのが苦手なの』

『謝られてる気がしねぇ』

『それに、あなたみたいな人が部活の見学に来た理由がそれぐらいしか思いつかないのよ。安心して頂戴、私は自身が気量良しと言う自覚があるわ』

 

 なにを安心すればいいのだろうか。

 半分冗談半分本気と言った感じだった。

 

『容姿だけは認めるが、それ以外は見当違いも甚だしいわ馬鹿。言っただろうが、半ば強制だったってな。それに俺以外ならそれ自殺もんだから、心折れて泣いてるから』

『勘違いしないで、このような態度をとるのはあなただけよ』

『おれの知ってる「勘違いしないで」の使い方と違って悪意しか感じないな。で、その心は?』

『あなたの顔を見るとむしゃくしゃするの』

『なめんなクソガキ』

 

 雪ノ下のむくれたように言った言葉に、ちょっと可愛いなと思ったのは内緒のことだ。

 八幡はそれらの会話を思い出し、『美人』の定義を自分の中で再確認した。

(残念だ・・・・・・)

 ときに日本語とは残酷な現実をつきつけてくるのだ。

 

「さて、マジでどうしたもんかな」

 

 いったい何に対してなのか。

 八幡は夢の中か現実か、そう呟くと、静かに寝息を立て始めた。

 

 

   ▲▽▲▽▲▽ 

 

 

「あら、また会ったわね比企谷君」

 目の前にいたのは軽い笑みを浮かべた純白の少女。

 

 空達との徹夜ゲームに応じた翌日。

 いいや、日付はすでにまたいでいたのだから当日と言うべきか。

 比企谷八幡はまたしても那須玲と遭遇していた。

 

「そうだな。それじゃ」

 

 ここは流石に比企谷八幡。熟練されたボッチはその程度意に返さないとでもいうように、手を振っていた那須のそれを軽くワンターンで回避して見せた。

 

 予想できなかったわけではない。 

 そもそも昨日であったのはお互い登校時だ。時間が合えば会うこともあるだろうとは思っていた。

(ふっ甘いな、ここ度重なる不運、俺の精神はこの程度では揺るがないぜ)

 口をゆがめてほくそ笑むその男――病名は高二病患者だ。

 

 あくまでクールにその場を終わらせる。

 ごく一般的ならばそれで終わっていた。しかし――。

「ねぇ待って」

「ぐべぇっ!?」

 思わず掴んでしまったのだろう。悪気はなかったはずだ。

 だが、襟元を引っ張られ首が絞まった八幡には相手の感情は関係ない。

「ご、ごめんなさい! お礼を言いたくて・・・・・・その・・・・・・」

「わ、わがっだ。わがっだがらその手をは、ばなせ・・・・・・」 

 その言葉に慌てて手をはなす那須と咳き込む八幡。

 文句の一つでも口を開こうとした八幡の腕を那須は掴む。

 咳き込んでいた八幡はそれを回避することはできず。

「ついてきて。お願いがあるの」

 走り出した那須に引っ張られるようにその場を後にした。

 

(お礼じゃなかったんですか・・・・・・てか離して? 学校行かせて! トリガーオンしちゃうよ? 不可視の弾丸(インヴィジビレ)っちゃうよ?)

 心の中での反論が聞こえるわけもない。

 理不尽の親友たる比企谷八幡はその腕を振りほどくことも、それを拒むこともできなかった。

 

 つまるところ、八幡の二日連続遅刻が決定した瞬間だった。

 

 ・・・・・・。

 

「で、朝からなんの用だよ。偶然見かけたってわけじゃねぇんだろ? そもそもお前学校はどうした・・・・・・」

 そこは昨日の公園。

 裏路地の近くに位置しているためか、今この場に八幡と那須以外の人物はいない。

(よくもまぁ男と二人で来れるもんだな。あぶないだろ普通・・・・・・)

「ごめんなさい。でもこの機を逃したらもう無理だと思って・・・・・・。昨日のお礼を言いたかったのもほんとなのよ? ただ、あまりにも素っ気なかったから思わず・・・・・・」

「・・・・・・、」

 それを言われてしまうと逆になぜか申し訳なくなってしまう。

 一般的に考えればあの態度は少しいただけなかったかもしれない。とは言え、八幡の対人能力はマイナスだ。しかたないのだ。

「それに学校は大丈夫。ほら私病弱だからそこらへんは臨機応変にね、電話一本で解決で問題ないのよ」

「俺の学校は問題だらけだけどな? お前ボッチが一時間休むとどれだけ辛い思いするか知ってるか?」

「そ、そうだよね・・・・・・ごめんなさい」

(ボッチの部分認めちゃったよこいつ・・・・・・)

 

 シュン、としたようにうなだれる那須を見ると、逆にこちらが謝りたくなってくる。

 美人プラス病弱。このワードはほんとに汚い。

 そもそも八幡のさじ加減次第なのだが、ここで断れないからこそ比企谷八幡なのだ。

 

「それで、お礼とかは別にいらねぇよ。大した事やってないしな。ほらあれだ、あの日は一時間目から調理実習だったからな、適当にさぼる理由がほしかったんだよ。ボッチ的に・・・・・・」

 一時間目から調理実習、と言う部分だけは本当だ。 

 事実、学校に到着した八幡は案外那須に感謝の気持ちすら持ったほどだ。

「ふふふ、聞いてた通りね。捻ねデレさんだ」

「おい、その不名誉を広めてる馬鹿を今度教えろ。それで昨日の事をチャラだ。――消し炭にしてやる!」

 思わず力の入った声に、那須は一層お腹を抱えた。

  

 一通り笑ったのか、――それでね、と那須は言って。

「・・・・・・弟子にしてください、お願いします」

 先ほどの態度が嘘のように真面目に、真っすぐに八幡をみてそう言った。

「・・・・・・」

 昨日の事は完全に偶然だったはずだ。

 つまり、昨日の今日で彼女は八幡へのアプローチを決意したのだろう。

 

「それにしても強引だな。今ここで言う事か?」

 

 そうだ。いかに同じ『ボーダー』に所属しているとは言え、頼み方としては間違ってる。

 弟子をとるとらないの前に、八幡はそのことが疑問だった。

「・・・・・・その自覚はあります。間違ってるとも思ってる。だからこれは私のわがまま。でも、私は・・・・・・『那須隊』隊長として! あの子たちのためにできることをしたいの!」

「へーお前隊長なのか・・・・・・」

「うん。でも、私たちは強くない。それに私たちは全員女子のチーム、ここまで言えば分かるでしょ?」

「親の反対・・・・・・か?」

「そう。私はトリガーで体を動かせるようになった・・・・・・けど他の子たちは普通に『ボーダー』に入ったの。一定の成果、実力が評価されないと・・・・・だからお願い! 私たちに手を貸してください!!」

 まあ珍しくもない事だった。

 『ボーダー』ではよくある問題の一つと言えるだろう。

 実際C級はともかく、B級A級の男女比は広い。それはつまり、C級から出れない奴はやめていくことが多いのだ。その中でも最も多いのは親による強制。

 危険な職場に、可愛い愛娘をほおっておく親などそういないということだ。

 それが悪いか良いかはさておき、彼女たちはそれを心配しているのだろう。

 

「なるほどな。事情は把握したがそれ、俺である必要ないだろ・・・・・・」

 

 八幡はそれに応えるつもりはなかった。

 木虎にも言った通り、八幡は他のメンツと『ボーダー』に在籍している理由が違う。

 極端なことを言えば、もし少しでも『ボーダー』での利益が八幡にとっての不利益を下回った場合、即座にやめる程度には『ボーダー』に思い入れなどない。

 八幡にとって『ボーダー』とは手段であって目的ではない。『ボーダー』に入ること、いることが大半の理由の彼ら彼女らとは決定的に違うものがある。

 まあそれは、『ボーダー』が自身を、町を救ったヒーローとして売っているから仕方がない事であり、別段何が正しいというわけではないが。

 

「・・・・・・綺麗だと思ったの・・・・・・」

 那須はポツリとそう呟いた。

「――?」

「あの日あなたが見せた戦いが、私たちの目標になったの・・・・・・・。ううん、わたしはあなたの《バイパー》に惚れたの。だから比企谷君、師匠にはあなたしかいないと思った」

「あ・・・・・・」

 

 ――あっぶねー。

 

 思わず勘違いしそうになった。

 これだから美人は苦手なのだ。危うく中学の二の舞を踏むところだった。

 ただ。

 

「悪いが俺は攻撃手(アタッカー)だ。他を当たってくれ・・・・・・」

 八幡の答えは変わらない。

  

 話は終わりだとでも言うように、八幡はベンチから腰を浮かす。

 時間的にはそれほど経っていない。まあ遅刻は確定しているから、うまく休み時間に合わせよう。

 八幡の意識はすでにここにはなかった。

 

「だったら!! だったらなんであんな戦いを見せたの!?」

 

 その声に、八幡の足が止まった。

「桐絵ちゃんに聞いたわ。あなたの実力はあの程度ではないってこと。本気でやれば()()()()()()()()()()って!」

 彼女らしくない行動だった。声を張り上げるなど、那須玲を知っている者ならまずありえないと首を振る。

「あんなにワクワクしたのは初めてだった。心踊ったのなんて久しぶりだった。目指す場所はあそこなんだって、本気で思ったの」

 病弱故に動くことができなかった。だから彼女は『ボーダー』に救われたと思っている。動けている今を楽しんでいる。 

 ただ動く。それだけで満足だった彼女が、あの時――それ以上を見つけたのだ。

「比企谷君のそれ、狡いと思う・・・・・・」

 

 自分勝手なことを言ってる自覚は那須にもあった。

 まるで他人の玩具を奪い取ろうとしている子供と同じ。見せつけられたらほしくもなるだろう。だが、それはあくまでこちらの感情だ。

 

「・・・・・・えっあっ・・・・・・その、ごめんなさい、つい・・・・・・」

 

 ふと我に返った那須は慌てたように謝罪する。

 ・・・・・・。

 それ以上何を言わない那須に八幡は振り返り、

「弟子をとる気は俺にはない。俺は誰かに教えられるほどの人間じゃないなんて本気で思っているからだ。――けど、その、あれだ・・・・・・・」

 

 いつも通り、もはや定型文の様な、形式美ともいえるそれを口にして。

「どうしても、っていう時は声をかけてくれ、手伝う程度ならできるだろうよ・・・・・・」

 直接見ることはできないのか、そっぽを向き、八幡はそう言った。

 

 そんな八幡の様子を見て、一瞬ポカンとした後、那須は素直に思った。

「ありがとう。でもほんとに話通りのひとね、比企谷君って」

「よし分かった。まずはそのふざけた認識から指導してやる!!」

 

 その那須玲の笑う姿に、あるいはその可愛さにか。八幡も静かに、小さく笑顔を見せた。

 

 

 

 




『副音声』

そら『さて、今話は珍しくも『 』《くうはく》だけで副音声をお送りするぞー』
しろ『・・・・・・ハチ兄いないの・・・・・・珍しい、てか初めて・・・・・・?』
そら『いやな、今日はハチと俺らの関係をちょっと追求しようじゃないカ!! って話だったんだが、あの野郎「最近疲れた」とかいうふざけた理由でにげやがったんだよ。ありえなくね!?』
しろ『・・・・・・万死に値・・・・・・する』
そら『う、うん。白さん? それは少しいき過ぎではないかなーと・・・・・・』
しろ『・・・・・・実はハチ兄・・・・・・自分の代わりに、別の人ここに呼ぼうとしてた・・・・・・』
そら『は!? 俺らと知らないやつらぶつけようとするたぁあの野郎! ・・・・・・・死刑だな』
しろ『・・・・・・怖かった・・・・・・ガクガク、ブルブル・・・・・・』
そら『さてこれを読んでいる諸君! ここからでも分かる通り『 』《俺ら》とハチの関係は仲良しこよしじゃねぇ。確かに、何かあれば相談もするだろう。もしかしたら頼ることもあるかもしれないな。けど――お互い無償で手を貸すような関係でもねぇ』
しろ『・・・・・・ハチ兄の原作始まって・・・・・・白達介入のハチ兄無双・・・・・・多分、ない・・・・・・』
そら『そもそも勘違いしてるやつが多いかもしれないけど俺らって、ミジンコ並みに生命力ないからな!? いや、マジでどうやって生きてるか疑問になるくらい。そう!! そんな俺らが”学校に通うことができてるハチに何ができるってんだ!!” ・・・・・・あれ? 言ってて悲しいな』
しろ『・・・・・・でも、そんな白達に・・・・・・・居場所をくれたのが、ハチ兄・・・・・・』
そら『ああ、だからこそあいつには恩義も感じてるし手を貸すことは厭わない。けど、だからこそ・・・・・・あいつが決めた選択にちょっかいもかける気はないんだ』
しろ『・・・・・・それに、『奉仕部』だっけ? ・・・・・・その問題に白達の手を借りないといけないほど・・・・・・ハチ兄馬鹿じゃない・・・・・・』
そら『ああ、そうそう。あいつの精神面は俺ガイル原作開始からすごした一年後、って言う設定だ。まあ、『奉仕部』と過ごした一年って言うよりも『 』《俺ら》と過ごした一年っていう違いはあるけどな』
しろ『・・・・・・ハチ兄頼ることもちゃんとしってる・・・・・・逆説的に、頼られなければ、そこまで重い事態でもない・・・・・・』
そら『まっ、ハチが『どうやって問題を解決』、と言いうよりも『どういう見方をしていく』のか。あるいはもし、『 』《俺ら》が介入するならどんな展開になるのかを楽しみに待っていてくれよ』
しろ『・・・・・・にぃ、あんまり上げると作者死んじゃう、よ? ・・・・・・まだ話考えてないらしいからきっと焦る・・・・・・』
そら『ああ、それはあれだ。あんまりにも出番少ないんだ。ちょっとくらいからかってもいいだろ』
しろ『・・・・・・。・・・・・・グッジョブ!』
そら『てなわけで、今日の副音声は終了だ』
しろ『・・・・・・しろたちメインの話ももうすぐ・・・・・・ある、よね?』
そら『・・・・・・、・・・・・・。しゅ、終了だ』
しろ『・・・・・・グスッ、またね・・・・・・』
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