やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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十八話ですっ!

後書きを『副音声』と名打っているが、『副音声』じゃないなと気づきそのまま改善するタイミングを失った私です。

まず最初に前話の誤字がかなりやばいことになっていたことに恥ずかしさを隠せません
誤字報告をしてくださった――
師匠と弟子様 ヱグザム様 苺タルト様 久遠秋人様 石田彩真様 リア10爆発46様 ツッシー様
本当にありがとうございます。

本編に入る前に、感想欄にて、初めて口論の様なことを行ってしまいました。怒ってと言うわけではないのですが、なぜかずらずら書いてしまいました。
不快に思った方はご報告ください。すぐに消させていただきます。


それでは楽しんでいただけたら幸いです
どうぞ!!



十八話>>『私は――君の事も心配してるのだよ』

  

 那須との朝二度目の会合から数時間。

 

 見事に遅刻した八幡は、それ以外はごく普通に授業を受け、すでに放課後をむかえていた。

「さて、君はどこへ行く気かね?」

 

 教室のドアをまたいですぐ、平塚静は姿を現した。

 遭遇率が高すぎる。恐らく彼女がポケモンのキャラなら、どこにでもある草原でお目にかかれる程度のレアリティだろう。

 

「どこって部活見学ですよ。先生が言ったんでしょうが」

 もうすでに諦めました、とでも言うように八幡は答える。

 

 言いたいことはある。が、特に反発する理由もない。

 集団で何かをする部活でもなく、そこまで特殊な活動があるとも思えない。

 そもそも昨日回避しきれなかった時点で、八幡はすでに自分が詰んだことを理解している。

 別に教師を敵に回せば問題ない。だが八幡はそれができないのだ。要するに、対人経験不足で善意に対する対処を知らない。

 

 もし、空がこの現状を知っていたら。

 ――『ハチの性格を使った良い手だな』と、称賛の拍手を平塚に、嘲笑の目を八幡へ送っていただろう。

 

「なんだ? 君との心理戦はなかなか楽しかったのだがな。もうあきらめてしまったか・・・・・・」

 少し嬉しそうに、しかしそれ以上に悲しい表情を浮かべる教師へ八幡は残念な目を向ける。

 まあこういった部分が生徒から好かれる要因なのだろう。

 何を隠そう八幡も嫌いになれないのだから仕方がない。

「心理戦って・・・・・・厨二臭いですよ先生」

「そうかそうか!! 先生もまだ若いということだな!」

「・・・・・・」

 決定的に何かがかみ合ってないような気がするが、そこはあえてスルーする。

 そんな中身があるのかないのか分からない会話をしながら、二人は歩く。 

 

「ところで――」

 平塚静は真剣な声で問いかける。

 

「君から見た雪ノ下雪乃はどうかね?」

 

 その声色を聞いて、本当に不思議な人だと八幡は思った。

 この人が真剣になるとどうも周りが見えなくなる。なんて言うかそう――世界の作り方がうますぎるとでも言えばいいのか・・・・・・。

 

 要は空気の作り方がうますぎる。

 

「どうって口が悪いのは当然として・・・・・・いえ、誤魔化す気はないですよ。そんな顔しないでください」

「・・・・・・はあ、わかっているのだろう? なぜ私が君にここまで固執するのか」

「ええまあ、ですがそこまであいつがお気に入りですか? 特定の生徒に肩入れしすぎるのはあまりお勧めしませんけどね」

 何故自分なのかと言う疑問はある。

 しかし今はそんな事などどうでもいい。今言えることは、平塚静は比企谷八幡と雪ノ下雪乃を接触させたがってると言う事だろう。

 

 ・・・・・・。 

 

 昨日の会話だ。 

 何かの口論の途中だったと思う。だがそれまでの流れは覚えていない。なぜならその後の彼女の一言が、それを忘れさせるほど強烈だったからだ。

 

『それじゃ誰も救われないじゃない!!』

 

 怒鳴るように告げた彼女の表情は、知り合って間もない八幡が口にするのはおこがましいと思ったが、彼女らしくないと思い。それ以上に雪ノ下雪乃らしい言葉だとも思った。

 何か問題を抱えてる。と言うよりはこじれていると言った印象を受けた。

 

 繰り返すがその言葉を八幡は強烈に思った。

 強い言葉だった。笑い飛ばすことすらできないほどに。

 

 なのに、その言葉に重みを感じなかった。――それが本当に雪ノ下の言葉かすら分からないほどに。 

 

 だから思った。

 それが、平塚静が彼女を気にかけている理由なのだと。

 

 ・・・・・・。

 

 そんな一幕を思い出し、八幡は再び平塚静を見る。

「俺は、そこまで知ってもない人間をどうこう言うつもりはないですよ。むしろ俺は先生の見解の方が聞きたいですけどね」

「ふっ、君らしいな。だがその前に一つ勘違いを正しておこう。私は誰か一人に肩入れしたりしないよ。確かに好みは存在するし、面倒を見たくなる子供と言うのは往々にして存在する。しかし忘れたか? 昨日も言ったはずだがな・・・・・・私は――君の事も心配しているのだよ」

 そこで初めて八幡は表情を変えた。

 目を見開いたように平塚静を見て、それを取り繕うように視線を逸らす。

 

「かっこいい事言いますね先生、もしかして狙って言ってます?」

「ふむ、やはり君は対人能力に難ありだな。答えを教えるのは国語教師としては控えたいのだが特別だ。それは聞いてはいけない質問だぞ比企谷」

 

 この人と喋っていると自分がまだまだ子供なのだと再確認させられる。

 八幡はもし風間蒼也と会っていなければ、きっとこの先生を心底尊敬して恩義を感じていたかもしれない。そう錯覚してしまうほどに。

 それほどに、平塚静の言葉は心を動かす。

 気持ちが気持ちがこもっている。

(まぁ昔の俺ならまずそれを疑ってたかもしれないけど・・・・・・)

 

 八幡は知ってる。気にかけてくれる。心配してくれる。それがどれだけ心が救われるのかを。

 だから。

 

「あいつは、まだ知らないだけですよ」

 

 八幡は言った。

 その言葉に、今度は平塚静が驚きの顔をうかべ。

「あいつは言っていました。自分は可愛いから、優秀だから生きづらいのだと。人は完璧ではないからそれを変えると、人ごと――この世界をって」

「そんなことを言っていたのか」

 傍から見たら馬鹿と以外取れない言葉だが、八幡と平塚静にそれを笑いものにするような雰囲気はない。

 

「あいつは――まだ『本物』を知らない」

 比企谷八幡は繰り返す。

 

「『本物』の天才ってやつを知らない。そして、それがいかに小さい人間かを知らない。でも不思議なんです。そんな奴らだけど、俺は、あいつらがいれば、って言う考えを捨てられないんですよ」

 『 』(くうはく)――。彼らは天才で、それでいて世界に押しつぶされたただの引きこもりと言って差し支えない。お互い離れることすらできない。人類史上最弱と言っていい兄妹。だが。それでも、と八幡は言っているのだ。 

 雪ノ下にも、まだ知らないことは多いと。

 そう、かつて。

 

 ――空が白を知ってまだ世界は救いがあると思ったように。

 ――白が空を見て何もなかった世界が色づいたように。

 ――八幡が風間蒼也と出会って、誰かに頼ることを知ったように。

 

「見方が変われば世界は変わるもんですよ先生。優秀だから生きづらい? 可愛いから虐められる? その程度、俺はすでに乗り越えた過去です。なら、俺より何倍も優秀なあいつができないわけがない」

 平塚静は八幡のそれを最後まで聞いていた。

 それを聞いて、彼女は自身が誤解していたことに気付いた。

 彼女は、八幡の言うその『知らない』がお互いになればと思って二人を接触させたのだ。

 つまるところ・・・・・・。

(ああつまり、私は比企谷八幡をまだ過小評価していたと言う事か・・・・・・)

 

 平塚静は、雪ノ下雪乃の姉の存在を知っている。

 姉――雪ノ下陽乃は雪乃以上に優秀で、それでいてそれ以上に生きづらそうにしていた。

 結局。平塚静は彼女のその目を変えることはできなかった。八幡に偉そうなことを言っておいて、もしかしたら、その贖罪のつもりで妹の方を気にかけているだけかもしれないという自覚もあった。

 そしてそれは正しいのだろう。なぜなら、彼女(雪ノ下陽乃)の側に――。

 

 ――この生徒(比企谷八幡)がいたら、そんな想像すらしてしまう。

  

(恐らく、雪ノ下雪乃はもう問題ないだろうな)

 そう確信する程度には、平塚静は八幡の事を信頼することができた。

(なら、もしもの時は君の事は私が支えよう)

 そして、ここまで考えるからこそ、彼女は平塚静なのだろう。

 

「見つかると思うかね?」 

 平塚静は問いかける。

「それはあいつが見つけようと思うかですよ」

 あくまで自分は知らないことだと、突き放すように口にする。

 

「なるほど。やはり君は優秀だな。是非とも君をそうした()()にあってみたいものだ」

 

 その言葉に八幡は足を止めた。

「・・・・・・、」

 いいや、すでに部室の前だから止めただけだろう。

 もし、平塚静が本当に八幡の周りにいる()()()()を見たのなら、それはそれで化け物じみている。八幡は自身の思考が考えすぎだと首を振った。

「では、俺はここで」

「ああ、しっかり部活動に励んでくれたまえ」

 背後を向けながら手を振るその姿に――

 

 ――かっこうつけめ。

 

 そんな言葉を胸に秘め、八幡は部室の扉に手をかけた。 

 

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

「あら、こんにちは比企谷君。もう来ないかと思ったわ・・・・・・」

 本から目を話すことなく告げる雪ノ下雪乃。

 

 つい先ほどまで会話していた平塚静とのことを思い出し、少しばかし変な気持ちに駆られてしまう。

 儚い。美しい。絵になる。

 昨日は思わなかった事柄が、何となく頭を駆け巡る。

「早いな・・・・・・来るの」

 八幡はその程度の事しか口にできなかった。

 

「・・・・・・はぁ、まずは挨拶を返しなさい。あなたはやはり常識と言うものがないようね」

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

「・・・・・・コンニチハ」

 本当に『美人』の前に『残念』と言う言葉がお似合いな女だ。

 八幡は思わず力が入った握りこぶしを彼女に突き出したい衝動に駆られるも、今回は自分にも非があるのを認め緩める。 

 

 八幡は――ふぅー、と息を吐き、適当に椅子へと腰を下ろす。 

 出会ってからまだ二日目。

 距離が縮まってるわけもなく、それからの二人は無言だった。お互いに文庫本を広げ、ページをめくる音だけがその場に響く。

 それが居心地悪いかと問われればそんなことはなかった。

 恐らく二人はどこか似ているのだろう。

 本を読み進めること数十分。

 唐突に、――パタンと八幡は本を閉じた。

 

「・・・・・・この部活、奉仕部だったか? 依頼かなんかあんの? 昨日もそうだったがこれなら外で奉仕活動をしたほうがましな気がするけどな」

 手持ち無沙汰になったわけではない。

 ただ、自分がまだこの部活について何も知らなかったのだと思い出したのだ。

 本を閉じたのも雪ノ下に対して――なんか話そうぜ、と言う意思表示でもあった。

 

「話しかけないでくれるかしら」

 

 本の表紙に皺が入った。

(こ、このアマ・・・・・・) 

 文句の一つでも口にしようとしたその瞬間。

 今度は雪ノ下がため息を吐き、

「もう少しで読み終わるから、少し待っていて・・・・・・」

「・・・・・・」

 その一言で、八幡は自身の熱がおさまるのを感じる。

 静かに放たれた言葉が、少しやさしさのあるその言葉が、ひどく嬉しく思ってしまったのが今年入って最大の屈辱だと八幡は思った。

(あれだな。きついことを言われ続けたからちょっといい言葉をかけられると嬉しくなっちゃく・・・・・・ってチョロインか俺は・・・・・・!!)

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

 それから。

 パタン、と。

 雪ノ下が本を閉じて。

「奉仕部、と言ってはいるけど。ここは地域交流をすることが目的ではないの」 

 脈絡もなく話し始めた。

 いや、言葉だけを抜き取るなら八幡の先ほどの質問に対する回答なのだろう。だが勘違いしてはいけない。

 時間を見れば、すでに三十分は経過している。

(なんかあれだわ・・・・・・一周まわってこいつ面白い奴に思えてきたな)

 

「――は? じゃあここ結局何する部活なんだよ」

「昨日あなたが言った相談部。言い得て妙ね。ここは主に対人を想定したボランティア活動を主体としてるわ。そう、例えば――モテない男子に女の子との会話を体験させてあげたり・・・・・・ね」

 今してる事よ、とでも言うように笑顔を向ける雪ノ下を、八幡は今日何度目かの殴りたい衝動にかられる。

「勝手にモテない男子を押し付けるのはやめてもらえますかね。・・・・・・いや事実ですけど」

「あら、別にあなたの事を言ってるわけではなかったのに。ごめんなさい勘違いさせてしまったかしら・・・・・それとも被害妄想がご趣味なの?」

 もはや謝罪とは何かと言う議論をさせたいと思う八幡だったが、そこは黙って両手を挙げた。

 ギブアップだ。 

 これ以上は八幡の心が持ちそうになかった。

 もうすでに少し涙すらこぼれかけている。

 

「誰かのために何かをするタイプには見えないけど・・・・・・なに? 実は博愛主義者なの?」

「違うわね。けど、優れた人間は憐れな者を救う義務がある、のだそうよ。博愛主義者・・・・・・なんて言うつもりはないけれど、目指すべき場所ではあるのかしら。・・・・・・だって優秀な人間が辛い思いをするなんて、そんなの間違っているもの・・・・・・ああ、この話は昨日もしたかしらね」

 少し儚げにうつむく視線は、落ち込んでいるというよりは、決意の表れとも取れた。

 

『君から見た雪ノ下雪乃はどうかね?』

 結局聞くことができなかったが、平塚静は彼女をどう思っているのだろうか。

 

「なぁ、()()()()()()()()()()()()()の事か?」

 何気なく聞いた八幡の言葉に、雪ノ下はすぐに答えることができなかった。

 もし仮にこの場に平塚静がいれば、――それは聞いてはいけない質問だ、と指導を受けるかもしれない。

 

「そんなの・・・・・・わからないわ」

  

 少しの間をあけ、彼女は答えた。――否、正確には『答え』てはいないのだが。

「そうか」

 だが、それを追求することを八幡はしなかった。

 する必要がないと思った。

 なぜなら彼女のその言葉は――すべて。

「何か言いたいなら言いなさい。勝手に納得されるのって私すごく不快なの」

「――ん? 別にそんな気はないが」

「どうせ馬鹿な事言ってると思っているのでしょ? ・・・・・・私だって、わかっているわよ・・・・・・そんな事・・・・・・」

(先ほどまでの強気な姿勢はどこへやら・・・・・・。やっぱあの質問はNGだったってことですかね平塚先生) 

 

 ――仕方ないか。

 

「そう言えば、誰かを救う部活だって言ってたな。それって具体的にはどんな感じで解決するんだ?」

 先にミスをしたのは八幡だ。ならば、それを回収するのも八幡でなくてはならない。

 ――この質問が分岐点。

「――? え、ええ。そうね、その時その時で違うと思うでしょうけど、根本の解決を目指すべきだと思ってはいるわ」

「根本?」

「そうよ。飢えている人間に魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えてあげるの。奉仕部の理念でもあるわね」

 

 ――ここだな。

 

「なるほど。考えは分かるが・・・・・・」

 そこで、八幡は今日初めて、 

「――お前がそれをできるとは思わないな」

 雪ノ下雪乃の顔を見た。

 

「なんですって」

 その声には明らかな怒気をはらんでいた。

「根本の解決、と言ったものの、お前にはそれが見えてないだろ」

「どういう意味かしらッ」

 睨み殺しそうな雪ノ下の視線を受けても、それにたいする怯えは見えない。

「飢えてる人間に魚の取り方を教える。なるほど確かにそれは正しい。けど、きっと雪ノ下雪乃はその先を考えない。考えられない。――なぜ()()()()()()()()()()()()を考えることができない」

「・・・・・・っ!」

「お前は自分が優秀な人間だと自覚している。だからこそ、他人の問題を解決できても、何故その問題に突き当たったのかが分からない」

 八幡は、睨む彼女の目をそらさない。

「別に誰かを救うのが馬鹿げているとか、世界云々を阿保らしいとか言うつもりはないけどな。・・・・・・まあ、なんて言うか、お前の言葉は――」

 

 ――軽すぎる。

 

 その一言で、雪ノ下雪乃はキレた。

「あなたに!! あなたなんかに・・・・・・!! 私の気持ちは・・・・・・分からないっ」

「・・・・・・」

 睨みつける目つきだった。しかし、八幡にはそれが泣きそうにすら見えた。

 だから怯む必要すらない。

 

「なあ雪ノ下。一つ聞くけど、お前、なんのために努力してんだ?」

「・・・・・・急に何を」

 

「いやな、昨日からお前、曖昧な答えしか返さないからさ。結局何がしたいのか俺にはわからねぇんだよ」

 そう。比企谷八幡はまだ数えるほどしか彼女の言葉を聞いてない。

 先ほどの言葉、『優れた人間は憐れな者を救う義務がある、()()()()()

 つまりこれすら他人の言葉。

 

「答えられないか?」

「・・・・・・、」

 答えられない。雪ノ下雪乃はそれを答えるすべを持っていない。

 

 雪ノ下は努力型の人間だ。それはとても素晴らしいことで、きっと誰もがまねできることではない。

 けれど――。雪ノ下は・・・・・・雪ノ下雪乃には、『努力している理由』を持っていない。

 それだけなら別にかまわない。そんな物、いつか見つければいいのだし、時間が経てば勝手に見つかるかもしれないからだ。

 

 しかし、その努力の正当性を他人に説くというのならば話は別だ。

 

 飢えている人間は、きっと魚の取り方より魚がほしい。でも、雪ノ下が言う通りそれだけではだめなのだ。それでも雪ノ下にはそれが何故必要な行為なのかを説明できない。

 簡単な話だ、雪ノ下は魚の取り方を得た理由が希薄ということだ。

 夢がないとでも言えばいいのか。 

 要は『言ってることは分かるが納得できない』と言う奴だ。

 

 あれもできるこれもできる。

 確かにすごい。完璧な少女と言って差し支えないだろう。

 だが、彼女はそこ止まりだ。彼女は譲れない何かを持っていない。

 故に、雪ノ下雪乃の言葉は軽いのだ。他人の言葉を借りるのだ。

 

 でもそれは、雪ノ下が自分で探すしかなくて、今言っても仕方がない事なのだろう。

 

 ――だから。

 

「なら、その答えを、いつか教えてくれよ」

 

 静かに告げられたそれを、雪ノ下は聞き逃すことはなかった。

「・・・・・・あなたは、それを持っているの・・・・・・」

 消え入りそうな声だった。

「さぁな」

 八幡は答えない。

 

「けど、自分が何をしたい人間なのかは知ってるつもりだ。それがないときっと俺は迷ってばかりだ」

「迷う・・・・・・。何を・・・・・・したいか・・・・・・」

「何かしらあるもんなんじゃねーの。普通なら。ほら、プリキュアになりたいとか仮面ライダーになりたいとか、世界征服したいだとか・・・・・あっ特に最後のなんかお前っぽくてよくないか?」

「今度私の事をどう思っているかじっくり話し合う必要がありそうね」

「すみません。俺が悪かったです」

 先ほどよりも強い雪ノ下の視線に、八幡は即座に折れた。

   

「けどそうね。・・・・・・もし、それを見つけたら・・・・・・いいえ、きっとあなたには話さないわね」

 

 最低限の意趣返しのつもりか、雪ノ下はそっぽを向きながらそう口にする。

「そうかよ・・・・・・」

 

 それ以来。再び二人に会話はなかった。

 いつも通り時計の針は進み。

 部活動の時間は終わる。

 お互いに会話なく、先に準備が整った八幡が教室を後にする。その瞬間――。

 

「ま、『また』あした・・・・・・」

 八幡は、その言葉を背中で聞いて、

「ああ、また明日な」

 振り返らず、雪ノ下の顔を見ることなく、教室の扉を閉じた。

 

 きっと、お互いにその顔は、見せるべきではなかっただろうから。

 

 

 

 




『副音声』

那須『はい始まりました副音声です。初めての事で緊張しますがよろしくお願いしますね。そして、もう一人はお馴染みこの方――!』
八幡『比企谷八幡です。・・・・・・じゃなくて、なんで俺なんだ? 普通に那須隊の誰かでいいと思うんだが。それに那須今回出番あったか?』
那須『うーん流石にまだ登場してないキャラは使えないそうよ。出番は本当になかったから私も疑問ではあるんだけど・・・・・・』
八幡『まぁ出番がなくても出てる『 』《くうはく》とかがいるし問題ないのかもしれないな。――あれ? お前出番あったぞ、一番最初の文字が那須になってる。良かったな』
那須『あ! 本当だ! 私も出番あったんだねっ・・・・・・って流石にこれは馬鹿にしてない?』
八幡『ノリ突っ込みかよ。お前ってこんなキャラだっけ? もっと静かでお淑やかなイメージなんだけど』
那須『ふふふっやってみたら面白い。でも勝手にイメージ押し付けないでね、私意外と好戦的な演出とか原作でされてるんだから』
八幡『あー確かに、意外と敵味方関係なくハチの巣にしてるもんなお前』
那須『そ、それじゃ私バーサーカーみたいなんだけど・・・・・・。ランク戦だよ? ら・ん・く・せ・ん』
八幡『え、えーっと・・・・・・あー、そう言えば前話を見た感じ那須隊編に入るかと思いきや普通に奉仕部に、い、行ったな・・・・・・』
那須『話そらすの下手過ぎない? でも確かに私も連続出演かと思ってた』
八幡『もうこれはあれだな、作者も結構行き当たりばったりって感じが透けて見えるな』
那須『それは流石にどうだろう・・・・・・? 考えあってのこと、だと、・・・・・・思う、よ?』
八幡『まぁワールドトリガーの方の原作に入るのはまだまだらしい、と言う事だけは事実だな』
那須『そうね。二つの世界を行き来きしてるようなものだもの。少し時間はかかると思う。でも、私情報だと大規模侵攻のネタは少しずつ思いついてるみたいだよ? その間がないんだけどね・・・・・・』
八幡『ダメじゃねぇか。けど、それを書きたかったらそこまでは書くだろ。文字通り神のみぞ知るって感じだな。俺らからしたら』
那須『・・・・・・』
八幡『あれ? どうした?』
那須『えっとね。私たち今回本編に全く触れてないけどいいのかなーって思って・・・・・・』
八幡『・・・・・・あ』
那須『どうしよう・・・・・・』
八幡『えっとだな。今話、全話共に雪ノ下と俺の会話で過去のものを参照している場面があると思う。それは原作と同じと、は言わなくとも、それを言う流れがあったと解釈してくれ。あとあれだ、えーっと――』
那須『比企谷君!? 無理に今全部言う必要ないよ!?! むしろ簡略しすぎて逆に分からなくなってるから!』
八幡『・・・・・・俺は知ってる! 『 』《くうはく》曰く――勝ち目のない戦いは逃げるのだろ普通。のだということを! ・・・・・・と言うわけで副音声を終了する』
那須『え、え!? いいの?』
八幡『・・・・・・と言うわけで副音声を終了する』
那須『壊れたレコーダーみたいね。えーっと、と言うわけで副音声は終了します』
八幡『・・・・・・また見てく、くらしゃい』
那須『焦りが隠れきれてないよ比企谷君。・・・・・皆さんごめんなさい。また読んでね』
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