やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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やっとの二十三話・・・・・・。

何故が話が進まず原作に入れない必殺仕事人です。
今回は俺ガイル面が強いですが、前副音声でも話した通り、俺ガイル方面はとびとびで書いています。あくまでワートリメインで書きたいって言うかんじですね!

***誤字報告感謝!!***
juto様 クオーレっと様 白銀神雅魅様 苺タルト様 久遠秋人様

いつも通りバカ多い誤字報告ありがとうございます・・・・・・。いや、読みなおしているんですよ? 読みなおしているはずなんです・・・・・・。誰か正しい推敲の仕方を教えてください(涙)

 ~それではどうぞ~




二十三話>>『青酸カリ!!』

 はいどうも。部活メンツにパシリにされた比企谷八幡ですコンニチハ。

 と、何時になく、というかいつも通り八幡は不愉快そうな面を浮かべている。

 

「あの野郎・・・・・・」

 ゴロゴロと転がった缶を手に取りながら、八幡はそれを命じた雪ノ下へと悪態をついた。

(いやね、確かに女子の質問に対しての配慮が足りなかった俺の責任だけど、なんでお前の飲み物も買わなきゃならんねん)

 

 先ほど奉仕部に来た依頼主由比ヶ浜結衣。

 同じクラスであること以外特に記憶してなかった八幡だが、トップカーストの彼女がどんな悩みを持っているのか少し興味を持ったことが失敗だったのだろう。

 おもっくそ「あなたに聞かれたくないんですが」的な目をされた八幡は、本来なら回避すべき心への攻撃を受けることになったのだ。

 

「・・・・・・由比ヶ浜の分も買っとくか」

 

 そう。今の状況は空気を読んで飲み物を買ってくると腰を浮かせた時に――

『私は野菜生活100いちごヨーグルトミックスでいいわ』

 と、ナチュラルにパシられたが故の状況なのである。 

「てか、よくこんなの校内に売ってたな。初めて見たわ。そして少し飲んでみたくなって買っちゃたわ」

 

 マックスコーヒー信者としてこれはダメと思いつつも八幡は誘惑に逆らえなかった。

 ――仕方ない。今日は箱での購入で帳尻を合わせよう、とアホなことを考えてるあたり信者の格は落ちていないと思われる。

 

「そう言えば、初めての依頼かもしかして・・・・・・」

 

 結局入部と言う形をとり早二週間。一向に依頼が来ない名ばかり部活にとうとう光が差したのだ。

 少しワクワクしないと言えば嘘なる。

 まあ、それもこのパシリで帳消しどころか辞めてやろうとまで考えたためすでにマイナスだが・・・・・・。

「さて、そろそろ戻るか」

 

 あれもこれも独り言。

 

 八幡は自分が無意識に言葉に出していることに気付いていない。

 これだから彼は()()()()()()()()()ヒッキーなどと言う不名誉なあだ名をつけられてしまったのだろう。いや、由比ヶ浜がそういった理由でつけたかどうかは本人以外あずかり知らぬことだが。

 

 ・・・・・・。

 

 ――時に、比企谷八幡のサイドエフェクトは奉仕部との相性がいいということはご存知だろうか。

 

 いや、そもそも比企谷八幡のサイドエフェクトについて詳しく知らない者の方が多いかもしれない。

 なんたってあの『 』(くうはく)ですら完全に使い方を理解しているわけではないのだ。恐らくこの力を100パーセント理解しているのは長年付き合ってきた本人だけだろう。

 

 サイドエフェクト『思考投影』。

 使い方は多岐に渡る。

 ――思考の奪取。――視覚の共有。――無意識へのアクセス。――肉体行動の受け渡し。

 

 これだけあればむしろあれ? と思うだろう。

 つまり、結局これはどういった能力なのだと。

 

 それ以前に、サイドエフェクトはあくまで人間の延長線上にあるものだ。こんな不思議能力(ファンタジー)なわけがない。――では何なのか。

 

 とは言えもったいぶることもない。

 これを『 』(くうはく)は『心の理解』と表現した。

 『心の理解』などと言うと、心を読むことと考えそうだが、比企谷八幡のはまた一味違う。

 

 言うなればこれは()()()()()

 理解した先を求めた結果の能力なのだ。

 

 このようなことを思ったことはないだろうか。

 そう、例えば好きな人物が現在どうしているのか考えたりなど――。

 アイドルでも俳優でも、尊敬できる先輩でもいい。そしてその次に、()()()()()()()()()()()()と思ったことはないだろうか?

 

 アイドルなら踊り。俳優ならしぐさ。先輩なら口調や髪型。

 

 もっと簡単なものを例に出すならスポーツなどが良いだろう。上手い人物のプレーをまねたことはないか? ゲームでもいいかもしれない。上手い人の思考を考えたことはないだろうか。

 

 つまるところ八幡のサイドエフェクトはそれだった。

  

 『観察や思考による第三者の再現』その再現率を100パーセントまで強化したのが比企谷八幡のそれなのだ。

 疑問に思ったことがあっただろう。比企谷八幡はどうやって『 』(くうはく)を見つけたのか。

 『思考投影』なのはそうなのだが、目の前にいない人物のそれにどうやってアクセスしたのかと。

 

 これはもう考える必要がない。

 例えにも出てきただろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 比企谷八幡のサイドエフェクトは迅悠一などは違い、その人物が目の前にいる必要がない。『知らぬあの人を理解する』ことこそができなくて何になる。

 ()()()()()()()()()さえあればそれで事足りるのだ。

 

 ――ああ例えば、その人物が操るキャラクターとか。

 

 故に比企谷八幡のそれは、その行為を脳をリンクすると言った一つの方法に落ち着いた力だと言える。

 そのため対象は一人と言う弊害を患っているが、そこに文句をつけても仕方がない。

 

 しかし、だからこそ脳の部分共有も可能なっている。

『あの人の()()()()()()真似しよう』と言ったように、むしろできて当たり前。

 それをなしにしても、『物を書きながら音楽を聴いて、歌を歌う』など全く別々の場所からアクセスできるのが脳と言うものだ。

 計算式を解きながら隣のこの子可愛いなー、なんてのはよくある事だろう?

 

 憧れやら興味、尊敬、お気に入り、何らかの理由からその人物と同じになりたい、知りたいという人間的感性を実現させたサイドエフェクト。

 他人に興味の薄い八幡がその様な才能を持っているとはまた皮肉めいているが・・・・・・。

 

 話を戻そう。

 この力は最初に言った通り、『心の理解』と言った一面が強い。

 これは奉仕部の活動には最適と言える力だ。

 

 人が誰かに相談を持ちかけるという状況は大まかに二パターンだ。

 一つは『自分の中ですでに答えが決まっていて背中を押してほしい』パターン。もう一つは『答えがなく何をすればいいか分からない』パターンだろう。

 

 前者の場合は簡単だ。「あなたは正しい」「間違っていない」と肯定してやればよい。八幡ならどれが背中を押してほしい事柄かすぐに分かる。

 後者なら質問と応答を繰り返し、「本当はどうしたいのか」探ればいい。全く答えがないなどと言う事はない。点と点を結べないようなそんなものだ。だからどの点をたどって線をつなぎたいのか細かく調べて行けばそれで済む。

 

 まあ中には『他人に責任を擦り付けたいがため』みたいなものもあるがそれは今はいいだろう。

 

 要は奉仕部において八幡が失敗することなどありえない。

 『 』(くうはく)に頼る必要などなく。いや、むしろあの対人スキルゼロの連中に手を貸されてはマイナスかもしれない。

 

「楽な仕事だ」

 

 そんな意気揚々とした心持で、八幡は奉仕部の扉を開いた。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「楽な仕事のはずだったんだ」

 そんなセリフをして、八幡は目の前の状況に絶望を吐いた。

 

 奉仕部に戻ってから、彼は家庭科室へと連行された。

 どうやら彼女の願いはお礼のクッキーを作る事らしい。

 

 その時点で八幡の『思考投影』はクソほどの役にも立たないゴミへとなり果てたのだがそれは百歩譲って良いだろう。

 問題はそこからだ。

 

「おい雪ノ下、この黒い物体はなんだ?」

「もしこれをクッキーと答えたら私は嘘つきかしら・・・・・・?」

「ひどい!?」

 

 雪ノ下が手本を見せ、その後に由比ヶ浜が挑戦する。

 流れは完璧だった。

 味見役へとレベルダウンした八幡は雪ノ下さんマジパネェ――とまではいわないが、素直に料理ができることに関心すらしていた。

「なんで失敗したんだろう・・・・・・」

 ショボーンでも言いたげな由比ヶ浜の発言に、二人はギョッとした目を向けた。

「あのね由比ヶ浜さん。あれだけの事をやっておいてまさかそれが分からないなんて言うわけないわよね」

「ひぃーッ・・・・・・!」

 あからさまな笑顔を向ける雪ノ下に由比ヶ浜はおびえた声を上げる。

 笑顔には攻撃的な面も含まれているとよくいう話だが、雪ノ下のそれはもはや凶器の域にあった。

 

「はぁーまあいいわ。とりあえず食べてみましょう。もしかしたら・・・・・・・万が一・・・・・・奇跡的に・・・・・・味は問題ないかもしれないわ」

「そこまで賭けないと保証できないほどなんだ!?」

「ああ、雪ノ下にして()()甘い判定だな」

「・・・・・・うぅ、ちょっと泣きそう・・・・・・」

 そんなことを言いつつ、三人は問題のそれへと手を伸ばした。

 

「そうね、流石に死ぬことはないと思うわ。だから比企谷君先に逝きなさい」

「ちょっと待て、今字が間違ってなかった? 『行く』が『逝く』になってなかったか!?」

「・・・・・・? 何を言っているの? 言葉で言われても分からないわ」

「そんな本気で分からないみたいな感じで首をかしげるのをやめろ」

「かわいそうね由比ヶ浜さん。この男あなたの料理を毒か何かと勘違いしてるわよ」

「・・・・・・うぅ、ヒッキー・・・・・・」 

 

 身長のせいか自然と上目遣いになった由比ヶ浜に八幡はたじろぐ。

 ここに来て、八幡は気づいた。これは雪ノ下と八幡、どちらにこのクッキー(ダークマター)を食べさせるかの勝負なのだと。

 気づいた時にはすでに遅く。すでに八幡は崖っぷちだ。

 

「大丈夫だよヒッキー。私だって料理少しぐらい知ってるもん」

「ほー。この現状でまだそんな口を開くのかお前」

「そ、そんなことないよ! 料理の「さしすせそ」だって知ってるんだから!! 砂糖でしょ? 塩で、次が酢、でせが・・・・え、えーっと、せ、――あっ、青酸カリ!! で最後が味噌! ほなね!」

「「・・・・・・、」」

 何がほらね、って言うかむしろ――ほらな、って感じなのだが。

 

「比企谷くん――」

 そこで初めて雪ノ下が優しく名前を呼んだ。

「提案があるのだけど。これ今回は私ダメだと思うわ。だから引き分けにしましょう」

「奇遇だな。俺も同じことを言おうとしてたんだ」

 ――えっえ? と言った感じで何が何だか分からない由比ヶ浜だが、八幡達はむしろ声を大にして『わかれ』と叫びたかった。

 

「由比ヶ浜さん。私思ったのだけど今度は比企谷君も一緒に作ってみようと思うの。ほら、由比ヶ浜さんが渡す相手男子なのでしょ? なら男性視点の味の好みとか分かるかもしれないじゃない?」

 ――その心は、監視をもう一人つけるからやり直そうと。

 

「えっ、でもまだ味見・・・・・・「ゆ、由比ヶ浜!!」――?」

 

「ほら、せっかく手順覚えたんだ、忘れないうちにやったほうが良いだろ? 俺じゃ力不足かもしれないが、やっぱ少しでもおいしい物渡したいだろ? 時間はないんだし早く始めたほうが良いと思うぞ」

 ――その心は、お願いします。早くこのクッキー(ダークマター)から意識を背けてくださいと。

 

 もちろん二人はこれに毒が混じっているなどと本気で考えたわけでは・・・・・・・な、い。

 だが、学校には理科室がある。

 ちょっと目を離したうちにここまでの事をやってのけたのだ。 

「人の命がかかっているわ、ほんのわずかにすら賭けることはできないのよ」

 可能性は0ではない。

 流石に青酸カリはないにしろ、()()()()()()()()何かしら入れられていたら普通に死ねるのだ。

 

「え? なんの事」

 と、首をかしげる由比ヶ浜を何とか説得し料理は再開。

 

「由比ヶ浜、秤のメモリ0に戻し忘れてるぞ? 俺は甘めが好きだが、これじゃ砂糖が分量以上に入るだろ? ・・・・・・い、いや違う! 今のは桃缶を入れたいという意志じゃない! てかなんでそんなに卵持ってルンダ?」

「だって、小麦粉混ぜにくくないこれ。多分水分が足りないと思うの私!」

「待って由比ヶ浜さん、大丈夫だからちゃんと混ぜれば溶けてくれるから。卵の代わりに水を足す必要はないのよ? ・・・・・・わ、私が悪かったわ! ゆっくり混ぜましょうゆっくり!! 勢いがありすぎて小麦粉が飛び散ってるわ!」

 

 もはや悪魔的なまでの料理センスを発揮し、『何か』を作り出そうという由比ヶ浜を、何とかクッキー作りと言うステージへと八幡達は押し込んでいく。

 

 それでも、今まで本を読むことをしかしてこなかった二人には、やはりそれは楽しいようで、口元は密かに笑っている。

 途中バンッ! などと言う料理の内容では出ることのない音などがたまに出たりしたが、その時は何とか訪れた。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

 結果として、出来上がったクッキーと呼べる代物はちゃんとクッキーと呼べるものだった。

 雪ノ下と八幡、二人の安堵の様子を見るに、取り合えずはうまくいったと言えるだろう。

 

「おかしいわね、クッキーを作る過程で卵が一パック消え失せたわ。これ三人分よね?」

「ねぇなんで最初に用意したボールが二つも紛失してんの? 怒られるの教室借りる時に名前を出した俺なんだけど・・・・・・」

「・・・・・・制服汚れた・・・・・・」

 三者三様な感想を抱きつつ。

 三人は前のクッキーへと目を向ける。

 

「こ、今回はちゃんとできたね! 雪ノ下さんのと比べるとなんかあれだけど・・・・・・」

「いや、十分だろ。見た目もしっかりしてるし匂いもいい」

「そうね、でも万が一があるわ。三人同時に倒れても問題だしやはりここは一人ずつ・・・・・・」

「ゆきのん!?」

 心の中で呼んでいたのが思わず出てしまったのだろうか?

 とりあえず。

 ――ゆきのんってなに? という議題を開催したい雪ノ下だったがここは大人な対応を見せた。

 

「まぁ良いわ。ここまで来て不公平はよくないわね。みんなでいただきましょう」

 

 雪ノ下のその言葉で三人はそれぞれクッキーを手に取る。

「「「いただきます」」」

 そしてパクリと。

 

 感想だけを言うなら、それは決しておいしいものではなかった。

 何故だか舌触りが絶妙に悪く甘たるい。火は通っているはずなのにフニャフニャ過ぎて気持ち悪い。

 点数をつけるなら赤点ギリギリ。

 結果、由比ヶ浜の顔はすぐれない。

 

 それでも――。

 八幡と雪ノ下は二つ目へと手を伸ばした。

 

「ヒッキー・・・・・・ゆきのんも・・・・・・」

 不安そうに見る由比ヶ浜へ二人は言った。

 

「俺も最初に作った時は失敗しまくった。大体こんなもんだろ」

「そうね。それに楽しかったわ。もともと料理ってそういうものなのにね」

 

 褒めたつもりも慰めるつもりも二人になかったのだろう。

 そもそも二人は――美味い、とは決して口にしなかった。

 

 でも、だからこそ由比ヶ浜はそれが温かいと感じるのだろうが。

「ありがとう・・・・・・・」

 自然と出た由比ヶ浜の言葉に、二人はほんの少したじろいだ。

 

「依頼自体は中途半端になっちゃったわね。・・・・・・いいえ、ここは素直に失敗と認めましょう。だから由比ヶ浜さん、あなたさえよければこれを継続と形で今後ともやって行く気はないかしら?」

「――え?」

「暇な時でいいわ。もし、後数日時間をくれればあなたが満足するクッキーを作れるようにすると約束します」

 

「・・・・・・、」

 それを聞いて、八幡は素直に――こいつ誰だ? なんて失礼なことを考えていた。

 まず失敗を認めて、尚且つその払拭の可能性を相手にゆだねているのだ。

 

 思わず手に持っているクッキーを疑ってしまった八幡は悪くないだろう。

 

「うん! ゆきのんよろしくお願いします!!」

 

 そんな八幡を尻目に、二人の話は進んでいく。 

「あの、そのゆきのんっていうのやめてもらえるかしら?」

「えーなんで? すっごく可愛いのにー?」

「かッ・・・・・・っ、可愛いかしら・・・・・・・?」

「うん。可愛いよ! 絶対!」

「そ、そう。な、なら問題ないかしら」

 

 ――いやあるだろ。なんて言う野暮なツッコミは八幡はしなかった。

 

 そもそもツッコむなら男の自分を差し置いて女子同士でラブコメを展開しているこの空間にだろう。

「雪ノ下、悪いが今日は先に上がるぞ後片付けはもう終わったから」

 いつの間にか食器の片付けを終えた八幡は、すでに帰宅モードだ。

 

「え、ええ。今日はありがとう」

「・・・・・・明日は槍でも振るのか」

「・・・・・・そうね。とりあえず背後には注意することね」

 それの方がお前っぽいと、八幡は少し安心したように扉を開いた。

 大丈夫だった、クッキーは問題ではなかったのだ。

 どうやらこの男、本気でクッキーの危険性を案じていたらしい。

 

「じゃあ、また明日な」

 適当にプラプラと手を振る八幡へ、

 

「ヒッキー、バイバイ!!」

 由比ヶ浜も手を振った。

 

「・・・・・・」

 とりあえず、ヒッキーなどと言う不名誉な見ず知らずの人物は自分ではないと、それには手を振り返さずに。

 

 ガラガラと、八幡は扉を閉めた。

「やっぱり、俺の□□□□□□□まちがってるな」

 

 その独り言に、やはり八幡は気づかなかった。

 

  

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 パクリと、『 』(くうはく)の片割れ、空はそれを口にした。

「うわまず」

 シンプルにして最強。

 ここまで真っすぐ言われると逆にすがすがしくすらある。

 

「おい白。この()()()()()()()()()()()()はなんだ?」

「・・・・・・クッキー・・・・・・じゃないの・・・・・・?」

「いや、そうなんだけどな」

 

 そこは『ボーダー』本部比企谷隊隊室。

 

 空はテーブルへ置いてあったそれに手を伸ばした感想がそれだった。

「・・・・・・ハチ兄が、置いてった・・・・・・。・・・・・・部活の、らしい?」

「いや俺に聞かれても困るんだが妹よ」

 

 決して、八幡は二人を通称『由比ヶ浜クッキー』の処理係を押し付けたわけでない。

 これは学校へと通わない二人へのささやかな八幡の気遣いなのだ。

 特に空に関しては女子生徒からのクッキーと言うもはやご褒美!

 

 ――と、白に説明したのだが。おもいっきし『女子生徒から』と言う部分が省かれている。

 空と八幡は言わずもがな。白もなかなかのブラコンだ。まぁぶっちゃけ超えてる節もあると、八幡は常日頃から思っているが。

 

「・・・・・・にぃ、今度白がお菓子作る・・・・・・?」

「え? いいよ、怪我されても困るしな」

「・・・・・・む・・・・・・。――にぃきらい・・・・・・」

「なんで!?」

 

 何やら八幡のせいで二人の仲が怪しい。

 とは言えそんなことは一瞬あったかないようなもので。

「怒らせたか? ほら、こっちゃ来いこっちゃ」

 自身の太ももへと白をのっけて、白もそれを心地よく思っているあたり、この二人はやはりなんて言うかあれだった。

 

「まぁ、クッキーはどうでもいいんだけどさ、これ見てみ白」

「・・・・・・ん?」

 

 二人が見ているモニターに映し出されているのは俗に言うモデルと言うものだった。モデルと言ってもゲームなどに使われるポリゴンでできたあれだ。

 二人が『ボーダー』隊員の動きをどう観測しているかの答えがこれだった。

 

 相手を完全に誘導する。

 それをするための作業が『ボーダー』内の戦闘ログを見直す程度なわけがない。

 てかその程度で、誘導できたらそれはもう相手が弱すぎるのだ。

 

 それらを可能にするために用いたのが、『 』(くうはく)が使っている『これ』だ。

 

 プログラム上に作った三次元的空間に、データをコピーしたモデルを配置。一人一人の出力やら似た動きを重ねての誤差座標の計算。

 トリオン量との計算での攻撃範囲内と、攻撃回数の把握。

 攻撃移行の際の体の各部位の座標位置――すなわち態勢の弱点考察

 

 それら割り出すのが『 』(くうはく)の作戦に必要な()()()()

 

 今後は鳩原未来から得た情報を含めての、モデルデータだけでない心理的観測の方からもアプローチをかけていく予定なのだろう。

 二人の手は会話をしながらもせわしなく動いていた。

 

「おかしいだろ? これ、振れ幅が大きすぎる」

「・・・・・・確かに・・・・・・早すぎる・・・・・・」

 

 何が、とはお互いに問わなかった。

 二人が見ていたのは一人の男のデータだ。

 

「入隊時期は最近。師匠は荒船? ああなるほどね。ま、それにしても早すぎる。どう考えてもサイドエフェクトだろ」

「・・・・・・鳩原ちゃんからもらった、資料・・・・・・ある?」

「いや、今はハチに渡してる。あらま、先に俺らが目をとおすべきだったか?」

 これがあるから鳩原未来との交渉は空達にとって通るべき絶対条件だった。

 そういったイレギュラーを完全に排除することこそ、空達のやりかた。

 こんな『ない』可能性の方が高いこの程度のものに、ランク戦を巻き込んだのだから呆れて物言えない。

 

 まぁだからこそもう届かないのかもしれないが。

 

「さて、鳩原未来もそろそろ動くころだ。尻尾ぐらいは掴んでおくか。手綱を握るか。それとも完全にこのまま無視が利口か」

「・・・・・・でも、白ならここで必ず動く・・・・・・」

「ああ、俺でもここで仕掛けるだろうな」

 

 やはり二人は何を、とは聞かない。

 

 例えば、鳩原未来は二人に絶対勝てないことを確信していた。

 しかし、裏切るとも宣言した。

 

 ならそれはどのタイミングだ?

 

 決まってる。カウンターをもらわない絶対の瞬間。確か、バスケットボールではこれを『ブザービーター』などと呼ぶ。

 

「さぁ()()()()()()()見せてもらおうか」

 つまり、どうしかけるのか。

 

 鳩原はここでもすでに手を打っていた。

 『 』(くうはく)に接触し、いいやこの場合『 』(くうはく)かどうかは関係ないだろう。自身の目的を誰かに話した場合の対策。

 

 しかし、自身のそれを知られてなお、相手に裏切らせないウルトラC。

 所謂あの一言が保険の正体。『 』(くうはく)にのみ通用する回避不能な攻撃。

 

『それじゃあゲームを続けよーう!』

 

 あらかじめ裏切ると、利用すると予告することによって。

 明確な敵からゲームへと移行させる一手。

 

 要は『私が仕掛ける《何か》を回避して見せろ』という申し込み。

 

 そしてそれを『 』(くうはく)は受けた。――否、『 』(くうはく)だからこそ受けた。

 

 なら遊ぼうと――。

 答えて見せよう、ゲーマーとして。

 

 もちろん鳩原自身も負けることは織り込み済みなのだろう。

 それをして最大限自身が得をするよに組んだとみるのが正しい。

 とは言え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・・わくわく・・・・・・・」

「楽しみだなーしろー」

 

 そんな鳩原未来のそれをあざ笑うかのように、二人は満面の笑みで呟いた。

 

 

 




『副音声』

結衣『はーいではでは! 今回の副音声は初登場、俺ガイル原作ではサブヒロイン事由比ヶ浜結衣と!』
雪乃『例え原作であろうとメインヒロインと言う肩書は遺憾であると言わせてもらおうかしら雪ノ下雪乃でお送りしたいと思います』
結衣『いやー、なんか自分たちの話を読み返すってなかなか恥ずかしいね。んー緊張!』
雪乃『でも、うらやましいわ由比ヶ浜さん。私なんて数話前から登場してるのになかなか出させてもらえないのにあなたは一発だもの』
結衣『そ、そんなことないよ? むしろ私はゆきのんの方がうらやましいよ!! 雪のんとヒッキーの出会いは結構しっかり目で書いてたのに、私との出会いはなんか簡単に書かれてるから……』
雪乃『ああ、それはあれね。私の時はまだヒロインアンケートの投票がそこまで多くなかったから私も想定していたのでしょうけど……――私たち、一票も入らなかったものね……』
結衣『うん……』
雪乃『唯一、一色さんが上位陣に名を連ねているけれどね。ルミさんまで票が入っているところを見ると、私たちの方の原作ファンはロリコンが多いと言う事かしら?』
結衣『えーっと……ロリコンかどうかは置いといて、そういった発言がもしかしたら影響してるのかも……?』
雪乃『ああ、因みにヒロイン選挙はまだ続いているわ。大体、ワートリ原作が入るころまでは続くようだから、全然私たちにいれても大丈夫だそうよ?』
結衣『ゆきのんがデれた!? 自分の発言を撤回しようとさりげなくアピールした!?』
雪乃『まぁ、わたしたちの魅力がなくなっているのは作者の技量のせいと一言文句も言わせてもらおうかしら……』
結衣『えーっと、ゆきのんが少し壊れちゃったので、報告しなければいけないことを少しだけ。投票結果で上位陣はより詳しく書き、速めに出すとのことを以前おっしゃっていました。なのでいろはちゃんにいたっては原作とは違う風にヒッキーとの出会いを作るそうなので……オリジナル? って感じになるのかな、そこを少し楽しみにしてくれたら嬉しいです』
雪乃『あの由比ヶ浜さん? ちょっとあたりがいつもより強くないかしら? 私たちってもっとあの……』
結衣『あと、今話で使われた私のセリフ。サブタイトルにものあっている『青酸カリ!!』――については、ご存知の通り、現在三期放送中のあの作品のあの流れを採用しました! 分かる人いるかな?』
雪乃『私はやっぱりあの子が好きね。あの子の能力ならパンさんを無限に作れそうだもの』
結衣『ゆきのんやっぱり私のクッキーが……』
雪乃『さて、この辺で副音声は終了させようかしら』
結衣『ハッ! もしかして票を入れてもらうためのキャラ作りの可能性も!?』
雪乃『終了よ』
結衣『神の味噌汁だね』
雪乃『それを言うなら神のみぞ知る、よ』
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