やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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はーい六話です。

今回やっと八幡の戦闘が見れまーす笑

それに伴い、『他作品との技だけクロス』させております。タグにも書いてあるのですが一応ここでも言っておきます。
説明は作品中に書いてあるのですが、他の作品の技なので調べれば出てきます。もちろん感想などで質問されれば、答えます。

いろいろ思うことがあると思いますが、すみません僕自身多作品クロスが好きなだけです笑

それではどうぞ!!


六話>>『あいつらのことを俺は天才だと思ってる』

 

 

 

 貫かれた『トリオン伝達脳』が治るのと同時に。

 

 『10回戦開始』そんな音声が室内に響く。

 

 小南は今までの9回の戦闘を、すべて敗北と言う形で終わっていた。

(まっじで化け物!! おかしいでしょ、こんなことある!? 私が一勝もできないなんて・・・・・・ッ!)

 小南のそれは、別に自身の思い上がりなんかではない。

 事実として、小南はA級の実力を持ち、攻撃手(アタッカー)のランクは3位と言う見える評価がついている。仮に小南を弱いと仮定すると『ボーダー』と言う組織自体が弱いと言ってもいい認識になるのだ。

 

「どうする? ・・・・・・もう少しやるか? どっちにしろあと一戦しかやらんが。ほら、10本勝負の方がキリが良いだろ」

 

 攻撃手(アタッカー)3位が一度も勝てずに敗北する。しかも、ただのノーマルトリガーに。

 そんな異常事態を引き起こしている張本人が何かほざいていた。

「あんた、実はメイン銃手(ガンナー)とかではないわよね・・・・・・」

「――? ん、どうだろうな。結構前から触ってはいたが――これがメインだ、と胸を張れるほど使いこなせてはいないと思うが」

「・・・・・・、」

 八幡のそんな気の抜ける回答に、

(そうだったわ。こいつは基本的にあほだったわね)

 と、呆れ顔を見せて。

「で・・・・・・続きをやるか、だったわよね。――そんなの・・・・・・やるに決まってるでしょうがっ!! 負けっぱなしでいられるかってのよ!!」

 キレるように怒りをぶつけた。

「お、おい。そんなにムキになるなよ。ただの練習だろうが・・・・・・」

「――ッ! ほっんと、あんたのそういうところがムカつくのよね。全力でやりなさい!!」

「や、やってるんだが」

 なにこれ理不尽・・・・・・、と言うような顔をしながらも、八幡はトリガーを構える。

 両者が構えたら開始する。これは二人で決めた暗黙の了解みたいなものだ。

 

(ほんと、こいつをS級認定したのは正解ね・・・・・・。だって――)

 

 小南切絵は薄く笑った。

 ――あたしじゃ無かったら、心が折れる程度じゃすまないでしょうから。

 

 そして、静かに。

 動く様子を見せない八幡へ、小南は動いた。

 

 

 迫ってくる小南を見ながら、八幡は顔をしかめる。

 動きが早かったとかそういうのではなく、小南が背中に隠している《メテオラ》を察知しての事だ。

 小南が飛ぶと同時に、背後にあったそれが顔を出す。

 上からは小南の斬撃。前方からは《メテオラ》。シンプルにして単純な攻撃手段。

 

「まッそれにわざわざ付き合う必要はないけどな・・・・・・」

 

 次の瞬間、すべての《メテオラ》がその場で弾け飛ぶ。

 

 それを見ていた人物は、誰一人として何が起こったか分からなかった。対戦相手である小南も、外から見ていた綾辻や三上たちもだ。

 八幡に動きはなかった。――否、動きはあった。

 

 『 』(くうはく)が考案し、八幡が形にしたそれを、三人は『不可視の弾丸(インヴィジビレ)』と名付けた。

 

 技名をつけるに至った理由を挙げるなら、当時の八幡達はまだ若かったということだろう。

 そして、その技を解説するのならば、要はただの「早撃ち」だ。

 仕組みは単純明快。つまるところ、腕を上げて撃って下げる。それを見えない速度で行なっているだけ。

 小南ですら捉えられない早撃ち。撃ったとすら認識できない早業。

 絶技と言ってもいいそれを行いながら、八幡はこの時――もう一つの技を同時に行っていた。

 

 それを『 』(くうはく)は『銃弾打ち(ビリアード)』と呼んでいる。

 

 行っていることはこちらも簡単。トリオンの弾を自身のトリオンで撃ち抜く、ただそれだけの事。

 《メテオラ》は爆発を起こすトリオン弾だ。それは大砲のそれとは違い、少しでも衝撃を加えれば即座に爆発する。ならば、自身にそれが届く前に撃ちぬけばいい。そこから得た発想だった。

 しかし――拳銃より遅いといえ、秒速100メートルは下らない速度で迫るそれを撃ち抜くのだから、その異常性は見て取れる。

 ほとんどの『ボーダー』隊員が、銃手(ガンナー)射手(シューター)の弾を、《シールド》で防ぐか範囲外に逃げていることを鑑みるに、それがどれほど不可能かは分かるだろう。

(何度見ても認識できない・・・・・・ッ。どんな速度で腕を振ってるのよッ!)

 驚くのも無理はない。 

 

 こんな頭のおかしいことができるのは、比企谷八幡一人だけだ。

 何でもないようにそれを行う八幡を見るに。

 

 ――どうやらこいつ、本当に人間をやめたようだった。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

 以前、『攻撃手(アタッカー)の連携は銃手(ガンナー)よりシビアだ』なんてことを風間隊は公言していたことがある。それ自体を評価するなら、それはあくまで『すごい事』であって、別にそれが『勝てる理由』にはならない。

 攻撃手(アタッカー)の攻撃は一撃一撃が必殺だ。それを連携で行えるなら確かに強力だろう。それは言ってしまえばゲームの攻撃手段が、『必殺技』のみで戦闘を行っているようなものなのだ。強力すぎるチートである。

 だが、風間隊が言うように、それはとてつもなく『シヴィ』な行為だ。

 そして、『シヴィ』とは崩しやすいと同義である。つまるところ――。

 

 ――『必殺技』を避けられたら、ゲージ溜めからやり直しが基本だと。

 

 

 今回で言えば、小南は一人でそれを行っていた。

 《メテオラ》での陽動。メインの攻撃である自分。チームでの動きを想定する風間のカスタムとは違い、あくまで一人戦えるようにカスタムしたのが小南のトリガーであった。

 故に、調節の効く射手(シューター)トリガーを攻撃のサブとして用いているし、そのコンボが強力なのは周りの認めるところである。

 ――が、先ほど言ったように、それはあくまで『シヴィ』だ。

 であるなら――。

 

 パパパンッ! と、八幡は空中にいる小南に《アステロイド》を放つ。

 当然のように『不可視の弾丸(インヴィジビレ)』で放たれたそれは、言うまでもなく認識できない。

 しかし、あくまで見えないのは弾を放つ瞬間であり、トリオン弾自体の速度は変わらない。

 であるなら彼女はそれに反応でき、迫るそれを《双月》で切り裂いた。

 急に弾が飛んできたという摩訶不思議な光景に、前の9回だけですでに反応するレベルまで行えてるのだから小南と言う少女はやはり強い。

 放たれてた《アステロイド》は確実にすべて打ち落とした。その程度で小南桐絵は倒せない。

 そのはずだった――。

「――ッ!」

 

 小南の頬に線がつく。

 

(ブラインド弾ッ!? しかもあたしが反応できないぎりぎりを――ッ)

 トリオン弾の死角に隠れるように放たれた《アステロイド》が小南に当たる。

 と言っても、頭の中心をねらったそれを避けた小南の反応速度は、かなりぶっ飛んでいると言えるだろう。

 流石は高速戦闘を行う攻撃手(アタッカー)のトップクラスである。

 そんな中、暢気な声がその場にこだました。

 

「あーきぃつけろ。そこ地雷だぜ」

「――はえ?」

 

 そんな疑問の声とは裏腹に、小南は自身の置かれた状態を理解する。

(なッ――《メテオラ》・・・・・!?)

 『射手(シューター)』用の《メテオラ》。ほとんど速度を0(・・・・・・・・)にして、八幡は小南の落下位置にばらまいたのだ。

 本来なら、空中で身動きできないという失態をさらすほど、小南桐絵は間抜けではない。

 体重移動だけで自由に動く程度なら、A級クラスならだれでもできる。

 だが、先ほどの八幡の攻撃によって、体勢を少し変えさせられてた。――否、それが八幡の目的だったのだろう。

 仮に避けられたとしても、それはギリギリ。先ほど自分の《メテオラ》を撃ち抜いて爆発させられたように、至近距離の爆破に巻き込まれるだろう。

 つまるところ詰み。

 だが――。

 

「――っなっめんなー!!」

 起動確認――《グラスホッパー》作動。

 

「・・・・・え?」

 間抜けな声を上げたのは八幡。

 小南が使ったそれは、空中移動を可能にするトリガー《グラスホッパー》。それだけなら別に珍しいトリガーではない。それをカスタムしている隊員など山ほどいる。

 しかし、小南に限って言うならば、それはおかしい事だった。

 

 ――小南の本来のトリガーには《グラスホッパー》はセットしていない。

 

 普段の小南のトリガーにはセットしていないそれを、対八幡用にカスタムしたのだ。もちろん、日ごろから小南のトリガーを知る八幡は、それを持っていることなど少しも知らなかった。

(ここまで使わなかったのもそのためか・・・・・)

 素人目には、ほとんど追うことすらできなかった。

 二回。直角的に移動した小南は、八幡の背後へ着地した。前方には八幡が自身でばら撒いた《メテオラ》、不意を突いたうえでの挟み撃ち。しかも自身の間合い。逃げ場はない、絶好な状況。

 

「《接続機(コネクター)》――オン」

 火力を上げる小南専用オプショントリガー。《双月》が合わさり斧へと変わる。

 強力無比。一撃必殺。それを体現したような武器。

 

 八幡はまだ振り向かない。反応してない。

(とった・・・・・・ッ!)

 ――小南はそう思った。

 

 しかし。その斧は宙を斬った。

 考えるまでもなく、八幡がそれを避けただけ。まるでお辞儀をするように、ただ、後ろから来た攻撃を見ることなく。

 だが、小南はそんなことを冷静に思考する前に、斧を下方向――八幡へと振り下ろす。

 

 そもそも。

 背後の攻撃を避けるとか。長距離狙撃に反応するとか。異次元的な動きを見せる者など、『ボーダー』にはごまんといる。この程度の事にいちいちは驚いていたらきりがない。

(これで・・・・・・ッ)

 小南のそれは、ある種の願いだったのかもしれない。

 八幡と小南の試合は合計100を超える。追い込んだ状況など山ほどあった。しかし結果が語るように、それのすべてが失敗に終わった。

 

 そしてそれは今回も――。

 

 小南が振り下ろすそれを、八幡は体をひねるように容易に避けた。

 小南が八幡の背後に立ってから、そこまでの攻防はわずかに0.5秒。

 ほとんどノータイムで行われたそれを、本当に背後に目があるのかと思う動きでよけて見せた。

 普通ではありえない。トリオン体だからできる動き。体を筋肉やらで動かしていないそれは――武闘家なら絶対行わない人間として無理な動きを、少し強引に成し遂げる。

(躱された――ッ)

 そう判断すると同時に、すぐに小南は後ろへと飛んだ。とりあえず、今は体勢を立て直すべきだと。

 だが――。

「・・・・・・が・・・・・・はぁッ!!」

 メリメリ、と。小南の腹に八幡の蹴りが突き刺さる。

 身を引いたのと同時だった。受け流すこともできなかった。――八幡はそれを『逆カウンター』と呼んでいる。

 相手の引く力を利用し、自身の攻撃力に変えるそれは、最も無防備なタイミングで攻撃を放つ。

 単純計算で倍の威力。後ろに飛ぼうとした力と、八幡の蹴りの威力が合わさった。結果、大抵のことでは体を崩すことがないトリオン体を。

 

 明確に隙だと認識できるほどに――その体は崩され、僅かに体が宙を浮いた。

 ――ヤバい、と。小南がそれ認識する前に。

「――!!!」

 

 銃口を向ける八幡の姿を確認した。

 

(《フ、フルガード》――ッ!!)

 咄嗟に展開されるシールド。

 しかし、小南は疑問に思うべきだった。『不可視の弾丸(インヴィジビレ)』を有する八幡のそれを、何故目にすることができた(・・・・・・・・・・・・)のか。

 

「・・・・・・《メテオラ》、まだ残ってるぞ?」

 小さな声だった。聞こえるか聞こえないかぐらいの。

 

 八幡は《メテオラ》の速度をほとんど0(・・・・・)にして放っていた。であるなら、その弾は少しずつ移動し続けるわけで。――結果。

(読まれてた・・・・・・ッ。ここまで全部!?)

 小南の目の前までそれは迫っていた。

 方向を最初にしか指定できないことを考えると、それは異常な事だった。

 そう、何故なら――。

 

(そんな・・・・・・。私の動きをすべて予知してないと、こんなことできないッ――!!)

 

 それでも、この程度をかわせない小南ではない。目では見えてる。八幡に言われるまでもなく認識していた。

 ――しかし、そんなことは意味をなさない。

 

 小南は気づいてしまったのだ。――自身がすでに詰んでいるということを。

 

 八幡は《アステロイド》を数発放つ。

 しかし、それはシールドを構えている小南にではなく、小南に当たる寸前の(・・・・・・・・・)《メテオラ》にである。 

 それによって・・・・・・つまり近距離で爆発したそれに巻き込まれた二人は、お互いの《シールド》を粉々に破壊された。

 銃型のトリガーを用いていたためか。一つしか《シールド》を使っていない八幡の方が被害がでかく、少しばかりトリオンが漏れている。が、それはもう関係ない。

 なぜなら。

 

 少し遅れて、追加に放った銃弾が小南の『トリオン供給機関』にヒットしたのだから・・・・・・。

 

 自身の胸にトリオンの弾が当たるのを認識しながら。小南は目を見開き驚いていた。

 だってそのはずだ。自身が追い詰めているように見えて、追い詰められていたのは自分の方。

 最初から最後まで、結局小南は動かされていただけ。

 今までの戦闘で、小南はしっかりと対策を講じたはずだ。布石もうまくいったはずだ。

 

「・・・・・・う、そ――」

 辛うじてでた、その言葉を最後に――。

 

『トリオン供給機関破壊。小南ダウン」

 

 機械的に告げられるそれを、小南は聞いた。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

 モニターに映る『あの小南』が一勝もできないという事実。

 それを目撃した綾辻と三上の二人は、出されたケーキに手を付けることもなく、じっとそれを見つめたままだった。

 

「あちゃ~、またこなみ勝てなかったかー」

 できる眼鏡こと宇佐美栞のその言葉で、二人は――はッ、と意識を戻す。

 

「す、すごかったね」

「うん、なんて言うかすごかった」

 オペレーターと言う立場にいる彼女たちではあるが、別にランク戦を見たことがないなんてことはもちろんない。戦う姿を知らないでどうやって補佐をするのだ、と言われるまでもなくその通りだ。

 しかし、ここまで上位クラスの試合を見るのは久方ぶりである。

 小南桐絵と比企谷八幡。ともに『ボーダー』で一位をとれる可能性があるもの同士の戦いなのだ。小南が玉狛所属であることと、八幡がS級であることを踏まえれば、これはかなり貴重映像なのではないだろうか。

 すると。

 ひそかに感動している二人の元へ。

 

「ってことはあれなの? あんたは最初から私が《グラスホッパー》持ってること知ってわけ!?」

「まーそうだ。全然出さないから使わないのかと思ったけどな」

「ほっンと面倒ねッ、あんたのサイドエフェクト。『思考投影』だっけ、そんなん使われたら作戦駄々洩れじゃない。このチート野郎!!」

「おい、人聞きの悪いこと言うな。風間さん曰く『才能を出すななど。普通に考えてありえない』だそうだ。つまり、才能を使うことはチートじゃない。その他大勢の決定事項だ。なんか民主主義っぽくていいだろうが」

「めんっどくさ! だからあんた友達がいないのよ。・・・・・・このボッチめッ!」

「おいコラ、負けた腹いせに俺の精神削りにくるのやめてくんない? てかボッチを馬鹿にするなよ。ボッチこそ至高の存在だからな。世界がボッチだけなら戦争はなくなる。・・・・・・ほら、近界民(ネイバー)とかめっちゃ群れるだろうが」

 

 おっと子供の喧嘩かな? 先ほどの感動はどこへやら、綾辻と三上の二人はそんな感想を抱いた。

 

「あんた、最後私にあの見えない「早撃ち」を使わなかったのって・・・・・・」

「――ん? ああ、それだけならお前よけられただろ? だから別の方法を選んだ。銃口を向けられたとき、お前シールドを展開しないと(・・・・・・・・・・・)って思ったろ?」

「・・・・・・っ――」

 八幡のそれは答え合わせ。

(そういう事。『避ける』じゃなくて『防御』と考えちゃった私の負けってことね)

「ま、避けることまで視野に入れてたなら(・・・・・・・・・・・・・・・・)別の手をうつしかなかったよ」

「・・・・・・、」

 見えない部分の戦闘。それこそが二人の真価だった。八幡は自身のサイドエフェクト『思考投影』によって、常にその時必要な小南の情報を取得し続けた。

 背後からの攻撃を避けたのは彼女の視覚情報を共有(・・・・・・・)したからであり、小南に攻撃するタイミングなどは、小南の一部思考を奪取したから容易に当てたのである。

 どこまで警戒していて、どこからが予想外か。どこに攻撃したらいいか、どこから攻撃するべきか。――それを踏まえての戦闘。

 もちろん。ここまでの力に昇華させたのは空と白の指導によるものだが――とりあえず地獄だったといっておこう。

 

「どう? 今回の結果は満足できたかなこなみ」

 ニコニコ、と言う表情が似合うえみを浮かべながら、宇佐美は小南に駆け寄った。

「満足できるわけないじゃない!! 今日もまた全敗なのよ・・・・・・。もう泣きたいぐらいよ」

 顔を伏せる小南を見て、

「えっ、ま――。泣くのはなしだろッ・・・・・・。いや、あーその・・・・・・ま、また今度相手してやるから、な?」

 八幡はそんなことを口走ってしまった。

 

 それを確認した小南は。――ふッ、と。笑みを浮かべ。

「言質はとったわよ。聞いたよね宇佐美?」

「聞いたよ聞いた。約束は守らないとねーハッチー」

 どうやら騙されたようだった。

 いつも騙される体質の小南が、八幡をだますという何やら珍しい状況に、八幡も素直に感心し怒るに怒れなかった。

 あきれるように顔を歪める八幡達へ。

 

「あのー」

 ――と、そこで今まで空気と化していた少女が呟いた。

 

「あッ、ご、ごめんねはるちゃん! す、すっかり忘れてたよー」

 ソファーの端にちょこんと座る少女二人に、それ以外の全員が目を向ける。

「あれ? 遥に歌歩じゃない。どうしたのこんなところに、初めてじゃない二人がここに来るなんて?」

「お、お邪魔してるね桐絵ちゃん」

「小南ちゃんお邪魔してます」

 どうやら、女子グループの方は全員知り合いらしい。

 『ボーダー』には、連携している学校がいくつかある。それは『ボーダー』の活動が、学業に大きな影響を与えるだろうとの懸念から来たものであり。そのため、『ボーダー』に所属している学生が、同じ学校に通っているというのも実は珍しくない。

 学校と言う名の基準にするつながりがあるのであれば、そこからつながりができるのは自然であり――。

 

 結論を言うと『ボーダー』は基本仲良しである。

 

 まあそんな中、ぼっちたる八幡が存在を消されるように省かれるのは自然現象と言っても過言でなく。ステルスヒッキーを自動発動させてしまうのも仕方ないといえた。

(よし、レイジさんたちとやるつもりだったけど、もういいや。小南と十分やったし今日はもう帰ろう) 

 と言った風な思考は、八幡の中で僅かコンマの出来事である。 

 ――よし、と。背中を向けると同時。宇佐美のそんな言葉を八幡は聞き。

 

「この二人はハッチーのお客さんなんだってー。ちゃんとあいさつしないとだめよ」

「お前は俺の母ちゃんか」

 

 まさかの女子グループ会話第一声がそれだった。

 

 

 数分後。

「そ、それで、えーっと?」

 落ち着いた5人は、適当にソファーへ腰を下ろすと。八幡のあたふたした声でそれは始る。

 

「あ、初めまして。私はA級8位部隊のオペレーター綾辻遥です。で、こっちが――」

「A級3位『風間隊』のオペレーター三上歌歩です。突然押しかけてすみません」

「えーと、俺はひ、比企谷八幡でしゅ・・・・・・」

 

 おーっと死にたい。八幡は素直にこう思った。

 

 もしかしたら今ここで死ぬために生まれてきたのかもしれないと。そう考えるぐらいに、今の八幡は恥ずかしさの渦にいた。

「ふ、フフフッ・・・・・」

 それでも何とか命をつなげようと思えたのは、隣でプルプルと震えながら笑う小南を、いつか絶望の淵へ落としてやろうという決意からである。 

 

「(おい、笑ってんじゃねーよ。騙され王女)」

「(だ、だって・・・・・・ふふッ。あんたあたしの時も同じように噛んでた・・・・・ふふ、あはは)」

 

 ――そう言えばそうだった、と。恥ずかしさを2段重ねにされながらも、何とか八幡は話の軌道修正を図る。

 

「そ、それで。俺に何か用があったのか? 悪いが俺はお前らの事知らないんだが。・・・・・・どこかで面識とかあったか?」

「ううん。面識は今日初めてであってるよ。えーと、比企谷君でいいかな? 同い年だから大丈夫だよね。・・・・・そもそも、君を知ったのも今日なんだけど――」

「・・・・・・はぁ?」

 八幡にはいささか理解不能だった。今日知った相手に会いに来たと・・・・・・・。――うん。なぞだ、と素直に思った。

 しかしそれは仕方がない。なぜなら綾辻も自分で言っていて意味不明だったからだ。変人たる八幡がこの場にいるから今回は良かったが、もしいなかったら変人オーラは綾辻の独占状態であった。

 今日知った人を探しに来た! など、頭のおかしいストーカーと同じである。

「え、えっとね・・・・・・ッ。その、えーと、んー・・・・・・。――歌歩ちゃんパスッ!」

「えー!? わ、私!? えーと、そのですね。私たちは比企谷さんの来週の試験を聞いて、少しお話が聞きたいな、と」

 ――来週? と八幡は少し首を掲げるが。すぐに何か思い立ったように。

 

「あー、えっと三上だったか? 確か今は風間さんのチームのオペレーターやってるんだったな。でも聞きたいことってなんだ? 特に話すことはなかったと思うが・・・・・・」

「な、なるほど。た、確かにそうですね。今のはなしで・・・・・・ちょっと待ってください」

 どうやら変人が3人に増えたようだ。

 

 そこで見かねた宇佐美が二人に助け船を出す。

 

「多分二人はハッチーの噂を聞いて探してたんだと思うよ? ほら、今『ボーダー』はハッチーの噂で持ち切りだから」

「はっ、え? 噂? 何それ俺初耳なんだけど・・・・・・」

「そ、そうなんです! じょ、女子って噂がすきなんです!」

「・・・・・・。そして宇佐美、お前の予想は外れてるっぽいが・・・・・・」

 目が泳ぎながら言う三上のそれに、八幡は『思考投影』するまでもなくでっち上げだと判断した。まぁ、そもそもこんな事でサイドエフェクトなど使わないが・・・・・・。セクハラスペシャリストの迅とは違うのである。

 人の脳を見るといっても過言でないそれを、八幡は必要以上に行使しない。

 

 すると――ぽつり、と。

 突然と言い換えてもいいかもしれない。

「オペレーターについて聞きに来たの」

 静かに、綾辻と言う少女は口にした。

 

「オペレーター? それは俺のチームの話か・・・・・・?」

「うん。風間さんに聞いたんだけど、オペレーターがいるのといないのとじゃ、実力が全然違うって。だったら私たちにもまだオペレーターとして何かできるかもって知りたくなって・・・・・・」

 その言葉に。――なるほどな。と八幡は頷き。

 

「それなら無理だ。あきらめろ」

 

 バッサリと否定した。

 

 少しも考える素振りもなく、何のためらいもなくそう言った。

 二人の感情の変化を言葉にするなら――ポカンからイライラへの移行が正しいだろう。 

 自身のオペレーターとしての成長を否定されたように感じたのだ。二人には、到底納得のいく答えとは言えないだろう。

「な、なんでですか? あたしたちじゃ能力不足だってことですか」

「・・・・・・そうだな。その通りだ」

「・・・・・・ッ!」

 八幡は迷わず切り捨てる。

 

「ちょ、ちょっとハッチー?」

 宇佐美はいつもとは少し様子が違う八幡に心配そうな声をだすも、八幡の手に言葉をひっこめる。

 

 宇佐美が比企谷と言う男を語るなら、『言葉が足りないのが玉に瑕の優しい少年』と評するだろう。

 誰かのために動いているのに、理由をつけず。自分は得をしないのに、不満を語らない。

 しかし、それはある程度の付き合いがあって初めて理解できる。今回で言えば、宇佐美と八幡の付き合いは意外と長い。『ボーダー』に入ってから、と言うのは当然だが、風間隊に勧誘された後、自身のチームを作る時にオペレーターの重要性を教えてくれたのが彼女である。たまたま玉狛へ彼女が移転したこともあってか、時間で言えばトップクラスに付き合いが長かった。

 であるなら、宇佐美が八幡の意図をくみ取るのは容易であり、必然と言える。

 

「比企谷君。私たちは一応A級部隊を任されるぐらいにはできるつもりだよ。それでも実力は足りないかな。今は足りなくても、今後も可能性がないかな」

 三上の代わりに綾辻が問う。

 綾辻にとっても、今の八幡の対応はあんまりだったのだろう。

 

 はぁー、と。ムッとした顔を向ける三上と、真っ直ぐ見つめる綾辻を見て、八幡は軽くため息を吐いた。

(わざわざ説明するのも嫌なんだが・・・・・・)

 めんどくさいというのではなく、知らなくてもいい事だからだ。しかし、それ言わないと二人は納得しないだろう。

 仕方ない。と八幡は判断し。

「一つ聞いてもいいか」

「・・・・・・?」

 

「お前ら、チェスで十の百二十乗の手番をすべて読み切れるか?」

 

 まず初めにそれを聞いた。

 もちろん。二人は何を言っているのか分からなかっただろう。

「ならそうだな・・・・・・。俺とジャンケンをして絶対に負けないと誓えるか?」

「・・・・・・、」

 黙るしかない。だってそんなことを言われてもできるわけがないのだから。

 しかしその問いになんの意味があるのか、二人には判断付かなかった。

 

「――まぁ、できないよな。つまりはそういう事だ。今言ったことをあいつらはできてお前らにはできない。できるできないじゃなくて立ってるステージが違うんだ」

「つ、つまりどういう事ですか」

 言っていることは理解できる。だが言いたいことがわからない。

 そんな三上の問いに、

 

「あいつらの事を俺は天才だと思ってる」

 八幡は一言そう答えた。

 

「それは私たちは天才じゃないから無理ってことですか・・・・・・」

「違うな、そうじゃない」

 八幡はどう言えばいいか少しだけ考え――。二人の兄妹について語った。

「あいつらは異常だ。それはもう目を背けたくなるほどにな。例えるなら、社会の渦から自然とつまみ出されるような異物ってとこか? ・・・・・・少し一緒にいれば分かる。あそこへはたどり着けない」

 二人は、黙って八幡の話を聞いていた。

「あそこへ行くってことは、常識から外れた道を行くってことだ。周りからは自然と妬まれ。気持ち悪いと蔑まれる。何もしなくても疎まれ。排除しようと否定される。――そんな人生を、お前らは選べるか?」

「・・・・・・ッ」

「言っとくがこれは例えじゃない。あいつらは実際にそれを経験してきたんだ」 

 その一言に、二人は密かに青ざめた。

 

「無理だとか、できないとかじゃない。するべきじゃない(・・・・・・・・)んだよ」

 

 八幡は疲れたのか、適当に姿勢を変えると。

「俺はあいつらがいないとヘッポコだ」

「ちょっと待ちなさいよ。それじゃ私までヘッポコて言われてるみたいじゃない」

「・・・・・・。宇佐美」

「あいあいさー。はい、こなみちょっとこっちに来ようねー」

 宇佐美に引きずられながら部屋を後にする小南を見送り。

 

「お前らがなんでどうやって、俺のチームのオペレーターを知ったかはわからん。まあ、話を聞く限り風間さんだろう。人から聞いただけなら、お前らのように自分にできることをしようと考えるのは当然だ。・・・・・けど、それを言った人が言ってなかったか? 『お前らはよくやってくれてる』って感じのことを」

 その言葉に、二人はバッと顔を上げる。

 確かに風間から聞いた時、彼は最後に同じようなことを言った。

 ――でもなんで・・・・・・。

「そりゃ分かるだろ。俺を見つけにここまで来たんだからな。それだけで俺なんかの何倍もすごいわ」

 簡単だとでもいうように、素直な気持ちを八幡は口にした。

「たぶん。風間さんは気づいてたと思うぜ。俺のチームにいるあいつらのやってること。それはもうオペレーターの仕事じゃないってさ。それ以上は違うだろって――」

 それを最後に、八幡は口を閉じた。

 そして。

 

「――な、なら。・・・・・・どうあるべきなのかな、私たちは」

 ほんの少し、疑問に思ってしまった。

 抽象的で、意味不明だった。よくわからなくて不快だった。でも、なんとなくは理解はできた。

 だから、すこしだけ迷ってしまった。

 聞く必要はなかったのかもしれない。それでも。

 舞い上がってたのは確かだった。

 『比企谷隊』の話を聞いて、まだできることがあると思って、うれしくなっていたのかもしれなかった。

 だから、ほんの少し見失いかけていた。けど、それはとても簡単な事なのだろ。なぜなら――。

 

「そのままでいいんじゃね? だって、お前らは十分すぎるほどによくやってるだろ。・・・・・・気にするなよ。比べた相手が化け物だっただけだ。それでもし、チームが弱くなるようなら、それは隊員の根性が足りないんだろうよ」

 八幡の口から『根性』なんて言葉が出たと知れば、話のタネであるあの兄妹は小一時間くらい笑い転げることだろう。 

 八幡ですら、今の自身の発言はないわー、と思っていたりした。

 

 何でもないような八幡のその言葉に。

 二人は同時に立ち上がり。

「「ありがとうございました」」

 お礼の言葉を八幡に告げた。

 

「――は? えっなんで?」

 困惑する八幡に、二人は軽い笑みを浮かべると、

「だって、なんか嬉しかったから・・・・・。お礼はちゃんと言いたいなって」

「はい。でも次の試験。絶対『風間隊』あなたを倒して見せます!」

 どうやら吹っ切れたようだった。

 八幡からしたら適当なことを言って適当に終わらせた程度に認識でしかない。支離滅裂も甚だしかった。

(まっ二人が納得できたなら問題なしか・・・・・・?)

 

 だから。――そうか、と一言呟いて。

 

「まああれだ。どうしても何かしたいって思うなら、来週の試験よく見とけ。俺たちは『もう勝ってる』。――勉強するなら最適だろう。少しぐらいなら近づけるだろうしな・・・・・・」

 

 ポリポリと。頬を書く八幡を見て。

 

「ふふ。比企谷さんって、少し痛いとこありますよねっ」

「ねー」

 と、二人は再びそれでもさっきより大きい笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・ほっとけ」

 

 そんな二人に対して、八幡は一言だけそう言った。

 

 




『副音声』

そら「さーて副音声開始なんだが、おそらく今日のメインはわかってると思う」
八幡「他の作品出したら説明しなきゃな」
しろ「・・・・・・『不可視の弾丸』(インヴィジレ)、と――『銃弾撃ち』(ビリアード)・・・・・・」
八幡「作中ではお前らが考えたことになっているが、実際は『緋弾のアリア』から持ってきた技だしな」
そら「それだけじゃないぜ。ハチが使った『逆カウンター』も『めだかボックス』から持ってきた技だしな」
しろ「・・・・・・ぶっちゃけ、認知度――なぞ・・・・・・」
そら「だから俺らがここで語るんだよ」
八幡「技名はなかったが、おれの『思考投影』でした”視覚共有”も『めだかボックス』から持ってきた『欲視力』(パラサイトシーイング)だろ・・・・」
そら「この世界の設定だと意外と他の作品取り入れやすいってことか?」
しろ「でも・・・・・・あんまりやると――読んでる人・・・・・・わからなく、なる」
八幡「今説明したいくつかの技はあれだな、若気の至りだな・・・・・・」
そら「そ、そうだな。当時完成させたときは危機として技名言ってたもんな」
八幡「・・・・・・今では恥ずかしすぎて言えん。てか消し去りたい、真っ白に・・・・・・」
しろ「・・・・・・しろ、だけに――白歴、史?」
八・空「・・・・・・、」
しろ「・・・・・・い、今のな、し」
八幡「――エッ、えーと俺らは何も聞いてないぞ!?」
そら「そそそそそうだな!! 白の可愛い発言なんて何一つ聞いてない!」
しろ「・・・・・・むー」
八幡「そ、それよりもあ、あれだッ。なんか次話からS級試験に入るっぽいぞ?」
そら「とうとう俺らの出番だぞ白!!」
しろ「・・・・・・うん・・・・・・」
八幡「風間さんが言うにはチート技使う今の俺よりレベルが高いらしいからな。自分じゃよくわからん」
そら「まッハチは基本的自分を下評価するからな」
八幡「ちげーよ。ほんとにわからねーもんだぞ。自分の実力なんて・・・・・・」
しろ「――なら、つぎも・・・・・・読むべし」
八幡「てことで副音声終了だ・・・・・・」
そら「またな」
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