やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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 はーい七話デース。

 とうとうここまで来ました。S級試験開始です!!
 ここで皆さんの勘違いを一つ訂正させていただきます。
 本作の主人公は比企谷八幡ではありませんッ

 比企谷八幡と『 』(空白)のダブル主人公です!!

 それがこれから数話で理解いただけると思います。楽しんでいただければ幸いです。
 
 それではどうぞ!!


七話>>『・・・・・・かかって、来るの・・・・・・』

 

 

 

 会場にはすでに何人もの『ボーダー』隊員が集まっていた。

 それは、待ちに待ったと言っていい日である。

 『比企谷隊』によるS級継続試験。

 それを見ようと、たまたま本部にいたA級、B級隊員はもちろんの事。非番のはずの隊員から、玉狛支部の小南や烏丸、そしてレイジまで。

 恐らく、A級のチームランク戦ですら、ここまでの人は集まらないのではないだろうか。

 この中で八幡を知っている人物となればかなり少数だろう。

 そもそも八幡には師匠などいなく。本部での対戦行為もC級時のみ。

 A級隊員ですら、古くから『ボーダー』にいないと比企谷などと言う名前も聞いたことすらないだろう。

 そんな期待の一戦まで開始十分。

 『ボーダー』屈指の花であるオペレーター。綾辻遥が口を開く。

 

「『さて、本日のS級試験実況を務めさせていただきます。A級8位、嵐山隊の綾辻です。本日はよろしくお願いします』」

 周りの声がだんだんと静かになる中で。

「『本日は解説として、「ぼんち揚げ食う?」でおなじみのS級である迅さんと、過去A級部隊を率いた実績のある、東さんにお越しいただきました』」

 その言葉に、紹介された二人は――どうぞよろしく、と声を上げる。

「『ところで解説のお二人は『比企谷隊』をご存知でしたか? 実は私もつい一週間ほど前に知ったのですが。どうやら周りの認知度がかなり低い部隊と思われるのですが・・・・・・』」

 何気ない質問。

 だからだろうか・・・・・・。

「『もちろん知ってるぞ。なぜなら最初に『比企谷隊』のS級試験を担当したのは俺だからな。本当は俺が今回もやりたかったよ。あの時は見事に負かされたからなー』」

 気軽に・・・・・・されど確実に放たれたその言葉で、場内が沈黙に変わり。

 次の瞬間。爆発的なものへと変わった。

 

「お、オイ。マジかよ・・・・・S級に勝ったって本当だったんだ」

 やら、

「あの迅さんが負けたなんて・・・・・・、本当なんですか嵐山先輩」

「本当だぞ。当時の迅ときたら結構落ち込んでてな」

 とか、

「どうしたの、米やん先輩。なんかすっげー戦ってみたそうな顔してるけど?」

「それはお前もだろうが緑川」

 等々。

 各個に驚きの声を上げている。

 

「『み、皆さんお静かに!! えーと、続いて東さんの方はいかがでしょう』」

「『あー俺も知ってたぞ。あいつはS級ってこともあってよく『ボーダー』の会議にも参加してたからな。その時に知ったんだ』」

「『なるほど。ではお二人方はどちらも面識があるということですね。恐らく知らない隊員も多いと思うのですが、ご存知のお二人が解説を担当していただけると助かりますね』」

 ほっ、と息を吐く綾辻の言葉に。二人は少しキョトンした後、面白いというように笑い声を上げる。

「『ははは、違うよ綾辻。俺らはたまたま選ばれたんじゃなくて、お前らがやれってお願いされたんだよ。ね、東さん?』」

「『そうだな。理由を聞いた時は流石に笑ったな』」

「『え? えーと・・・・・・。ではお二人が選ばれたのには理由があると・・・・・・?』」

 困惑の声を上げる綾辻に向かって。

 迅は簡潔に告げた。

 

「『なに、俺の未来視のサイドエフェクトと、東さんの戦略術がないと、誰も解説がままならないだけだよ』」

 

 その言葉に、再び会場が静まり返る。

 

「『そ、それはつまり・・・・・・』」

 周りの声を代表するように告げる綾辻の言葉に。

「『まっ見れば分かるよ。比企谷八幡は、すごい奴だってことが・・・・・・』」

 何が面白いのか――。いいや、事実面白いのだろう。

 迅のサイドエフェクトで何を見たのか・・・・・・・。

 

 不敵に笑う迅の表情が――先ほどの発言が何も大袈裟でないことを如実に告げていた。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

 そこは噂の『比企谷隊』――隊室。

「おい今の聞いてたか。・・・・・・っく――はは。『比企谷八幡はすごい奴』だってよ・・・・・・あはははッ」

「・・・・・・ハチ兄――名実ともに、ボッチになった・・・・・・」

 口に手を当てながら笑う兄妹――『 』(くうはく)は吹き出すのをこらえてプルプルと震えている。

「お前ら笑いすぎだ。別に迅さんもまだ俺がボッチとして(・・・・・・・・)すごい奴とは言ってないだろうが・・・・・・っ」

 ジロリ、と睨む八幡を見て。

 二人は、顔を俯かせながら。

 

「はは、そう怒んなってハチ。冗談だよ冗談。冷静さをなくせば勝てる勝負も勝てなくなるぜ? ・・・・・・ぶふッ――」

「・・・・・・にぃ、笑いすぎ・・・・・・。ハチ兄、可哀そう・・・・・・ぶふッ――」

 

 どうやらもう隠す気もないらしい。

 足をばたつかせながら笑う二人の姿に、八幡は握りこぶしに力を入れる。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 

「はぁー・・・・・・で、お前ら今日寝なくても言いわけ? 全力を出せなくて負けましたとか言ったら本気で殴るぞ」

 

「おまっ・・・・・・。もうすでに殴ってるだろッ――」

「・・・・・・い、痛い・・・・・・」

 頭を押さえながら、床で悶絶する二人。

 どうやらこの三人は今回の試験において、緊張と言うものは皆無らしい。

「――それで、寝なくていいかだっけ? その答えならYesだ。てかお前もわかってんだろ」

「・・・・・・しろたち、ゲームならどこまでも本、気。――でも、楽しむために、・・・・・・その度合いは、しろたちで決める――」

 八幡の心配は杞憂だった。

 油断だとか、慢心と言う言葉は二人にはない。

 そう見えても、実は相当頭を使い――相手を誘うための罠だったりするのが『 』(くうはく)だ。

 いつ見てもあきれるその姿に八幡は。

「・・・・・・さいですか」

 と、軽く呟きながらも、口元は笑っていた。

 

 

 そんな三人とは対照的に、A級部隊である『風間隊』は静かにその時を待っていた。

「風間さん。確認なんですけど、絶対単独では比企谷先輩とは戦わない。それは絶対で大丈夫ですか」

 風間隊の万能手(オールラウンダー)である歌川遼が口を開く。

 その問いに、閉じていた目をパチリと開け。

「そうだ。単独で挑めば必ず負ける。あいつとやるなら、チームで動く、それ以外はなしだ」

 臆しているわけではないのだろう。

 風間が最大限に比企谷と言う男を警戒しての言葉だった。

「でも風間さん。そこまで警戒するほどですか? 風間さんが負けたのだってかなり前じゃないですか・・・・・・。確かに訓練時からそこまで強かったのには驚きましたけど、今時それぐらい・・・・・・。緑川や木虎みたいなのものでしょう?」

 だが、それに異を唱えるように言ったのが、『風間隊』キーマンである菊地原士郎。

 サイドエフェクト『強化聴覚』を有し、音の反射のみで素材の材質。硬さや厚みに至るまで、あらゆることを解析するその聴覚機能は、キーマンたる存在を如実に語っていた。

 しかし――。

 その問いに答えたのは風間ではなく三上だった。

「菊地原君。それは違うよ。それじゃダメ」

 カチカチ、と。機器の前で最終確認をおこなっていた三上は、静かに菊地原のそれを否定する。

「三上先輩・・・・・・? なんでそんなこと言えんの? 周りも少し大袈裟すぎると思うんだけど」

 そんな疑問に答えるように。

 

「10対0。それがこの前の小南ちゃんと比企谷くんの結果。・・・・・・これがいかにありえないことか菊地原君には分かるよね?」

 

「・・・・・・、」

 それを言われると、菊地原は黙るしかない。

 別に、菊地原も八幡の事を軽視しているわけではない。ただ、そこまで警戒するべき人物なのだろうかと、素直に疑問に思っているだけだ。

 遠征部隊とは、そもそもブラックトリガーに対抗できると判断された部隊だ。それが三チームも集まって、警戒しろと言われる方が難しい。

「菊地原の気持ちもわかる。・・・・・・が、今回は初見だ。なら、作戦通りいくぞ」

 まとめるように言う風間の言葉で。

「ちぇ、風間さんが言うならしかたないですね。でも、仕留めるのはうちの隊にしてくださいよ」

 そっぽを向きながら菊地原はそう言った。

「(ふふっ。きっと菊地原君、風間さんの仇をとりたかったんですよ。怒らないでくださいね)」

 小さい声で風間に言う三上の言葉は、どうやら『強化聴覚』を持つ菊地原には聞こえていたようで。

 

「ねぇ三上先輩。少しの間黙っててくんない?」

 

 少し空気が軽くなったようだった。

 

 

 同時刻。『太刀川隊』では。

「聞きましたー? 太刀川さん。なんか迅さん負けたっぽいんですけど・・・・・・」

 A級一位部隊の射手(シューター)である出水公平。 

 ――マジかやばいなー、と言いながらも笑うその表情は、もしかしたらこれからの戦いを楽しみにしているのかもしれない。

 そして、話しかけられたその男。『太刀川隊』のリーダーであり、攻撃手(アタッカー)で一位の肩書を持っているそいつは。

「・・・・・・」

 無言でありながらも、その笑みを絶やさなかった。

(まったく、戦闘狂な上に強いんだから質が悪い)

 そんな出水の心の声を読んだのか。

「・・・・・・楽しみだな――」

 と、静かな声でそう言った。

 そのまま。

「――あー楽しみだ! 早く時間こいこいっ!!」

 と、おもちゃを待ちきれない太刀川の声は、その場にいる出水にしか聞かれることがなく。

 

 その出水も、――確かに、と言いう言葉をつぶやいた。

 

 

 そして、A級二位部隊であるその場所は。

 静かも静か。狙撃手(スナイパー)ナンバーワンの男と、『ボーダー』でも数少ない、トラッパーと言う立場にいるその二人は、見事なまでの御昼寝タイムを満喫していた。

 

「おーい」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 

「起きてくださーい」

 

 ・・・・・・。

 

「起きろって言ってんだろゴラーッ!!!」

「「――ッ!!」」

 『冬島隊』オペレーター少女の声に、男二人はビクッ、と言うように起き上がる。

「ま、真木ちゃん? どうしたの急、に・・・・・・?」

 目を吊り上げて怒ってますよアピールするその女子高校生に、隊長であるおじさん冬島は、ビクビクと言った風に疑問を返す。

「もうすぐ始まるって言ってるんですよ。いつまでもぐうたらしないでくださいっ」

 『冬島隊』の花であるその少女は、怒っていても、どことなくその可愛らしさを漂わせていた。

「あーれ? もうそんな時間か・・・・・・。さてと、俺も準備しますかね。隊長もちゃっちゃと準備してくださいよ」

 眼をこすりながら言うその当真勇の姿に。

「なに他人事みたいに言ってるんですか当真先輩。あなたもここで正座に決まってるじゃないですか」

「・・・・・・え?」

 どうやらすでに冬島隊長殿は彼女の前で正座をしているらしく。――お前も早くしろ、と目くばせすらしていた。

 もともとエンジニアとして入隊した冬島を、戦闘員として引き抜いたのがオペレーターである彼女なだけに、どうやら頭が上がらないようだ。

 しかし、彼も思うところがあるようで――。

 

「あのー真木ちゃん。ほら、そろそろ時間だから準備しないと・・・・・・」

「そうだぜ。こんなことで速攻退場なんてしたら笑いもんだ」

 

 つなげるように言った当真の言葉を聞き。

 その少女は――。

「確かにそうですね。・・・・・・なら、うちの隊がその比企谷って人を仕留められなかったときは・・・・・・」

「――時は?」

 そして、ドサッと。

 数百枚はくだらないと思われる書類の束を目の前に見せ。

 

「これ、遠征時の報告書類。おふた方に全部任せますんで、よろしくお願いします」

「――!!!」

 

 それからの二人の動きは早かった。

 まさに目もくらむ速さで準備を整えた男二人は、お互いに顔を見合わせ。

「当真」

「ああ、わかってる」

 いつもの数倍のやる気を見せるのだった。

 

 

 そして、各隊の思惑を乗せながら会場の綾辻の声で、それはとうとう――。

「『それでは各隊準備が整ったとの報告がありましたので、S級試験開始したいと思います!』」

 

 ――ある隊は、来たかと言うように静かに立ち上がり。

 ――ある隊は、待ちきれないというように心躍らせ。

 ――ある隊は、負けられないとやる気に満ちて。

 

 そして――ある隊は・・・・・・。

 

「そいじゃ、やりますか」

 いつも通りに八幡は呟き。

「さぁ――――ゲームを始めようぜ」

「・・・・・・かかって、来るの・・・・・・」

 その兄弟は互いの手を結んで。

 

「『試合開始。転送!!』」

 

 その戦いの始まりは告げられた。

 

 

   ▲▽▲▽▲▽

 

 

 そこはおなじみの市街地。

 と言っても、所詮はトリオンで再現されたものであり、何も特別に変わったことはない。

 今回は試験とは言え3チームを相手にすることから、場所や天候は平等にランダム。

 結果。場所以外適当なためか昼。気候や風も安定し、どの隊にも自身の全力をぶつけるには最適と言える環境だった。

 そして、そこに転送された八人の隊員は各々に、しかし確実に動き出した。

 

『おーい、ハチ聞こえるか。割り出したぞ、とりあえず一人(・・・・・・・)だ、行け――』

「ん、了解」

 そんなやり取りをしながら、比企谷八幡も動き出す。

 

 時と場合で毎回セットするトリガーが違う八幡は、今回使用するそのひとつを起動させる。

(《バッグワーム》起動確認。さて、行きますか・・・・・・)

 

 会場からは、綾辻の解説により、『冬島隊』の二人、そして『風間隊』も《バッグワーム》を起動させたと告げられた。

 八幡のレーダーにも、映っている隊員は二人しかいない。

 今回はチームランク戦のように混戦状態になる可能性がなく、相手が八幡一人と考えると、狙撃手(スナイパー)である当真と、トラッパーである冬島以外はつける必要がないように思えた。

 事実、会場にいる多くの隊員からは疑問の声が上がり、各隊の思惑を読み切れていない。

 

 もしそれを言葉で語ろうとすれば。

 今回で言えば、風間隊はチームで動くことを想定し、奇襲を作戦としているため。

 冬島隊は言わずもがな。

 太刀川隊は、単純にそれぞれが単体で十分強いため、すぐには殺されないという判断だ。 

 

 しかし、八幡もそれを使用するという。各隊は予想外の事に、集合を目的とする『風間隊』と、すでに動いている『冬島隊』とは違い、太刀川隊は完全に足が止まっていた。

 そして、もし各隊が八幡のそれを疑問に思ったならば、とりあえず作戦通り(・・・・・・・・・)を遂行するのではなく、その意図を読み警戒をするべきだった。

 

 A級のトップクラス。遠征部隊。言うまでもなく彼らは強い。

 だからこそ仕方なかった。油断していたわけではないだろう。警戒はしていたし緊張もしていた。

 攻撃を受ければすぐに対応するぐらい余裕ではあった。

 八幡が狙撃手(スナイパー)のトリガーを入れていることを想定し、オペレーターに真っ先に狙撃ポイントを洗い出させた。

 射線が通らないように動いていた。移動一つとっても完璧。

 

 そんな、見えない部分の彼らの対策。作戦をあざ笑うように――。

 

『3』

『2』

 それは八幡の頭に響くカウントダウン。

 白の声で流れるそれを聞きながら。

『1』

 どこにでもある家の屋根。その場所へ身をひそめながら《イーグレット》であるそれを構え。

『0』

 それと同時。見えたのは一瞬。家と家の間。そこを横切る人影を見て。否、正確には見える前にそれは行われた。

 静かに引かれた引き金とほぼ同時。

 

『トリオン供給機関破損。ベイルアウト』

 

 狙われたのはたまたまだった。

 あと二人程度(・・・・・・)は狙えてはいた。ただ、その中で彼が一番めんどくさいと判断されたため。

 ある意味、八幡と『 』(くうはく)にめんどくさいと称されるのだから、むしろ褒められるべきことだったのかもしれない。

 とは言え、別段彼におかしなところはなく。

 撃たれた本人も何が起こったか分からなかっただろう。

 狙撃距離800メートル。

 秒数にして開始から僅か20秒前後。

(・・・・・・!!! なんだ、とッ!?)

 そんな僅かな時間で。冬島隊隊長、冬島慎次は脱落した。

 

 

 時に、『 』(くうはく)である二人がたたき出した記録の中で、コアゲーマーがひしめき合うFPSと言うジャンルにおいて、不動の記録を出したのは空ではなく白だ。

 悪魔的なまでの計算能力(・・・・)によって敵の動きを把握。

 そこから導き出される行動パターンと、射撃時間までおりこんだ未来予知に迫る偏差射撃に回避行動。

 見知らぬ相手(・・・・・・)のそれすら読むことができる白が、相手の情報をえられるという『ボーダー』の戦闘において。つまるところ、相手の思考を読んで見せると言う空の力を借りれる(・・・・・・・・)今の状況で、初期位置から誰がどう動くなど。

 

 ――開始20秒もかからないほど、簡単に成し遂げられる。

 

 

「なッ! 誰が脱落したんだ!? まだ開始からそんな経ってねーぞ!?」

 

 ベイルアウトの光を見ながら、出水公平は驚きの声を隠せない。

 レーダーに表示された初期位置を思い出すに、どう考えても接触するだけで三倍程度の時間は必要だろう。

(まさか狙撃? 風間さんの話だと攻撃手(アタッカー)って話だったが・・・・・・)

 その疑問に答えるようにA級一位『太刀川隊』のオペレーター。国近柚宇が出水に言った。

「(あっ出水君? やられたのは冬島さんだったよー。それと同時に比企谷君は《バッグワーム》を解除。今向かってるのは――)」

 ズサリ、と。出水の前方に人影が見えた。

 

「あ、柚子さん。その先は言わなくていいです。・・・・・・どうやら、二人目の獲物は俺らしいので」

 

 出水と冬島のやられた場所の距離は、軽く見積もっても500メートル以上の距離があった。

(ってことはやっぱり狙撃か・・・・・・)

「なぁ、お前が比企谷だろ? 俺に顔を出しに来たのは理由でもあるのか? 狙撃手(スナイパー)なんだろ、お前。もしかしてなめてんのか・・・・・・」

 出水が勘違いするのも仕方ない。

 500メートル以上の距離を一発で狙撃。しかもオペレーターである国近の報告では、狙撃の射線は一秒も通らなかったらしい。

 そんな狙撃をされれば、いくら冬島とは言え反応できないだろう。

 しかしだからこそ、出水は思った。そんな変態的な狙撃ができるものはA級クラスの狙撃手だけ。『ボーダー』にも数人しかそんなことができる者はいないだろう。

 ならば、比企谷八幡は狙撃手(スナイパー)であり、目の前に現れるのはありえないと。

 そんな出水の疑問は。

 

 『思考投影』をした八幡を用いて、空が代わりに答えた。

「『ドッチボールって知ってるか?』」

「――は?」

 相手が勘違い(・・・)でイラついている。ならば――。

「『その必勝法ってさ、弱い奴から倒すらしいぜ。ほら、そうすると外野から戻って来れないからな』」

 挑発するに絶好の機会。そして、それをするのに空以外の適任が三人の中にいるだろうか。

 出水には、一瞬なにを言ってるか分からなかった。

 それを感じ取ったのか、空はただ簡潔にこう告げた。

 

「『てめーが一番落としやすいって言ってんだよ。うだうだ言ってねーでかかって来い』」

 

 もちろん『思考投影』によって言いたいことを考えているのは空ではあるが、実際に口に出してるのは八幡なわけで・・・・・・。

(おいちょっと待て――言いたいことだけ言って逃げてんじゃねーよ引きこもり野郎っ!)

 そして、そんな八幡の言葉(・・・・・)にキレないでいられるほど大人ではない出水は。

 

「あー、太刀川さんが来るまで時間稼ぎしようと思ってたけどやめだ。お前はぜって俺の手でーハチの巣にする」

 

 両手に《アステロイド》のトリオンキューブを展開させながら。

 次の瞬間。

 

 八幡が放った(・・・・・・)《イーグレット》によって、冬島隊の当真(・・・・・・)がベイルアウトした。

 

「――は!? ・・・・・・ッ!!」

 『トリオン伝達脳』を貫かれた当真が驚き。

「・・・・・・うそ、だろ・・・・・・ッ!?」

 出水が驚愕の声を上げる。

 

 そんな出水にポツリと。八幡の口を借りて空が語る。

 当真のベイルアウトの光を見ながら。

 

「『・・・・・・気づいてないと思ったか?』」 

 

 相手が、空の思考に追いつけるように、間を開けてゆっくりと。

「『俺の挑発に乗ったように見せて、実は狙撃手の準備を待っていた(・・・・・・・・・・・・・・)。・・・・・・そして、お前が構えると同時に狙撃手(スナイパー)が仕留める。よくできてたと思うぜ、『 』(おれら)以外が相手ならな』」

 手に持った《イーグレット》をもてあそびながら。

「『狙撃手(スナイパー)が最も油断するタイミングってなんだか知ってるか? ・・・・・・獲物を仕留めた時だよ』」

「仕留めた時・・・・・?」

 そこで、ようやく口を開いた出水は、言っている意味が分からなかった。

 だって、――お前はまだそこにいるだろう、と。

「『当真って野郎はさ、撃つときは必ず外さない(・・・・・・・・・・・)、だろ? なら――撃った瞬間は油断だらけだ』」

「・・・・・・ッ!!」

 そう。当真勇とは外す弾は撃たないというポリシーを持っている。それはつまり、撃つ時には必ず当たるという確信(・・・・・・・・・・・・・・・)があるということ。

 それが、ただの狙撃手(スナイパー)より質の悪い油断だと、『 』(くうはく)は言ってるのだ。

 

「『今度は気をつけとけよ。撃つ時に警戒するなんて、狙撃手(スナイパー)なら基本だぜ』」

(それは敵が複数いるときの基本だろうが――ッ)

 

 疑問点は多々あった。

 そもそも、どうやって当真の位置を知ったのか。

 いつの間に《イーグレット》を装備したのだとか。

 ただ確かなのは、出水の前に現れた時、八幡は手ぶらだったということだ。

 いいや、先のすべてが八幡――否『 』(くうはく)の計算ならば、それすら当真と出水を釣る作戦だったのだろう。

 そもそも、釣ってガードしたならまだわかる。それを――逆に狙い撃ちにしたことが異常すぎるのだ。

 

「思った以上に化け物で、笑えねーな」

「悪いな・・・・・・それはうちのオペレーターに言ってくれ」

 

 どうやら、今度は八幡が話しているらしく――とは言え、そんなこと出水は知る由もないが。

 そして――。

「あー太刀川さん? 早く来ないと俺落とされそうです」 

 

 通信を隠すことすら頭から離れてたのか、久しぶりの冷や汗をかきながら、出水公平はそう言った。

 

 

 

 

 

 




『副音声』
そら「副音声開始だ・・・・・・ってそんなことより!!」
しろ「・・・・・・やっと、しろたちの――主人公補正・・・・・・追いつい、た」
八幡「なぁお前らってほんとに引きこもりなの? めっちゃ目立ちたがりじゃん」
そら「ちげーよハチ、俺らはあれだ。なんかお前に負けてるみたいでヤダ」
しろ「・・・・・・『 』に敗北は――ない、の・・・・・・」
八幡「・・・・・・さいでですか」
そら「にしても、俺ら相手に開始数十秒を最大限警戒しないなんてあり得るか?」
しろ「・・・・・・なんか、なめられてる・・・・・・?」
八幡「ばっかお前ら。開始数秒で動きを特定されて、狙撃されるなんて誰が予想できるかよ・・・・・・」
そら「そういうもんか? まッとは言え、結局のところハチの速射性と遠距離射撃。更には白の位置情報だけで狙い撃つブラインド。それありきの力技だけどな」
八幡「・・・・・・。なんか俺がすげーみたいになってるけど、本気でやばいのはお前らの方だからね?」
しろ「・・・・・・こんなの――まるばつゲームより簡、単」
そら「そ言うこと。白にとっちゃこんなの序の口ってことだ。これからだぜ『 』の真価はよ」
八幡「・・・・・・わかってるよ」
そら「話は変わるが、冬島隊のオペレーター。まだ原作に登場してなかったはずだけど?」
しろ「・・・・・・そうな、の? まだ全巻読んでないからわから、ない・・・・・・」
そら「妹よ、それは作者の情報だからな? なんか電波でも受信したか?」
しろ「・・・・・・しろ、まだ小学生――難しいこと、わからない・・・・・・」
八幡「えーとそれなら、なんか情報入ってたてよ。ほらこの手紙・・・・・・」
そら「なになに。『冬島隊オペレーター真木理佐については、性格などこちらの方で勝手に決めさせていただきました。ごめんなさい』・・・・・・作者より。――なにこれ?」
しろ「・・・・・・言い訳文・・・・・・」
八幡「まっ、しかたないんじゃねぇの? まだ登場してないんだし、情報が入ったら修正するだろ」
そら「あーそうだな。そもそも、ワートリはキャラが多すぎるのにキャラ特徴が意外と少ないもんな。オペレーター連中なんてほとんど出ないし」
しろ「・・・・・・にぃ、それ――けっこうギリギリ・・・・・・」
そら「・・・・・・そら、高校生――難しいこと、わからない・・・・・・」
しろ「・・・・・・イラッ」
八幡「あ、おい、喧嘩するなよ。えーとじゃあ今日のところはこれまで」
しろ「・・・・・・ポムンっ。――また、ね・・・・・・」
そら「白さんが殴った!! グーで殴った!!」
八幡「なんで俺までッ……!?」
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