やはり俺と『 』が《ボーダー》隊員なのは間違っている   作:必殺遊び人

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 はーい八話めでーす

 学校が始まる前になるべく出そうと思っているのですが、課題もやばくてそろそろ頻度遅れそうです。
 できればS級試験までは終わらせたいところッ

 そして誤字報告をしてくださった方遅れましたがありがとうございます!!
 頑介様 音駆態様 hisashi様 本当にありがとうございます。
 感想で教えてくださった方も本当にありがとうございます!!
 
 それではどうぞ!!


八話>>『なら・・・・・・普通に倒すか』

 

 

 

 会場では、綾辻である解説者を含めて、誰も言葉を放つことができなかった。

 モニターでは、向かい合う出水と八幡。

 A級トップクラス射手相手に、噂の『比企谷』がどう動くのか。それ故に沈黙してるのではなく(・・・・)、開始一分もしないうちに脱落した、冬島隊が破れるまでの光景に驚きを隠せないのである。

 

「『えーと、綾辻? 解説しなくていいのか?』」

 

 迅のそんな言葉で、綾辻はハッとしたように我にかえる。

「『あ、あっすみませんッ! 実況を続けます。――ベイルアウトしたのは冬島隊隊長の冬島隊員とナンバーワン狙撃手(スナイパー)の当真隊員。えーと、すみません。僅か数十秒で起きたこの出来事に説明をつけるのは私にはできないので迅さんと東さん、解説の方をお願いします』」

「『了解了解。って言っても解説することはほぼないぞ? 要は八がふたりを狙撃した。事実はこの一点だけだろ。ね、東さん』」

「『いやいや迅、みんなが知りたいのはどうやって《バックワーム》も起動させた二人の居場所を、比企谷が知ったのか。それを知りたいんだろ』」

 そんな当たり前の反論に。

 ――あーなるほど、と。迅が笑って。

 

「『それなら簡単だ。オペレーターに計算させたんだよ』」

 

 さも当然のように、それを言った。

 三人の話を静かに聞いていた隊員たちは、同様に頭をひねる。

 それを代表するように。

「『えーと迅さん? 計算させたとは・・・・・・。その、どういうことですか・・・・・・?』」

「『そうだなー。今回で言えば『風間隊』は合流を真っ先に行った。『太刀川隊』は八の元へ向かった。そして『冬島隊』は狙撃位置の確保と、トラップの準備だろ?』」

 一つ一つ、順序良く、八幡――否、『 』(くうはく)が行ったことを明確にしていく。

 

「『その上で、その人間がどう動くのか(・・・・・・・・・・・)それを計算したんだよ』」

 

「『――えッ!? そ、そんなことできるんですか』」

 綾辻の疑問と同時。周りの隊員もあり得ないと首を振るう。

 しかし――。

「『事実できてるだろ。今この状況ですら、八は周りの人間がどう動いてるか把握してるはずだ。冬島さんが狙撃されたのは移動最中。しかも射線がとおってからわずか0.3秒。家と家の間、そこを通るほんの一瞬それを行った。これは狙撃手(スナイパー)東さんの方が分かると思うよ』」

「『そうだな。A級レベルの狙撃手(スナイパー)なら、相手が動いてようがわずかな隙間だろうが狙撃可能だ。けど、それはあくまで、敵を補足していてどう動いているか見えてる状態でだ。どこにいるか分からない敵を、どう動くか分からない敵を、狙撃することは不可能だろうな』」

 東のその言葉は、迅の先ほど言ったことの肯定だった。

 つまり――。

 

 7人もの隊員の確実な動向把握。

 『比企谷隊』のオペレーターはそれを行っていると。

 

 しかしそれならば、八幡が当真の位置を補足していたことにも説明がつく。

 だが、今回の真価はそこではない。それを付け足すように。

 

「『と言っても、見るべきところはそこじゃない』」

「『えーと? それは一体・・・・・・』」

「『ほら、さっき八も言ってただろ。『狙撃手は仕留めた瞬間が一番油断する』ってさ。なら、それはこういう事だろ――。つまり、八には――そのオペレーターには、()()()()()()()()()()()まで手に取るように分かるってことだ』」

 

 ありえない。ありえないだろ。会場にいる隊員のその言葉が、沈黙となって押し寄せてくるようだった。

 

 そんな周りのそれに笑みを浮かべなから。

「『驚いてるところ悪いが、あれは誰でもできるぞ』」

 迅は、ネタバラシをするのを少し楽しそうにして。

「『出水を挑発した理由。それを考えれば自ずと答えは見えてくる。あの場面でなぜ挑発したのか。それは――』」

 

 少しためるように話す迅のセリフを奪いさり、

「『出水に攻撃する理由を与えてやったんだろ』」

 結論を東が口にした。

 

「『あの状況での出水の最適解は、逃げに徹して落とされないことだ。にもかかわらず、交戦なんて選択肢を取れば、釣りとしてスナイパーがいることがバレてしまう。だからこそ出水は攻めあぐねていた』」

 東に言葉を取られたことに対し、ムスっと言う顔をしながら、迅が言葉を重ねる。

「『それじゃあ狙撃タイミングがわからない。だから、あえて挑発することによって、出水の攻撃するタイミングを誘導した、交戦する理由を与えた。――そして、出水が攻撃するタイミングとはつまり、スナイパーの狙撃タイミングでもある』」

  

 そう、それこそが、『 』(くうはく)の作戦。

 誰でもできる。と迅は言ったが、それは流石に言いすぎだろう。

 それはあくまでも、誤差コンマ数秒のしろの計算を。コンマ0まで落とし込むための一幕なのだから。

  

「『さすがにそこまでとなると俺のサイドエフェクトでも不可能だろうな。てか、読み合いで俺負けたし』」 

 それはつまり、迅よりも先の未来を見ているということ。

 ただの計算(・・・・・)で、そこまでやってのけるという事実。それがいかに異常な事か、その場の全員が理解していた。

 

 とは言え、『迅よりも未来を見ている』というのは少しばかり違う。

 仮に『 』(くうはく)が解説するなら、それは、迅よりも先の未来を見ているのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うはずだ。

 両者は似ているようで全く違う。

 何故なら前者には限界があり、後者にはそれがない。未来を見てる人のそれとは違い、あくまで予測であり計算である『 』(くうはく)のそれには、限界値が存在しない。

 

 白の頭脳でどこまでも、空の考察でどの可能性だって、『 』(ふたり)はそれを予測する。

 

「『迅さんは――A級部隊に勝ち目があると思い、ますか・・・・・?』」

 実況者として、それは聞いてはいけなかったかもしれない。

 それでも、綾辻は思ったことを止められなかった。

 会場の多くは、()()()()()()()()()()評価していない。けれど、綾辻は知っている。比企谷八幡という男が、小南桐絵に一度も敗北したことがないという事実を。

 そんな綾辻の疑問に迅は。

 

「『それは分からない。未来は無限につながってる』」

 

 お決まりともとれるその言葉を口にした。

 

 ただ、お決まりの言葉を口にしたということが――もう答えを語っているようだと、綾辻は思った。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

 『比企谷隊』の戦い方は、完全なまでの役割分担によって、それは行われている。

 それはつまり。

 まずは――白がすべてを計算し。

 その上で――空が状況を読んで八幡へ報告。

 それを元に――八幡が動く。

 それが三人にとっての基本だった。

 

 その行為とはつまり。迅の言うところの『無限に未来はつながっている』その無限を『一本の道』へ強引に導き出す公式。

 白の悪魔的なまでの計算によって、その場をすべてを常時把握。空が相手の思考を読むことで、考えうる可能性を限定する。そして、絞り切れない部分は八幡への指示で誘導する。

 

 八幡が単体で戦う時などは、自身のサイドエフェクトを使い、最後の一つ。相手を常に誘導することのみを行っている。

 相手からしたら最初から最後まで動かされているだけ。ただ、イレギュラーや、読み違いを防ぐためにサイドエフェクトを使っているのだ。

 ただし、それでは完璧ではない。

 それを補うのが『 』(くうはく)と言う存在だ。

 99パーセントを100パーセントにする。それこそが三人での戦い。

 風間が以前言っていた、『オペレーターがつくことによって、明らかに強さの次元が違うらしい』とはこういう事だ。

 

 しかし、戦うのはあくまで八幡なわけで、いくら誘導しようともそこで負ければ意味がない。

 『思考投影』のサイドエフェクトを相手にではなく、『 』(くうはく)に使い空達の考えをリアルタイムで取得していることを考えれば、単純に八幡の戦闘力は落ちる。

 だからこそ、その落ちた部分を補うのも――。

 

 『 』(くうはく)の仕事だ。

  

 

 出水公平は、比企谷という男の化け物っぷりに頭がおかしくなりそうだった。 

 それを表す言葉として適切なのは雨。

 前方から迫る、出水の《全攻撃(フルアタック)》を、八幡が無防備にその身へと受ける。

 『ボーダー』随一と言われる出水のそれに、自らあたりに来ているとすら出水には写った。

 

 否、出水にはそうとしか見えなかった。

 

 にもかかわらず、八幡にダメージはない。

 まるで、八幡と接触する瞬間に、トリオンの弾が消失しているようなのである。

(いやいや意味わかんないだろッ!? 無敵になるトリガー? そんなトリガーがないと説明つかねーぞ・・・・・・ッ)

 

「くそッ――《バイパー》!!」

 あえて相手に見せつけるように、前方から細かく分けた《バイパー》。弾道を指定できるそれは、オートでそれを初期値にするのが基本になる。それを出水クラスともなると、無数の弾道をリアルタイムで描きだす。

 全方位。上下左右。

 さらには当たる直前に向きをかえるというおまけつきをお見舞いしてなお。

 ダダダダン、と。当たった音は響くのだ。

 しかし、当たったはず(・・・・・・)の八幡には、わずかなトリオン漏れすら存在しない。

 

 とは言え――。

「・・・・・・だろうな」

 ――それはもう学習した。

(わかってるさ。仕組みは分からないが無効化されるんだろ? なら最初から死角(・・・・・・)へ飛んで来たらどうする)

 

 そう。背後から放った追尾弾《ハウンド》は、住宅街を迂回しながら、背後から八幡を襲う。

 

 本来トリオンに反応し追うそれを、視線誘導に切り替える。出水にとっても死角(・・・・・・・・・)になる場所を通りながら向かうそれは、A級トップクラスでもなかなかお目にかかれない離れ業。

 放たれたことすら八幡には見えていない。

 完全なまでの死角――さらには知りえない攻撃。

 仮に気づいていても、《バイパー》に気をとられていればそれで当たる。

 そんな絶対を――。

 

『・・・・・・無、駄・・・・・・』

 

 その声は、『比企谷隊』のオペレーター室から放たれた言葉だった。同時に――。

 背後から迫った《ハウンド》が八幡へ当たる。しかし。

 

 ――いとも簡単に無に帰す。

 

「すげぇな。多芸すぎるだろ。・・・・・・ま、家のオペレーターの方がもっとすごいけど」

 

 何でもないように八幡は呟く。

「ま・・・・・・まじで――」

 足止めもできない。

 八幡のあしを止めることさえできない。

(このままじゃ、太刀川さんと合流する前に落とされるなこりゃ)

 そう思いながらも、出水は攻撃を止めることはなかった。

 

 

 モニターの前。

 笑みを浮かべながらいるその男の名は空。

 その空の膝に乗るように丸まっているのが白。

 

「今頃驚いてるころか・・・・・・? ま、無理もない。あいつにとっては、トリオン弾がハチにあたった瞬間に消えてるようにしか見えないからな」

 

 今は、彼の仕事ではないのか、空は楽しむようにそれを見ていた。

「フハハハハハッ!! 見たか諸君っ! これが我が妹の力!!! そして『 』(くうはく)の力だ!!」

「・・・・・・にぃ、うるさいッ・・・・・・! 集中――してる、から・・・・・・だまっ、て・・・・・・!!」

「・・・・・・はい」

 

 流石に、あれほどの量の弾丸をすべて計算するのは白にも難しいようで、極限の集中力を必要とするらしい。

 落ち込む姿を見せる空のそれには、一里たりとも同情の余地はなかった。

 そんな中。

 ――それにしても、と。空は考え。

「ハチのあれ。流石に俺たちでもできなかったからな」 

 あきれるように呟いて。

「対処は不可能だろうよ。ハチの『高速切替(ラピッド・スイッチ)』に白の計算による弾道予測。それを突破するには、亜音速程度じゃ足りないぜ?」

 

 そう言って、空は不敵に笑みを浮かべる。

 

 八幡の行っているそれは、言ってしまえば《シールド》で防いでいるだけ。

 特に新しいトリガーではなく、特別なものは何もない。

 トリオン弾が当たる瞬間。その部分だけ展開させた本当に小さい《シールド》。それを当たる瞬間に繰り返しているだけである。

 白の計算によって導きだされる弾道予測によって、八幡は絶対防御を可能にする。

 

 そもそも、《シールド》とは本来と壊れやすいものである。

 いくらトリオンがあろうと、無限に防御することはできない。

 しかし、八幡の『高速切替(ラピッド・スイッチ)』は、それを対策として考案した戦法である。

 

「『高速切替(ラピッド・スイッチ)』は要は武器の高速切り替えだ。コンマの世界で武器の入れ替えを行うハチにとっては、白のアシストがあれば《シールド》の切り替えで弾丸の全防御なんて余裕だろ」

 

 そう、言ってしまえばそれだけの事。

 先ほど当真を攻撃するときも、瞬間的に(・・・・)《イーグレット》をだし、狙撃して消しただけなのだ。

 

「いくらリアルタイムで《バイパー》の弾道を描けても、狙う場所(・・・・・・)放つタイミング(・・・・・・・)。それに弾のスピード(・・・・・・)に至るまで。さらに過去のデータまで照らし合わせてんだ。白なら予測できないわけがない」

 

 瞬間的に(・・・・)《シールド》をだし――消す。

 コンマ数秒ごとに迫ってくる――まさに雨と言っていいそれを、すべて対処してるのだから、もう言葉も出ない。

 あくまで白の予測ありきの強引な技だが。

 

 ――技の掛け合わせとか超萌える!! とほざく無敵のゲーマー様には、どうやら琴線に響いたらしい。

 

 そして、面積が狭ければ固くなるという《シールド》の特性と、複数に分けることができるという使い勝手が、射手(シューター)銃手(ガンナー)では、八幡と白の前では絶対勝てない証明式をたててしまった。

 

 

 そして、それを過去に練習相手として味わったことのある玉狛支部の連中が、迅の代わりに解説した会場では。もうどこを驚けばいいのか理解不能だった。

 

  ▲▽▲▽▲▽

 

 

 出水の攻撃の手数がだんだんと減ってくる。

 どうやら八幡にトリオン弾は無意味と判断し、太刀川の合流を優先しだしたようだ。

 その時その時の判断は流石にA級1位を思わせるものだった。個人芸だけでは、そこへ行けないということだろう。

 

『ハチ。流石に合流されると面倒だ。『風間隊』もすでに集まってる。あいつはここで落とすぞ。白と変われ』

「あいよ。しろ、頼んだぞ」

『・・・・・・まか、せて――。にぃ、も補助、よろ・・・・・・』

 その言葉に、八幡は攻撃をする時に使うすべてのリソースを、白の脳にゆだねる。

 

 視界も良好。意識もある。

 ただ、白の脳がそこにある。

 そんな違和感が八幡のかすかに残った思考を支配する。

「それじゃいくか、白」

『・・・・・・おー・・・・・・』

 

 そんな気の抜ける会話と共に、八幡は動いた。

 

 

「クソッ、太刀川さんの合流地点まであと30秒・・・・・・。間に合うか?」

 そんな出水の言葉。

 少しの安堵。それをすべて奪うように、無数のトリオン弾が出水に迫った。

(――ッ!! やっぱそう簡単にはいかないか・・・・・! 《フルガード》!!)

 

 背後に展開される《シールド》。 

 広範囲にして、おおざっぱ。しかし、出水のトリオン量を考えると、それでも十分削り切れる前に逃げ切れる。

 

 ――そう、出水は思ってしまった。

 

(なッ・・・・・・《バイパー》!?)

 《シールド》を迂回しながら飛んでくるそれに、出水は驚きを隠せない。

 なぜならこれは――。

「リアルタイムで弾道を描いてッ・・・・・・」

 そう。これは出水と同じくリアルタイムでの弾道設定。

 A級クラスの狙撃(スナイプ)に、攻撃手(アタッカー)としての情報。それに射手(シューター)としての実力も入ってきたのだ。出水が驚くのも無理はない。

 

 それを見て、出水は咄嗟に向きを変える。

 家を盾とする動き。瞬間的な判断としては合格と言えるだろう。

 

 ――まぁ、もちろん。

 

「・・・・・・悪いな。白のそれは――」

 悪魔的な八幡の声。次の瞬間。

「逃げられないんだよ・・・・・・」 

 すべての弾丸が出水を貫いた。

 

(マジかよ・・・・・・クソッたれ――ッ)

 もう笑うしかなかった。

 まるで最初から出水がどこに逃げ、どの程度のスピードで逃げるかまで計算された弾道設定。

 もちろん。それだけではベイルアウトまでもっていくことはできない。単純な火力不足だ。

 

『なら・・・・・・次、は。・・・・・・全、部――致命傷・・・・・・だよ』

 

 続いて放たれる《バイパー》。

 このままでは出水は終わる。だが、それで終わる程度ならA級一位部隊としてやっていない。

「このまま終われるかよ・・・・・・。全攻撃(フルアタック)《ハウンド》」

 静かに告げられたそれによって、出水の両手から大量のトリオン弾が放たれる。

 《シールド》では防げない。なら撃ち落とす。

 『ボーダー』でもトップクラスのトリオンを誇る出水だからこそ。もちろん、その精度は折り紙付き。いくら誘導弾とは言え動く的にはまともに当たらないそれを、僅かな調整で必中にする。

 しかし――。

 

(――ッ!!?? だめだこりゃ・・・・・・すみません太刀川さん先落ちます)

 

 八幡が放った――否、白が設定した《バイパー》の弾道は、出水が放った《ハウンド》をすべて避けるように(・・・・・・・・・)飛んできた。

 あくまでそれは比喩だ。トリオンが自ら避けるなどあるわけない。だが、白の計算によって放たれたそれは、もはやそうとしか見えないほどだった。

 もちろん、出水が避けることまで計算しつくしたそれは・・・・・・。

 

『トリオン供給機関破損。ベイルアウト』

 

 すべて弾丸が必殺の場所へと殺到した。

 

 白による弾道の計算。それはまさに、『弾が避けて通り、弾が追尾して追ってくる』かの如き錯覚を敵に与える。

 事シューティングゲームにおいて――つまり打ち合いにおいて、白という存在に勝てるものなど『ボーダー』にはいない。

 仮に(・・)相手が物理限界ギリギリの行動(・・・・・・・・・・・)ができたとしても、それが物理の計算に当てはまるのであれば。

 

 ――白はすべてを予測しつくせる。

 

 

 ベイルアウトの光を見ながら、最後のメッセージを聞いた太刀川は。

「出水がこんな早く落とされるとはな・・・・・・。はっきり言ってなめてた。けど――面白い」

 『ボーダー』で名実ともに一位の男。

 

 太刀川と八幡は出会った。

 

「・・・・・ひと足遅かったですね。もしも後数十秒早ければ間に合ってました」

「はは、もしもなんて話には興味ないんだ」

「なるほど、強そうです・・・・・・」

 その会話が、時間稼ぎでないことは空にはわかっていた。

 つまり、それが太刀川という男の素なのだろう。

 

「さて、もうすぐ風間さん達もここに来る。それまでさしでやろうぜ」

 これまでの八幡の戦闘結果は、オペレーターである国近と、出水からすでに貰っている。

 それを見てなお、さしで八幡とやろうとしているのだ。

 要するに、太刀川慶という男はそれだけ自信があるのだろう。

 事実として、太刀川は《風刃》を持つ迅が戦っても、十分渡り合える実力を持っている。

 

「・・・・・・お手柔らかにお願いします」

 八幡は静かに《スコーピオン》を構えた。

「へー、今度は攻撃手(アタッカー)ね。オールラウンダーってとこか。しかもそれのすべてが一流」

「――? 一流って・・・・・・。別におれはそんな大層なもんじゃないですよ」

 

 そう言いながら、八幡は手に持った銃型トリガーで(・・・・・・・・・・・・)《アステロイド》を放つ。

 『不可視の弾丸(インヴィジビレ)』プラス『高速切替(ラピッド・スイッチ)』。

 

 完全な不意打ち。 

 弾丸の届く距離があるとは言え、認識不可のその攻撃を――。

 

「へーそれが噂の『高速武器切り替え』か・・・・・・」

 

 太刀川の展開していた《シールド》によって阻まれた。

「まだ見せた人物少ないと思うんですけど・・・・・・」

「俺の隊のオペレーターは優秀でな。出水の証言をもとに導き出したんだよ。出水の攻撃全弾防ぐそれには驚いたが、攻撃手(アタッカー)の俺には関係ないな」

「マジか・・・・・すごいですねそのオペレーター・・・・・・」

「お前がそれを言うのかよ・・・・・・。――まッとりあえずいくぞ」

 そう言って――。

 《弧月》を構えた太刀川は。

 

「――《旋空弧月》」

 

 ただ愚直に、八幡の命を狩りに来た。

 

 そんな中。

『――にぃ、少し疲れ、た・・・・・・。・・・・・・ちょっと休んで、いい・・・・・・?』

『ああ、よくやったな白。大体手はず通り(・・・・・・・)だ。――なら、ここからは俺が時間稼ぎしてやる』

 ――ニヤリと笑う空をみて、安心するように白は目をつむる。

 そんな白へ言うように、

 

『だが、別にあれを倒してしまっても構わんのだろう?』

 

 恐らくキメ顔で、一度は言ってみたいセリフ第6位を口にする空へと、八幡は呆れ顔を見せ。

「それ死亡フラグだからやめてくれない?」

 放たれた《旋空弧月》を容易にかわしながら。見ているこっちが恥ずかしいと言うように、八幡は口にする。

 

『ああそうか。なら・・・・・・普通に倒すか(・・・・・・)

 

 再び、『 』(くうはく)の片割れはニヤリと笑った。

 

 




『副音声』

八幡「てことで副音声開始だな」
そら「いやーとうとうリアルな戦闘描写でてきたって感じか」
しろ「・・・・・・しろ、結構がんばっ――た・・・・・・」
そら「八幡と白相手じゃ銃手も射手もすべて無効化だからな」
八幡「俺の『高速切替』はともかく、白の弾道設定とかエグすぎるからな・・・・・・」
しろ「・・・・・・跳弾する弾、より――簡単・・・・・・だった」
八幡「そ、そうか・・・・・・確かにお前らが本来の世界で相手してたのって、物理限界突破してたもんな。これぐらい余裕・・・・・・なのか?」
そら「なーそんなことより――」
八幡「そんなことより!? お前らなんなの? ほんとに人間なの?」
そら「ハチが使ってた『高速切替』って名前なんの作品から持ってきたんだっけ?」
しろ「・・・・・・確か、インフィニット・ストラトス・・・・・・だったはず」
そら「あーあれか。シャルル・デュノアの技? ていうのか?」
八幡「技ていうか技術だな。『ボーダー』では基本的にポジションが別れてるからあれなだけで、やろうと思えばみんなできんじゃね?」
そら「馬鹿かお前? そもそも《スコーピオン》ですら風間隊の用に伸ばすのを想定した真ん中に穴が開いてるものや、耐久力を出すために、迅って奴が昔使ってたモデルみたいにいろいろあるんだぞ?」
八幡「・・・・・・つまり?」
しろ「・・・・・・《スコーピオン》一つ変化させるだけ、でも――すごく、難しい・・・・・・」
八幡「な、なるほど?」
そら「ある程度用途を決めとかないと変化自由な《スコーピオン》でさえ、変化するのが難しいんだ。複数の武器チェンジなんてそう簡単にできるかよ」
しろ「・・・・・・そもそも、ハチ兄・・・・・・ほぼ反射の域――チート乙・・・・・・」
八幡「ねぇ、お前らさんざん言ってるけど、俺お前らに勝ったことないからね? ブーメランだよ、わかってる?」
そら「にしても『ボーダー』の上位ランカー普通に強かったな」
しろ「・・・・・・対策も早い、し・・・・・・」
八幡「それでも関係ない見たくお前ら動き読んでたけどな」
そら「別に全部読んでるわけじゃねーけどな。絞り切れないときは誘導だ」
しろ「・・・・・・ハチ兄、の技術ありきの『 』だよ・・・・・・?」
八幡「じゃあ俺がいなかったらお前らまけんの?」
空・白「それはない」
八幡「だろうな・・・・・・。別の方法で戦うだけだろと思ったよ」
そら「わかってるならいちいち聞くなよ」
しろ「・・・・・・しろ、疲れた・・・・・・帰ってゲームす、る」
八幡「疲れたからゲームって何? そこは寝とけよ引きこもり」
そら「ってなわけでまた今度な」
八幡「そろそろ。『副音声』誰か変わってほしい・・・・・・」

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