これはあり得なかった物語

1 / 1
ふと思い立って書いてしまいました。要望があったら続きます。


東方不敗継承者が行く!ブラック・ブレット

 拳を継ぐ者

 

 

 

 

 生物がいた。毛が生えた八本の長い脚、頭部には四対の真っ赤に光る単眼。鞠の様に膨らんだ腹部と細い胴体がアンバランスさを持っている。口角から伸びた二本の牙は濡れて光っていた。さらに黄色と黒の斑模様が生理的嫌悪感を滲ませる。

 ここまで描写したならば誰だろうともこの生物が分かるだろう。蜘蛛である。だがこの蜘蛛はそんじょそこらの普通の蜘蛛ではない。ガストレアウィルスに感染した巨大蜘蛛である。

 二〇二一年に発生したこのウィルスは感染した相手のDNAを書き換え、バケモノとしてしまう。その生命力は強靭であり、バラニウムというガストレアの再生を阻害する金属でしか倒せないと云われる。

 通常の兵器では倒せないガストレア。そんなバケモノの前に一人の少年が立っていた。

 年の程は十七から十八。乱雑に切られた黒髪に、眼光鋭い黒眼。頬には一文字の傷。高校の制服を着崩して纏い、両手をだらんと下げていた。

 傍から見れば目の前のバケモノに絶望し、死を受け入れんとする者の姿だ。だが、その実は違う。

 だらりと下げていた両手を構え、腰を落とす。素手での徒手空拳で戦う者の姿だった。

 

  「ガストレア――モデルスパイダー・ステージⅠを確認。交戦を開始する!」

 

 交戦の意思を感じたのか、それとも餌を見つけたと思ったのか。巨蜘蛛はシィィと鋭い警告音を奏でる。

 次の瞬間、巨蜘蛛が動いた。低い姿勢からの飛び掛り。人間の反応速度など遥かに上回った速度で飛び出す蜘蛛。その標的は勿論少年だ。

 飛び掛る蜘蛛。そのスピードのまま蜘蛛は少年に激突し――吹き飛んだ。少年では無く蜘蛛が。

 飛び掛った蜘蛛の頭部は巨大な金属ハンマーで殴られたかのようにグシャグシャになっている。無論、それをしたのは少年だ。カウンター気味に突き出された正拳突きで頭部を粉砕したのだ。

 しかし、その粉砕された頭部はビデオの逆再生の如く治癒を開始した。それも当然。少年の手には何も付けられてはいない。本当の意味での素手である。

 少年はそこで終らない。治癒中で行動の出来ない蜘蛛に素早く接近するとその胴体を蹴り上げたのである。

 全くのノーモーションでの蹴撃。しかし、その蹴りは巨大な蜘蛛を夕日煌く空に撃ちはなったのである。その高さ、十メートルは堅い。ここまで来ると少年は本当に人間なのか疑わしいレベルである。

 

  「延珠」

 

  「任された!」

 

 静かな少年の声に、快活な少女の声が応えた。

 年の頃は十歳前後。お洒落なコートにミニスカートを履き、厚底の編み上げ靴を履いている。特徴的な緋色のツインテールは大きめの髪留めで結われていた。外見的には普通の少女となんら差異は無い。が、一つ大きな差があった。普段は黒い少女の瞳は真っ赤に輝いていた。ガストレアと同じ真っ赤な眼。

 その正体はイニシエーター。ガストレアウィルスを持つ超人的な少女であり、少年の相棒だ。

 そんな少女が少年の後ろから飛び出した。

 自身の力を使っての跳躍。そして、ガストレアへと接近すると無防備な腹部に踵落しを放った。

 緩やかに自由落下と洒落込むはずが、ジェットコースター。哀れ、蜘蛛は地面へと急速落下。アスファルトへと叩き付けられる。

 人間ならばとうにくたばっている筈の攻撃。だが、強靭な生命は死なない。再び再生をせんと活動をする。

 しかし、それは少年が許さなかった。少年はなにやら型を取ると、裂ぱくの声を発する!

 

  「流派、東方不敗――超球覇王!電影だぁぁぁんんん!!」

 

 叫び声と共に少年は身体に回転する気を纏い、蜘蛛へと突進した。『気』を纏って放つその技は、何故か本人の頭部は露出していると言う謎仕様だ。

 一発の巨大な弾丸となって突撃する少年。治癒に専念する蜘蛛には回避のすべは無く――その身に巨大な風穴を開け、絶命した。

 

 

 

 

 

  「いやぁ、助かったぜ!流石は民警だ!」

 

  「そりゃどうも。で、報酬だが」

 

  「分かってるよ。何時もの口座に振り込んどく」

 

 フレンドリーな様子で少年に話しかけるのは、警察の警部だ。多田島というこの警部と少年はわりと長い付き合いである。そんな二人は慣れた様に何時ものやり取りをしていた。

 大口を開けて笑う多田島。それに少年が苦笑を漏らしていると、不意に制服の袖が引かれた。

 首を巡らせてその犯人を確認する。果たしてその犯人は延珠であった。延珠はニコニコとしながら何かをアピールしてくる。一瞬、何を指しているのか分からなかった少年だがややもして気付いた。

 

  「良くやったぞ延珠。今日は何がいい?好きな物を食わせてやるぞ」

 

 そう言って頭を撫でる少年。撫でられている延珠は猫の様に眼を細めて堪能していたが、唐突にその手を掴むと少年を自分の方に引っ張った。

 そして、素早く首に手を回すと不意打ちに少年の唇に自分のそれを押し付けた。そして、身体をバッと翻すと顔を向けてはにかんだ。

 

  「ふふ、ありがとう蓮太郎。流石は(わらわ)のパートナーだな。格好良かったぞ」

 

 何時もの事とは言え、突然の事に硬直する少年――蓮太郎。

 だが、素早くその硬直を解き、言葉を発した。

 

  「お、おま。人前ではすんなってあれほど・・・・・・・」

 

  「なら家ならばいいのか?妾はどちらでも構わんが」

 

 蓮太郎はすでに諦めの境地に達しかかっていた。精神年齢は既に老人に近い彼だ。子どもの戯言と思ってはいるが、人前でされては不味いの一言に尽きる。

  「あのなぁ、ちーとは自重ってもんをな?おっさんも言ってやってくれよ」

 あまりに真っ直ぐな瞳に少したじろんだ蓮太郎は多田島に助けを求めた。

 

  「んあ?ああ、まぁいいじゃねぇか。誰も気にしねぇよ」

 

 すると多田島は蓮太郎の肩にポンと手を置き、言葉を続けた。

 

  「大丈夫だ。皆知ってるよ、お前は――ロリコンだってな」

 

 衝撃の一言。その言葉に蓮太郎は俯いて肩を震わせる。そして、ガバッと顔を上げると咆哮した。

 

  「だから!俺はロリコンじゃねぇぇぇッッ!!」

 

 

 

 

  崩壊した世界を押し止める者、民警。彼らは二人一組で戦う。

  開始因子(イニシエーター)加速因子(プロモーター)

  身に修めた力でガストレアと戦う――人類の最後の希望。

  そして、このお話の主人公は里見蓮太郎。相棒の藍原延珠と組んでいる。

  そのIP序列は千番。

  だが、侮る無かれ。彼の実力はそんなモノではないのだから。

  このお話は、そんな彼らが崩壊した世界を行き抜く話――。




主人公 ―――
幼い頃にGガンを見て東方不敗に憧れる。その後、流派東方不敗を極める為に修行。しかし、奥義などを習得出来ず断念。最後は、飛天御剣流を極めようとした男と相討ちになり死亡。気がついたら憑依していた。原作を知らず、修行に次ぐ修行でいつの間にかそんな感じに。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。