「さーてそれじゃぁ早速第一種目行きましょう」
大きなモニターの前に立ったミッドナイトは説明を始める。
「所謂予選よ!毎年ここで多くの生徒が
モニターをびしっと指差したミッドナイトの先には、障害物競走と大きく出ていた。
「へぇ、障害物競走か」
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周役4キロ!我が校は自由さが売り文句!うふふ...。
コースさえ守れば
何をしてもかなわないらしい。本当にいいのだろうか。けが人とかは出るのか?と思いながら、金成はミッドナイトが指差したスタート口を見る。
そこにあったのは幅が4メートルほどの外へと繋がるトンネルのようなもの。
ここに居るのは、およそ200名以上。この人数があれを一斉に通るのは無理がある。
位置取りの時点で試合は始まって居るらしい。
金成は隣にいるエイミィを引っ張って急いで入り口の最前列に出た。
「ひゃぁ!」
多分ここで最低でも半分の100名は落とされる。
なら先手必勝が必要だ。
何でもしていいらしいからな。
「さぁさぁ位置につきまくりなさい!!」
ミッドナイトの合図にそれぞれ準備態勢に入る。
「エイミィ!あれ使うぞ!」
「...え?!あれってまさかあれ?!」
ーーーピッ
金成は先頭で後ろを向いて不敵に笑う。
「あぁ、あれだ。準備しとけよ!」
「えーー!ボ、ボスいきなりそれはやばいんじゃないの?!」
エイミィがそれだけで金成のやろうとしていることを察することができたが、察した内容は最悪だ。最悪自分にまで被害が及ぶ。
エイミィは慌てて押さえようとするが金成のニヒルな表情から無駄と判断すると、即座に慌てて心を強く持ろうと歯をくいしばる。
ーーーピッ
「アイツなんで後ろ向いてるんだ?」
「さ、さぁ」
金成達以外も少しでも前に出ようと大勢の生徒がスタート地点へ集まっており、それぞれが合図を待っている。
そんな中、一番前を陣取っていた生徒が突然後ろを振り向き、隣の女性が慌てて彼から離れようとしている。
これだけでも怪しさマックスであるため、不審げに周りの生徒が言葉を漏らす。
ーーーピッ
「この試合は妨害が自由なんだよなぁ?悪く思うなよ」
金成はせめてもの慈悲なのか宣戦布告とも取れるセリフを周りに聞こえるように漏らす。
彼の体からは、沸騰したヤカンの様に異様な蒸気が浮き上がってくる。
次第に彼の周りの空間が熱によるためか景色が揺れる。
「や、やばい!!アイツ開始早々なんかやるつもりだ!!」
「くっそ!離れろお!」
彼らは、それで漸く金成が何かすることに気がついたらしく慌てて下がろうとしている。しかし時すでに遅し。
彼の異常事態に気がついたものは最前線にいたものだけであり、慌てて後ろへ逃げようにも後ろのメンバーは気がついていないため下がることはできない。
さすがと言えるのか、今更慌てだしたメンバーは普通科、経営科などの生徒が多く、一方のヒーロー科はすでに警戒のため身を構えていた。
彼らが状況に対応しようと右往左往している中、無慈悲にも戦いの火蓋は切って落とされる。
『スターーーーーーーート!!!!!』
その瞬間金成のナニカから逃げる為と、スタートダッシュのために一瞬にして何人かが飛び出したが関係ない。
金成は一瞬さえあればどうとでもなく、その一瞬で開いた距離が彼の範囲内で無いわけがない。
「くっそぉーー!間に合え!!」
何人かの生徒が必死に地面を蹴り、距離を取ろうとしているが無意味である。
「耐えられるもんなら耐えてみろよ!覇王色、覇気!」
彼のセリフの数瞬後には一瞬にして、体に蒸気が爆発する様に覇王色の覇気をホール中に広げた。
彼の周りに溜まりに溜まったエネルギー源とも言える蒸気が彼を原点に爆発が起こったかの様に一瞬で、大規模に広がりを見せた。
あまりの興奮に変なことを口走ってしまったが、もういい。
ーーーあぁ楽しいぜ!耐えてみろよ!こんくらいはよぉ!
「んぐっ!」
「な、なんだとっ...!」
彼らも雄英高校に入ったヒーローの卵の端くれである為か、ヒーロー科の生徒らは突然の威圧に意識を刈り取られない様踏ん張るが少しばかり力量不足であったらしい。
普通科、経営科、サポート科が倒れ伏した、屍の山に重なる様にして地面に伏した。
これによってすでに立っているものは少ない。金成はエイミィに影響を少なくするため弱めに発動した為か、ヒーロー科のメンバーは酔ったように地面に伏したが、完全に意識を手放していないものが何名かいるらしく、立ち上がろうと足や腕を動かしている。
普通科や、サポート科、経営科は言わずもがな、ほとんどが白眼をむいて倒れた。
流石に観客までは遠かったのでほとんど影響はなかった。
「な、なんだよこれぇぇ!!!」
「くっそ!!!」
気合いを入れる為か、ギリギリ意識を保っている者は地面に向かって現状を嘆く声をあげる。
彼らの焦った声からは若干の畏怖の念が見え隠れしている。
『お、おぉぉおおおっとぉおお!!!何が起こったっーーー!一瞬にしてほとんどの生徒が倒れたぞぉおーーー!!』
流石の出来事にプロヒーローであるプレゼントマイクも予想の斜め上を行き過ぎた為上ずった声で驚きの声を上げる。
ーーーうぉぉぉおおおおお!
この一瞬の出来事を肌で、目で見て感じた彼ら観客は悲鳴にも感じられるほどの歓声を上げる。
流石にプロヒーロー達はある程度彼が何をしたのか把握できただろうが一般人には無理な話だが、観客には関係ない。
この異常事態は体育祭では恒例であり、この異常とも言える雰囲気を楽しみにしている者達が大半である。
『まさかまさか!!!いきなりヒーロー科じゃない普通科の生徒が何かをしたぁぁ!!!いきなりの超展開ダァ!』
プレゼントマイクはこの盛り上がりを欠かせずに、より一層観客に興奮を届けるために声をあげる。
「百五十人くらいか?まぁいいか。おい!エイミィいくぞ!!」
金成は覇気を納め隣にいたエイミィに話しかけ、足に力を入れて駆け出す。
一方のエイミィの方は、流石に金成が調整し、自分が準備した為それと言った影響はなかったが若干の足のふらつきを体に残している。
金成より先に飛び出したのは5名ほどか。
驚くことに、彼の覇気を耐えたのか、運良く距離で効果を下げることに成功したのか数名が一瞬で意識を失ったがすぐに回復して走りだしていた。
勿論飛び出したのはヒーロー科である。
思った以上にヒーロー科の出来は良いらしい。
「うぅぅ、待ってよぉ〜!」
エイミィは金成を見失わない様に慌てて後に続く為に走り出す。
走っている金成達の前には、先に飛び出した生徒が何かしたのか凍った地面が広がっている。ただ凍ってるだけでなく、厚い氷が不規則にも地面を凸凹にしている為、普通であればこれ以上は走ることができず、這う這うの体で進むしかない。
「エイミィ!!」
しかし金成は足を止めることなく、即座に思考を働かせて対処法を見出す。
彼単体でもどうとでもできるが、最も効率がいいのは彼の背中を任された少女だ。
彼は氷の前まで来ると一瞬足を止めて一瞬にして彼女と場所を入れ替えた。
「うん!わかった!」
それだけで彼がなにを言いたいのか理解したエイミィはこの状況に最適な‘個性’を発動させた。
彼女の“個性‘の発動と同時に、足元から真っ赤なマグマが溢れ出し、周囲を溶かしていく。
土の地面、分厚い氷の地面問わずに、すべてのものを覆い尽くす様に真っ赤な溶岩は広がっていく。
氷などは一瞬にして水蒸気へと姿を変え、それ以上に地面は黒煙を上げながらマグマで覆い尽くされていった。
思わず足からマグマを広げていった為か、彼女の靴が燃え尽くされて靴が溶けてしまったが、諦めるしかない。
彼女の履いていたニーソックスと靴は姿を消し、彼女の綺麗な素足が姿を見せる。
普通であればこの体育祭は公平を期すため、普通の体操服で挑まなければならない。
そうでなければ各自で自分が有利な服装で身を固めることができ、金銭的余裕がある家庭が明らかに有利になってしまう為だ。
しかし以前の放送事故の教訓によるものか、個性を使えば全裸になってしまうと申告したら、彼女は服だけは耐熱に特化した特殊な物を許されていた。
以前に個性のせいで全裸になってしまった生徒がいて、それが国中に放送されてしまい一時期批判された。
それで、そういう個性の子だけは許されるようになっていたのだ。
マグマにより氷は溶かされ、とかした瞬間からエイミィがマグマを操り一人分の道を作る。
それを先導する様に彼女が走り、金成はその後に続く。
流石にマグマを操っているとはいえ地面には所々にマグマ残りがある為、金成は自分の靴がマグマで溶けない様に、足に武装色の覇気を発動し、耐熱性をあげることで対処する。
彼らはそのまま走っていくと、目の前では大きなロボット型の機械が道を封鎖していた。
高さが10メートルほどの巨大なロボットが10体ほどで道を塞いでいた。
巨大なロボットには流石に対処に悩むらしく、未だ金成の覇気をなんとか逃れた生徒達が動揺の声を漏らして佇んでいる。
ーーー追いついたか。意外と早く差が縮まったな。
金成はあれくらいのロボットであればすぐに対処して乗り越えると思っていたが、流石に驚いたのだろう。
ヒーロー科の生徒であれ一瞬足を止めた為に金成が追いつくのを許してしまった。
『っと!!驚いてるだけではない!第一関門!巨大ロボットだぁ!!さぁ君らはどう切り抜けるかぁあああ!』
エイミィの’個性‘や彼女の個性の操作技術に明らかに学生の範疇を超えているだろと内心冷や汗を流したプレゼントマイクは驚いているだけでは自分の存在意義を問われることになる為、即座に解説するためにマイクを手に声をあげる。
ーーーおいおい!でかすぎだろ!!!
ーーー雄英すげぇなぁーー!
たかが体育祭、されど雄英高校の体育祭だ。
観客は毎年恒例ながらも体育祭に莫大な資金を投資する雄英高校に興奮や驚きの声をあげる。
ーーーどうすっかなぁ。またマグマで潰すのは芸ないか?
一辺倒ではあるがエイミィのマグマでどうにかできないわけがない。
しかしながら、エンターテインメント性を楽しみにしている観客のためにそれでいいのかの金成は自問自答をする。
彼は優勝を目指しているが、それがつまらない勝利では自分も観客も不満が残る。
しかし、まだ第1種目だ。
ふはは、まだ勿体ぶってもいいだろう。
金成はそう結論づけ目の前に視線を向けるとそこでは、白と赤の両端で分かれている髪色の生徒が‘個性’を発動させていた。
「何するつもりだ?」
その白赤少年が地面に手をつくと、そこから冷気が広がって目の前の1体が凍りついた。
先ほどの氷の地面は彼の仕業らしい。
あれを考え、今のロボットを凍りつかせる規模を見るに随分と強い個性らしい。
そのまま少年は凍りついたロボットの体を器用に登り、上から越えていく。
「へぇ、やるじゃないか」
学生でこれほどの規模で発動できる’個性‘持ちがいる事に若干の驚きの声をあげる。
「ボスどうする?」
金成の前を走っていたエイミィは、ロボットの前に立ち止まると金成の指示を仰ごうとこちらを向く。
ーーー氷でロボットをぶっ壊したなら、こっちは炎だよなぁ?!
目の前で行われた光景に少しの対抗意識を感じさせ、今の光景に驚いた観客を気持ちを全て奪いたくなった金成。
「ふはは、目の前には生徒はいねぇ!エイミィ全部ぶち壊せ!!」
金成は悪役の様な高笑いをあげながら指示をすると、エイミィも力を出せることが嬉しいのか、大きく肩を唸らせながら腕まくりをする。
「じゃぁいくよぉぉ!!!!」
エイミィが腕まくりを終えると、両手が真っ赤なマグマに変化する。両手を広げ振るうと腕から明らかに体の質量以上のものの膨大な量のマグマが噴き出し、巨大ロボットの殆どに向かって飛んでいく。
腕から出たマグマが地面を縫う様に津波の様にロボットに襲いかかった。
当たった側からジュワッと音をあげて飲み込まれていく。
機械部分に触れた順から爆発していき、黒煙が立ち込めていく。
ーーー逃げろおーーーーー!マグマだぁ!!
先にきていた生徒は白赤髪の生徒に続こうと身を乗り出していたが、金成達がナニカやろうとしたことに気がつき慌てて距離をとる。
『おっとーーー!!轟少年が冷気で一体を氷づけにしたと思ったら、次はマグマで溶かされぁぁ!!何だあの少女は!!何だ、普通科は今回やばいぞおーおぉ!!!ヒーロー科がほとんど立ち止まってるじゃねぇかかあああ!!!』
白赤少年は轟って言うらしい。
「ボス!終わったよ!行こう!」
「よし、道を開けてくれ!」
エイミィはマグマでロボットを戦闘不能に追い込むと今度はマグマで道を開ける。
後続に続く奴らは空を飛べない限り、マグマが冷えるまで待つか、大きく迂回するしかない。
これでトップ五はほとんど確定だ。
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『おいおいおい!やばいんじゃねぇの普通科!全部マグマで潰すとかワイルドすぎだろぉ!!へい、ミイラマン!!』
実況席ではイレイザーヘッドホンとプレゼントマイクが実況していた。
『ミイラマンはやめろ。それにしても普通科にあんなのがいたのか...。あそこまで強力な個性で普通科落ちなんてありえないんだが』
イレイザーヘッドもこれほど強力な個性持ちたちが普通科にいることがありえないと思っていた。
あれで入試を突破できないわけがないと。
『ここで今クールな活躍を見せる生徒の情報が来たぜー!おおっと!何と普通科の専願で入ってやがるぜ!!!』
『そのためか...。ヒーロー科に興味がなかったか、他に何か理由があるのか知らないが、今回の体育祭は一筋縄ではいかないぞ』
イレイザーヘッドが納得の声を漏らす。
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金成達は森を走り抜けると、そこで見たものは断崖絶壁の崖だ。
それが数百メートルも続いている。
『じゃぁ次は第二関門だぜーー!!落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!その名もザ・フォール!!!』
所々に岩の塔が立っていて、そこをロープで繋がれている。
それで向こうの崖まで渡れと言うことらしい。
「ボスどうしよう!わたし絶対落ちちゃうよ!!」
エイミィはバランス感覚が無いため、この箇所は落ちてしまう可能性が高い。
「んー。轟ってやつは氷を利用して滑ってるか。塔までの距離は15メートルか。エイミィ!捕まれ!飛ぶぞ!!」
塔までの距離は凡そ、15メートルずつに位置されている。
金成は崖の淵にたち、エイミィを横抱きにすると、全力で飛んだ。
「ひゃあああ!!」
エイミィが涙目になっている。
「っと、どかねぁか!!!」
あと3メートル程で急速に落下していく。
金成は落ちる重力を利用して、咄嗟にロープを掴んで体を回転させてもう一度空を飛ぶ。
「っよっし!!エイミィ!このまま行くぞ!!」
「よ、酔っちゃう!」
数メートル先を探して轟が走り抜けている。
エイミィが少し辛そうだがしょうがない。これしか方法がない。
「すまんな!いくぞぉー!」
金成は先ほどと同じように動こうともう一度飛び出した。
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『抜けたーー!トップが轟少年!その背中を追うのは今回最大のイレギュラーたちの普通科の生徒だぁーーー!!これは、仲がいいのか?!互いに協力しながらクリアして行くぞーー!!もしやカップルか?!』
プレゼントマイクがある程度協力している二人を弄りつつ解説を続けて行く。
『おおおーー!なんと、スタート早々気絶していた生徒達が何名か起き上がってる!これから巻き返しはなるかぁ?!』
金成の覇気によって気絶していた生徒らが、気の強いものから順に起き上がって行く。
『アイツらに気絶させられた人数は、およそ百八十人。そしてその後に、アイツらが作り出したマグマの沼を抜けたものが六人。今回は本当にイレギュラーだが、ここで何名落とすか知らないが全然挽回の余地がある。未だ、第二関門に挑戦している人数が4名と非常に少ない』
そう、本当なら第一関門はすでに突破し、第二関門であたふたしている生徒で賑わっているはずのタイムだ。
それがあの少年によって一気に崩された。
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