第1種目を終え、フィールドの後かたづけなどの時間を終え、ついに第2種目が始まろうとしている。
「予選通過者は42名よ!残念ながら落ちちゃった人もまだ見せ場が残ってるわ!そしていよいよ次から本戦!こっから取材陣も白熱して行くわよ!気張りなさい!!」
モニターの前に立ったミッドナイトはマイクを片手に声を上げる。
ついでに癖なのか知らないが鞭を度々しならせているために、彼女の声に今までバラバラに位置取っていた生徒らは素早く整列し直した。
「じゃぁ第2種目を発表するわよ!次はこれ!!」
彼女の合図と同時に金成達は、ミッドナイトが指差したモニターを見ると、そこに映っていたのは騎馬戦であった。
ーーー騎馬戦かぁ
ーーー個人競技じゃないけどどうやるのかしら
生徒達から戸惑いの声が漏れる。
騎馬戦は基本的に三人の馬と一人の将で構成されるため個人戦とは言えない。明らかにチーム戦であり、前持って知らされなかった生徒達はどうするのだろうか。
そこはやはりヒーロー志望の彼らは出来合いのチームを作るしかない。
元々のヒーローの役目は災害救助や、ヴィラン退治であり、普通はヒーローは単独行動が多いが苦戦を強いられると即席チームを作って対応することが求められる。
その為、この騎馬戦は即席でチームメイトを集めるコミュニケーション、其々が互いをサポートしつつ戦う協調性など様々なヒーローとしての資質が問われる競技であろう。
「騎馬戦かぁ。ってことはチーム戦。エイミィ後の人数はどうする?」
その事をある程度理解した金成は確定メンバーであるエイミィの他にあと2名のメンバーを探すために思考しだす。
エイミィは明らかに攻撃特化であり、この乱戦が予想される競技では不利である可能性が高い。
それに金成の場合はあの力を第二種目くらいで使うのは憚られるため、彼の主な戦闘手段は通常通りの覇気系による戦闘だ。
これだけでもバリバリの脳筋戦士が集まっているため、あと必要なメンバーは自ずと限られてくる。
サポーターである。
「うーん。じゃぁこっちは美亜ちゃん誘うよ!」
そう考えているとエイミィと仲が良く、このヒーロー科が多く出場する第二種目の中で生き残った友人である美亜を誘うといった。
そもそもこの種目に出れるメンバーで個性を知っていて且つ、一緒に出てくれるメンバーなどほとんどいないだろう。
それならある程度仲が良いメンバーを選んだほうがいいのかもしれない。
「そうだな、じゃぁこっちは大智でも呼ぶか」
なら金成が仲がいいと言えるのは大智のみであろう。
ミッドナイトの説明によると、騎馬戦は三から四人で組み、それぞれゴールした順でポイントが違うため、全員のポイントを合わせた点数がその騎馬のポイントらしい。
四十二位が5p、次が10pと5pずつ上がって行くらしい。
「そして何と一位は....1000万ポイントよ!!!!」
彼女の勿体ぶるような溜めに、一瞬ときが止まったように感じたが、次の瞬間殆どの通過者が緑谷をギョッと見つめて声を上げる。
なんと一位は1000万ポイントらしい。
成る程、運営である雄英高校はここでもなお選択を迫っているらしい。
ーーーマジかよ?!
ーーーこれは使い所がむずいなぁ。
1000万pはそれを持っているだけで勝ち確定ではあるが、何分あるか知らないがずっと狙われ続けることになる。
1000万ポイントを所有するなら最初から最後まで狙われ続けるため、どれだけ防衛戦を上手くできるか。
そうでない場合は時間内にあの1000万ポイントを虎視眈眈と目を光らせて狙い続ける戦いになる。
どちらを選ぶにしろ、この戦いの中心となるのは一位を獲得した綠谷出久だろう。
そんな彼の個性は未知数であり、それ以前に身体の威力で不安が大きいとヒーロー科A組のメンバーは知っているため彼を選ぶのは余程の自信家か生粋のギャンブラーくらいだろう。
その為彼と組みたいと思うメンバーはほとんどいなかった。
それからチーム決めのため、20分ほど猶予が与えられた。
「よしじゃぁ、メンバー集めるぞ!」
金成達はそれぞれ決めていた美亜と、大智を探すために散った。
「お!おーい!大智こっちだ!きてくれ!」
金成はメンバーを探そうとオロオロしている大智を見つけたので声をかけた。
正直、D組で予選突破したのは、4名しかいないため、大智も初めから金成達を探していた。
「あ、金成!よかったぁ。D組は俺たちしかいないし、もし違う人と組んでたらどうしようかと思ったよ」
金成を見つけられて安堵の息を漏らすが、すぐに予選時のことについて聞いて来る。
「それより、お前あんな強かったのか。最初の奴、あれ何?一瞬で気を失うし、目がさめるとほとんどの人が同じく気絶してるし恐怖だわ!」
「いやぁ、すまんすまん。まぁよかったじゃねぇか!それよりチーム組むってことでいいんだよね?」
金成は正直話すより、作戦会議がしたかったため早めに会話を切り上げる。
「ん?勿論!逆に組んでくれなきゃ困ってたわ」
話を逸らされたことに若干の寂しさを感じながらも話に乗る。
まだ出会って間もないためおいそれと個性について詳しく聞くのは失礼なのだろうかと考えた。
「よし、じゃぁエイミィが待ってるから行こう」
金成はすぐに大智を連れて先ほどの場所へ戻った。
エイミィは金成と別れた後すぐに美亜を探す。
幸いにも直ぐに見つけられたが、美亜は誰かと話していたため積極的に話しかけられなかった。
もしかして既にメンバーを決めてるかもしれないため、この後どうしようと悩んでいると美亜が肩を下ろしてそのグループから離れたので声をかけるために向かった。
どうやら失敗したらしい。
「美亜!よかったぁ。チーム組もうよ!」
「あ、エイミィ!!よかったぁ。さっきのチームに断られるしどうしようかと思ってたよぉ〜!」
若干涙目の美亜がエイミィを見つけて泣きつく。
エイミィの大きめの胸に顔を埋めて居るため直ぐに息苦しくなったらしく顔を離した。
「お、おぉ、おぉ!うんうん。じゃぁメンバーってことでいいんだよね?よし行こう!」
エイミィは突然の出来事に若干困惑しながらも、メンバーになってくれることに安堵して泣きついている美亜に肩を貸して、先ほどいたところへ戻った。
そしてそれぞれがそのメンバーを連れてきて会議を行うことにした。
「それじゃぁ作戦会議を始めるが正直おれはエイミィ以外の個性は知らないんだ。だから個性の照らし合わせから始めよう。まずは俺からだが、出来ることがスタート時にやったみたいに威圧で相手を気絶させることだ。でもこれは結構無差別だから今回は使えない。
ほかは身体強化に、周りの状況把握能力ってとこだ」
金成は自分の個性について、誤魔化してはいるがこれしか言えないためそれを言うと、促すようにエイミィの方を見る。
別にここで本当のことを言ってもいいが、今試合では使うつもりが無いため、いう必要性を感じなかったから言わなかった。
「じゃぁ私はね、全身マグマにすることができる。だから基本的に物理攻撃は効かないかな。マグマを飛ばしたりとか。そんな感じ!ハイ次、美亜ちゃん!」
美亜は自分の番にきたため額のツノを見せるように髪を分けながら話し始める。
「私はこれを見ての通り、鬼なんだよね。だから鬼ぽいことは大体できるよ。限定的だけど雷落としたりとか、後は身体がすっごい頑丈になったり、誰かの姿に変化したりとか」
元来鬼とは諸説あるが空想上の妖怪であり、怪力や幻、神、カミナリなど伝えられた地方によって異なるが共通して言えるのが獰猛であり最強の存在として描かれている。
もし本当に鬼という概念として力を使えるのなら強力なことこの上ない。
美亜は話し終わると、ふうっと息を吐き隣の大智に次と言うことを促す。
「.....俺は、目を合わせた相手の体を5秒間だけ乗っとる能力。でもその間本体は制御できないから無防備だし、5秒じゃあんまり役に立たないけど...。てか、俺らってD組じゃん?俺って勝ち残ったのってほとんど金成が最初に出てみんな戦闘不能にしたから勝てたってのもあるんだけど、正直金成とかエイミィ、美亜ってヒーロー科でもトップ狙える個性だよね。なんで普通科なの?」
大智は時間制限のある中やはりすごくそのことが気になっていたため聞かずにはいられなかった。
若干の罪悪感がありながらも聞いた。
「んー。俺とエイミィは学力が足りなかったからうちの学校で出てた普通科の専願受けただけなんだよなぁ」
金成は頭をかきながら、恥ずかしそうに理由を言った。
「あ!私も一緒!!!どうせ筆記で落ちるなら推薦で通りそうな普通科選んだんだよねー!!」
思わぬところで気があったらしく、エイミィと、美亜はねー!と仲良く手を合わせていた。
「....。そっか。なんか色々納得したよ。ごめんな話遮って。作戦会議の続きをしよう」
思わぬ理由に自分が落ち込んでいたことに馬鹿らしくなったため、少し晴れた気持ちになる。
別に普通科にいる人が誰しもがヒーロー科落ちとは限らない。
大智も、色々これでスッキリしたので話の続きを促した。
「よし、じゃぁある程度はこれでいいか」
「うん、いい感じ!」
残り数分を残すところで作戦会議を終えた。
周りを見渡すとそれぞれが作戦会議を終えて準備運動をしている。
それ以外だと、それぞれが敵になりそうなグループを観察する様に見ていた。
一位の緑谷達も周囲の視線に晒されながらも作戦会議を終えたらしく、既にストレッチを始めている。
ーーーまぁ、こんなもんか。
金成は全体を見渡して状況を把握すると、これといった強敵の雰囲気を感じなかった為に、先ほど立てた作戦で大丈夫だろうと当たりをつけた。
完璧とは言えないものの、今の最善と言える作戦を立てることができたので結構いけると思う。
制限時間の15分が経過したため、ミッドナイトがステージの中央に立ってマイクを片手に鞭をしならせる。
「15分たったわ。それじゃあいよいよ始めるわよ」
『15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬並び立った!』
頃合いを見たプレゼントマイクが観客の意識を集める為に声をあげる。
すでに、12組のグループは騎手を決め、それを支える様に騎馬を組んでいる。
騎馬戦の決められた枠の中に収まりながら、それぞれが開始の合図を今か今かと待ち望む。
金成も両手で足を支えながら前を見据えている。
そう、今回の金成の役目は足である。
正直遠距離の戦闘能力が今は使えない状態である為、騎手になる必要がないのだ。
金成は見聞色の覇気を利用し、緑谷を騎手とするグループと、爆豪を騎手とするグループ、轟のグループ、あとは知らないが全てのグループが頭の中に、俯瞰してみる視点が浮かび上がる。
ーーー良く見えるな。緑谷って言ったか?アイツが一位になったやつか。
金成は悔しさの私情で若干多めに緑谷を観察したが始まりの合図まで、それぞれの思惑をできる限り把握して行く。
ーーー....ほう。物間に、それに同じ普通科の心操ってやつは結構作戦が繊細だな。まぁいい。
「みんな聞いてくれ。あそこにいる男、物間って言うんだが、アイツの‘個性’は触れた相手の個性を5分間使い放題使えるらしい。触られない様に気をつけろ。あと、あの髪が立ってる男、心操って奴は洗脳の‘個性’だ。自分と会話した相手を操れる。絶対喋るなよ」
金成はみんなにだけ聞こえる様に小声で情報をリークして行く。
ーーーまぁ、情報戦ってやつ?悪く思うなよ。
「...それは助かるがよくわかったな」
「本当に!ボスすごいね!!」
「来栖君ってそんなこともできたのね。...ボス?」
金成の上にいる大智が若干の呆れを見せ、後ろにいたエイミィと美亜は単純に驚いている。
「....。それはあだ名だ。気にしないでくれ」
金成はため息混じりにエイミィを睨みながら答える。
「あ、あはは」
それを受けたエイミィが横を向き口笛を吹くが吹けていない。哀れなり。
「っと、そろそろ始まる。じゃぁ大智、気張ってけよ!!ハチマキ、全部取る気で行くぞ!」
金成は最後の一押しとばかりにメンバーに気合いを入れる。
「「「おーーー!」」」
エイミィ達も気合いを入れるために声を上げた。
『よーし!組み終わったな?!準備はいいかなんてきかねぇぞ!!行くぜ!残虐バトルロワイヤルカウントダウン!!』
プレゼントマイクの掛け声に観客達もドンドンテンションを上げて行く。
それぞれが応援するグループの声が大きくなる。
『3!!!』
ーーー3!!!
心地いい緊張が金成の心に響く。
『2!!!』
ーーー2!!!
お馴染みとなりつつある、覇王色の覇気を準備させる。
体から漏れ出す蒸気が視界を遮る。
『1!!!』
ーーー1!!!
「...っ!常闇君!!二位の彼があれを出すつもりだ!!」
「またあのクソやろうか!!!舐めんじゃねぇぞ!!!」
気がついた奴らがいる様だがもう遅い。
金成の口角は自然と釣り上がる。
『START!!!!!!』
緑谷は始まりの合図とともに後ろへ後退する。
逆に、爆豪の方は金成の行為を挑発と受け取ったのか大智のハチマキを奪いかかろうと寄ってくる。
「バーカ!!大智!いけ!!」
発動すると思われた覇王色の覇気は急になりを潜めて金成は獲物を捕らえたように笑う。
「おう!!」
それを合図にに大智の体が意識を失ったかの様に崩れ落ちそうになるが、3人で支える。
そのまま、作戦通りに爆豪達へと接近する。
「おい!爆豪!アイツら来たぜ!どうするよ?!...おい爆豪!!」
爆豪の騎馬が指揮を仰ごうと爆豪に語りかけるが反応がない。
「そうだなぁ。まぁあとは頑張れや!!」
爆豪が答えたかと思ったらなんと自分のハチマキを首から外すと、目の前に迫った金成達へめがけて思いっきり投げる。
爆豪はすぐに意識を失うかの様に崩れ落ち、一方の先程まで意識がなかった大智が投げられたハチマキを上手に掴み首にかける。
『な、何が起きたーーーー?!?!始まった途端2グループがぶつかると思ったが爆豪のやつ自分のハチマキ相手のぶん投げやがったぜ?!爆発で頭がやられちまったのかーーー!!!』
他のグループもそれぞれ作戦を実行しようと動き出していたが、その解説を聞いて一瞬で金成たちへ注目した。
近くで見ていた緑谷は何かを察したらしく、騎馬へ慌てて指示を出し離れ出す。
「金成!665pゲットだぜ!!」
突然の爆豪の暴挙に一瞬会場が静まり返ったためか、イレイザーヘッドが解説を入れる。
『今のは、あいつ、夢大智の‘個性’によるものだ。あいつの個性で爆豪の体を一瞬にして乗っ取り、自分の方へハチマキを投げたんだ。やつの圏内は15メートルと聞いている。そしてこの試合会場は30x30のフィールドだ。この個性はこの種目だと圧倒的だろうな。....。それに乗っ取りやすいように普通科のあいつが力を使おうと見せかけて注目集めたな。本当にあの入試は不合理だってわかるよ。こんないい個性が普通科に落とされるんだからな』
それを聞いた観客にいるプロヒーローたちはその能力、範囲に驚愕し、フィールドにいる生徒たちはこの試合でのもっとも危険なグループへの警戒を強める。
ーーー15メートル。何て強力な個性の上に、範囲。ぜひうちに欲しいな
ーーーあとはどれほどの強敵までなら乗っ取れるかだな
「くそがぁ!!!!!!切島ぁ!!!!いけぇ!!!ぶっ殺す!!!」
自分が一瞬で乗っ取られたことにひどい怒りを覚えた爆豪はすでに緑谷や、轟のことは頭になく、どうやって金成たちをぶっ飛ばすしかで頭がいっぱいだった。
金成は初めの作戦が決まったことに安堵し、次への行動を開始する。
「エイミィ、美亜!次だ!」
「いつでもいいよ!ボス!」
「おっけーだよー!」
金成はエイミィと美亜の了承を得て、下半身を武装色の覇気で覆って行く。
金成が次の行動を起こすまでに、上では大智が届く範囲のチームを次々乗っ取り、ハチマキを奪って行く。
「おーらよ!」
金成が覇気を纏い終わると、左足でバランスよく立ちながら覇気を纏った右足を全力で地面にかかと落としをした。
腹に響く様な低い轟音と共に、金成を中心に地面が陥没し、地割れが発生する。
「ば、爆豪ダメだ!一旦ひくぞ!!」
「ふざけんじゃねぇ!!」
爆豪チームは地面が揺れると同時に騎馬の独断で逃げて行く。
一方で先程まで近くにいた緑谷はチームメイトにサポート科がいたらしく、アイテムで空中へ逃げた。
『地割れダァああああ!!!まだ始まって1分しか経ってないのにこのカオス具合!!今回の普通科はやっぱりなんかヤベェ!!足で地割れ作りやがった!』
ーーー身体強化の‘個性’か?
ーーー単純だがあれだけの力。随分と強い個性だな
ーーー足が黒くなってたし、鉄化とかかしら?
「っく!っとあぶねぇ、エイミィ、美亜!大丈夫か?」
「私たちは大丈夫だよ、ボス!」
金成たちが地割れの中心で、打撃点も調整したため、陥没の影響だけで済んだ。
爆豪や、緑谷の様な咄嗟に逃げたメンバーはすぐに立ち直ったが、動けなかったメンバーは騎馬を崩すことはなかったが、地割れに足を挟まれたものが多く、動けないでいた。
そこからの金成たちは単純に逃げ回っていた。
金成とエイミィは普段から訓練を行っているため、足元が不安定でも走れる様になっている。まぁ、エイミィは綱渡りで分かったと思うがバランス感覚が悪いので、ギリギリだが。
美亜の方も、‘個性’が鬼であるため、身体が驚くほど強い。足腰が強いため、安定して移動できる。
爆豪以外のチームは最早金成たちのチームのハチマキ奪取を諦め、それぞれが取れそうなチームへ向かって行く。
爆音や、雷などが会場に響く。
爆豪たちのチームは、ほかのチームからハチマキを奪いつつ、こちらを睨みつけている。