黄金の力でヒロアカ無双   作:アルアール

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十六話 最終種目 美亜と大智と金成

その光景を見ていた観客もヒーローも一瞬言葉を失う。

緑谷が放った風圧の一撃がマグマの壁をも吹き飛ばし、重い一撃を彼女に与えたのだ。

この光景を見ていた誰もが今までの彼女の体捌きや強力な個性により対処すると思い込んでいたためか、彼らに思った以上の衝撃を与えた。

そもそもが見た限り個性による衝撃波、もしくは風圧の筈ではあるが、それが顔面をも吹き飛ばす結果になりうるのだろうか。

冷静でいれば疑問に思う点がいくつか上がるだろうが、この衝撃的な光景に冷静でいられるものはあまり多くはなかった。

冷静でいられたのは現場歴が長い古株のヒーローか、この状況でも冷静を保つ審判であるミッドナイト、後は意味深げに口角を釣り上げている金成くらいである。

 

「え、嘘だろ....?」

何処からか喉の奥から絞り出す様な声が、沈黙を守る観客席に響く。

この声を皮切りに次第に悲鳴や戸惑いの声が上がり出す。

 

時が止まった様に意識が真っ白に染められていた緑谷は自分がやってしまった惨状に気がつく。

 

「な、なんてことを....!」

今までにない自分が巻き起こしてしまったこの力による暴力を目の当たりにし、心に渦巻く罪悪感や、絶望とも言える感情に囚われている。

今までの緑谷で有れば、いくら全力100%の衝撃波であれ、あそこまでの惨状を作り出すのは不可能であると気がつく筈だ。

全力とはいえたかが指一本である。

緑谷は指に感じる痛みを感じる暇もなく茫然自失になっている。

 

緑谷が漠然と失格の合図を待っていると、彼女の首の断面図がおかしいことに気がつく。

彼女の首は明らかに血であるはずがないぐつぐつ煮えたぐっている様な気泡を発しながら大きく蠢いていた。

 

「な、なんだ?!」

思わず声をあげた緑谷。

その光景を見た観客も思わず身を乗り出して見入る。

 

『なんだぁ?!マグマがまだ動いている!!おぉ!!先ほどなかった顔がマグマで復元されてく!!!』

観客たちが固唾を飲んで見守る中、首筋からマグマが溢れ出し、そのままエイミィの顔を形作って顔を作った。

 

「おぉー!すごい威力だね!びっくりしたよ!!」

エイミィはなんでもないように威力に驚いていたが、緑谷を含め観客やヒーローは別のことに驚く。

 

ーーー体自体がマグマなのか?!

 

ーーーこれ物理きかねぇんじゃねーの?!

 

「...そうか。今まで発動型の個性と思ってたけど、この個性は‘あの時のヘドロ‘と一緒の異形型の個性だったのか」

気がつくとなんとでも無い事であるが、自分がやってしまった事が大事にならなかった安堵とともにこれ以上ない危機感が緑谷に湧いて来る。

この個性のアドバンテージは普通の人間に擬態できる事だろう。

普通の液体状の異形型とで有れば人間の形を擬似的に形作ることはできる。

しかし明らかに人間の肌質を持ち、完全なる人間型を保っている。

その為初見の相手は殆どが今回の緑谷同様に発動型と勘違いするはずだ。

今までは支柱となる身体に一撃を与えればダウンさせられると思っていたが、これでは物理攻撃しか持たない緑谷の勝ち目がぐんと下がって来る。

物理攻撃が主な緑谷にとってこれほど強敵はいない。

 

いやしかしながら手がないわけではない。

緑谷の頭の中に一つの作戦が思い浮かんだ。

いや、’あの時の光景‘が重なって見える。

 

でもその作戦を実行しようものなら、確実に腕を丸々1本ダメにしてしまう。

この試合が決勝なら実行したかもしれないが、1回戦だ。躊躇わないわけがない。

しかし、このままじゃ1回戦敗北は必至。

 

どう足掻いても手がそれしか浮かび上がらず、それ以上にこのままでは決勝以前に一回戦敗退である緑谷は決断した。

 

ーーーくそ!!やるしかない!!

復活したエイミィが再び打ち出して来る弾幕上のマグマを必死に避けながら緑谷は決心をする。

 

あの日のオールマイトを思い出しながら。

 

避けるたびに、地面に残っている大量のマグマで身体は焦がされ、それを踏んでいる足からはとめどなく肉を焼いた様な匂いとともに煙を上げる。

 

ギリギリとも言える攻防なんとかさ避けつつ時を見計らう緑谷。

 

「...きた!」

癖によるものなのか、エイミィはおよそ1分程すると休憩を挟む様に一瞬弾幕を途切れさす。

 

緑谷は先ほどと同じように、マグマの弾幕が切れる一瞬で前に飛び出す。

 

ーーーまた同じかぁ。そろそろ終わらせたいなぁ。

 

それを見たエイミィはあえて先ほどと同じようにマグマの壁を作る。

エイミィは次に緑谷がすることをある程度理解する。

もしも、先ほどの風圧が指だけではなく腕なら。

それなら体全部を吹き飛ばせるだろう。

しかし、単純とも言える力技をエイミィが対処できないわけがない。

 

これでもエイミィは金成の護衛であり、マネトリアカンパニー最強だ。今まで個性が発動せず、いや個性を発動させていたとしてもただの学生に過ぎない緑谷とは潜ってきた修羅場の数が、実践、経験の深さが違かった。

 

「くそっ!」

前と同じ状況を作られたことに若干のイラつきを覚えながらこの作戦しかない緑谷は一縷の望みに掛けて敢えてその行動に乗ることにする。相手が液状の異形型で有れば肉体的損傷を省みなければリミッターを掛けずに全力のパワーを出すことができる。

緑谷はオールマイトから受け継いだ力、それに自分もただ学校生活を過ごしてきたわけじゃないという自負から、そのままマグマの壁に接近すると同時に、右手を大きく振りかぶり振り抜いた。

 

「いっけーーー!!!.....へ?」

緑谷は、腕を振り切ってマグマごとエイミィを吹き飛ばそうと発動させた風圧を作るも、そこにはエイミィは居なかった。

気合の入った声から一転し、口から変な声が漏れる。

 

ーーーなんで?!絶対に当たる様にマグマの左右から飛び出ないか見ていたはずだ!

そうは言っても目の前にいないことには変わりない。

 

それを認識すると同時に、背後から現れたエイミィが緑谷のがら空きの背中に思いっきり回し蹴りを決める。

明らかに生身で出せないだろ、と思うような衝撃が緑谷の背中に叩きつけられた。

そのまま緑谷は背筋をくの字に曲げながら吹き飛び、フィールドを超えてその先の壁に激突した。

 

この時緑谷が感じられたことは背中に感じる痛みとともに、目前に迫る壁による自分の敗北だけであった。

 

 

 

 

「緑谷くん!場外!勝者、エイミィ・グランドーラ!!!」

主審を務めて居たミッドナイトの声に、会場は大きく湧き上がった。

一回戦ながらも例年にない盛り上がりを見せている。

 

「やったー!」

フィールド上のエイミィが勝利を噛み締めた喜びの声をあげる。

同じくこの試合の勝者である選手に目を向けた観客たちは先ほどの歓声とはまた違った、驚きや興奮の声をあげた。

 

「ちょ!貴方服を着なさい!」

その声質の変化に気が付いた審判のミッドナイトは、緑谷から視線をエイミィに移すと、先程までの凛とした表情から一転し、慌てて彼女に声をかける。

 

「あ、あはは」

ミッドナイトの注意により自分が今どんな格好をしているのかエイミィは気がつく。

エイミィの今の姿は、人一倍白い肌とは対照的な黒いスパッツに、着痩せするタイプなのかジャージの姿では感じられないほど綺麗な膨らみを見せる胸を覆う黒いスポーツブラのみであった。

 

先程まで来ていたジャージは何処かへ消え去っていた。

一瞬水着にも見えなくはないが、エイミィも恥ずかしいらしく慌てて控え室へ走っていった。

 

ーーーアイツ、今来ている服がいつもの防熱性の服じゃない事を忘れてたな。

 

 

『.....。いやぁほんとに初戦かっていうくらい盛り上げてくれたな!取り敢えず両者の健闘を称えてクラップユアハンズ!!!』

プレゼントマイクが讃えると共に会場中から拍手が巻き起こり、第1試合を終えた。

 

 

 

「ま、待ってくれ!最後どうやって...!」

更衣室から出てきたエイミィに緑谷は声をかけて居た。

負けたことは仕方がない。自分の実力がなかっただけだ。

しかし、なぜ負けたのかは知りたかった。

 

「んー?わたし全身マグマなんだよねぇ。まぁ、見えるだけが全てじゃないよ!わたしボスに報告しなきゃいけないからバイバイ!」

エイミィは別に教えていいけど逆に教える必要性もない為、ヒントだけ与えて走り去っていった。

 

暫く通路脇でなぜ突然背後から攻撃するに至ったか思考に徹する。

彼の癖なのか、ブツブツと思考を口から垂れ流しつつフィールド場がマグマだらけになっていたことに気がついた。

「...!そうか..!」

 

そう、よく考えてみれば全身がマグマにできるなら突然背後を取ることが可能だ。

マグマ状になり、地面にあるマグマを伝えば簡単に移動できる。

緑谷も気がついたが、エイミィは全身をマグマにして移動しただけである。

こんな簡単なことに気がつかなかった緑谷は悔しさを感じるが、直ぐにその感情は引いていく。

「....ここまで個性を使いこなせなきゃ一回戦突破なんて夢のまた夢だよね」

今になってようやく、自分が個性の制御すらまともに出来ずここに居ることが恥ずかしくなって来る。

 

「今回突破できたのは偶然が重なった運に過ぎない。ここからだ」

今までの、制御なんてできなくていい、治して貰えばいいと言った甘ったれた考えを捨てたのか、彼の目には試合前以上に闘志の篭った目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボスー!勝ったよー!」

予備のジャージに着替えたエイミィが元気よく生徒用の観客席へ来て声をあげる。

 

「あぁよくやったな」

観客席にいた金成はエイミィの声に気がつくと振り返って彼女を出迎えると自分達が座っているところへ誘導した。

 

「エイミィすごかったよ!」

それからはクラスメイトがエイミィをそれぞれ賞賛していった。

彼らはあの試合に魅入られたのだ。

自分達は所詮普通科、どれだけ足掻いても意味がない。

失礼ではあるが、エイミィでさえヒーロー科には敵わないと思っていたクラスメイト。

しかし、試合が進むにつれてエイミィの力を目の当たりにした彼らは次第に彼女なら勝てるのではないかという思考にたどり着く。

そうして結果は圧勝。

これでクラスメイトが興奮しないわけがない。

 

「ありがとう。次も頑張るね!」

彼らの興奮の篭った感想に感謝しつつ、金成が座っている席に近づくと隣に腰を落とす。

 

 

「あ、そう言えば、あの後ミッドナイト先生から耐熱性の服を着ていいって言われたから日陰ちゃんに連絡したよ」

あの後ミッドナイトからもし耐熱性の服があるなら特別に使っていいと許可をもらっていたエイミィは右手に光る指輪から感じる気配をたどって、直ぐに服を持って来てほしいと言った旨の念話を送った。

 

「ん?そうか?よかったな。流石に何度も肌晒せないだろ」

 

「んー、ボスのエッチ」

頬を膨らませながらもジト目の視線を飛ばすエイミィ。

 

「.....。よし、次は美亜の試合か」

ただ思ったことを口に出した金成だが、予想外の返答に口を吃らせて話をそらす。

 

「もー、なんか反応してよボス!!」

 

側から見たらカップルにしか見えない事を普通にやっていることに、彼らを見ていたクラスメイトは驚愕した。

先程までの羨望の眼差しから生暖かい目になっていくのがわかる。

近くにいた大智も若干呆れながらも、温かく見守っている。

 

「それよりお前、わざと攻撃を食らっただろ」

 

「ぎく!!!」

金成の質問にわかりやすいほどの反応を示す。

横を向いて口笛を吹いているが、よくこれ程典型的なものをできたものだ。

 

「..まぁいい。次からちゃんとやれよ?」

 

「うぅ。だって、怪我させないようにやるとか私にはこのルールじゃ厳しくて...」

 

「...はぁ。まぁ、どうしてもダメなら格闘技だけでいけばいい。うちでは下手な方だがここではかなり上位だと思うしな」

しょぼくれたエイミィを慰めるように頭を撫でる。

正直うちの会社で比べると、エイミィは格闘技は下手な部類に入る。

でも、金成の会社にいる戦闘員は正直言って一人一人がプロ並みであり、そこと比べること自体間違っている。

その為、いくらヒーロー科の生徒達が戦闘訓練に勤しんでいるとはいえ、エイミィが負けるとは思っていない金成。

 

「...そうだね。じゃぁ次は格闘技メインで行こうかな!」

単純なのか、金成の言葉にすぐに元気になったエイミィは笑顔を向けてきた。

 

ーーー単純だなぁ。

 

 

 

 

美亜の試合が始まると、彼女は速攻で勝利を決めた。

相手は上鳴と言う電気を操る‘個性’持ちであったが、彼は自分の中にある電気を放電することしかできない。それも方向性を決められるわけではない為美亜の敵ではなかった。

 

美亜の方は自身が雷を使える事によりある程度電気に耐性があったため彼の無差別な放電を耐え抜き、そのまま強力な身体能力に物を言わせ、場外まで殴り飛ばした。

 

「げふっ!!」

綺麗に決まったのか、顔面から放物線を描き地面に落下した。

 

 

 

 

 

第二試合の終了の合図とともに、自分の試合が近づいていた金成は控え室に向かう為立ち上がった。

「よし、じゃぁ俺も準備があるから選手控室に行ってくるわ」

 

「うん!行ってらっしゃーい!」

 

立ち上がった金成にエイミィや他の生徒達が応援の言葉を投げかけている。

ーーー応援されるのも悪くないな。

その声に心地良い感情を抱きつつ、感謝の言葉を返した金成は早速控え室へ向かう。

 

今他の生徒が第三試合で戦っておりそれが終わると10分後に自分の試合が始まるため、待機してなくてはならないからだ。

 

 

今回の金成の試合相手は芦戸というA組の女の子で、異形系らしくピンク色の肌が特徴であるらしい。

あまり他人に興味がない金成が試合前に大智に聞いた情報を思い出してフィールドの前に立つ。

一方の反対側も、芦戸と思われる情報通り肌がピンクの女の子がこちらに目を向けていた。

一瞬視線が重なるも金成はフィールド全体を見渡す為視線を外した。

 

ーーーやっぱ観客は多いなぁ。

別にそれで緊張すると言ったわけではないが、ここまで注目されて戦うのは前世以来である為少しばかりの懐かしい感情を抱く。

 

 

プレゼントマイクの合図で二人はフィールドへ上がる。

その後にプレゼントマイクの説明がありすぐに試合開始となった。

 

 

まぁ結論から言うと勝った。

開始早々、こちらに駆け寄ってきて酸のような液状をかけようとしてきたが、金成は開始と同時に全身を覇気で纏い、相手の背後へ一瞬で移動する。

彼女の眼にはその動きが捉えられなかったらしく、直ぐに金成を探そうとキョロキョロ見渡し自分の背後にいることに気がついた。

 

その後、再び酸による攻撃を仕掛けるためにこちらへ向かって来ていた芦戸の服の襟を掴み、そのまま場外へ投げ飛ばし試合終了。

 

案外呆気ない試合展開に観客席からの歓声が小さくなるも彼の素早い移動に感嘆の声を漏らすプロヒーローが多数いた。

流石にここまで俯瞰できる状況で見失う事はないものの、駆け出しのヒーローで近くで有れば見逃すような速さだ。

その俊敏性に第二種目で見せた彼の力の時以上に自分達の会社にほしいと願う。

個性だけなら幾らでも強い人はいるだろう。

しかし、見た限り個性の発動を感じられなかったプロヒーロー達はあれを自前の力と勘違いする。

そのため、それほどの力を手に入れるまで相当の努力を重ねたと思ったのだ。

自分の力に溺れずに努力ができる。

これほどいい人材はそれほど多くない。

 

 

汗を掻くことなく試合を終えた金成は再び席へと戻る。

帰ると待っていたエイミィに喜ばれながらも、次の大智の試合を見る。

 

大智は緊張することなくフィールドへ上がる。

相手も上がるのを確認したプレゼントマイクいつもと同様に選手紹介しながらパフォーマンスをしていた。

 

相手はA組の切島という単純な肉体の強化系の生徒だ。

 

試合開始の合図とともに、彼は大智へと駆け出す。

 

「ん?アイツ、大智の‘個性’知らないのか?」

もしかしてバカなのだろうかと若干呆れながらも、迷いなく一直線で走って行ったため何か策があるのだろうと金成は考えた。

 

 

考えたが....普通に体を乗っ取らせて場外。

本当にあっけない試合に終わった。

 

「ただのバカだったね」

 

「....あぁ」

本当にバカだったらしい、いや脳筋だったらしい。多分気合いでなんとかなると思ったのだろう。

 

 

 

その後も順調に試合が進み1回戦が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今更だけど、エイミィの外見はハイスクールDxDのリアスグレモリーをイメージしています。

追記
イメージとしてはリアスグレモリーと言いましたが、自分の中ではあのリアスのスタイルを控えめにした感じです。
あそこまで巨乳では無いです。
スタイルでいうならアーシアくらいです。

そもそもエイミィというキャラに巨乳は合いませんよね。
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