黄金の力でヒロアカ無双   作:アルアール

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二十六話 保須市 放たれた狂気

「・・・との事で、今直ぐ向かったほうがよろしいかと」

金成達が津奈からヴィラン連合について報告を受けた数十分後、軍部の隊員である臥雲が目の前に軍部のトップである荒戸に報告を上げていた。

「うへぇ。昨日遠征終わったばっかなのになぁ」

グデーっとデスクに身を投げ出しだらけた声をあげて俯いている。

目の前に部下である臥雲が居るが、そんな情けない姿を見せてもいいのだろうか、と臥雲は思うが既に慣れてしまって居るために気にしていない。

 

「それで連れて行くメンバーはどうしましょうか?」

 

「んー。流石にボスからの命令だし、適当なメンバーじゃダメだよなぁ」

すでに命令で下されて居るため、これ以上荒戸が駄々をこねることはなく佇まいを正し背筋を伸ばす。

 

先程までのだらしない表情ではなく、確かに軍部のトップなんだと思うような威厳のある表情で考え出す。

金成から命令が下ることはあるが、軍部のトップである荒戸自らが行けというような命令など滅多にない。

その事からも、金成がどれだけ力を入れるか、相手の力量が見えて来る。

ーーーまぁ臥雲に任せておけばいいか。

考えるには考えたが、元から頭を使うのは好まない為に、目の前の自分の右腕である臥雲に託す事にした。

 

「じゃぁ、俺と臥雲、後はそっちで任せる。一応十五人くらい選んでくれ」

 

「畏まりました。では三十分後に裏のロビーでお待ちください」

臥雲は一礼をすると、すでに頭に浮かんだメンバーを集める為に荒戸の執務室から退出した。

 

「‘先生’ねぇ」

臥雲が荒戸の部屋から退出すると、荒戸は報告書を片手に椅子に体重をかける。

この報告書は金成が見たやつと同様であり、ヴィラン連合についての詳細が書かれている。

 

「でもまぁ、ボスなら負けないんだろうなぁ」

どれほど‘先生’がやばいやつかはこの報告書を見ただけでわかる。

しかし荒戸に不安などはなく、脳裏に浮かぶのはあの頼りになる後ろ姿に、綺麗に輝き靡く金髪。

普段は飄々としては居るが、彼は初めて金成に出会った時から思う気持ちは変わらない。

 

「さてと!命令ですからねぇ。頑張るっすよ!!」

勢いよく椅子から立ち上がると、部屋にあるコスチュームがしまっているタンスを勢いよく開けた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ついたか」

 

 

金成達が保須市へ着いたのは午後の一時三十分ころで、津奈によると襲撃は四時らしいからまだ二時間三十分の猶予がある。

金成達の車が初めに向かったのは保須市の市役所であり、今は市役所の車庫に車を入れて各自が車から降りている。

 

「んー、長かったねぇ」

車から降りると、エイミィは大きく背伸びをして身体をほぐしているが、プロ達は慣れているのか直ぐにそれぞれの装備の点検に入った。

 

「それよりボスどうする?」

 

「まずは一緒に動く。まぁ後は隙を見つけて逸れた風を装えばいける」

隣に来たエイミィが耳を寄せて囁くように聞いて来た。

そんなあからさまなポーズはやめて欲しいが、まぁ誰もこちらに注目していなかったため別にいい。

 

それより、金成達と一緒に職場体験に来た轟は何かあった時は自分も参戦するつもりか、しっかり装備で身を固めて、市役所の職員と話すエンデヴァーの斜め後ろあたりで話を窺っている。

一方で金成達の姿はジャージである。

流石に一週間でコスチュームは届かないために、職場体験には学校のジャージで参加していた。

 

「...はぁ。」

 

「どうしたの?」

 

「いや、うちのコスチュームを着たかったなって」

自分の社長室においてあるだろう、自慢の一品を着れない事に溜息を漏らしてしまうが、わがままを言える状況ではない。

エイミィは残念そうに呟く金成の視線が轟の方を向いてるのを確認して面白そうに微笑んだ。

 

ーーーボスって意外と子どもっぽいよねぇ。

 

 

 

 

あの後、市の許可をもらったエンデヴァー一行はそれぞれがチームを組んでの見回りとなった。

轟は勿論エンデヴァーのチームでついて行くことになり、金成達はここ数日で仲良くなった三木を筆頭とするチームだ。

 

「よろしくお願いします」

 

「あぁ、宜しく。でも絶対来るってわけじゃないからね。気負わなくてもいいよ」

金成達が礼儀正しく挨拶したのを緊張のせいと勘違いした三木は緊張をほぐそうといつも以上の笑顔で話しかけて来るが、申し訳ない。

金成達はヴィラン連合が来た時は逸れるつもりなので、その時は迷惑をかける為に丁寧に挨拶したのだ。

 

ーーーいやぁ、あとで怒られるかなぁ。まぁいっか。

 

それから直ぐにチームメンバーの顔合わせとなった。

「じゃぁ一応紹介しとくか。こっちは同じサイドキックの甘城。主に災害救助での活躍が多い。で、こっちは風紀、医療系の‘個性’だから怪我した時に言えよ」

三木は金成とエイミィの為に同じサイドキックである仲間を紹介する。

 

「おっす。宜しくな。頼りにしてるぜ」

 

「よろしく〜。怪我の時はこっち来てね〜」

甘城と紹介された男は少しチャラそうな荒戸に似た雰囲気を感じた。

若干いたずら猫のような表情ではあるが、しっかりと鍛えられている肉体である為、頼りになりそうな雰囲気を纏っている。

一方の風紀と紹介された女は若干頼りなさそうな感じだ。

垂れ目の上にジト目のような半目であるために、眠そうな印象しかない。

その上、狙ってるのか猫型のパーカーを見に纏っているために、既に軒先で日光浴を楽しむ猫そのものだな、と金成は感じた。

 

ーーーでも、強そうだなぁ。うちの訓練生とどっこいどっこいか。

 

この二人と三木、金成とエイミィを加えた五人でのパトロールをする事になった。

他のチームも四、五人が基本となりチームを組んでいて、既に準備ができたのか、それぞれまとまって市役所を出発して行った。

 

「じゃぁ俺らも行くか。まずは西の方からな」

 

「はい。」「うっす。」「は〜い。」「レッツゴー!」

三木は端末を片手に行き先を決めて先頭を歩き出し出そうとしたが、それぞれが締まりのない返事をしたために初めの一歩を踏み外した。

 

「三木ださいなぁ」

 

「うぷぷ。何やってんの〜」

仲間の二人は口を抑えたバカにしたような口調で、バカにする。

 

「お前らのせいだろ!しっかり合わせろよ!」

三木の方は立ち上がると直ぐにイラついた感情を爆発させて二人に詰め寄るがいつもの事であるのか、受け流すように話を流して再び歩き出した。

 

「ボス、なんかこの人ら大丈夫かな?」

 

「ま、まぁ戦闘になれば大丈夫だろ」

本当に逸れてしまう事に若干の不安を覚えつつも、前の三人について行った。

 

 

 

 

「何も出ないな」

 

「うーん。ヴィラン一人でないね」

あれから2時間ほど見回りをして続けているが何も問題が起こる事なく時間が過ぎて行った。

まぁ、四時になると出て来ることはわかっている為に、このセリフはあえて三木達に聞かせる為に呟いただけだが。

 

「まぁ、今回は一応の警備だからね。出ないこともあるよ」

三木達も出ない事に若干気を緩ませているがサボるようなことはなく、次の警戒するポイントへと足を進める。

 

「よし、エイミィ行くぞ」

 

「ふわぁ、うん」

エイミィは流石に退屈なのか大きくあくびを漏らしつつ、隣の金成に歩調を合わせて歩き出した。

 

 

鮮やかな青色であった空色だが、次第に暗雲が立ち込めるように雲行きが怪しくなって行く。

まだ茜色に染まるには早い午後四時。

この街が悲鳴の渦で包まれるまでもうほんの少し。

 

 

 

保須市にあるビルの屋上にある貯水タンクの上で、突然人影が3つ現れる。

 

「保須市って意外と栄えてるんだな」

 

「この街を正すにはまだ犠牲がいる」

ヴィラン連合のリーダーである死柄木が思いの外栄えている街に感嘆の声を漏らし、一方で狂気に満ちた気配を纏わせた‘ヒーロー殺し’のステインは刀を引き抜き舌で舐めた。

 

「ヒーローとは偉業を成し遂げた者のみが与えられる称号!多すぎるんだよ...。英雄気取りの拝金主義者が!この世が自らの誤りに気がつくまで俺は現れ続ける」

そう言葉を切るとビルから飛び降りていった。

 

「あれだけ語ってやることは草の根運動とは泣けるねぇ。あぁむかつく。黒霧、脳無を出せ。大暴れ競争だ。あんたの面子と矜持を潰してやるぜ、大先輩」

死柄木が不機嫌な声で、後ろに控えた黒霧は自分の‘個性’で黒い靄から三人の脳無を出すと、彼らは街に散っていった。

 

そうしてこの街に一つの狂気と、三つの怪物が放たれた。

 

 

「それより、死柄木。あの件はどうしますか?」

 

「あの件ってなんだ?」

背後から黒霧が訪ねて来るが、本当に死柄木にはわからなかったらしく、首をかしげる。

 

「先生が言ってたでしょう。ここは足立区に近い。奴らが出張るかもしれません」

 

「....。アイツらか。なんだか知らないが、俺ら以外のヴィランを纏めてるんだって?お前もそうだが、珍しく先生が警戒していた」

先生や黒霧が異様に金成の私部隊を警戒しているが、死柄木はなぜ警戒しているか理解できない。

ただただ居座っているだけでなにも行動を起こさない、腑抜けにしか思っていないのだ。

 

「来るなら来い。俺がぶっ壊してやる」

 

「...。はぁ。仕方ない」

明らかな慢心を見せる死柄木に不安を抱きつつ、奴らが現れたら逃げればいいと考える黒霧の中だが、先生にとってはこれも慢心。

 

ーーー奴らにはまだ手を出すな。見つかったら逃げろ。

黒霧は異様に控えめな先生を思い出していた。

普段は好戦的な一面を見せるが、こういう警戒した面を見せるのは珍しいからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きゃぁああああ!!!!

 

金成達が警備のために街を歩いていると、前方より悲鳴が聞こえた。

耳をつんざくような声に反応するように全員が身構える。

 

「なに?!悲鳴だ!みんな行くぞ!」

突然の悲鳴に一瞬驚くが、三木は瞬時に状況を察する。

きっとステインが現れたのだろう、と。

 

「わかった!おい、金成に、エイミィ、お前らは今すぐ市役所に行って報告をしてくれ!」

それを聞いた甘城は即座に金成らに市役所へ行って報告をあげるように指示をするが、それは建前に過ぎない。

結局は金成とエイミィは学生であり、ヒーロー資格を持っていない。

その為に戦闘することは許されないから、市役所に向かわせることにした。

 

ーーー生徒には戦闘はさせられない、か。好都合だ!

 

「っ、はい!エイミィいくぞ!」

 

「うん!」

思わぬ展開に、都合が良かったので三木らに反対することなく返事をすると、そのまま後ろを振り返り市役所の方向へ走り出す。

 

 

 

それを確認した三木らは悲鳴のした方向に視線を向け、こちらに逃げて来る人ごみを確認するとそれを避けるように走り出す。

 

「皆さん!落ち着いて避難してください!私たちはエンデヴァー事務所のサイドキックです!」

 

 

 

 

 

 

人を避けるように金成とエイミィは市役所の方向へ走っているが、市役所へ向かっているわけではない。

金成は悲鳴が聞こえた途端に見聞色の覇気をこの街中に発動していたのだ。

 

「ボス!どこ向かってるの?」

 

「あぁ、今回の元凶へ向かってるんだ。エイミィも下っ端の脳無はつまらないだろ?」

 

「勿論!」

後ろを走るエイミィからの質問に足を止めることなく答えていて、声からも楽しそうな雰囲気がうかがえる。

 

金成は現在も覇気を発動しつつ、元凶と思える気配の元へ向かっている。それによると保須市の中心あたりにあるビルの屋上に現れたらしく、そこから脳無が放射状に放たれていった。

その脳無には既に荒戸に命令して居たために、自分らは元凶へ向かうことにしたのだ。

 

四方から黒煙が上がり、悲鳴が聞こえて来る。

自分らが走っていると、慌てて逃げる人々とすれ違って行く。

 

そうして気配の方向に走っていると、上空から別の大きな気配を感じる。

 

「来たか。アイツ、空船を出したか」

 

「おー!あれできたのかぁ!」

ピタっと足を止めた金成らは上空を見上げると、そこには大きな船が浮かんで居た。

上空500メートルほどで直径15メートルほどの鉄製の船がまるで空を泳ぐかのように動いていた。

まぁ浮かんでいるといっても、金成は覇気で気配を感じ、エイミィも金成の声に反応したに過ぎない。

実際は透明で、ほとんど何があるか見えない。

 

あの空船は臥雲の‘個性’によって浮かばせていて、一人の戦闘員の‘個性’、触れたものを透明にする能力で姿を隠している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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