黄金の力でヒロアカ無双   作:アルアール

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二十七話 保須市 軍部出動

《ボス。軍部も行動を開始します。目標はこの街に放たれた3匹の脳無で宜しかったでしょうか?》

空船を確認した金成達が再び走り出すと、情報部の津奈から念話が届いた。

 

《あぁ、それでいい。俺らが元凶のやつがいたとこに向かうから。あんま目立つなよって言っといてくれ》

 

《津奈ちゃん。またね〜》

 

《了解です》

それ以降は再び前を向くと人ごみを避けつつ目標へ向かって走り出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「荒戸様、ボスはこのまま元凶に向かうため、脳無の確保は任せる、とのこと。あと目立つな、との伝言です」

上空に浮かぶ空船の先端部分の椅子に座る荒戸に報告をするのは、後ろに控えて整列している人々に混じる情報部の津奈だ。

黒いリクルートスーツを見にまとい、オレンジ色の長髪が風に靡いている。

真面目そうな表情ではあるが、優しそうなオーラが滲み出るような、綺麗な顔をしていた。

 

「んー。そうかぁ。じゃぁ決められた3部隊で向かってくれ。俺がステインってやつがいるとこ。臥雲はエンデヴァーってヒーローが相手をする脳無。後の2部隊はそれぞれが脳無を確保しろ」

威厳を含ませた声で、目の前の黒煙が上がる街を見下ろしながら指示を出して行く。

今回連れて来たメンバーは、荒戸、臥雲、津奈、残り八人の戦闘員。

荒戸に一人、臥雲に一人、残り2名ずつで組んだ4チームで動くことになる。津奈はこの船に残って情報塔の役割であり、残りの二人の戦闘員は津奈の警備だ。

 

それぞれの戦闘員が指揮を聞くとそれぞれが配置に着く。

 

「荒戸様、くれぐれも目立たないように」

 

「あー、わかってるって」

 

「はぁ...。絶対わかってない」

列にいた臥雲は不安を隠しきれずに荒戸に忠告するが明らかに話を流している。

これはマズイかな、とは思うがいつもそうであるため期待しているしかない。

 

それを横目で見ていた津奈は自分も日陰の面倒を見ているため、同じ境遇なのかと思ってシンパシーを感じた。

 

 

「よし。行動を開始する!目標は脳無の確保!行け!」

その合図と同時に、船の淵に立っていたメンバーはそれぞれ船から飛び降りた。

 

上級500メートルから飛び降りたの荒戸は体中に風圧を感じながら地上へ向けて降りていく。

 

「うひょぉ。やっぱこえぇなぁー!」

 

「え?なんですかー?!聞こえないです!」

 

「んぁ?!なんでもねーよー!」

 

荒戸は大きな声で興奮を表すが風圧により生じた音で隣にいる戦闘員、グランは声が聞こえていない。

唯一わかることは風圧で荒戸の表情が歪みながらも楽しそうにしているために、楽しんでいるであろうことがわかる。

 

ーーーほんと気楽だなぁ。荒戸様は。

この戦闘員は普段は遠征で参加してはいるが、このようなボスに指示されて、日本での戦闘はほとんどないために緊張を隠せないでいる。

 

周りを見渡すと同じように飛び出したメンバーがそれぞれが標的とする方向に移動しながら落下していく。

 

ーーーそろそろか。

すでに地面までの距離は100メートルもない。

荒戸はビルとビルの間の路地裏に狙いをつけると態勢を立て直し、腕を伸ばすと‘個性‘を発動させる。

すると指からピアノ線のような鋭く細い糸が5本の指から伸びてきて、そのままネットのように動かしてビルとビルの間に張り付けた。

荒戸の‘個性‘は糸を体から生み出し自在に操ることができる能力であり、その生み出された糸は刃物のように鋭く物体を切り裂くことができ操り方によっては自分の分身を作って操ることもできる。

 

 

「...ふぅ。着地成功」

ネットの中から飛び降りて地面に軽やかに着地を成功させると、懐から白い仮面を取り出し顔へつけ、仲間のグランが着地するであろう方向を向く。

荒戸が向いたころはちょうど着地をするところだったらしく、グランは地面に衝突する寸前に掌を地面に当てると掌の先から衝撃波のようなものが発生してその風圧で着地をした。

グランの‘個性‘はあらゆるものを弾き飛ばす能力であり、自分を弾き飛ばし疑似瞬間移動をすることができ、物体でなくても気体であったり、疲労、痛みなど形の無いものを吹き飛ばすことも可能である。

 

「荒戸様、では向かいましょうか」

着地を決めたグランは、荒戸と同様に懐から取り出した白い仮面を顔へ付けると、荒戸に視線を向けて早く任務を遂行しようと先を促す。

 

 

「よし、じゃあいくか。っとあっちか!」

荒戸が先ほど上空で確認したステインが戦闘を行っているであろう方向を見ると、爆破音が聞こえて戦闘のすさまじさを物語っている。

同じくその音を確認したグランは音を確認して走り出した荒戸に続くように後を追った。

 

 

 

 

戦闘が行われているだろう現場まで行くと、ステインと雄英高校の生徒である緑谷と飯田が戦闘を繰り広げていたために、通路脇に身を隠す。

「さてどうするか。今回の目標は脳無で、こっちはついでだからなぁ」

そう、今回ステインの方へ自ら赴いた理由は単なる興味である。

他の脳無の方はどうなのかと言うと、事前に日陰が操る脳無である程度の戦闘能力を図っていたため、前回と大きく変わってない限り大丈夫と判断したのだ。

 

「どうしますか?此処はボスの要望通り目立たないために引くのが吉ですが...」

控えめに言ってグランはボスに怒られたくないために、自らの上司に進言をするが、ダメなんだろうなと思っている。

この上司はお遊びが好きなのだ。

任務が遂行できるなら余計なことまでやってしまうのである。

まぁ、そうは言っても殆ど影響が出ないために、自分含む他の部員は目を瞑っていたが、流石に今回はボスからの直の命令だ。

あまり多ごとにはしたくない。

 

 

「あっ」

荒戸が声を発したためグランが荒戸が向いている方向へ向くと、荒戸らの目前に氷が迫ってくる瞬間であった。

その氷を放ったのは荒戸たちとは反対方向にいる轟が‘個性’で放った氷だ。

先程は飯田と緑谷のみでステインと戦っていたが、援護に来たらしく、先制攻撃とばかりに氷を放ったのだ。

ステインに放った氷は、ステインが避けたために彼から10メートルほど離れた位置にいた荒戸達に届こうとしていた。

 

 

 

「っと危ないなぁ」

戦闘を覗くために身を乗り出していた荒戸は目前に迫った氷を咄嗟に‘個性’で生み出した糸でバラバラに切り裂いた。

 

当然そんなことをすればバレるのは必至である為、ステインも彼と戦っていた緑谷達も一瞬体を硬直させてこちらに振り向く。

 

 

「だ、だれだ?!お前らの仲間か!」

緑谷が同じくこちらを向いているステインに怒鳴りかけるが、ステインは答えを持っていない。

 

「ハァ....なんだお前ら、ハァ....お前らも英雄気取りのヒーローか?」

ステインの方もわかっていない様子を見た緑谷は混乱する。

荒戸らは怪しげな白い仮面を被った二人組であり、そんなヒーローは聞いたことがない為、明らかにヴィラン側と思っていたのだ。

緑谷はあれほどの強そうな個性を見たために、既にヒーローかヴィランかと言う選択しか頭になかった。

 

「いやー、悪いっすねー。戦い邪魔しちゃって。でも氷がきたもんで」

一歩前に踏み出した荒戸は仮面の下でヘラヘラとした笑みを浮かべながら、ペコペコと頭を下げる。

 

「....はぁ。どうなっても知りませんからね」

既に関与してしまったからにはどうしようもない。あとは成るように成るだろうと、諦めの感情を抱きつつグランは荒戸の隣に並ぶように前に出た。

 

 

「ハァ...。関係ないなら、ハァ...早く去れ。じゃないと殺す」

ステインは既に自分の敵かと思われる荒戸らの出現により囲まれる形になったために、さっさと彼らには立ち去って欲しいと思っている。

 

「いやぁ。特に用はないんだけどね。きみステインって奴でしょ。ちょっと暇潰しにヤり合おうかなって。それにピンチっぽいし助けてあげようかと」

 

「....暇つぶしって」

明らかに場違いなセリフに緑谷は若干フリーズしてしまう。

 

「なんなんだ君らは!遊びで来るようなところではない!早く立ち去ってくれ!」

腕を負傷している飯田は痛みに耐えながらも荒戸らに注意するがそれは意味をなさない。

 

 

暇つぶしと聞いた瞬間に引かせることを無理と判断したのかステインが錆び付いた刀を手に持ち地面を蹴って荒戸に斬りかかる。

 

「避けて!」

 

「まだ遅いんだよなぁ。それにもう此処、俺の領域内なんだよね」

緑谷が咄嗟に叫ぶが、ステインの刃が届くことはなく既にこの通路に張り巡らされた糸によって止められてしまう。

 

「なんだ?ハァ...。糸か、面倒な。...クッ!」

ステインは咄嗟に身を引こうとするが動けないでいることに気がつく。

彼の首筋から一滴の血が垂れてきている。

 

「それ以上動くと、首が落ちちゃうよ」

既にステインは荒戸の手の中であり、首、腕、足、と鋭い糸で巻きつかれている。

 

 

「なんだ?!ステインはなぜ動かない!」

 

「あれは...。糸だ。よく見てみろ、若干日の光に反射してるのがわかる。いつの間に貼りやがった。さっきまではなかったはずだ」

飯田の疑問に彼の隣まで歩いてきた轟が冷静に答えるが、警戒はより一層強まる。明らかにステインを簡単に拘束したことから自分らより格上ということがわかる。

ステインの味方ではないがこちらの味方とは限らないため、迂闊に動けないでいた。

 

 

「それでステイン。ちょっとした疑問なんだけど、なんでヒーローだけ殺して回ってるの?恨みでもあるんすかね?」

 

「....ハァ、今世に溢れるヒーローと呼ばれる奴らは虚像に過ぎない。本来ヒーローとは見返りを求めず、選ばれた、試練を乗り越えたもののみが与えられる称号だ。こんな腐りきった世に溢れるヒーロー像など無意味、いや、害でしかない。俺はこいつらを殺し、真の平和をもたらすことが宿命なんだ」

頭の中でこの糸から逃れる方法を探しつつ、時間稼ぎのために質問に答える。

抜け出そうと考えるが一向に見つからない。少しでも動かせば肌が切れて血が滲み服が綺麗に裂ける。

 

「あちゃぁ、こいつは狂信者って奴か?なぁ相棒(グラン)

 

「そうですね。まぁ普通のヴィランより目的がある分恐ろしいですね」

仮面をかけているため、ここは即席の呼称を決めて言葉にする。

 

彼らが話をしている一方で緑谷達はこれからどうするか必死に頭を動かす。

先程まではステインに負傷を負わされ、正直あの状況では渡りに船であった。

しかしながらその状況を一変させたのが味方かどうかもわからない二人の仮面男。

 

 

「なぜお前が此処にいる?!座ってろっつったろ!」

 

「グラントリノ...ングフッ!」

突然聞こえてきた声は、緑谷の背後からであった。

身長が100センチ前後のヒーローコスチュームを身に纏ったご老人が緑谷の顔面に蹴りを入れる。

 

「それより、今ステインと戦ってたんだけど、変な人たちが入ってきて...」

 

「ステインと戦っただと?!...ん?変な人?」

グラントリノの足の裏からの緑谷の声に、ステインがいる事だけでなく仮面を被った二人組がいることに気がつく。

 

グラントリノは瞬時に状況を把握する為に頭を動かす。

目の前にはピアノ線のような糸に絡まれたステイン。

その前には余裕の態度で佇む二人。

 

「何もんだ。お前ら」

グラントリノはすぐさま緑谷達の前に出て、荒戸たちを睨みつけるように構える。

 

ーーーんー、増えてきたなぁ。そろそろ脳無の回収も終わりそうだし、撤収しようかな。

 

「何者って言われてもっすねー、ただの社員っすよ。派遣社員って奴?」

会社名を出すわけにいかず社員と答えたが間違ってはいない。

派遣社員も、しょっちゅう遠征に向かっているので正しいはずだ。

自分で言っといてなんだが海外派遣が週一以上ある派遣社員と字面だけでは結構なブラックでは無いだろうか、と考える荒戸である。

 

 

「...。社員?組織に属してるっつーことか」

 

ーーーヴィラン連合?ではないな。そしたらそれとは別の組織があるのか?じゃぁなんのために今回動いた?ヴィラン連合と手を組んだのか?それとも....

 

「あっ。上司様(荒戸様)情報塔(津奈さん)から連絡で結構なお怒りです。脳無は既に確保したので遊んでないで帰ってきてください。との事です」

グラントリノが色々と考えていると、荒戸の隣に立っていたグランに津奈からの念話が届いたので荒戸に伝えた。

 

「あちゃぁ、じゃあ帰るか。じゃぁ俺たちは帰るんで!またねー」

荒戸も流石に目立ちすぎたと思っているため、即座に立ち去ろうと決めた。

 

「あ、おい!」

グラントリノの制止も虚しく、荒戸らは通路に貼っていた糸を即座に回収すると、隣にいたグランが個性による擬似瞬間移動を利用して、自分との荒戸らはを即座に上空へ押し上げて姿を隠した。

 

「行っちまったかって、くっ!」

脅威が立ち去ったのはいいが同じく脅威によって制御されてた脅威が解き放たれため、グラントリノ達は捕らえるために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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