「春の訪れを感じさせる桜が咲き誇る中、今日この雄英高校の入学を迎えましたことを心からお祝い申し上げます。・・・」
ホール状の体育館で今、雄英高校の入学式が執り行われている。
今は、シロクマのような見た目の校長先生がホールの中央で、入学を迎えた生徒へ向けて答辞を読んでいる。
誰もが雄英高校に入学できた喜びを胸に抱きこれからの学校生活を夢見てる中、
◇◆◇◆◇◆◇◆
「じゃぁいってきまーす!」
金成は入学式に遅刻しなように孤児院を早めに出ようとしていた。
「時間は10時だよな?ちゃんと着くように行くから」
「うん、そうだよ」
「よし、いってこい!」
今日の入学式に院長の来栖努が参加することになっている。
孤児院であるため、親代わりの努は院にいる子供全員の入学式と卒業式には参加するようにしている。
もし、日にちが被った場合は、母代わりになっている、女性職員の御手洗先生と二手に分かれて子供達を見ているのだ。
そんな訳で今日は努が雄英高校の入学式に参加するため、金成は迂闊なことはできないと思っていた。
努に関してそう思ってはいるが、この数年で金成もこの院の事は家族のように思えるようになっていたため、彼が金成のためにわざわざ足を運んでくれることが純粋に嬉しい。
まぁ、それでも会社関係の事は一切隠し通しているが。
「うん。まってるよ。じゃぁいってくるから」
◇◆◇◆◇◆◇◆
雄英高校の正門には新入生となる生徒達がピシッとした制服を身に纏い、緊張した面持ちでその門をくぐって行く。
金成が正面に着くと、そこには一人の少女が門の脇で立っていた。
やはり、顔立ちや肌などで日本人ではないとわかり、なおかつ美形であるためか結構目立っていた。
門を通る生徒は立ち止まる事はないが、ほとんどの生徒がチラッと視線を向けている。
「よぉ、またせたな。」
「あ、ボス!じゃなかった、金成くん!えへへ。」
エイミィが思わずボスと呼んでしまったため、金成が睨みつけるように視線を向けると、慌てて呼び直した。
中学校の時もそうだが、普段から金成の事をボスと呼んでいるためか時々そう呼ばれてクラスメイト達に不審に思われた。
あだ名という言い訳を並べても流石にボス呼びはなかなか信用してもらえなかった。
「はぁ...。気をつけてくれよ...。まぁいい、クラス見に行くぞ」
金成はため息を漏らし、エイミィを連れてクラス表を見に行く。
門を抜けた先には長い一本道があり、両脇に満開の桜が植えられている。
「あ、一緒だね!よかったぁ」
「あぁそうだな、よし。教室に行くか」
金成達は運が良かったらしく、同じクラスになることができた。
エイミィとしては、金成と同じクラスである事は嬉しいが、それ以上に護衛という任務がある以上同じクラスになれたことに安堵していた。
教室につくとエイミィが視線を集めるが、気にする事なくそれぞれの席へ着く。
「入学式楽しみだねー。ガイダンスとか何があるかな!」
「んー、どうだろ。まぁ今年はオールマイトが雄英に就任するって情報科の日陰から聞いたからきっと面白いことになるんじゃないか?」
「あぁ、確かいってたね!そっかぁ、でもオールマイトが普通科にはこないよねぇー」
「まぁしょうがないだろ」
エイミィは席につくとすぐに金成の元へ近づき、普段通りに会話を弾ませる。
周りの好奇な視線に怯むことがないのはなんとも肝が座ってるな。
まぁ小さい頃からの環境のせいもあるか。
結局、誰にも話しかけられることなく教師がきた。
そのままある程度挨拶をすませると教師の指示で体育館へ向かう。
金成は移動中に単なる興味本位で見聞色の覇気で校内全体の様子を見る。
「へぇ、流石に雄英高校と言ったところか。」
「ん?どうしたの?」
隣を歩くエイミィが不思議そうに聞いて来る。
「いや、校内全体を調べたんだが、結構できそうなのがいるぞ。多分オールマイトもいる。大きい気配を感じるし」
「ほーほー。どんくらいできるかな?私戦って見たいかも。」
「.....全力を出せばいい勝負ができるんじゃないか?」
「ちょっと何その目。なんかすごい傷ついた!」
エイミィは随分戦闘狂となってしまったのか。
そう疑問に思うほど最近特に戦闘好きになってしまったな。
まぁ、別に護衛をしっかりすればいいんじゃないかとは思う。
「いや、すまんすまん」
「なんか素っ気ないなぁ。ボスたまにそういうとこあるよね!」
はぁ。コイツはちゃんと隠す気があるのか?
再びのボス呼びにため息をつき、だれかに聞かれたときどうしようかと考えを巡らせる。
その後もエイミィが騒ぎ立てたためか教師から怒られて、やっと静かになる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
体育館に着くと長い入学式が始まった。
有名校であるためか、偉い方々が多く訪れているため入学証書を貰うまでが本当に長い。
意味もないような挨拶が長々とされているため退屈している。
予定では1時間30ほどかかるらしい。
「はぁ....。退屈だ」
「しょうがないよボス。ちゃんと聞いてあげなきゃ可哀想だよ」
エイミィも否定はしないため、退屈なことに変わりないらしい。
それから数分と立つがついに我慢ができなくなった。
暇つぶしのため、覇気を広げて校内の様子を探る。
「ほぉ、ヒーロー科が校庭で何かしている」
「へぇ、何してるんだろ?」
「さぁ、でも時々気配が大きくなるから個性を使ってるんじゃないか?」
「ふーん。」
エイミィはそれほど興味が無かったのかそれだけ言って前を向く。
金成は興味があったため詳しく知るために覇気を強める。
見聞色の覇気は元々は人の心の声が聞こえるというものであったが、それを利用して周りの様子を探ることができる。
ーーーほう、個性ありの身体測定か。なんだそれ、面白そうじゃねぇか。
あぁ、俺も参加したかったなぁ。
そうして他人の心を覗きながら自分も近くで見てるような感覚になって行く。
ーーーへぇ、爆豪ねぇ。結構いい力じゃないか。それに、爆豪を止めた教師の個性。相手の個性を消すのか?ふむふむ。
生徒の力に驚きながらも楽しんで行く。
ーーーん?なんだこの気配。オールマイトと似てる。親子か?いやこれは...
緑色の天パの少年がボール投げをしようとした時に急にオールマイトと似た気配を感じた。
不思議に思ってその少年の心を詳しく見るようにした。
ーーーくっくっく。そうか!ふはは!あぁ、そんな個性まであるのか!!!後継者ねぇ。
緑の彼の個性は元々オールマイトのものだったらしい。
平和の象徴と言われる、NO1ヒーローの個性は代々引き継がれているものだ。
人から人へ、それぞれが極まれし力を蓄えて次へ繋げるものらしい。
ーーーほうほうほう、へぇ。こんな個性もあるのか。あいつのもいいなぁ、俺の部隊に欲しいな。
次々と行われる個性把握テストで生徒が見せる個性に一喜一憂しながらも楽しんで行く。
「ふはは」
「ん?ボスどうしたの?」
どうやら声が漏れたらしい。
それほど金成がは興奮していた。
「いやなに、ちょっとヒーロー科の様子を探ってたんだが結構面白いのがいる。いい個性だ。うちに欲しいなぁ」
「ほぉほぉ。そう言えば、体育祭で生徒同士で戦えるらしいからそん時に勧誘でもしようか!」
「いやいや、どう言って勧誘するんだよ。冗談だよ。うちの会社は表では戦闘部隊なんてないことになってるんだから」
元々の戦闘部隊はチンピラやヴィランを、精神を叩き折ってから鍛え直した奴らだ。
それに裏について少し知ってしまっているため、マネトリアカンパニーの社員寮に全員詰め込んでる。
まぁ、元々家がない奴も結構いたから反抗がなく喜んで訓練している奴が多いが。
金成がそうやって暇つぶしをしているとやっと入学式が終わった。
それが終わると揃って教室へ戻る。
そのあとは休み時間を挟み、ガイダンスが始まった。
普通科であるため特にこれといった面白い事はなく、一般教養の授業内容についての説明だ。
まぁ、その教師がみんなプロヒーローって言う一風変わった事があるんだが、まぁいい。
入学式が終わり教室でのガイダンスを終えると、帰るために校門へ向かう。
そこで連絡を取っていた努にあった。
エイミィを連れていたためニヤニヤしながらも弄られたが普通に友達で通した。
それから努に用事があるといってエイミィと共にマネトリアカンパニーへ向かう。
雄英から離れると、路地裏へ入る。
其処には黒子服を着た日陰が待っていた。
「ボス、それにエイミィ。お迎えにあがりました」
「あ、日陰ちゃん!やっほー!」
「あぁ、よし、行くか」
日陰は一礼をすると、そのまま金成たちを掴み影に引きずり込んだ。
次に気がつくと其処は社長室であった。
「よし、予定通り幹部会議だ。会議室へ向かう。30分以内に集まってくれ」
「わかりました」
日陰は了承するとそのまま影に入り込んで幹部達を連れてくるために個性を使った。
「じゃぁその間に着替えるぞ」
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30分後、社長室がある階にある会議室で金成は待っていた。
服装は、黒をベースにしたスーツで、目元だけ隠したパーティなどで使うような仮面をかぶって待っている。
すでに幹部達には顔を見せているが、なんとなくだ。
こっちの方が雰囲気がいいしカッコいいからな。
そうしているうちに次々と幹部が部屋に入ってきて、それぞれ指定された席へ座る。
「よし、席に着いたな。では幹部定例会議を始める」
金成は威厳が出るよう若干低めの声を出し、始まりを告げた。