Fate/Observe   作:えんびー鉛筆

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この話は、最初はマスター兄貴と鯖藤丸君で書こうと思っていたものを肉付けし肉付けし限界を留めなくなったところを、数ヶ月熟成させたのちミンチにした感じになってます。最早別物です。まだ料理にはなってません。
所々にその名残がある仕上がりとなっています。よろしくお願いします。

聖杯戦争のルールがかなり弄られていますが、一応筋は通るように設定したつもりです。もし全てが明かされたのに「これ明らかに勘違いしてるよね」となりましたらご指摘お願いします。


導入

 思考の何処かで、自分が床に倒れることを理解していた。

 部屋は眩い光と濃密な魔力に包まれ、それを何故か吹き始めた風がかき回している。

 ばちんと視界が何度も瞬いて、身体中が焼きごてを押されたかのように燃えていた。神経が焼ける、焼き切れる。

 ……それでも自分は、成功させた。あんなにも出来損ないだった自分が。

 一度の失敗もなく。

 

 また目の前で火花が散った。

 起き上がる。上体を起こし、ゆっくりと足を地につけた。まだ立ち上がることは出来そうもない。

 ……吐き気が酷い。口をおおう。

 渦巻く魔力の中心は、用意された魔法陣だ。

 まともに機能しない視界。どうにか目を凝らす。

 吹き荒れた魔力が人の形を取り始めた。

 

「問おう」

 凛、と声が響く。

「貴方が、オレのマスターか」

 好感の持てる青年の声だった。平凡な声だった。

 平凡という事は脅威に感じないという事。流石に無害な相手に不快感を覚えるほど捻くれている人は例から除外していいだろう。

 きっと微塵も不快感を感じさせない、何か術をかけられているのではと考えてしまう位に平凡な声だった。

 ……これが、英霊? この、平凡な青年が?

 

「そうだ。お前が私のサーヴァントか?」

 混乱する頭で問いかける。

 青年は一拍おいて頷いた。そして首を傾げ、微笑む。

 

「クラスはシールダー。真名ギャラハッド、宜しく頼むよ。マスター」

 背丈程の十字架を模したような盾を片手で支え、彼は「唯一聖杯を手にしたと名高い騎士」の名を口にした。

 

 

 

 ……そこで一度、記憶は途切れる。

 

 恥ずかしい話だが、自分は出来損ないである。

一工程(シングルアクション)の魔術の行使にも支障が出るような、致命的な設計ミスがある。

 生まれ持った才能全てが、そのせいで無為と化した訳だ。

 いくらサーヴァントの召喚が魔力を消費するとはいえ、気絶なんて。

 

 やっと意識が回復した時には、体にブランケットが掛けられておりすぐ近くにシールダーが座っていた。

 勝手に自分の鞄を漁ったのか、このサーヴァント……まあ良い。特に盗られて困るものもないし。

 

「起きた? マスター」

「……」

「突然倒れるからびっくりしたよ。体調でも悪いの?」

 薄く笑みを浮かべ、サーヴァントは柔らかい声を降らせる。

「いや」

 そう呟くのが精一杯だった。

「そっか。……色々と聞きたいことがあるから、この状態のまま質問するね」

 シールダーは勝手に話を進めて行く。

と、言うよりシールダーなんてクラスは初耳だ。時折召喚されるイレギュラークラスの類なんだろうか。

 

「この聖杯戦争は二十一人で行われるって認識で合ってる?」

二十一人……そんなに多かっただろうか。二十はなかったと思う。

 話すのも億劫なので黙っていると、シールダーはそれを肯定と解釈したのか次を話す。

「令呪は一人一画で、聖杯を求めて殺しあう」

 だよね? と念押しされる。黙っておいた。確かにサーヴァントを律したり強化するための令呪は、先ほど確認した時には一画だった気がする……ような。

 

「オッケー、何となく分かったけど……マスターはまだ動けそうにない? 作戦会議しようか。結界は補強したほうがいいよね?」

 相変わらずシールダーは返事を聞かない待たない。

 辛うじて絞り出せた声は

「任せる」

 のみ。

 何だってこんなに話しかけて来るんだこのシールダーは。面倒この上ない。

 睨みつけても気にせず、サーヴァントは盾をゆっくり持ち上げ。

「……これでよしっと」

 どん、と自分を覆い隠すように立てた。日光が遮られて視界は薄暗くなる。

 

「で、マスター。方針は?」

 深海を思わせる青い瞳が自分を、真正面から見つめている。

 ……まさか、これで? 盾を立てただけで結界になるっていうのか。

 いや、なってるから恐ろしいのだけど。影法師とは言え英霊に祭り上げられたそのひとの影。

 現代の尺で測ってはいけないということか。

 

 

ーーーーー

 

 

 頭痛がする。最悪だ、キャスターは毒付いた。

 自らを召喚したマスターは余りに異質で、存在を認めがたくて、その上戦いを勝ち抜ける気がしない。

 少しかさついた黒髪に、これまでで乱れたのか緩い着物。額にはサークレット。肩に掛けた鞄は使い古されたのか傷だらけだ。

 

「……なまえ、きゃすた……?」

「キャスターだ」

 座り込んだままの彼女は覚束ない発音で自分を見上げる。何度か瞬きをしたのち、彼女はゆっくりと口を開く。

 

「つかれたから、おぶって」

「……」

 両手が救いを求めて伸ばされる。何の疑いもなく、自分は助けてもらえると信じている。

 数秒。手を取られない彼女の顔が薄く曇る。

 

 逡巡の後──数秒だとしても戦場を駆けた男からすれば十分過ぎる時間と言えるだろう──キャスターは慣れた手つきで緩んだ帯を締め直すと彼女を抱き上げた。

 彼女の見た目にそぐわない軽さだった。まるで中身が空っぽのような。振ればカラカラと音がしそうだ。

 

「わあ、たかい」

 あどけない笑みを浮かべた彼のマスターは、きゃすたーもみて、と言わんばかりにキャスターが纏う外套を引っ張る。

 開ける視界。

 顔も外套で隠していたキャスターは、突然目に飛び込んできた日光に八つ当たり気味に舌打ちした。

「これでは報酬は望めそうにないな、加えて覚悟も何もない──反吐が出る」

 

 

ーーーーー

 

 

「アナタ凄いね! アナタと居ればワタシ、マホウ使い放題ね!」

 がくん、と派手に少女の頭が揺れる。目の前に立っていた白衣の女性に肩を掴まれ、前後に揺すられ。

 少女の髪は前後に揺さぶられたせいで乱れていたが、彼女にとってはそれより何十倍も大事な事がたった今起こった。

 

「は、はい……って、えっ」

 

 少女の疑問が口をつく前に、女性は一歩引いてくるりと回る。話しかけるタイミングを失った少女は、曖昧に指を組んだ。

 そんな艶やかな肢体の少女の周りを跳ね回わる女性の姿は、随分と異質だった。

 羽織った白衣は前を閉じていないのに暴れはしない。白衣の襟にも届かない茶髪には、所々に金色が混じっていた。

 両肩に掛けられた、胸の辺りで交差するベルトに固定された無数の試験管が悲鳴をあげる。少し乱暴に動けば全てが割れてしまいそうなほど、試験管の間隔は狭い。

 その上、中に見える液体はどう見ても毒物ばかり。

 正に毒々しい色だったり、全く交わらない二色が詰められていたり、少しずつ色が変わっていったり、気体が渦巻いていたり。

 

「アナタ、名前は? ワタシはね、ワタシはねえ!」

「あ、あの……」

 困惑する少女を置いてけぼりにして、跳び回る白衣の女性は満面の笑みで続きを吐く。

「ふふ、忘れちゃった! だからアナタが名乗って!」

 そしてまた彼女はくるりと踵を軸にして回った。溢れんばかりな歓喜のはけ口であるステップはとまらない。ついでにジャンプも。

 

 そんな自分より年上であろう同性を見て、異例の事態に少女は戸惑うばかりだった。

 

 

ーーーーー

 

 

「うわ、小っさ」

「開口一番それとは随分なマスターだな」

 召喚陣の中央に降り立った少年を見て、赤髪の少女は呻き声を上げた。

 

「小さいのは本当の事じゃん、私そんな趣味は無いつもりだったんだけど。英雄っていうからてっきり、もっとガタイの」

「……クラスはアーチャーか……」

「聞いてる?」

「ん? ああ聞いてる聞いてる」

 わざとらしく耳をふさぎながら、青い髪の少年の姿をしたサーヴァントは面倒そうに目を細めて返す。

 それに少女は溜息をつき、少年は苛々と腕を組んで不遜な態度をとるマスターを見上げる。

 

「とにかく、君じゃ戦えないでしょ。どうしたもんか……隠れ通すか……」

「これだって十分に戦えるんだが」

「はいはい、そうだね」

 あー困った最悪だ、と当てつけのように呟く少女に数分は耐えていたが、とうとう堪忍袋の尾が切れたらしい。

 これでも自分は他と遜色のない戦士だ、と喚きたくなるのを必死に飲み込んで少年は言う。

「これでもオレは貴女を守ってみせるつもりだ。それとも、これでも力不足か」

 

 何の気なしに、まるで撫でるかのゆっくりと倒木にに置かれた彼の拳──勢いは無かったし、筋肉もあるようには見えない──が、派手な音を立ててそれを粉砕した。

 いくら倒木とはいえ自分の両腕で抱えることは到底できないような太さである。

それの成れの果てが少女の頬をかすめて飛んでいく。

 

「へ」

「何ならこの廃屋を壊そうか。ここら一帯を壊そうか。やろうと思えば出来るぜ、オレ」

 固まった少女は自身のサーヴァントを見下したままだ。とはいえ、自分が如何にサーヴァントと言うものを勘違いしていたのかをこの数分で突き付けられた。

 

 しおらしくなった自らのマスターを見上げ、赤い瞳が弧を描く。

 

「サーヴァントアーチャー、召喚に応じ参上した。この身は誉れある戦いを望む。お前みたいな未熟なマスターに真名を授ける気にはならん、精々頑張ってくれよな」

 

 未熟、を強調されたその一言に一転蒼白になった彼女から、見る価値もないと言わんばかりにアーチャーは目を背けた。

 

 

ーーーーー

 

「随分とまた、普通でない聖杯戦争が始まったものだ」

 この地で最も霊脈の集う地にて、風変わりな風体の男は呆れたような声を吐いて蒼穹を見上げた。

 網のように張り巡らされた魔力の壁が空を見る視界を曇らせる。

 この地は既に、強大すぎる結界に覆われていた。それがいつからかなのか男は知らないが、彼が気が付いた時にはもう存在していた。

 恐らくこの結界の存在は自分だけが知っているのだろう。何の証拠もないが、既に彼には確信めいたものがあった。

 

 

 この男は様々な聖杯戦争を知っていたが、今回はまた新しい形の聖杯戦争と言ったところ。

 男の立場も今までとは毛色が違い、表に出す気はないながら彼も戸惑っている節があった。

 

 何故こうなったのか、と考えはするが現状を受け入れはしている。特に恨みだの怒りだのはない。

 不満がない訳ではないが、だからと言って役目を放り出しはしないとも。

 それは自身の柱を壊すことになる。自分が自分で無くなるだろう。

 

 木漏れ日が、彼の首にかかる十字架を照らす。

 それは男自身の信仰の表れと言うよりは、首輪に近い。

 人々の祈りが集約された首輪。人々の信心がそれを作り上げた。

 彼に外せる代物ではないし、そもそも首輪を外す気など彼にはさらさら無い。

 

 腰まで纏わりつく長髪は鬱陶しいが、特に今後に支障はないだろう。寧ろこのままの方が楽な気がしなくもない。

 

 それにしても。ああ、これは嫌だ。

 何もせず、誰かが訪れるのを待ち続けるだけなんて。

 なんて退屈なんだろう。……と思ったが、あの時よりは遥かにマシだと思えたので良しとする。

 

「聖杯戦争の開幕だ。……と言っても、誰も聞いてないか」

 

 そう自嘲気味に呟くとゆっくりと彼はその場に腰を下ろし、瞳を閉じた。

 

 

 

 




嬉し恥ずかしこちらでの初投稿。
FGOのcmにて出したいサーヴァントに係わりのありそうなキャラが映っていたので、下手にそのサーヴァントに言及される前に突っ走ってやろうと慌てて書き上げました。今後そのサーヴァントに何か設定が加えられたとしても私は意に介さず、僕の考えた最強のオリジナルサーヴァントとして書き上げたいと思います。出来るんだろうか。
明かされていない主従はまだいくつかあります。言うほど多くないです。

最初はゲームで作るか三ルート書くつもりでふわふわと妄想していたので、書きたい話の量が凄いことになっています。
三ルート書けるんだろうか……多分無理だろうなあ……まずは一ルート頑張ります。
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