幻想と科学が混ざった世界で   作:spare ribs

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一話 始動

 

雄英高校

 

正式名称は国立雄英高等学校。

人口の八割が何かしらの個性をもっている世の中で個性を悪用するヴィランという存在。これらを取り締まるために生まれたのがヒーロー。いつしか彼らはヴィランの対応以外にも救助活動からパトロールまで、人々の生活を守る立派な職業と認められていた。飽和社会となっている現在でも、将来プロヒーローになるためのカリキュラムが充実しているヒーロー科は誰もが目指す目標となっている。

 

そんなヒーロー科をもつ雄英高校は毎年の入試の倍率が300倍と桁が異常な数字を出しており、偏差値は79を超える。驚愕な倍率の中、試験を通して見事勝ち上がった数十人がヒーロー科に席を置くことができる。

狭き門をくぐり抜け、雄英生徒の一人となったヒーロー科1年A組緑谷出久は高校生活に心踊っている…………訳ではなく。

 

 

 

気分が沈んだ状態で廊下を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

個性把握テスト_____

 

 

 

入学初日から行われたのは個性を使った体力テストであった。今の緑谷は個性を使えば、肉体が負荷に耐えられず大怪我をしてしまう。例え強力な一撃だとしても毎度自壊してしまうようではヒーローはやっていけない。テストで除籍処分の可能性もあったが、工夫を凝らすことでなんとか乗り切れた。それでも改善が必要であるが………

とりあえず保健室で指の怪我を治してもらった後、緑谷は教室に置かれたカリキュラム等の書類を回収するために教室に戻っていた。廊下を曲がろうとした時、一人の生徒が廊下の角から出てくる。いきなり前から人が出てきたためか「うわ!!」と過剰に驚いた声を上げてしまった。相手側も緑谷が声を出したことに驚いた様子である。

 

 

「す、すみません!!前を見ずに歩いていたようで!これは決して顔を見たからびっくりしたんじゃなくて全体的に僕が悪い訳でして………」

 

「いや、別に気にしてねぇけど。ん?確かおめぇは同じクラスの………」

 

その一言で緑谷はようやく相手と目を合わせる。その人はA組の中で見かけたことがある人物だった。

 

「み、緑谷出久です!!君は確か………回夜くんだったよね?」

 

「ああ、回夜悠月(かいやゆづき)だ。好きに呼んでくれ」

 

「う、うん。よろしく回夜くん」

 

 

廊下の角で鉢合わせたのは同じA組の回夜悠月であった。最初に彼の姿を見たときは何処か近寄り難い雰囲気があったのだが、今の対応の限りどうやら悪い人ではなさそうだ。ホッ、と安心する緑谷。

とはいっても持ち前のコミュ障が発動中。この後どういう会話をすれば良いのかそれとも何か一言喋ってから別れるべきなのか、心の中ではかなりテンパっていたのだが回夜の方から話題を切り出す。

 

「個性把握テストの後、何処か行ってたようだな」

 

「え?う、うん!保健室に行ってリカバリーガールに指の怪我を治してもらったんだ」

 

「そうかい。増強型の個性か?ボール投げの時、すげぇ記録出していたのは覚えてる」

 

「あ、あれは何と言うか………とにかく全力で飛ばそうって思いでがむしゃらにやっていたから。で、でも結果的には最下位で終わっちゃったんだけど…………」

 

「確かにまだ個性の制御が出来てねぇみたいだが、使いこなせれば化けるんじゃねぇか?」

 

「あはははは、ありがとう」

 

 

思ってた以上の高評価に照れ気味になって答える緑谷。しかし、元々この力は_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まるでオールマイトの個性みたいだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

この場の時が止まった気がした。

オールマイトの個性?確かにそうだ。僕が使ったのは“One For All(ワン・フォー・オール)”。代々受け継がれてきた個性で僕もオールマイトからこの個性を授かった。でもこの事は回夜くんは知らない筈だ。ではどうしてそんな事を?増強型の個性はありふれているし、関連づける理由としてはオールマイトのように『SMASH!!』の掛け声で放ったのだが………あれ?だからそんな風に見えたのか?

先程とは違う意味で混乱している緑谷だったが、そんな事情なんか知らないかのように回夜は話を続ける。

 

「まあとりあえず、同じクラスの人間だ。これからよろしく」

 

「こ、こちらこそよろしく!!」

 

 

緑谷の動揺を他所(よそ)に回夜は廊下を歩いていく。個性について悟られてないか色々心配なのだが、逆に聞くような真似をしたら余計に疑われる。結局緑谷は彼の背中が見えなくなるまで動けずにいた。

視界に写らなくなった途端に深いため息をつくのだが、ある事に気づく。

 

(そういえば、回夜くんの個性ってどういうのなんだろう?)

 

 

個性把握テストの事を思い返す。彼の成績は()()()()()()のはず。しかし、個性についてはどういったものなのか見当がつかなかった。

 

(回夜くんの個性は成績を見て今回のテストでは相性の良かったものだと分かる。他の人より身体能力が高い印象だったから増強型の個性?でもそんな単純なものじゃないような………まだ詳しく見ていないのに決めつけちゃ駄目か。どちらにせよ回夜くんは自分の個性を上手く使いこなせていた。

それ以外の人もそうだ。みんな自分の個性の使い方をちゃんと理解している。それに比べて僕はまだちゃんと理解できていないし、使いこなせていない。

今回の事で再度認識した。僕は人よりも遅れた状態から始まっているんだって………)

 

 

飯田くんや尾白くんの個性は分かりやすかった………

麗日さんの個性は物を浮かせられる、もしくは無重力の状態にできるのか?どちらにしても一度触るという条件があるようだ………

やっぱりかっちゃんの個性は凄い。“爆破”の個性であそこまでのスピードと爆発力を出せるのもあるけど、かっちゃん自身のセンスがあって応用が効いてる………

 

ブツブツと今日あったことを分析しながら教室まで歩いていく。その姿を見た人は少なからずドン引きか何言ってんだこいつ、という目線を向けるだろう。

 

 

 

とはいえ、この鉢合わせこそ緑谷出久と回夜悠月の人生に影響を及ぼす分岐点の一つとなった。

 

 

 

 

 

✳︎

 

 

 

 

 

(なんか誰かに見られた気がする………)

 

高校生活初日が終わり、帰宅しようとしていた悠月は身体の隅々を分析されたような感じがして一瞬身震いする。

体力テストは()()()()()()()()()特に目をつけられることは無いはず。こんな時期から噂する奴なんてそうそういねぇか、と結論付け校門を出ようとするのだが………

 

 

「待てーーー悠月ーーーー!!」

 

 

………そういえばこいつの存在を忘れていたと訂正する。

後ろを向けば一人の少女がこちらに向かってきていた。悠月と同じく制服を着ており、後ろにはフードが出ている。個性発現以前の時代で見ると女子高校生にしては幾分小さめな身長で、少し明るめな金髪は風に揺られサラサラな髪質をしているのだと分かる。十人が顔を見れば全員が可愛いと答えるであろう美少女が悠月のことを追いかけていた。

言葉として書けば、下の名前を呼びながらこちらに来てくれる可愛い女子。青春の一部とも言えるそのシチュエーションは男なら憧れる人はいると思う。

 

 

これが普通の状況であればだが………

 

 

 

さらに言葉を足そう。普通とは違う点を挙げてみる。

一つは追いかけてくる少女が背中に七色の宝石をぶら下げたような翼があること。

二つ目は日傘を持っていること。

最後に三つ目は………

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 

 

 

 

 

あり得ない速さで突っ込んで来る少女を悠月は直前で身を(かが)める。「え?」という声が聞こえたと思ったら悠月の真上を通り過ぎ、顔面から地面にダイブ…………なんて風にはならず、空中で急ブレーキをかけたかのように止まる。

 

「もう、悠月!なんでそこで避けるの!普通は受け止めてくれるんじゃないの!?」

 

「いや、普通あんな速度でぶつかったら背骨折れるわ」

 

「悠月なら大丈夫でしょ」

 

「理不尽すぎだろてめぇ」

 

 

コイツは常識を知らないのか。

 

 

「それになんで一人で帰ろうとするの。一緒に帰ろうって朝言ったじゃん!」

 

「あーなんていうか………忘れてた」

 

「嘘だね。悠月のことだから面倒くさかったからに決まってるし」

 

プンプンと頬を膨らませながら怒ってますアピールをしているのはフランドール・スカーレット。愛称はフランだ。どうやら昇降口辺りから飛ぶ……ではなく跳んで来たようで踏み込んだ場所に若干砂埃が舞っていた。今の高速移動が出来たり日傘を持っていたりするのは彼女の個性が理由だった。

フランの個性は“吸血鬼”。伝承にある通り常人とはかけ離れた怪力や再生力を合わせ、人間から吸血を行う悪魔である。その代わり太陽の光や十字架など弱点の多い不憫(ふびん)な存在である。

だがフランが言うには異形型という個性としての扱いだったり元々伝承が間違ったりしてる所があるらしく、弱点というより苦手や効果がないものが多いらしい。

 

まあダメなものはダメなんだが………

 

 

とりあえずこのままだと何されるか分からないので悠月はフランのご機嫌を取る。

 

 

「わかったわかった。じゃあプリンでも買ってやるよ」

 

「………餌付けで機嫌直すと思ってるの?」

 

「でも食べるんだろ?」

 

「………うん」

 

 

大体こんな感じでちょろい所があるので扱いやすいのかそうではないのか。少なくても悪い方向にはもっていかないようにである。不貞腐れると絞め殺されるか圧殺されるので要領と用法はきちんと守る。

……………あれ?殺す方法同じか?

 

隣にフランが来る。翼がパタパタ揺れているということは機嫌は良くなったのだろう。多少の付き合いがあるのでコイツが何を考えているのかなんとなく分かる。

 

 

「………帰るか」

 

 

「そうだね」

 

 

 

そうして二人は高校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 





回夜悠月

Birthday 9/10
Height 171cm
好きなもの 刺身、休み

蒼色の瞳をした生徒。A組に在籍。
状況を把握してから行動するタイプ。だが基本は面倒臭がり。相澤の合理的な考えとは気が合うところがある。


フランドール・スカーレット

Birthday 7/4
Height 150cm
好きなもの オムライス、血(悠月の)


個性について話す前に言っておきます。
この小説のフランの身長はある程度高くしています。東方projectのレミリアの説明で「十にも満たない幼児のよう」という内容があります。フランも似たような大きさなので女子高生がこの身長だと流石に低すぎかなと思い、変えました。

それに考えてみましょう。


成長して少し大人びたフランがブレザーを着ている。




……………良くないですか?



東方の中でも好きなキャラなのでこの小説を書き始めました。
それじゃあオリ主である悠月はどうなんですか……それは今後のお楽しみという事で。ヒロアカに合わせた結果こういう風になったのでご了承下さい。


ここから細かい設定を。


フランドールは元々吸血鬼ですが、ここでは個性“吸血鬼”として有しています。原作だと梅雨ちゃんのような異形型の扱いです。
また太陽に焼かれたり流水を渡れなかったり、東方作品では色々と弱点がありますが、本編で書いた通り苦手を多くしています。太陽の下では力が減少したりニンニクは絶対に食べたくない物みたいな感じ。ちなみに年齢は十五歳となっています。

設定は話数を重ねるにつれて変えたりするかもしれません(続くのか心配ですけど……)。その際は随時報告を入れながら書いていきますのでよろしくお願いします。

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