タイトル名思い浮かばなかった……
良いの思いついたら変えます(何もなかったらそのままにしておきます)
『第六試合!!綺麗なイバラには棘がある!触れると傷つくぜ?B組塩崎茨!!!
「おー、間に合った~」
第五試合を終えたフランが元のB組の席に戻ってくる。次の試合に何とか間に合ったようで、今は選手が入場している場面だった。
「あ、お疲れ。一回戦突破おめでとう」
「うん、ありがと」
ここまで試合を見ていた拳藤は手を招いて空いている隣の席を勧める。そこに座ったフランはいつもの使っているフードを被ってスタジアム中央にいる二人の様子を見る。
茨の髪が特徴である塩崎は周りの熱気に圧倒されることなく、自分のペースを維持しているように見える。最終種目という大舞台で緊張してしまう人もいるだろうが塩崎はそれに当てはまらないだろう。
一方の悠月も歓声に動じることなく、片手をポッケに手を入れて自然体の様子だった。しかしそれは一見すると無防備に捉えられてもおかしくない姿だ。
「フランちゃんにとって馴染みのある二人だけど、どっちが勝つと思う?」
「うーん、そうだね……」
拳藤の質問にフランは腕を組んで考える素振りをする。複雑な顔をしていたが、すぐに申し訳ないような表情になる。
「本当はどっちも応援したい。でも塩崎さんが勝つことは無いと思う」
フランの一言に拳藤だけでなく他のB組の生徒も驚いた顔になる。実力者の一人である彼女がこうもハッキリと宣言したのだ。驚くのも無理はないだろう。
「勝つことは無いってどういうこと?」
「正確に言えば塩崎さんは勝つための手段を潰されてるって感じかな」
フランの補足に聞いた人間は?マークを浮かべる。
「まず初めに悠月の個性はどういったものなのか詳細は知られていない。唯一見せたのは騎馬戦の時、姿を消したのと紅白君たちを覆った純白の渦が悠月の仕業ということだけ。逆に塩崎さんの個性はこれまでに何度も人前で見せている」
まあ主に私のせいなんだけどね、と頬を掻きながら笑う。情報を持っているのと持ってないのとではそれだけで有利不利が起こる。試合に勝つために相手や環境について調べるのはそれなりにスポーツやゲームをする人間はやるだろう。それと同じように悠月も策を立てているはずだ。
「なるほど。それだけ悠月くんの事を知ってるからこそ分かった訳か」
「うっ……まあね」
拳藤に言われたから顔を横に逸らす。自覚はあるのか照れた所を見られまいとする姿は同学年ではなく年下の子と話しているかのような感覚だった。
『さあ!お互い準備は整ったようだ!!』
プレゼントマイクの一声で観客の熱が盛り上がる。フランはステージ中央に目を戻し、真剣な顔つきになる。
「けど塩崎さんもこの事には気づいているはず。対策も立てられているのを考慮してるだろうし、きっと初めにやることは______」
(先手必勝の短期決戦。不意打ちみたいな卑怯な真似ですが、今持てる最善の動きです!)
目の前にいる悠月を見て塩崎は試合の流れを決める。個性について知られているであろう事に対しての戦略。相手が考えてる動きをさせず、逆に自分が試合の流れを制する。主導権を握り、攻撃をし続けていればいつか活路が見いだせるだろうという訳だ。
『それじゃあ行くぜ?第六試合 STRAT!!!』
試合の合図と同時に塩崎は個性でツルを伸ばし、悠月を捕縛しようとする。第二試合での瀬呂の動きと通ずるものがあったが、彼女の狙いは場外ではなく、捕縛による行動不能。ツルで動きを封じてしまえば判定で勝つことが出来るからだ。
対する悠月はその場から動かずに立っているまま。このまま攻撃を食らうかと思われたが________
「なっ………!?」
塩崎のツルは悠月の目の前で止まったのだ。彼は一歩も動かず、ただこちらを見つめるだけ。
周りの観客は彼女が途中で止めたのでは?と不審に思うが、塩崎は今起きたことを冷静に分析していた。
(攻撃を止められた。あの方に届く直前、何かに
そのまま悠月の元に伸ばしても彼には届かず、引き抜こうとツルを引っ張っても壁のような“何か”から抜ける様子はない。このままでは駄目だと思い塩崎は伸ばしたツルを切り離し、新たに悠月に向けて放っていく。だが悠月まで届くものはなく、切り離されたツルが増えていくだけだった。観客も事の異常性に気づき始める。
『塩崎が怒涛の攻撃を仕掛けるも回夜が謎の力で止めていく~!!一体どうなってんだ!?』
『塩崎が切り離したツルの先端が回夜から一定の範囲で
暫く攻め続けていた塩崎だが、埒が明かないと思い一旦攻撃を止める。
「もう終わりか?」
声が発せられた瞬間にぶら下がっていたツルの先端が灰になったかのように崩れ落ちる。遮るものが無くなったことで二人は目を合わせる。
呑まれるような蒼い瞳。それはまるで未知の領域に脚を踏み入れてしまったかのような______理解ができないという今まで感じたことの無い恐怖が彼女を襲った。
(臆してはいけません!私はここで勝つために………託してくれた皆さんのために!!)
フィールドを埋め尽くす勢いでツルを伸ばし、悠月を襲う。当然のように不可視の壁に阻まれるが、彼女の本命はこの攻撃ではない。ツルの一部を地中に沈みこませていく。その後、ステージが軋む音を出し、悠月の足元が盛り上がった。
塩崎の頭にはある一つの仮説が浮かんでいた。不可視という壁が彼の周りを囲っていても地中からの攻撃には対応していないのではないかと。攻撃を防がれていてもそれは見えない壁があってこそだ。壁の内側から仕掛ければもしかしたら届くかもしれない。
目の前の茨の波が囮となっている内に仮説を信じて下から襲撃をするが……
「正解だ。だがまだ足りねぇ」
トンッ___と地を蹴って後ろに下がる。その瞬間、悠月がいた所に極太のイバラの鞭が地中から貫いた。複数のツルを束ねた攻撃は悠月を捕らえられず、小高い山のように形成される。塩崎は決めれなかったことに悔しがるも、まだ終わってはいないと次の手に転じる。
彼女の個性は水と日光さえあれば伸縮は自在に行え、切り離すことも可能だ。今の一手が決まらなかったと言って制御が切れた訳ではない。空に向けて伸ばしていたツルを操り、そのまま下に向けて相手を追従する。
それに対して悠月は無造作に右腕を振るう。
風切り音_______
不可視の斬撃が地中から生えている根元から切り裂く。伸ばされたツルは自身と繋がっていれば自在に操れるが、逆に切り離された先は再び操れることはない。自身の攻撃手段であり、同時に守備の役目となっている個性は目の前の相手には未だ届かずにいた。
不意をついたつもりの攻撃も対処された。元々短期決戦で終わらせようとした試合はもう何分か経過している。
次はどのように攻める?これも対処されたら?そもそも相手は一体どんな個性を?
「
「ッッ!!?」
腹部に衝撃が奔る。どう攻めれば良いのか迷った隙が彼女の動きを鈍らせた。どうやって攻撃したのかも分からない不可視の一撃。その衝撃で塩崎の身体は簡単に宙を舞う。
(このままじゃ……!?)
吹き飛ぶ勢いが強すぎる。このまま行けば場外になってしまうだろう。どうにかして耐えようと塩崎は地中に巡らせていたツルを更に下に伸ばす。そして船の錨のように固定することで何とか自らの身体をつなぎ止めた。無理に吹き飛ばされるのを対処したせいで身体に負担がかかるが、歯を食いしばって何とか耐える。観客も彼女がこらえたことに感嘆の声を上げるが、対峙している悠月は違った。
「なるほど。さすがにどうにかするか。だが
その瞬間、純白の息吹が解放された。
この世に存在するのかと思わせる圧倒的な白。それは奔流と化し身体と地面を繋いでいたツルを断ち切る。肩甲骨辺りまでの髪型になった塩崎をつなぎ止める物は無くなった。再び引き起こされた暴風によってまるで風に吹かれるビニール傘のように吹き飛ばされる。
受身は取れそうにない。危険に対する本能が働いたのか目を閉じて身体を丸める。どのくらい飛ばされたのか分からないが、この身に起きる衝撃に歯を食いしばって耐えようとする。
_____しかし、何時まで経っても衝撃を感じることはなかった。
「……え?」
目を開けてみれば自分の身体が浮いているのだ。一体どういう事なのか今の状況に慌てるが、やがてゆっくりと身体が降りていき地面に優しく着地した。自分の前には白線が敷かれている。つまり場外に出ているという事で勝負が決まった。
「塩崎さん場外!!よって回夜くん!二回戦進出!!!」
歓声が湧く。前を向けば対戦相手だった悠月がこちらの様子を一瞥した後、踵を返してステージから去っていく。
「本当に負けちゃった……」
試合を見ていた拳藤は自然と声を漏らす。
相手の個性は分からなかったが、それでも塩崎は理想的な攻撃をすることが出来ただろう。しかし、どの攻撃も対処され挙句の果てには手心を加えられた。彼にとって本気を出すまでもなかったのだ。
「それじゃあフランちゃんの次の相手は……」
「うん。悠月になるね」
試合の結果は分かっていたが、次の対戦相手が悠月だと確定した。実力者揃いの最終種目だが、その中で最も強いと言えるであろう人物。本気にならないと彼には勝てないだろう。
(予想はしてたけど、いざ来るってなると身構えちゃうな)
実際に彼と戦うとなると試合の結果はどうなるか分からない。勝つことが出来るのか不安が残る。だがそれと同時に、この戦いを待ち望んでいたかのように彼女の身体は疼いていた。
*
塩崎が開けた穴をセメントスが修復後、次の試合が行われる。
第七試合、切島VS鉄哲。
個性が被っている二人の対戦。お互いに“硬化”と“スティール”でガチガチに身体を固めた状態で殴り合いになる。まさに男の意地をかけたぶつかり合いだったが、両者共に顔面の一撃でダウンとなり、決着は持ち越しとなった。
第八試合、爆豪VS麗日
一番不穏な試合だと多くの人間は危惧してたが、その予想は当たっていた。女子相手でも容赦なく“爆破”を使い、接近する麗日を何度も吹き飛ばす。戦力差があるのに決着をつけようとしない爆豪に観客席からブーイングがあがるが、相澤がこれを一蹴。麗日にはまだ何か手があると思っているからこそ爆豪はあのような対応をしているのだとマイク越しに言った。
「ありがとう爆豪くん。油断してくれなくて」
試合開始から暫くして、捨て身の特攻を繰り返しているように見えた麗日はここで
第五試合のフランが見せたものとは違うが、まるで流星群のように爆豪を襲う。何度も爆豪の攻撃に耐えた末に見せた決死の策。迎撃や回避を行う間に麗日は手が届く間合いまで詰めようとするが……
「デクのヤロウとつるんでっからな、てめェ。何か企みがあるとは思っていたが………危ねぇな」
最大級の爆発を起こして攻撃を粉砕した。
絶え間ない突進と爆煙で視界を狭めたことで自分に悟られずに策を仕込んだ。正直言って“爆破”で出せる出力が小さければ今の攻撃は防げず、回避に入るしかなかった。
今の攻撃で火がついたのか爆豪は本気の目になるが、その前に麗日は倒れる。ここまで蓄積したダメージで限界に来たのだ。ミッドナイトが両者の間に入り、麗日の行動不能で試合が終わった。
その後、小休憩を挟んで引き分けになっていた切島と鉄哲の簡易的なものとして腕相撲が行われるが、これに切島が勝利して準々決勝に進む選手が決まった。
準々決勝。
轟対緑谷の試合。障害物競走や騎馬戦で何かと目立っている緑谷だが自分の個性で自損してしまうデメリットがある。一方の轟は遠距離の攻撃に加え、近接戦になっても右手が触れれば相手を凍らせて動きを封じることも出来る。状況は圧倒的に轟の有利。向かってくる氷結を自損覚悟で指を犠牲にしながら凌ぐしかなかった。
何度か攻撃を防ぐ内に緑谷は右手の指を使い果たす。近づいた轟の氷結に捕まりそうになった時、先程より数段強烈な衝撃波が観客席まで届く。
「さっきよりずいぶん高威力だな。近付くなってか」
白い息を吐きながら緑谷を睨む。自身の氷結はそう何度も防げる訳では無い。既に緑谷は右の指と左腕を犠牲にしている。もう氷結を防ぐ手立てはないと思われたが……
「どこ見てんだ」
個性に耐えられず、身体は悲鳴を上げている。もう馬鹿げた一撃を出すのは不可能なはず。そんな中でも緑谷は壊れた指で無理矢理個性を使ったのだ。
「個性だって身体機能の一つだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう……!」
“半冷半燃”で氷結ばかり使っていれば体温が下がり、身体に霜が降りている。数回攻撃を見たことで轟が細かく震えていることに気づいたのだ。しかしそれは左側の熱を使えば体温調節も可能と思われるが、使う様子はない。
過去に起きた辛い仕打ちと母を傷つけられた原因である父に対する拒絶の意思。そんな思いを緑谷は馬鹿らしいと吐き捨てる。
「半分の力で勝つ?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ______全力でかかって来い!!」
雄叫びのように声を上げる。イラついたように轟は接近する。突っ込んで足を上げた瞬間に懐に飛び込み、腹に一撃を入れた。身体がボロボロになっても何度も立ち上がって轟に向かっていく。見ている人の多くは何が彼をつき動かしているのかと不思議に思うだろう。勿論緑谷も勝つために戦っている。しかしそれ以上に彼は……
「ふざけんじゃねえ。俺は左を、親父の力なんか使わずに……ヒーローになれる事を証明して______」
「違う!!それは君の____力じゃないか!!!」
左を使わせるように鼓舞しているのだ。普通なら勝負の最中に相手を気遣うことなんかしないだろう。だが緑谷は過去に囚われている轟を救おうと正面からぶつかっているのだ。
自分のことなど知らないくせに。同情なんてできないくせに。それでもお構い無しに突っかかるのはただ迷惑でしかないだろう。それでも緑谷は彼を救おうと、心の中の闇を取り除こうと必死に叫んでいる。
なんと言われても良い。罵られても、拒絶されても構わない。それでも心の闇から救ける為に叫んだ言葉は確かに轟に届いている。
「勝ちてえくせに……ちくしょう、敵に塩を送るなんて。どっちがフざけてるって話だ」
俯いていた轟はやがて左側から炎が溢れ出す。それは熱気が辺りを襲い、観客席にまで熱が届く。緑谷の言葉が轟の制約をぶち壊したのだ。お互いに笑って何かを話していた二人だったが、やがて次の攻撃で終わらせようと力を溜め込み始める。轟は氷結と炎を、緑谷は自らが宿すエネルギーを可視化するまで解放する。これ以上は危険と判断してかミッドナイトとセメントスが個性を用いるが、お互いの全力の一撃がぶつかった。
ぶつかったことによる衝撃と爆風がスタジアム全体に届く。氷結によって冷やされた空気が瞬間的に熱せられて膨張したことで今の衝撃が生まれたのだ。煙がステージ中を覆っていたが、晴れたことで二人の姿が見える。
『緑谷くん場外____轟くん三回戦進出!!』
スタジアム端までまで吹き飛んでいたようで、緑谷はそのままズルズルと倒れる。一方の轟は熱でジャージがボロボロになっているものの、しっかりと自らの脚で立っていた。ここ一番の衝撃を放った試合だったが、その余波からこれまで以上にステージが損壊している。修復作業も必然に時間にかかり、一旦休憩を挟んでから試合が再開することになった。
「………」
「お?なんだ回夜。どっか行くのか?」
ステージの修復作業で一旦進行が止まっている時間。ここまで試合を見ていた悠月が席を立つ。
「便所。ついでに控え室に向かう」
「余裕をもつのは大事だよな。試合頑張れよ!」
上鳴の応援を適当に聞き流し観客席から離れる。スタジアム中央で響いていた喧騒とは変わって静かな空間。人工的な明かりが淡く照らす廊下を一人歩いていく。
「………回夜か」
「あ?」
用を済ませ控え室に向かう途中、先程試合を終えた轟がいた。壁に寄り掛かり自身の左手を見つめている。一般の人は入れない通路。人目につかないその場所は二人の会話を聞く者はいなかった。
「何でそんなの所にいんだよ気色悪ぃ」
「……すまねえ」
変な時に出くわしたと悠月は怠そうな顔をする。何処か気分が沈んでいる轟。こんな事なら騎馬戦での表情の方がまだ良かった。そんな思考をしていた悠月をよそに轟はポツポツと話し始める。
「俺は親父を見返す為にこの体育祭に挑んだ。けれど騎馬戦ではお前に負け、さっきの試合では緑谷に諭された」
確かに緑谷は試合の最中、轟に左側を使うよう促していた。傍からすれば本気を出せと啖呵切ったものの、結局負けてしまった奴と認識されているだろう。付き合いは短いし別につるんで来た訳では無いが、悠月は周りが認知しているような奴では無いと思っていた。
「それで?おめぇの心情ってのは変わったのかよ」
「……分からねえ。左側を使わないって決めてたのに結局使っちまった。緑谷との試合が終わった後でも、その判断は良かったのかどうか迷ってる」
弱気な姿を見せるほど彼にとって重要な選択なのだろう。無くならないと思っていた制約や過去の出来事をいきなり変えようとするのは難しいだろう。緑谷から自分を変えるキッカケを貰ってもその後どのようにしていけば良いのか轟は悩んでいたのたが……
「俺にとってはクソほどどうでも良い話だ」
「……んだと」
その一言で轟は苛立ちを見せる。自分が必死に考えてる事をこうも軽く扱われたら誰でもそうなるだろう。そんな彼の様子に悠月は心底面倒臭そうに頭をガシガシと掻く。
「俺は
だから今の話なんてどうでも良いし聞いても意味がねぇと言葉を吐く悠月。それとは対称に轟は驚愕する。親元を離れて生活している学生は多少いるだろうが両親がいない境遇の人間はそうそういない。当たり前にいる存在だと思っていた事が、彼にとっては当たり前ではなかったのだ。
「……悪ぃ。配慮が足りてなかった」
「チッ……その対応はまた面倒くせぇんだよ」
轟の態度を見て苛立ったように舌打ちした後、悠月は歩き始める。元々控え室に向かうためにここを通ろうとしたのだ。先程の話を聞いてか何も言えずにいた轟だったが、横を過ぎ去る瞬間、ポツリと彼は独り言のように声を漏らす。
「そんな事で悩めるなら良かったもんだ……」
それを聞いて轟は振り返るが、悠月は構わず歩いていく。今の言葉はどういう意味なのか轟は分からなかったが、後ろから見た彼の姿は何処か自分自身を思わせる雰囲気があった。
*
飯田と骨抜の試合はギリギリ飯田の勝ちだった。
“柔化”によってドロドロの沼になるフィールドは飯田とは相性が悪い。走れる環境があってこそ彼の個性は真価を発揮するからだ。幸いにも個性の範囲がフィールド全体ではなく一部分までしかないようだが、足をとられてしまえばその時点で決着はつく。当然飯田もその事は分かっているので“レシプロバースト”を使い、走り幅跳びの要領で骨抜に急接近する。
ここまで一気に接近されるとは思っていなかったのか骨抜は防御する間もなく顔面に重い一撃を貰う。意識は手放していなかったようで飯田の着地点を更に“柔化”させるが、身体が沈められる前にもう一発蹴りを入れた。
骨抜の行動不能で飯田が勝利したが、沼状になったステージは変わらない。身体がどんどん沈んでいく姿で何とも締まらない最後となった。
『さあ!次も波乱の展開になりそうだ!!前の試合では芸術点MAXの弾幕を披露したB組、フランドール・スカーレット!!
そして次はフランと悠月の試合となる。
「まさかこんな早くに戦うことになるなんてね」
「まったくだ。おめぇとは戦いたく無かったが、これも
「おおー。まさか悠月の口からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった」
驚いた顔をしながらどこか嬉しそうに笑うフラン。四方を埋める熱気が彼女の闘争心を沸き立たせているのが分かる。何気なく上を見ればそれなりの雲が太陽の近くを浮かんでいる。あれだと試合の途中で太陽が遮られるかもしれない。運が彼女を味方しているのか、はたまた自分の運が悪いのか。嘆いても仕方ないだろう。
“吸血鬼”の個性は超怪力と幾千もの魔力弾を生み出す。太陽下では弱体化する等弱点はあるが、彼女の恐ろしさはこれだけではない。
(なんにせよ、ここが分岐点か)
目の前の相手を見据える。手を抜いたらと知られたらその後の対応の方が面倒くさい。ならここで本気になった方がまだマシだった。
相手も戦闘態勢に入っている。その顔は早く戦いたくてうずうずしているかのように笑っていた。
『準決勝第三試合!START!!!』
フランと悠月の戦いが今、始まろうとしていた。
次回はフラン対悠月の試合。
一番波乱の試合になりそうですが、分かりやすく伝えられるよう描写していけたらと思います。