暖かい風が吹き桜の花びらが空を舞う。それは出会いと別れ。真逆と言える二つの出来事が同時に起こり得る季節だ。今日も何処かで出会いがあり、愛が生まれ、幸福に満ちる者がいる。
だがそれと同時に傷つけられ、壊されて、打ちひしがれる誰かがいる。けれど簡単に救いの手が伸ばされる訳ではない。自分の事を第一にするあまり誰かを蹴落とすのは当然。むしろ救ける者の方がこのご時世少ないくらいだ。
例えこの場の一人の人間が消えようとも社会は廻り続ける。失った穴が小さくても大きくても、いづれ他の何かで埋められて無かったことになる。そしてこう言われるんだ。
そんな人いたっけ?_____と。
自分という存在が本当にいても良いのか時々考える。むせかえる人の波。周りを通る人間は彼を避けるように……いや、見えてなどいないかのようにすれ違う。
誰からも見られない。
誰からも必要とされない。
誰からも救けはない。
気づけば人の波はなくなり、誰もいない場所で一人取り残される。立つ気力もなく、その場に崩れ落ちる。
夜空を仰いで一人思考する。このまま朽ち果ててしまうだろうか。何も成し遂げないまま消えて行くのだろうか。疲労が積み重なっていたのか考えている間に意識が途切れようとしていた。
_____なにしてるの?
つなぎ止めていた気力が途切れかけていた時、すぐ横で声がする。星々が夜空を煌めく中、紅く光る瞳。薄れていく意識でもその瞳の色がはっきりと見えた。
貴方はだぁれ?
純粋な疑問なのだろう言葉。自分より幾分か背が低い少女。しかし此方に向けるその瞳は何処か穴の空いた……何も写さない空虚を思わせた。
俺は_______
その日はやけに月が大きく映った。
*
準々決勝第三試合。
ここまで十試合が行われてきたが、熱気が収まる様子はなく、むしろ盛り上がりを見せている。スタジアムにいる観客は勿論、警備中のヒーローやメディアの人間もこの後の展開がどうなるか予想がつかないでいた。
「とうとう来ちゃったか……」
この試合での主役の一人であるフランドール・スカーレットはスタジアム中央に佇む。自分とは少し遅れて対戦相手である悠月が目の前に立つ。これまで見せてきた面倒臭そうな雰囲気を出しているが、自分を警戒しているかのようにこちらを見据えていた。
「ふふ、まさかこんな早くに戦うことになるなんてね」
「まったくだ。おめぇとは戦いたく無かったが、これも運命ってやつか」
「おおー。まさか悠月の口からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった」
悠月の言葉を聞いてフランは驚いた表情をする。計算や予測で物事を決める彼の思考は神頼みや運のような空想じみたことをあまり言わない。ここで彼がそんな事を話したのは自分と同じように体育祭の熱にあてられたのだろうか。
『さあお前ら準備は良いか!?』
プレゼントマイクの一声で会場は最高潮に盛り上がる。もう少し話をしたかったが、周りの人間は今か今かと待ちわびている。時間をかけるのも悪いだろう。
空を見る。本気で戦いたいという彼女の思いが通じたのか大きな雲が太陽の近くを漂う。これなら試合の最中に太陽が隠れる場面が出てくるだろう。悠月もその事が分かっているのか半ば割り切った態度だ。
一番待ち望んだこの試合_____
『準々決勝第三試合!!』
目的はただ一つ_____
『START!!!』
全力で彼を潰すだけだ。
*
最初に仕掛けたのはフランのほうだ。“吸血鬼”による身体能力の増加を生かし、最初の踏み込みから急速に距離を詰める。“
「そう易々と近づかせるかよ」
だが、そんなことは彼も読んでいるはず。
突如、悠月の目の前に障壁が現れる。“未元物質”で作られたものだと見たフランは猛スピードで突っ込んでいたのを反時計回りに急旋回。悠月の死角から右ストレートを放つ。彼女の動きを捉えていた者は攻撃が入ったと思っただろう。しかし、返ってきたのはズンッ!!という重い音。何かに阻まれたように右手が止まり、衝撃が向かい側に巻き起こる。
明らかに防がれた。それを認識したと同時に謎の衝撃がフランを襲う。暴風に晒されて二人の距離は大きく離れた。
『コイツはすげーー!!強烈な一発が入ったと思ったら、逆に重いのを返したぞ!?』
『スカーレットは急速に旋回することで相手の裏に入りこんだ。そこからの一撃で大抵の奴は終わるだろうが、回夜はその動きを読んでいた。いくら不意を突こうとして策を練ろうとあのままじゃ防がれるだけだ』
そんなことは分かっている______
空中で体勢を立て直し、ラインギリギリで着地したフランはプレゼントマイクとイレイザーヘッドの解説に心の中で愚痴る。
悠月は元より前方から左側まで障壁……いや、翼を構えていた。不可視の状態が解除され、純白の翼が姿を現す。最初から馬鹿正直に突っ込むとは考えてなかったのだ。敢えて隙があると見せかけてそこから反撃に移る。まだ始まったばかりだが、実際に相手してみて凄くやりづらいと実感させられた。
体勢を整える際に彼の顔を見る。こんなもんか?と言いたそうな表情にフランはさらに闘志を燃やした。こちらとしても最初のパンチは挨拶代わりと強度の再確認。最初から決まるなんて思っていない。
一発でダメならそれ以上打つまで。
速さだけでなく力もフルに使うまで。
拳を奮う。何発も何十発でも。衝撃で何度も吹き飛ばされては詰め寄り、時には別の角度からも拳を奮う。翼に触れたことで手が血の色に変わっていく。それでもフランの攻撃は止まらなかった。少女らしからぬ雄叫びを上げる様子はまるで修羅に取り憑かれたかのよう。一撃一撃の威力は凄まじく観客席までその勢いが伝わるが、突破するより前に謎の衝撃波で吹き飛ばされる。
防御が崩れるか心が折れるか_____
「あきら…めるかーー!!!」
その時、太陽が雲に隠れて“吸血鬼”本来の力を取り戻す。先程より数段強烈な一撃。今までとは違う威力に悠月は顔を険しくする。
数秒経過した末、変化が訪れる。ミシ…ミシ…と受け止めていた翼に亀裂のようなものが入っていくのだ。それは防御するたびに大きく、深く刻まれていく。繰り出される拳で亀裂が全体に広がっていき……
ガラスが割れたような音が響く。
「ッ!?」
「はぁああああああああああああ!!」
悠月は咄嗟に両腕をクロスして顔を守る。フランの血に濡れた拳は確かに彼を捉えた。吹き飛ばされる悠月。このまま場外まで飛ばされるスピードだったが、フィールドの端に来るまでには余裕をもって着地できていた。
___
無意識につぶやく。ダメージはあまりない。吸血鬼による怪力を“未元物質”を纏って攻撃を防ぎ、更に力学操作を行うことで最小限の被害で済ませたのだ。だがそんなことよりも、USJの脳無戦の時に培った対物理障壁が崩されたことに驚きを隠せなかった。
肩で息をしながら笑っている彼女。追撃を行えばさらなるダメージを狙えたかもしれないが、その表情はどこか達成感を得たようだった。
「チッ、高校に入ってからまた力が強くなりやがったな?ヒーロー名『怪力女』が似合うんじゃねぇか?」
「ふふん、悠月を驚かそうって決めてたからねー。ていうかさっきの防御は衝撃を受け止めるじゃなくて“流す”のが主でしょ?」
脳無との戦闘で防御を突破される事態に陥った。圧倒的な力を正面から馬鹿正直に受け止めれば綻びが出る。その経験から衝撃を受け止めるのではなく、あくまで流す。同じように並外れた怪力をもつフランが相手でも力を別方向に分散させることで自らの防御手段を整えていた。
なら障壁を破られた原因は何なのか。力押しだったのもあるが、彼女は状況をぶち壊す手段_____
「ていうか次そのあだ名言ったら潰すから」
「本当に出来るから是非やめてくれ」
全てのものには“目”という最も緊張した部分があるという。普通の人間には分からないものだが、彼女はその“目”の部分を知覚することが出来る。恐らくそれを利用して障壁が最も脆い部分を突いたのだろう。“吸血鬼”の個性とは違う異質な力。悠月にとって怪力や魔力弾などよりも最大級に警戒すべき存在だった。
「マジで強ぇな……」
「え、何か言った?」
「なんでもねーよ」
無駄に聴覚が良いフランには独り言が篭って聞こえたようだ。追求されても本人に言うつもりはないので素知らぬ顔をする。そっかー、と両手をグーパーするフラン。“吸血鬼”の治癒力はボロボロになっていた手を完治させたらしい。ほんとデタラメだコイツ。
「それじゃあ続きをしよっか」
まだ遊び足りないかのように無邪気な笑顔で言う。試合は始まったばかりだ。二人はまだ奥の手を出していない。ここからが本番なのだ。
「そうだな。オメェの全力、ねじ伏せてやる」
「言ったなー、私の方こそコワしてあげる!!」
宝石がぶら下がったかのような翼を広げ、空に浮上する。太陽の光という制限がない中でフランは切り札の一つを宣言する。
「“禁忌”フォーオブアカインド!!」
突如フランの姿が霞み、新たに四人のフランドール・スカーレットが現れる。それは“吸血鬼”の個性によって作られた分身。一発攻撃を当てれば分身は消滅するが、一人一人が同じ戦闘能力を有している。一対四。単純に見ればこの戦況は圧倒的に悠月の不利を決定付けていた。
そんな状況の中でも、彼の顔は___
___何処か笑っていた。
「散れ、“
✴︎
「なんだ、ありゃあ……」
「上鳴ちゃんは見たことなかったわね」
「あれが悠月くんの個性……?」
「B組の子も凄いけど、悠月くんのは何ていうか」
次元が違う___
アリーナを覆うのは純白。しかし、それはこの世のものとは思えないほどの神々しさを放っていた。よく見ると白い何かは悠月の肩甲骨あたりから出ており、そこから巨大な二翼を形成していた。
その姿はまるで下界に舞い降りた天使のよう____
「いつ見ても凄いね悠月の」
「うんうん、すごく白いね」
「すごくメルヘンだね」
「おうどん食べたい」
「おめぇら緊張感ねえだろ」
四人になったフランと同じ高度まで上昇した悠月は彼女らの言葉に呆れた様子になる。実際戦う気力が削がれているので効果はあるのかもしれないが……
えっへへー♪と笑う彼女たちは見る人からすれば天使を思わせる。あいつ
「なんにせよ」
「これからが本番」
「そのメルヘンな翼」
「毟り取ってあげる!!」
狂気を孕んだ目で悠月を見据える。四人の内まず二人が先行。後方の二人は魔力弾を放ち始める。全員同じフランドール・スカーレットだ。連携など造作もないことだろう。しかし……
“未元物質”に常識など通用しない。
魔力弾は悠月に届くことなく、全て翼に阻まれる。大きく変化したのはここから。会場の覆うほど広げられた巨大な翼から淡い光が漏れ出す。やがて光は強くなり、熱線となった。突っ込んで来たフラン二人は回避が間に合わず、たちまち消滅する。やはり先行していたのは分身。本体は弾幕を張ってるどちらかになる。
「「だったら……これならどお!!」」
弾幕を放つのを止め、二人は手を掲げる。呼ぶのは世界をまるごと焼き尽くす魔剣。枝の破滅や勝利の剣とも称された神話の武器を冠する名だ。
「「“禁忌”レーヴァテイン!!」」
名を叫ぶと同時にスタジアムが真紅に染まる。
騎馬戦の際、見ていた人間に恐怖を植え付けたが、それが二人分。一人だけでも十分対処が厳しいのに普通の人間が相手するとなれば挟撃され一瞬で終了だろう。だが悠月の表情に変化はない。極限まで伸びたレーヴァテインが振り下ろされる。この“未元物質”においてこんなもの障害にならない。燃え上がる魔剣を悠月は回避するのではなく、二翼で受け止める選択をする。
「くっ………」
「「はあああああああああああああ!!!」」
魔剣と白翼がぶつかる。強大な力がぶつかり合ったことで莫大なエネルギーが生まれる。フランは“レーヴァテイン”に持てる限りの力を込めて突破しようとする。ぶつかった時は拮抗していたが、その甲斐があって徐々に炎の剣が押し始める。
このまま翼をどうにかすれば有利に働くだろう。しかしフランの頭の中ではモヤがかかったかのように違和感を感じていた。
(おかしい……悠月がこうも素直に力勝負するなんて有り得る?)
前の攻撃で自分の力がどれくらいか分かっているはず。真っ向からぶつかって勝てないのならば、力押しとは違った行動をするはず。増してや相手は悠月だ。最善の策を他に考えついていてもおかしくない。
何気なく浮かんだ予感。しかしそれは悪い方向で当たっていた。
「まっず!!」
空中で止まっていた身体を無理矢理動かして回避に移る。フランの真下から純白の翼が新たに襲いかかってきたのだ。
レーヴァテインと純白で視界が遮られ、音もなく来たからか気づくのが遅れた。はじめに対処していた翼をレーヴァテインで上手く流し、下から来る攻撃を何とか避ける。
(有利だと思ってたけど、まんまと誘導させられた!!)
下からの攻撃を対処したが、追撃が来る。翼を構成していた“未元物質”が一つに集約し、物理法則に従わない『質量』となる。悠月は手を上げてその後振り下ろす。それに連動するように『質量』がフランに向かって叩きつけられた。
空中で体勢を崩していたフランは咄嗟にレーヴァテインで受け止めようとするが、吸血鬼の怪力でも受け止めることができないと瞬時に判断。魔力弾を暴発する形でその場から離脱し、半ば墜落したかのように地に逃れた。
「っ……まだ来る!!」
地上に逃れてもフランの中では最大級の警報が鳴っていた。地を蹴り、フィールドの中央から全力で跳ぶ。
__フランのいた所は『質量』で押しつぶされ、地形の中心が大きく潰れた。
『おいおいおい、あんまり激しくやってると会場が壊れちまうぜ!なんでもありか!?』
プレゼントマイクが言ったことは正しいだろう。ほんの数分経過しただけでステージがめちゃくちゃになっているのだ。しかし、その感想を述べる間にも被害は進む。高度を下げた悠月は純白の翼を再構築してそのまま奮う。それだけで空気が凍り、轟の“半冷半熱”のような氷結が奔る。上空に戻る猶予もなく、回避は不可能。
__フランは氷結の山に飲み込まれた。
「…………やっと捕まえたか」
怒涛の攻撃をした悠月であったが、その表情はあまり芳しくなかった。
彼の“未元物質”はこの世の理から外れている物質を引き出し、世界の法則すらも書き換えることができる力だ。そこらの個性とはまるで格が違うと呼べる程に様々な現象を生み出せるが、強力ゆえに代償があった。“未元物質”を扱うたびに脳に多大な負荷がかかる。物質を操作するにも法則を書き換えるのにも万物を理解し、掌握する必要がある。情報の解析と書き換えのために脳を酷使しているのだ。
背中の二翼を消し地上に降り立つ。あれから状況が変わることはなく、勝負が決まったという雰囲気になる。ミッドナイトがフランの様子を確認しようと氷壁に近づく。このまま勝者宣言が伝わるかと思われたが………
___真紅の剣が氷河を貫いた。
これで決まったとは思っていなかったが、まさかこんな強引な方法で凌いだことに驚き、同時にあいつならやりかねないと悠月は思う。轟々と燃えるように輝く炎剣はその後氷河を真っ二つに叩き割る。衝撃に耐えられず、割れた箇所から崩落が始まった。重々しい音を立てながら崩れる中に金色の髪を揺らす吸血鬼が現れる。
「まだ…………終わってないよ」
その身体は無傷という訳ではなく、所々に氷が付着している。その中には細胞から凍らされた部分も見られた。最後の分身も魔力弾の暴発で消えている。
そして今までの戦闘によりジャージは傷だらけだ。生傷は再生できているが、息遣いは多少乱れている。“吸血鬼”の再生能力にも限界はある。あとどれくらい再生できるかは不明だが、そう何度も行使できないだろう。
それでもフランの目はまだ諦めてはいなかった。
「今にも倒れそうにしてるのにまだそんな事言えんのか。もう寝といた方がいいんじゃねえの?」
「ふん。確かにそうだけど悠月だって頭痛が酷いでしょ?私が運んでいくのも嫌だからはやく降参してくれない?」
「はっ、少なくてもお前より良好だ。安心しろ、おまえが倒れたら救護ロボが運んでくれるだろうさ」
「えー、そこは俺が運んでやるとか言わないのー?」
「誰がテメェの身体を好き好んで触んなきゃいけねーんだ」
「うわ、ムカついた」
「……それは俺の方が言うセリフだ」
「テヘ♪」
試合中にもかかわらず、途中から緩い?会話をする二人。ある程度付き合いがあるからこそ、出来ることなのだろう。この後も少し会話が続いて休戦状態になっていたが、悠月が先に区切りをつける。
「さて、観客がじれったくなる頃だ。そろそろ再開するぞ」
「そうだね。まあ、試合は私が勝つけど」
「ほざけ、試合はテメェの負けで閉幕だ」
悠月の背中からこれまで以上に“未元物質”がばら撒かれる。先程とは違って翼は四枚に増え、二対の天使となった。空間全てを塗りつぶしながら肌で感じるほどの威圧を与える。これまでの戦いを見た者は罪を裁く断罪者に思えてくるだろう。まるで目の前にいる吸血鬼を断罪するかのように……
(あぁ、やっぱり凄いなぁ……)
傍から見ても圧倒されるのだ。目の前で対峙するフランには相当な圧がかかっているだろう。しかしそんな状況でも彼女は笑っていた。多少制限はあるが、本気を出さなければ勝てない相手と戦えるのだ。
いつもとは違う瞳で私だけを見てくれている。隣にいてくれた彼が向き合っているのを見てフランは嬉しく感じていた。
この戦いがずっと続けば良いのに。そう願っても限界がある。だから楽しもう。心の底から楽しんで最後は絶対に____
私が勝つ。
「違うね。悠月がコンティニュー出来ないのさ!!」
「抜かせ、テメェがゲームオーバーになんだよ」
悪魔と天使が再度ぶつかる。
「今度はこっちから行くぞ」
悠月は翼の一部から細長い結晶の槍を形成していき豪雨のように降り注ぐ。フランは弾幕を張り迎撃を行う。結晶と衝突するたびに爆発を起こし、会場を揺らしていく。互いの遠距離攻撃をぶつけ合っていたが、次第にフランは押され始める。降り注ぐ結晶の量が多すぎるのだ。このままだと押し負けると判断したフランはカードを一枚切る。
“禁忌”禁じられた遊び____
フランを中心に十字架を模した魔力弾が回転しながら四方八方に放たれる。結晶が触れると同時に爆発を起こすが、フランの弾幕は彼女を守る盾となり、悠月に襲いかかる矛となった。
今度は悠月が押され始める。弾幕一つ一つに多大な質量をもってるためか、結晶で相殺するには威力が足りないのだ。数で押し切ろうとしてもフランの弾幕形成スピードが速く間に合わなくなるだろう。
「悪いな。別に弾幕勝負をしたい訳じゃねぇんだよ」
結晶による攻撃を中断し“未元物質”を拡散。空気中に混ぜることで周辺を吹き飛ばす大爆発が起きた。衝撃が起こり土煙が舞い上がる。視界が一部遮られている中、悠月は警戒体勢をとる。
左前方から風切り音。ここからの回避は不可能。
迎撃は可能______
土煙の中から弾丸のような速さでフランが襲いかかる。悠月は背中の翼でフランの来る方に割り込ませ防御の構えをとる。直後、“未元物質”による大規模な爆発が再び起きた。フランは爆発で大きく吹き飛ばされるが、悠月の方はなんとか無傷。このまま追撃を狙おうと翼を広げるが………
悠月のすぐ隣に今まで以上に輝く魔力弾があった。
「ッ______くそが!!」
連続して三回目の爆発が起きた。
「ようやくマトモなのが入った」
空中で態勢を立て直したフランは一発入れれたことに満足そうに笑う。“未元物質”で創られた翼を正面から突破は困難だと考えたフランは自分を囮にして第二の攻撃を仕込んでいた。衝突する時に新たに魔力弾を生成。悠月の後ろからこっそりと忍ばせていたのだ。
………煙が晴れて悠月の姿が見えてくる。
「このやろー。面倒くせぇことしやがって。俺じゃなきゃ死んでたぞ」
ジャージの右側は一部焦げており、完全に防げなかった証だった。“未元物質”には悠月の身体を護るために自動防御というものが備わっている。例え悠月自身が意識していなくてもそれは自動的に働くのだが、魔力弾の規模が予想以上だった。今までより数十倍の威力を含んだ爆発はまともに防がなければただでは済まなかっただろう。
防御を通り越して右腕は軽く火傷を負っている。多少は動かせるが、音速並みの速さで動ける彼女相手では一瞬の差が命取りだった。
「悠月なら防ぐと思って。ていうか面倒くせえことって悠月が言う?いつも小細工ばっかしてるくせに」
「ほざけ。細工だろうがなんだろうが勝てれば良いんだよ」
「それは同感だね。だから______」
ここでようやく気づく。
急激なエネルギー反応。悠月を囲むようにして何重もの檻が形成された。
“禁忌”カゴメカゴメ______
「ここからは私のターン」
真紅の瞳を輝かせながらフランは手をかざした。
・怪力女
→言った瞬間にピチューンされます。考えただけでもピチューンされます。
・核を壊す
“目”と呼ばれるものが関係している。東方Projectを知っている人なら大体の事は分かるでしょう。一応“吸血鬼”の個性とは違った枠組みとして通していく予定。
・レーヴァテイン
NGシーン
真紅の剣が氷河を貫く。
悠月(……ん?何かレーヴァテイン長くねぇか?)
極限まで伸びたレーヴァテイン。それは向かい側の観客席にまで届く長さだった。
フラン「下ろすよ〜」
長さの調節をしないまま振り下ろされる。
観客一同「「「待て待て待て!!?」」」
悠月が何とか翼で受け止めて事なきを得ました。
・“禁忌”禁じられた遊び
東方文化帖に出てくるスペルカード。当初は紅魔郷で出てくるスペルカードを順番に使っていく予定でしたが、オリ主との戦う流れ的に無理だと判断したためボツになりました。
またスペルカードの表記ですが、「」だと会話部分とダブりそうな都合上、上記のように書いていきます。
・一際輝く魔力弾
→普通の人間が食らえば重症確実な勢い。オリ主だからこそ受けれました。彼だから大丈夫だと思って攻撃するなんて、フラン……恐ろしい子!