「ゆーづーきー。起きてー。悠月ーー」
心地よい
起きる選択肢はあったのだが、まだ目覚ましが鳴った様子がないのでそのまま眠りに落ちようとするのだが………
「起きないと_______血飲んじゃうぞ♪」
一瞬で目を覚ます。悠月はベッドの端まで避難し、状況を把握する。視界には金色の髪を垂らした少女がベッドの上にいた。
自分の身だしなみを見て何かされてないか確認していく。特に大丈夫なようで安心するのだが、目の前の少女は何故か不機嫌そうだ。
「ちぇー、そこで起きちゃう?普通は起きても眠った振りをするんじゃないの?」
「夢見すぎだ。おめぇに起こされるのは心臓に悪いんだよ。ていうか俺の部屋の鍵開けたのか。合鍵返せ」
「えー?それじゃ入れないじゃん。それにこっちの方が居心地良いし」
朝から散々な目覚めだった。説明すると悠月が住んでる部屋にフランが勝手に侵入し、朝のモーニングコールをやったのだ。気づいたら人が目の前にいるのとコイツにやられるのがあって余計に危険を感じる。
『ちょっとー、何か言ってよー!』という彼女を無視して、まだ見慣れない部屋を歩いて洗面所に行く。見慣れないというのは、ここは高校に行くために新しく借りた部屋であるからだ。
元々悠月は
『雄英高校に行きたい____』
フランがそんなことを口にしたのだ。
恐らくヒーロー科を目指すと思い適当に返したのだが、どこか嫌な感じはあった。案の定………
『何言ってるの?悠月も行くんだよ?』
最初は拒否していたのだが、当然そんなことは無意味だった。外堀を埋められた結果、雄英に強引に進路変更することになった。
………あの時の担任の顔うざかったな。有望な生徒が雄英に行くとなって学校に
勉強を教えていく間、住んでいた所が県外であったため物件探しをして入居したわけだ。ちなみに隣の部屋がフランになる。
「ゆづきー。お腹すいたー」
フランが起こしにくる理由の一つとして食事にありつくために来ている。彼女は料理ができないために悠月の所でいつも食べているのだ。家事全般できないのかと言われるとそうではない。流石に洗濯と掃除は出来るように教育はされているようだ。逆に言えばそれ以外はやれってことである。メイドが家にいるという案もあったのだが、フランが嫌と言ったのでボツになったらしい。
「ったく……少しは自分で出来るようにしとけよ」
「だって今まで家事ってやったことないんだもん」
「将来どうすんだ。自分でやらなきゃいけねぇものは沢山増えるぞ」
「その時は悠月に頼む!」
「舐めてんのか」
顔を洗った後キッチンに向かう。朝食を作るのだか、何だかんだ二人分用意するのは決して教えるのが面倒くさいからではない………
✳︎
高校に行く支度が済んでから……
隣に住んでいるということは家に出るのが同じ時間帯になる訳で。当然のように通学路を一緒に登校させられていた。
「それにしても何で
中学の頃は同じクラスでいたのだが、高校生になって悠月はA組、フランはB組とクラスが分かれたのだ。同じクラスになれると彼女は思っていたらしい。
「仕方がねぇな。ヒーロー科は二クラスあるんだ。分かれる可能性だってあんだろ」
「でもたった二クラスでしょ?なんか仕組まれたようでちょっと腹立つ」
「んな訳ねーだろ」
愛用の日傘をくるくる回しながら『んがー』と年頃の女の子がやらない声を出す。本日も天気は晴れ。普通の人間は良い天気と言う所なのだが、フランからしたら嫌な天気になる。吸血鬼にとって太陽の隠れた曇りが良い天気になるのだ。
_______少し歩いて、雄英高校の校門が見えてきた辺りでフランは違う話を切り出す。
「そういえば悠月はお友達できた?他人には全然興味ないっていう考えだから挨拶程度しかしてないんじゃない?」
ニヤニヤと笑いながら質問を投げかけてくる。だが悠月にとって一人でいることは苦痛ではない。なので別に食いついたりはしないのだが、ここで昨日あったことを思い出す。
「放課後にクラスメイトの一人と話したな。たしか緑谷って言ったと思うが……」
何でもない風に話す悠月であったが、フランはその言葉に驚愕したかのような顔だった。
「え、うそ………悠月が初日から誰かと話すなんて……!きっとその人は自分から積極的に話していけるようなコミュ力高めな人なんだよね!?」
「なんだそれ?ちょっとアイツの個性が気になったから話しかけただけだ。それにそこまで話すのが上手いやつではない雰囲気だったが」
「気になってる………それに、悠月の方から話しかけた………!?」
驚愕した様子から何かに追い詰められた顔をしていくフラン。遂には悠月の腕を掴む程までになる。
邪魔だ、という感じで振り払おうとしてもフランは絶対に離さないとばかりに力がこもっていた。
「駄目だよ悠月!その人に
「いきなり何言ってんだおめぇは?勘違いにも
「ううん、絶対悠月は騙されてる!これからはそんな人が来ないように私が一緒にいるから!!」
「くっつくんじゃねぇ、おめぇだって人間関係そんな理解できてる方じゃなかっただろ………!」
ギャアギャアと騒ぎながら歩いていくその様子は見る人によっては恋人だったり仲の良い兄弟だったりと、朝の時間の中でかなり目立つ存在であった。盛大な勘違いをしているフランをどうにか引き剥がそうとするのだが、“吸血鬼”の怪力は
割と本気でどうするか考えていた悠月であったが、ここで救世主が現れる。
「おーおー朝から見せつけてくれちゃって。凄い目立ってるよ君たち」
やって来たのは女子高生の中では身長が高めでオレンジがかった髪をサイドテールで
「あ、拳藤だ。おはよー」
「知り合いか?」
「うん。クラスメイト」
どうやらフランは順調に友達付き合いができているようである。人前である事にようやく気付いたのか腕から手を離し、拳藤という少女と話しが盛り上がっていく。明らかに蚊帳の外状態だったのでこのまま一人で行こうかと思ったのだが、フランに再び掴まれる。
「あ、紹介するね。悠月って言うの!中学から一緒にいた仲なんだよ!」
「へえ、私は拳藤一佳。この子とは同じB組で休み時間話してたら仲良くなったんだ」
「…………そうか。じゃあコイツのことよろしく頼む。まだ精神的に
「任せといて!フランちゃんって同級生じゃなくて妹って感じがするから、なんか構ってあげたくなるんだよねー」
「む〜〜それってどういうこと!」
こういった風に
____少し歩いたところでフランは当初の内容を思い出す。
「そうだ拳藤!悠月ってば誰かに
突然の内容に拳藤は目が点になったかのような状態になり、話を理解できていない様子である。今の言葉を聞けば誰でも似たような表情になるだろう。
「えっと……もしかして最初に騒いでた時の?」
「そう!拳藤も説得してあげて。悠月はその人に騙されてるんだって!」
すごく真剣な顔のフランをなんとか
「あ〜、こいつが勘違いしてるだけだから気にすんな」
「うん………なんか苦労してきたんだね」
頭を掻きながら朝から疲れたという感じの悠月。フランの性格が読めてきたためか、初めて会った彼に同情の視線を向ける。
「こんなやつだがクラスに馴染めるようにフォローしてくれねーか?元々人付き合いしてこなかった方だから」
「当然。皆で楽しい高校生活にしたいからね」
「もう、なんで二人で盛り上がってるの〜!」
「はいはい、もう教室だから別れようなー」
なんやかんや教室の前までたどり着いたのでB組である彼女らとはここでお別れである。
「それじゃまた。えっと……悠月くんで良いんだっけ?」
「回夜悠月だ。好きに呼んでいい」
「せっかくだし名前で呼ぶことにするわ。じゃあね〜」
「いやーー!悠月ーー待ってーー!!」
引きづられるような形で教室に入り、二人の姿は見えなくなる。B組にあんなやつがいるならこの先も大丈夫だろうと思ったのだが、まだワーワーと叫ぶ声が聞こえ、ため息をつく。
とはいえ、静かになって肩の荷がおりた悠月はA組のドアに手をかける。時間になるまで寝るかと適当に考えながら自身よりも大きいドアを開け、教室に入る。すると______
何故かほとんどの生徒が自分のことを見ていた。
「…………?」
大勢の視線に晒されながら自分の席に座る。ちなみに廊下側二列目の前から二番目という位置だ。視線に対して疑問が残るが時間まで寝ようと準備していた時、後ろから肩を叩かれる。振り向くとフランとは違った濃いめの金髪にチャラそうな雰囲気を出してる男子だった。
「回夜だったよな、ちょっといいか?」
「あ、私も聞きたいことがあるんだね〜」
悠月の隣の席から紫寄りのピンクの肌が特徴的な女子も絡んできた。
「何か用か?金髪にピンク色」
「うわ、見た目で判断!!初日で名前覚えてないみたいだな!」
「なんか興味なさそうな感じだったからね〜」
二人とも無駄にリアクションが高いなと判断。A組入っても自分の周りは静かにならねぇのかと思う。半ば強引に男子の方は『上鳴』。女子の方は『芦戸』と覚えさせられた。
教室に入るのが遅かったので自分が来る前にこんなことやっていたのかと考えるのだが、心なしか金髪は真剣そうでピンク色のやつは面白いものを見つけたような顔をしていた。
「さっき窓から見てたんだけどさ、廊下で騒いでいたあの女の子ってどういう関係なの?」
「そ、そうだ!一体誰なんだ!」
すずずっと迫る二つの顔。さっきのは騒がしかったから見てたのかと納得する。
「一応中学から一緒だった奴だ」
「それだけ?付き合ってるとかないの?」
「ねぇな。手間のかかる子供」
「淡々と言うのがあって本当だと感じるぜ……」
つまんなーい!と自分の座っている椅子を傾けてガチャガチャと揺らす芦戸だったが、それしか言いようがないので話したまでだ。
その時、予鈴が鳴り教室のドアが開く。
「おはよう。今日はちゃんと席についてるな」
入ってきたのは、ボサボサの黒い髪に髭。やる気のない目に後ろで引きづられている寝袋。このホームレスみたいな人間が1年A組の担任である相澤消太である。授業初日で見た印象は強烈だった。今回は普通に歩いて来たようだが、最初はあの寝袋に入った状態で来たのだから。
「じゃあホームルームを始めるぞ」
こうして高校生活二日目が始まっていった。
✳︎
「わーたーしーがー!!普通にドアから来たーー!!!」
ヒーローを目指す雄英高校でも一般科目は普通に行われる。他の科と違う点とすれば、ヒーロー科には『ヒーロー基礎学』という授業がプラスとしてあることだ。ヴィランとの対処はもちろん、災害救助といったヒーローで必ず必要になる内容を学んでいく。午後の授業がその『ヒーロー基礎学』になるのだが、その担当が平和の象徴オールマイトであった。
周りの生徒達は憧れのヒーローを目にしてテンションが上がる。悠月も実際に彼を見るのは初めてだが、その姿は明らかに画風が違う。
「早速だが今日はこれ!戦闘訓練!!」
『BATTLE』と書かれたプレートを掲げる。教室が再びざわめいた。いきなり戦闘を経験するとは思わなかったからだろう。
どうやら自分達の
「おい、何やってんだよ!速く準備して行こうぜ!」
「………ああ」
上鳴に促されようやく準備を始める。ほとんどの生徒は期待に胸を膨らませた様子であったが、悠月は何か違うものを見てるかのような眼をしていた。
朝のモーニングコール
→吸血。やましいことはない。…………吸血でもヤバくない?
フランがB組
→吹出くんが不在の時点で察した人はいるかもしれない。砂藤と一緒に犠牲となったのだ……
Q,緑谷出久とは?
A,悠月の騙す極悪人。……完全なる偏見です。彼女は性別すら勘違いしているのではないのでしょうか?とにかく緑谷逃げてぇ!!
Q,拳藤さんとは?
A,頼れる姉御。基本彼女に任せとけば問題児は安心だ。
後ろの席の上鳴くん
→オリ主と絡ませやすい。うちでは重宝させていただきます。