たまたま目を付けられ捕まり、異端者と決めつけられたとある冒険者のお話。

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例え全てを犠牲にしてでも護れるのなら

── ガッ

 

 

「ングッ…!」

一瞬の衝撃の後に頬に広がる痛みとボタボタと溢れ落ちる赤。

殴られた苦痛に顔を顰めつつも痛みを与える相手を睨みつけるのは止めない。

 

「ほら加護とやらを見せてみろ。このままだと貴様は死んでしまうぞ?」

どこか楽しそうな相手の言葉に口の中に溜まった血液を床に吐き捨てこう返す。

 

「…そう都合良く出せるものじゃなくってよ?…例えハイデリンが護ってくれても、もし異端の証拠が出なくても貴方達は私を異端者にしたいのでしょう?」

不敵に笑って見せれば今度は腹部に衝撃が来る。

 

「ガハッ…!?…カハッ…ハァッ…ハッ…っ…何が[ 異端者 ]よ。職が失われそうだから、ただ拷問して無理矢理言わせて手柄を上げたいだけじゃな…グッ…!」

吐き出すように言えばまた衝撃が。

両腕に巻き付けられた鎖が体の揺れた衝撃でガシャガシャと鳴り響く。

 

「口だけは良く回る。だがこれを聞いてもまだそう言っていられるのか?」

ニヤニヤとする相手の顔に嫌な予感を覚えた。

 

 

「お前の旦那…グラディスにも異端の容疑が掛かった。今審問官達があいつの元に向かっている。」

相手の口から出た愛する人の名前に目を見開く。

 

「…どういう事。」

怒りを滲ませ、地を這う程の低い声で問う。

「貴様が異端者なのだから旦那にも共犯の疑いが掛かるのは当たり前だろう?それに…あいつは元々疑わしかったからなぁ…?」

さて、どうする?まだ抵抗するか?と勝ち誇ったように笑う相手の顔に思いっきり蹴りを入れたくなる気持ちを覚えつつ、下手に動けない事を悔やむ。

 

「…あの人に手を出せば、貴方を生かしておかない…」

瞳の色を濃くしつつ目を細め、射殺すような視線で見据え言葉を紡ぐ。

 

「ハハハッ!!そんな縛られた状態で!?君に何が出来る!?」

嘲笑う相手に抑えている感情の箍が外れそうになる。

 

だがしかし今ここで暴れればあの人に被害が及ぶ。

 

 

… あ……

 

ふと過ぎった考えにふ…と小さく笑う。

その笑みを見て怪訝そうな顔をした相手にニッコリと笑って見せた。

 

 

「…貴様、何を考えてる…?」

腹部に相手の足が圧迫するように勢い良く押し付けられカハッと息が漏れる。

 

「…ッ…、こう考えただけよ…『あの人が来る前に貴方を動けなくさせればいい』と」

 

言葉の後パァンッ!!!!という音と共に鎖が砕け、磔られていた体が地面に落ちる。

体を起こし拷問していた相手を探せば、先程の音と同時に発生した衝撃波に飛ばされたようで痛みに低く呻きながら此方を睨んでいた。

 

「あら…流石に1度で意識を奪うまでの衝撃にはならなかったみたい。ごめんなさいね?」

冷ややかな目で相手を見つつ近付くと相手の項に手刀を落とし意識を奪う。

 

 

「…貴方は書類で私が魔法適正無しと書かれていて油断してたから縛る鎖を魔法を抑える鎖にしてなかったみたいね。

でも…私魔法が使えないんじゃなくて«加減が出来ない»から適正無しとされてただけよ…昔修行時代に私の適正を確認したお師匠に酷く呆れられたものだわ…」

 

聞こえてない相手にそう言葉を零しつつ外されていた装備を回収し装着していく。

 

部屋を出ようとする前に表に見張りが2人いることを確認すると扉を開けた瞬間に1人は手刀を、もう1人は腹部に拳を。

倒れた2人を部屋の中に引っ張り込み適当に寝かせると外に行き、相手が持っていた鍵で扉を施錠し鍵を捨てる。

「…とりあえずアイメリク様へ報告しておこうかしら。っと、その前にあの人の所へ行かなきゃ…!」

 

指輪を使い相手の元へ飛ぶ。

飛んだ先では丁度審問官達が彼を連行しようとしており、此方を見るなり彼も含め皆驚いた表情をした。

が、彼だけは直ぐ険しい顔になる。

…多分私が傷だらけだからだろう。

 

「なっ…貴様何故解放されている!?」

 

 

慌てた様子の相手達にニコりと笑って見せると

「誤解が解けたんじゃないかしら?…私が解けたのだから共犯の疑いの彼も解放されるべきよね?」

 

 

そう告げると舌打ちを零しつつ彼から審問官達が離れ帰っていく。

 

苦笑いをして彼の方へ視線を向けると険しい顔のままの彼に「大丈夫」とだけ伝え1度イシュガルドに戻ると言いテレポする。

 

エーテライトに飛べたのを確認し、神殿騎士団のある建物の方へ行くとルキアさんに事情を説明(傷だらけの為驚かれたが)すれば、直ぐ動くとの返答に笑顔で感謝を告げた。

良ければ治療を…との申し出を受けたが丁重に断り、多分怒りを覚えているであろう彼の元へと急げば明らかに不機嫌そうな顔の相手。

とりあえず対策はしてもらえたからもう大丈夫だと言えばほんの少しだが表情が和らぎ、ぎゅっと抱き締められる。

 

 

 

 

 

その後落ち着いてから、事の顛末を説明しつつも時折怒りに震える相手を宥めつつ家に帰り…またいつもの日常へと戻る。

 

 

 

拷問していた審問官とその部下達が職を首になった報せが届いたのはその日からまた数日後の事…。

 

 

 

 

 

 




リジーの旦那であるグラディスの故郷がイシュガルドということで、そこから産まれたお話の1つ。

彼の国では異端審問という人達が居るが、竜との融和によりその立場が不要になりつつあることに危機感を感じている1部の審問官達が、立場を維持させる為に無理矢理な理由で冒険者や色々な人を捕らえて強引に異端者だと認めさせてたら…?という所から今回このお話が出来上がりました。
ちょこちょこ違和感はあるかもしれませんが、あくまでこれは作者の妄想の1つであり実際の物語では軽く触れられているだけでそこまで深く描かれていません。
なのでオリジナルの作品として楽しんで頂けたら幸いです。


ではまた次のお話でお会い致しましょう…

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