「ほら見ろ!!ほら見ろ!!やっぱりあの人って隊長の器じゃないっすよ!!」
「所詮小隊長どまりが関の山よね」
「ドロレス隊長がいてこその鉄砲玉」
「私は最初から反対だったのよ!!この馬鹿隊長!!」
基地に向かって引き返していくブリタニアのウィッチ達の罵声を背に浴びながら、がっくりと肩を落とすジェシカ。
何しろ、ネウロイの熱線に焼かれた時点で周囲も巻き込んで大爆発するような代物だ。
超高高度に到達できるロケットブースターを使用して相手の攻撃範囲外から落とすか、周囲のネウロイを完全に掃討して制空権を完全に確保しなければ使用するには危険すぎる。もしそうでなければ、とっくにあちこちの戦場でトールボーイが使用されているはずだ。
「……馬鹿なの?あの人」
ユーリが信乃の耳元で呟く。
「馬鹿ですよ。あたしの知ってる限り一番の」
11歳でも解る馬鹿なので相当な馬鹿である。
「そこ!!聞こえてるわよ!!」
ジェシカが信乃とユーリを指さす。ひぇっ、と思わず悲鳴を上げるユーリと、呆れた様に肩をすくめる信乃。
「聞かせてるんです。全く、後先の事を考えないのは相変わらずですね」
「あんたの口の悪さも相変らずね」
「……知り合い?」
「ええ。腐れ縁です」
イザベルの問いに信乃が肩をすくめる。
「ふふん。昔一時だけ同じ部隊に所属したこともあるのよ。自分ながら良いコンビだったと思うわ」
「止めてください。あたしまで馬鹿だと思われるじゃないですか」
近づいてくるジェシカの頭を押しとどめて冷たく言い放つ信乃。
「馬鹿ロッテの再結成か」
からかうような笑みを浮かべて徹子が呟く。
「ほらぁ……言わんこっちゃないです。最近ようやく風化してたのに」
「どうして馬鹿なんだ?いや、馬鹿なのはわかる気がするが」
アドリアーナが尋ねる。いや、貴女初めて会った人に対してそんな事思ってたんですか?
「扶桑で馬鹿ってのは馬と鹿って書くんだ。ジェシカの使い魔が馬で、ハギが鹿」
「成程。ぴったりじゃな」
「……皆があたしをどう思っているのか良く解りました。貴族なんて大っ嫌いです」
セダンのウィッチ達の観察眼の無さを嘆きながら信乃が呟く。
「あら、私は結構気に入ってるわよ。『Crazy』って意味もあるみたいだし」
「FoolもCrazyもジェシーだけです。あたしはいたって普通です」
「ふふふっ」
「何で笑いましたか、バーガンデール少尉」
「……談笑中済まないが、今は作戦行動中なのだろう?」
もう一人残ったブリタニアのウィッチが口を挟む。
「そうですね。危うくブリタニアの隊長さんのせいで忘れるところでした」
ハンナが肩をすくめる。
「は?作戦行動をわすれるなんて、あんた馬鹿なの?」
「皮肉を言われてるんだ、隊長」
呆れたような顔をするジェシカに更に呆れたような顔をするもう一人の少女。
「貴女は普通そうですね。ええと……」
「アラーナ・C・ディーア。中尉だ。うるさい隊長が迷惑をかけると思うが腕だけは確かだ。許してやってほしい」
「ハンナ・フィリーネ大尉です。よろしく、アラーナ」
「ラーナでいい」
「ちょっと、ラーナ!!うるさいとか迷惑とか、隊長に向かってどういうつもりよ?」
「うるさい。迷惑だから黙ってろ。隊長」
「……はい」
ぎろり、とアラーナに睨まれ、ジェシカが思わず黙り込む。
凄い。こんな威厳の無い隊長初めて見た。
「むぅ……いつか復讐してやる」
「そこは見返しましょうよ……時にジェシー」
「なによ」
信乃が隣に並ぶジェシカに尋ねる。
「何でしれっと私達の一番機の位置にいるんです?」
「あ、それ僕も気になった。凄く嫌な予感がする」
信乃の言葉にイザベルも頷く。
「フォーフィンガーの方がチームとしては効率的よ」
「ええ。そこまではわかります」
「じゃあ、問題ないわね」
「凄い。間抜かして言い切ったよこの人」
イザベルが目を丸くする。有無を言わさぬその振舞いはいっそ清々しさすら覚える。
「えーと……ジョンソン大尉。作戦、解ってますか?」
ユーリが戸惑ったように尋ねる。
「『壁』を倒せばいいのよね」
「うん……」
「なら、テツコが装備してるのは扶桑の特爆ね。あれを落としてコアを露出させて、シノの30mmで破壊するって所かしら。なら、私達はテツコ達を援護して、特爆を落としきったら速やかに遊撃。これで行きましょう」
ジェシカの言葉にイザベルとユーリが思わず息を飲む。
「作戦内容、知ってたんですか?」
ユーリの言葉にジェシカが呆れた様に肩をすくめる。
「このくらい、部隊の編制と装備を見れば解るでしょ。馬鹿なの?」
しれっと答えるジェシカ。
「へぇ……こういう人なんだ」
「こういう奴なんです」
イザベルの呟きに信乃が肩をすくめる。確かにジェシカ程の馬鹿はそうそういない。
しかし、馬鹿と天才は紙一重とも言う。少なくとも、ジェシカは両方の側面を併せ持つところがあり、逆に言えば、ジェシカ程の天才も、信乃の知っている限りはそういないのだ。
「……そろそろ真面目にしてもらって良いですか?」
いつまでも騒がしい教室の生徒たちを注意する教師のような口調でハンナが口を開く。
「私はいつでも……」
「はい、真面目にします」
信乃がジェシカの言葉を遮り答える。
「まもなく予測される戦闘空域です。皆、準備はいいですか?」
その言葉にその場に居るウィッチ達の目が鋭くなる。
出自も性格もバラバラだが、皆、何度も戦場を潜り抜けてきたウィッチ達だ。ユーリやベレーナですら、それまでの空気が嘘のように凛とした雰囲気を身に纏うようになった。
「ハインリーケ大尉。若本中尉」
「居るわ居るわ。数えるのも面倒なほどにの」
「敵は正面。高度はオレ達の1000メートル下といったところだ。3号を落としてやりたいところだが、こいつは『壁』用に取っておく」
「了解しました。アンジェラ、お願いします」
「ああ。行くぞ、ハンネ、ビスコンティ大尉!!」
了解!!と、気合の入った返事が返ると同時に、アンジェラが魔導エンジンに魔力を送り込む。
「む。私もそっちだな」
アラーナが呟き、アンジェラ達の4番機の位置につける。一瞬にして状況を理解して最適な判断が出来る。HMWの練度の高さが伺えるような動きだ。
「小型共がわらわらとっ!!」
急降下の勢いを生かし、小型ネウロイの群れに向けて一斉に弾き金を引く。向うもこちらの動きを察知していたのだろう。散開しながらも反撃の赤い光線が放たれる。
「そんな攻撃で!!」
アンジェラがシールドでそれを弾きながらさらに弾き金を引く。
「これなら狙う必要もないですね。撃てば当たります!!」
「確かにな。撃墜数の大盤振る舞いだ」
ハンネとアドリアーナが片っ端から目につくネウロイを落とし続ける。空中に四散するネウロイの光の粒が大量に舞い、昼間だというのにまるでスターマインのような光景が広がる。
「!!……ジェシー、行ったぞ!!」
「解ってるわよ」
アラーナが怒鳴る。
ふん、と鼻を鳴らしてジェシカが手にしたM1919のトリガーをピアノの鍵盤を叩くように軽く弾く。
数発の弾丸が数射。それだけでこちらに向かってきていた小型ネウロイはまるで曳光弾の弾道に吸い込まれていくように飛び、そして爆散した。
「うわ、凄い!!」
いとも容易く長距離からの見越し射撃を命中させるジェシカにユーリが感嘆の声を上げる。
「ふふん。でしょ?こんな芸当が出来るのは、私かアフリカのマルセイユくらいね」
呆れるほどの自画自賛。
「ジェシカってただの馬鹿じゃないんだね!!凄い馬鹿だ!!」
「な!?」
純粋に褒めているのだろうが、言葉だけなら思い切り馬鹿にしている。
「アンジェラ!!そのまま小型を引き付けながら『壁』に向かってください!!若本中尉、ジョンソン大尉!!」
「ああ。『壁』に突っ込む!!!頼むぞ、馬鹿ロッテ」
「任せなさい!!」
「その呼び方は止めてください!!」
高度を上げる徹子達に続き、ジェシカ達がその言葉に素早くブレイク。徹子とベレーナを囲うように前後の位置につける。
「シノ、動きが鈍いわよ。何してんの!?」
「小回りが利かないんですよ、この子」
ジェシカの問いに信乃が呻く。いつものように囮になるのはこれでは難しそうだ。
「フィリーネ大尉、わらわ達はどうするのじゃ?」
「ハインリーケ大尉は索敵を続けて。異常があればすぐに報告。アンネ、グレーテル。アンジェラ達が打ち漏らしたネウロイが背後に付くのを防ぐわよ。ついてきなさい」
「解りました」
「りょ、了解です」
その言葉と共に徹子達とアンジェラ達の背後にハンナ達が回り込む。
アンジェラ達の背を守るように、背後に付こうとするネウロイに向けて弾き金を引く。
「見えた、『壁』だ!!」
徹子が鋭く叫ぶ。
マジノ線、或いはジークフリートラインと呼ばれる巨大な要塞群の一角は、信乃達が命がけで撮影した写真同様、ネウロイの表皮と同じ黒い幾何学模様に侵食され、見るものを思わず怯ませるような威圧感を放ち、そびえたっている。
「……大きい……」
ぽつり、とユーリが呟く。
「あんなの、本当に落とせるの……?」
ベレーナも不安げに呟く。
「落とすのはあたしです。ベレーナ達はその援護をしてくれればいいんです」
「いいえ、私よ!!今までの分、きっちりと落としてやるんだから!!」
「護衛が先だ。馬鹿ロッテ」
徹子が苦笑を浮かべる。
「解ってるわ!!さあ、ここからが本番よ!!シノ!!バーガンデール!!ユーリ!!」
「了解」
「行くよ」
「はいっ!!」
ジェシカの合図と共に徹子とベレーナの前面に信乃とユーリが展開する。ジェシカとイザベルは徹子達の脇へ。信乃とユーリが防御、『壁』から出てくるネウロイはジェシカとイザベルが迎撃する。
「突っ込むぞ!!」
徹子の合図とともに一斉に6人が急降下。同時に『壁』から熱線が針山のように放たれる。
「ユーリ、シールドを右斜め30度に向けて張って!!」
「え!?こ、こう!?」
ユーリが張ったシールドを斜めに向ける。同時に、信乃もそれに合わせてシールドを展開。
ユーリのシールドと信乃のシールドが溶け合うように合わさり、部隊全体を覆うような大きなシールドになる。
「わわ、なにこれ!?」
『同調シールド』。
魔力を上手くシンクロさせれば、一人一人で張るよりもはるかに大きなシールドを張る事が出来る。今は専ら信乃がユーリに合わせているのだが、それでも安定してシールドを維持出来るユーリは中々センスがあると言っていい。
ユーリの張ったシールドに自らのそれを合わせ、信乃が角度を微調整する。
同時に、そのシールドに当たった熱線が背後に逸れてく。
「しゅばって出来た!!」
驚いたように目を見開くユーリ。
「この感覚、忘れないで」
そう言うと信乃が更にシールドを微調整しながら、『壁』からの熱線をユーリとの同調シールドで的確に受け流していく。
今自分がすべきことは、攻撃をかわす事ではなく防ぐ事。後ろにいる仲間たちを攻撃から防ぎ、そして爆撃ポイントまで導くことだ。
「ジョンソン大尉、小型、出てくるよ!!」
「ふん。返り討ちにしてやるわ!!」
イザベルの声にジェシカが鼻を鳴らす。ボーイズ対装甲ライフルとM1919機関銃の弾が放たれ、『壁』から出てきたばかりの小型ネウロイがなすすべもなく光の粒と消える。
「どんどん出てくるよ!!」
「陽動、どうなっているのよ!!」
「待たせたな」
ジェシカの苛立つような声にアンジェラの声が被る。正面からネウロイを突破してきたアンジェラ達も『壁』にたどり着く。
「ヴォルフ大尉、後ろからも来るぞ」
「ちっ、流石に数が多いな」
何しろ弾を打てばネウロイに当たる程の密集度だ。撃ち漏らしといっても相当な数になる。ハンナ達が迎撃に当たってはいるが、相当数の数のネウロイがアンジェラ達の背後に付いてきている。
「ハンネ、私と一緒に後ろをやるぞ!!ビスコンティとラーナは若本達の援護を!!」
「解った」
「了解です!!」
その言葉にシュバルムが二つのロッテに分かれる。
「若!!爆撃ポイントです!」
壁の直上に付いた信乃が口を開く。
「解った。ベレーナ。ついて来い。オレが三号を投下したら3秒後に投下。一発づつ、慎重に行け。守りはハギたちに任せて、落とす事だけに集中しろ」
「りょ、了解っ!!」
上ずった声でベレーナが返事をする。
「いくぞ、投下!!」
かちん、と、三号特爆を固定していたストッパーが外れる。
「3、2、1、投下っ!!」
きっちり三秒後、ベレーナが特爆を投下する。
三秒おきに次々と、計8発の三号特爆が花を咲かせ、無数の焼夷弾子が『壁』の表面を灼いていく。
「コアは!?」
『まだじゃ!!まだコアは見えぬ!!』
ハインリーケの無線が響く。
「ちっ、全機一旦離脱!!上昇しろ!!」
「了か……あっ!?」
「え……?」
ユーリが目を見開く。熱線が一条、ユーリのストライカーユニットを掠めると同時に、がくん、とユーリの体が揺らめく。
午前中の信乃と同じだ。
「うわあっ!?」
「ユーリ君っ!!」
イザベルが手にしたライフルを投げ捨て、シールドを張りながらユーリの体を支える。
「大丈夫かい?」
「う、うん……」
「そっか、でも、これからが大丈夫じゃないかもね」
無数のネウロイがシールドを張ったイザベルとユーリの背後に襲い掛かる。
「ばー……イザベルさん!!ボクと一緒にシノとやった奴を!!」
「あんな曲芸無理だって」
呆れた様にイザベルが呟く。他人の魔力と自らの魔力を同調させるなどという芸当など、今初めて見たのだ。
「二人共!!離脱しろ!!」
アラーナが二人の間に割って入り、シールドを展開する。
「ハンネ!!徹子達の援護に回れ!!」
「了解です!!」
アンジェラの言葉に、上昇する徹子達に続いてハンネがその後を追う。
「ユーリ君、このまま引っ張るから、後ろが見えるなら撃って!!」
「は、はいっ!!」
イザベルの言葉に襟を引かれたユーリが手にした機関銃を斉射し、小型ネウロイを数機落とす。その間にイザベルがユーリを引っ張り『壁』から離れる。
「ユーリ君のユニットが損傷した。僕も銃が無い、一旦離脱するよ」
「解りました。ハインリーケ大尉、二人の援護を」
「了解じゃ」
ハンナの指示にハインリーケがユニットを走らせる。
「ユーリ君、片肺でいける?」
「も、もちろん!!」
「無理するではないぞ、わらわ達からはぐれるな」
イザベルの手から離れ、ややぎこちないながらも飛び始めたユーリを庇うように前後につくイザベルとハインリーケ。
「このまま安全空域まで下がり、いざとなれば二人は一旦セダンまで退却せよ。ユニットと武器を補給して戻るのじゃ」
「うん、解った」
「ごめんなさい……」
「謝るのは後じゃ!!しっかりせい!!」
「は、はいっ!!」
ハインリーケの言葉にユーリがうなずく。その間にも熱線とネウロイは三人に向かって襲い来る。
「退けい!!」
ハインリーケが叫び、退路を塞ぐネウロイを次々に撃ち落とす。その後ろをユーリとイザベルがシールドで互いの死角を庇いながら続いていく。ハンナやアンネ達も時折援護するようにハインリーケ達に向かうネウロイを落としていく。
だが、その間にも、手薄になった徹子達にネウロイと『壁』から放たれる熱線が次々と襲い掛かる。
「装填している時間がもったいない。ベレーナ、今度は直接手で落とすぞ」
そういうと徹子が肩から下げた特爆を二つ、ベレーナに渡す。ユニットに装着している暇は無い。
「ハンネ、あたしと二人で若たちの防御を」
「もし撃てるなら?」
「撃ってください」
「了解したわ」
ハンネの言葉に皆が苦笑を浮かべる。
「……行くぞ!!」
再度『壁』に突入する徹子達。先程とはポイントをずらしながら、虱潰しに特爆を落としていく。
徹子を信乃が、ベレーナをハンナがシールドで守り、そのすぐ近くでジェシカが近づくネウロイを機械のような正確さで射貫いていく。
ズームアンドダイブの波状攻撃を第二波、第三波と繰り返すが、いくら特爆が当たっても、コアの発見には至らなかった。
「糞……コアが深いのか、当たり損ねたのか……」
流石に徹子の顔にも焦りが浮かぶ。残る特爆は4つ。ベレーナに残りの二つを手渡しながら徹子が呟く。
「ヴォルフ中尉、残り残弾が少なくなってきた。これ以上は厳しいぞ」
「ああ。だが、弾が残っているうちに引くわけには……」
アドリアーナの言葉にアンジェラが顔を歪める。状況は皆同じだ。最初の作戦通り事は運んでいるのは間違いない。だが、コアが見つからなくては意味が無い。
「若、あたしが行きます。弾が残ってるのは……」
「いや……」
それよりももっと手っ取り早い方法が無いわけではない。だが、それは諸刃の刃でもある。
そっ、と背中に背負った『虎徹』に手を触れる。
「ベレーナ。次で最後だ。これはお前が落とせ」
そういうと徹子は手にした特爆をベレーナに渡す。
「え……若本中尉、何を……」
その瞳に並々ならぬ決意が灯っているのを見て、ベレーナが息を飲む。
「シノ」
「何ですか、ジェシー」
「次でダメなら……アレ、使うわ」
「馬鹿なんですか?ただでさえ魔力が減ってきているのに、落ちますよ」
「そうね。まあ、何とかなるわよ」
そう。まだ手が無いわけではない。だが、それを行うリスクは途方もなく大きい。
失敗すれば、生存して帰る事はほぼ不可能だ。
だが……。
「不味いですね……」
一方、ハンナも肩で息をしながらぽつり、と呟く。既に作戦予定時刻は大幅に過ぎ、燃料も弾薬も底をつきかけている。加えて言えば、アンネやベレーナ達若手の体力も限界に近い。
撤退するなら、アーヘンまでの燃料が残っている今しかない。
だが。それは自分達を信じて戦っているディジョンのウィッチ達、それに、リヨンやマルセイユに住む多くの人々の犠牲を生むことになる。
特爆は満遍なく『壁』を削っているはずなのだ。なのに、どうしてコアが見つからないのか。
コアが移動するタイプなのか、それとも別のところにコアがあるのか。
ここは戦場だ。皆、それぞれの決意を抱きながらも、常に身を焼く熱線とネウロイに向き合っている状況だ。
だが、一瞬、ほんの一瞬だけ、そんな状況に置いて、ハンナの思考は深くなり過ぎた。
その致命的な隙を見逃すほどネウロイは甘くない。
「ハンナ!!」
はっ。とハンナがその声に、そして、ぞっとする様な気配に振りかえる。
中型ネウロイが一機、いつの間にかハンナの死角から背後に回り込んでいた。今まさに赤い光線が放たれようと、ネウロイの正面の一部が極限まで発光している。
目を見開くハンナ。防御も、回避も、反撃も、間に合わない。
そして。
次の瞬間、一条の光跡が空を走った。
本作品に登場するウィッチ解説 その4
ジェシカ・E・J・ジョンソン
所属 第11統合戦闘飛行隊「HMW」
階級 大尉
身長 162cm
年齢 17歳(1944年末)
使い魔 白毛のサラブレッド
固有魔法『エクスカリバー』
シールドを物理攻撃に転用した巨大な剣を生成し、敵を攻撃する。
剣の全長は20メートルに達し、威力は絶大だが、魔力の消費が激しく、万全の状態で使用しても3度程放てば魔力が一時的に枯渇する。
使用機材 スピットファイアMkⅤ
イメージモデル ジョニー・ジョンソン
ブリタニア空軍のエースの一人。長身にアッシュブロンドの長髪が特徴的な少女。11歳の頃から魔力が発現して以来、ウィッチとして空を飛んでいた。初出撃で撃墜を記録し頭角を現した早熟のエース。
コールサインは『JE-J』、『グレイリボン』。トレードマークでもある灰色のリボンは、元々は母親から誕生日に貰った純白のシルクのリボンだったが、戦闘を経て灰色に変色した。だが、本人はそれを好んで使用しており、コールサインにも用いている。
信乃とは腐れ縁。ジェシカが13歳、信乃が12歳の頃、遣欧艦隊がタングミーア基地に居た時に出会って以来の仲。
性格は前向きで細かい事を気にしない快活な性格。高い空戦技術を誇るが、直感に頼りすぎるが故に周囲を置いてけぼりにすることも多い。周囲曰く、天才と馬鹿は紙一重。
戦後、彼女が書いていた日記をもとに『編隊飛行』という本が出版されることになり、HMWを始めとする当時のウィッチ達の生活を描いた貴重な資料として読み継がれることになる。
ブリタニアの穴吹。
アラーナ・C・ディーア
所属 第11統合戦闘飛行隊「HMW」
階級 中尉
身長 169cm
年齢 18歳(1944年末)
使い魔 黒毛の羊
固有魔法 なし
使用機材 スピットファイアMkⅤ
ジェシカの下でパリ郊外に駐屯するHMWの別動隊の副隊長を務める少女。
破天荒という名の馬鹿の下で苦労を重ねている。
戦歴も苦労の連続で、ウィッチとして発言して以来、故郷である南太平洋ニューゼーランドからブリタニアに渡りHMWに入隊してから以降、過酷な前線で戦い続けていた。
理知的で真面目。上官の手綱を握るのは上手く、ジェシカも彼女には逆らえない。