俺、自分の能力判らないですけど、どうしたら良いですか?   作:一一 一

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ちょっぴりしんみりした話です。
こういうのちょっと苦手。


第五話~向き合うこと~

はてさて、一体何処に行ったんだ? こはるちゃんの母親は。まずはこはるちゃんに聞いてみるか

 

「こはるちゃん、お母さんと一緒に居た場所って覚えてるかな?」

 

「うーん、わかんない」

 

「そっか、わからないか……」

 

おいおい、いきなり手掛かりがなくなったぞ

取り敢えずこの子の覚えてる範囲で通った道を地道に辿るしかなさそうだな……

 

「こはるちゃんはここに来るまでに何処を通ったか覚えてるかな?」

 

こはる「うん! おぼえてるよ!」

 

「じゃあ俺を通ったところに案内してくれないかな?」

 

「いいよ!」

 

よし、早速案内して貰おう。仮にここに来るまでに母親と別れたなら、今もこはるちゃんを探している可能性が高い。急いだ方がいいな……。

 

「じゃあ案内よろしくね?」

 

「うん!」

 

「と、いうわけだ。今からこの子の母親を探して来る。みんなは避難誘導をしていてくれ」

 

「ちょいと待ちぃや。単独行動はするなっていわれへんかったか? それにこはるちゃんのお母さんも避難してるかもしれへんのやろ? だったらここで避難誘導をするべきちゃうんか?」

 

確かに宗の言うことも一理ある。だが、こはるちゃんの母親が避難しているという確証もない。それにもし、なんらなのトラブルに巻き込まれていた場合を考えると探しに行くべきだ。

 

「いや、俺は探しに行く。こはるちゃんの母親がなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性もあるんだぞ?」

 

「せやけど・・・」

 

「単独行動で無ければ良いのですね?」

 

「「澪?」」

 

どういう事だ?単独行動で無ければいいって?そりゃあ教官は単独行動はするなって言ってたが……

 

「どういうことや?」

 

「文字通りの意味ですわ。宗は単独行動をさせたくない、琥太郎はこはるちゃんの母親を探しに行きたい。ならば二人て行けばいいのです!」

 

なんか澪のテンションが高いな……。

 

「じゃあ誰が俺と一緒に行くんだよ。避難誘導は全員上手く回してるんだから離れられないんじゃ…………あっ」

 

一人いた。質問責めにされて狼狽えてたやつが。

 

「そう、麗奈が琥太郎と行けばいいのです!」

 

「それや!」

 

「本来なら皐月といって貰いたかったのですが、皐月が居ないと避難が上手くいきませんの」

 

確かに皐月は人との距離を縮めるのが上手いからな、混乱する避難誘導には必要不可欠な存在だ。それに、麗奈ってあんま役に立ってないし。

 

「わかった俺は構わないが麗奈には聞いたのか?」

 

「それなら大丈夫ですわ。琥太郎が麗奈に頼めばいいのですわ」

 

「それもそうか。こはるちゃんは麗奈が一緒でもいいかな?」

 

「いいよ!れいなおねぇちゃんともっとなかよくなりたい!」

 

「だ、そうだ。じゃあ麗奈に頼んでくる」

 

「はい、宜しくお願いしますね?」

 

「了解。」

 

ー澪ー

成功ですわ!ふふっ、全く麗奈も恥ずかしいのか大胆なのかわかりませんね。好きっ! という気持ちはバンバン伝わってくるのですが……それに気づかない琥太郎も琥太郎ですね。このまま二人がいい感じになったくれると一友人としては喜ばしいのですわ!

それにしても、何で麗奈は琥太郎の事が好きになったのでしょう?どうやら、入試の日にあったばかりのようですし。ですがまぁ、恋に時間は関係ないとも言いますもの。今考えてもしょうがないですわ。

 

 

「ふふっ」

 

「どうした?急に笑い出して?」

 

「っ、な、なんでもありませんわ。」

 

ー澪ー

あ、あぶなかったですわ、顔に出てしまうなんて、私もまだまだですわね。

 

「そうか。よし!それじゃ行こうか?」

 

「うん!」

 

先ずは麗奈に頼みに行かないとな。受けてくれるといいんだが……。

 

「麗奈」

 

「何?」

 

「今からこはるちゃんの母親を探しに行くんだが、麗奈も来てくれるないか?」

 

「ん」

 

「そうか助かる。なら早速こはるちゃんに案内して貰おう。宜しくこはるちゃん」

 

「うん!まかせて!

 

「……」

 

「どうかしたのか?」

 

「……なんでもない」

 

「がんばろうね!れいなお姉ちゃん!」

 

さて、人数も揃ったし、行くとするか。

 

 

 

それから俺たちはこはるちゃんの案内の元、来た道を辿っていった。時々不鮮明な所もあったがそこはまだ子供でこんな状況じゃ仕方ないだろ。そしてたどり着いたのが、いるのは最初に魔物が出現した公園だ。

 

「ここからよくわかんない」

 

「そっか。ありがとう」

 

俺には今一つの仮説がある。もしその通りだとしたらここに母親が居るはずだ。

 

「少し休憩しようか?流石に歩き疲れちゃったよね」

 

「うん・・・」

 

元気が無いな、やはり母親がいなくて寂しいのだろう。そんな中でこの子から離れるのは心苦しいがやるべき事がある。

 

「少しトイレに行ってくる。麗奈この子を見ててくれ」

 

「ん」

 

「すまんが頼む」

 

もちろんトイレに行く訳じゃない。こはるちゃんの母親を探すのだ、いや、母親()()()()()と言うべきか。

 

「あぁ、やっぱここに居たのか、あんた……」

 

公園内の魔物が出現したと思われる場所。酷く荒れていて遊具などは最早原型を留めていない。そこに誰かを庇うような体勢で背中から内臓が溢れる程の深い傷を負い死んでいる女性の死体が一つ。こはるちゃんの母親だろう。

 

「こはるちゃんなら無事に保護したよ……だから、せめて安らかに」

 

こはるちゃんの母親の死体を木の下に横たわせる。後で教官に報告しよう。しっかりと弔って貰わなければ。

 

「すまん、遅れた」

 

「いいよ!」

 

「ん」

 

さて、俺の目的は達成したがこはるちゃんにどう説明しようか。真実を伝えるにはまだ幼すぎるだろう。仕方ない、こはるちゃんには黙っていることにしよう。

 

「お母さん見つかった?」

 

「ま、だだ、よ?う、ひぐっ、うう……」

 

「大丈夫。きっと見つかるからね?泣いてないで行こう!」

 

「……うわぁぁぁん!!」ダッ!

 

「っ!!」

 

「琥太郎……」

 

しまった……まだこはるちゃんは6歳なんだ。どれだけ明るく振舞っても寂しいだろうに。母親と離れ離れのこの状況で普通笑顔で居られるわけがない。何が「泣いてないで行こう!」だっ!

くそッ!……そんな事もわかんねぇのか俺は!急いで追いかけないと!

しかしどうしたもんか、こはるちゃんの母親は亡くなっているからまず母親には会えない。かと言って泣いてるこの子に母親が亡くなっている事実を話す事は酷だろう。うーん、駄目だ、何も思いつかん。仕方ない、今はこの子を慰める事に専念しようそしてこの場から今すぐ離れよう。もし母親の遺体がこはるちゃんに見つかったらマズイ。

 

まてよ?確かその方向はさっき俺が来た方向──

 

 

 

 

 

琥太郎「しまッ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

こはる「おかあさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、自分の心臓の、凍りつく音がした。

 

「おかあさん? ねてるの? まってて! いまおにいちゃんをよんでくるから!」

 

母親を見つけたこはるが、嬉しそうな顔で此方に走ってくる。

 

「おにいちゃん! こっちにきて! おかあさんがね! いたの! こっちこっち!」

 

「……」

 

麗奈「? ……行かないの?」

 

「あぁ……今いくよ……」

 

俺の声は酷く霞んでいた。

 

見つかっちまった、もう隠し通す事は出来ない。こはるちゃんは真実を知る事になるだろう。そうなった時俺は何をしてやれるんだ?

 

「おにいちゃん、ありがとう! おかあさんみつかったよ! ねぇ、おかあさんをおこすのてつだって?」

 

そう言いながらこはるちゃんは母親を起こそうとする。

 

「ねぇねぇ、お母さん、お兄ちゃん連れて来たよ? 一緒に行こう? ねぇ、起きてよ、起きっててば〜」

 

当然母親が起きる事はない。もう死んでいるのだから。

 

中々起きない自身の母親を起こそうと、体を揺すり始める。

 

「ねぇねぇ起きてよ〜」

 

──ベチャ

 

「え?」

 

「……」

 

こはるちゃんのその小さな手には、母親から出た赤い液体が、べっとりと付いていた。

 

──ドサリ

 

こはるちゃんが揺らした事により母親の遺体がうつ伏せに倒れる。

 

その背中から臓物が垂れ下がり赤い液体が周囲を染め上げる。

 

こはる「あ、ああ、あぁぁぁぁ……」

 

「ひっ」

 

「……」

 

あぁ、ついに見てしまった、見させてしまった。こんなに小さな子供に、まだ幼いその心に。

 

「おかあ、さん? ねぇ、おかあさん? ねぇ、おきてよう。ひとりにしないでよ! 置いてかないって、寂しくさせないって言ったじゃん! うそつき!ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ──」

 

その光景は昔の自分を見ているようだった。

 

いや、まさしくその通りなのだろう。親父はきっとこんな風に俺を見ていたのだろうか。

 

この子は賢い。だからこそ、もう母親が戻ってこない事も心の中ではわかっているのだろう。

 

今ならわかる、この子にどうさせるべきか、親父が俺の背中を押したように、今度は俺がこはるちゃんの背中を押す番だ。同じ体験をしたからこそできる事を

 

「こはるちゃん」

 

こはる「ねぇねぇねぇねぇねぇ──」

 

「こはるッ!!」

 

「っ!?」

 

勇気を振り絞れ。親父みたく上手く言葉は掛けられないだろう。もしかしたら伝わらないかもしれない。だけど、今言わなければ、今ここで言わなければ、この子の心が壊れてしまう。

 

「よく聞け」

 

親父、俺に勇気をくれ。

 

「お前の母親は死んだ」

 

「!!」

 

「琥太郎!」

 

「黙っててくれないか」

 

そう言って麗奈を睨みつける。

 

「ひっ」

 

すまない、麗奈。だけど今は邪魔をしないでくれ。

 

「もう一度言う、お前の母親は死んだ」

 

「ちがうもん!」

 

「いいや、違わない。お前の母親はs──「たがうもん!」

 

「おかあさんは! おかあさんは、しんでなんかないもん! けがしてるだけだもん! まだだいじょうぶだもん! だからおにいちゃんが助けてくr──「現実を見ろ!!」

 

「っ・・・!」

 

こんな小さな子供に何を言ってるんだろうか、俺は。

だって6歳だぞ? まだ友達と遊んだり親に甘えたりする年齢だ。そんな子供に"現実を見ろ"なんて言っても分かるわけがない。

それに、今の口調もそうだ。ずっと年上の人間からこんなキツイいい方をされてるんだ、相当な負担がこの子には今かかってるだろう。

 

だが、今克服させないといけない、今一歩踏み出させないといけない。

 

俺が両親の死という過去から立ち直れているのはもちろん周囲の人たちの助けもあるだろう。だが一番大きいのは親父があの日、俺を無理矢理にでも現実と向き合わせたからだと思う。

今すぐは無理だろう。でも向き合わせる事でしっかりと死を実感させ導く事でないと立ち直れないと思う。だから、例え嫌われてでも俺は心を鬼にしてこの子に現実を教える。

 

「お前の母親は死んだ、これは変えようのない事実だ。だがそれはお前の為なんだ」

 

「え?」

 

「俺はお前に嘘を付いていた。さっきは本当はお前の母親の死体を探していたんだ。その時お前の母親はどんな体勢で死んでいたと思う?」

 

俺はここでこはるの母親を見つけた時の事を話す。

 

「誰かを庇うように死んでいたさ。庇うように、蹲るようにして死んでた、背中に大きな傷を負ってな」

 

「! ……それって……」

 

どうやら麗奈は気付いたらしい。

 

「これがどういう事か分かるか?……こはる、お前の母親はお前を庇って死んだんだ」

 

「!!」

 

どうやら、意味をわかってくれたようだ。

 

「"私のせいで"なんて思うなよ」

 

そして、だからこそ、畳み掛ける。

 

「え、な、なんで! おかあさんは! こはるをかばったからしんじゃったんだよ? こはるがいなければ、こはるが・・・」

 

やっぱこの子は賢い。母親が死んだ理由をしっかりと受け止めて、どうしてそうなったかを考えている。だから尚更止めなければ。

 

「勘違いするなッ!! お前は母親に守られたんだ! お前の母親は、自分の命よりお前を守ることを選んだんだ! それを"私がいなければ"だと? 巫山戯るな! お前は母親の分まで、生きなければいけない! 母親が守ってくれた命だぞ! お前は母親に胸を張って生きろ!」

 

「っ!?」

 

困惑してるだろうな、当然だ。いきなり一人になって、母親が死んで、しかも自分を守る為に死んだと聞かされた。困惑して当然だろう。今の俺に出来るのは、この子に寄り添ってあげる事だけだ。

 

「いいか、今、ここで、母親に別れを告げて来い。"今までありがとう"って"守ってくれてありがとう"って伝えて来い。いいな?」

 

「……うん」

 

其処にはもう、泣き噦る子供はいなかった。今いるのは、母親の死を乗り越えようとする一人の勇気ある少女だ。

 

「おかあさん…………いままでありがとう。…………まもってくれてありがとう。…………おべんとうをつくってくれてありがとう。…………おかあさんのこと大好きだよ。…………バイバイ、おかあさん」

 

「よく出来ました」

 

上手く伝えれただろうか、伝わってるといいな。

そう思ってこはるの頭を撫でる。

 

「ありがとう、おにいちゃん」

 

「え?」

 

「お兄ちゃんのおかげでこはる、ゆうきがでたよ、ありがとう」

 

そう言って涙の残る顔で精一杯の笑顔をつくるこはる。

あぁ、よかった。また笑顔がみられて。

 

──その時、唐突に麗奈がこはるを抱きしめた。

 

「」ギュッ

 

「っ!?///」

 

「大丈夫。私達が、一緒だよ?」ナデナデ

 

「安心、して?」ギュッ

 

驚いた、まさか麗奈からこはるを抱きしめるなんて。てっきり子供嫌いだと思っていたんだが……。 それに麗奈の顔がとても優しげだ。いつかのパフェを食べた時とは違う、聖母のような慈愛に満ちた微笑を浮かべ、こはるちゃんを抱きしめている。

 

「うん!ありがとう、れいなおねえちゃん!」

 

「ん」

 

これからこはるは苦労することになるだろう。もし、そうなったらこの子を支えてあげよう。俺を支えてくれた人達のように。

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