くっそ病弱なお兄ちゃんが旅立つ妹の為に頑張るお話   作:文月フツカ

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前回の投稿日12/13
今回の投稿日12/21


くっそ病弱だったお兄ちゃん(故)が格上の人に負けるお話

 首 頸動脈、太腿 眼球 また首と眼球、心臓。

 

 さっきから狙ってる箇所全部急所なんだが!?

 もうコレ確実に殺す気だろ!

 

「当たらない…太刀筋を読まれている」

 

 人形の体でマジ助かった。息切れって概念がほぼ無いから避ける事が出来る。

 

 まあ逆を言えば、避けるだけで精一杯で、こっちが打ち込む隙が無くてやばい。

 普通なら、どこかしらに確実に隙があるから、それを伺って、俺の打ち込む姿勢とか整ったら行くんだが。

 

 この人さぁ。

 いやこの人に限らないんだよなぁ。

 

 ジータの騎空団に所属する中でも上位の奴らって大概このレベルがデフォなんだよな。

 

 ナルメアさんは、敢えて隙を晒すなんて事絶対にしない人だから、そういった方面も期待できない。

 

 煙幕持って無い。

 閃光が発生する爆薬持って無い。

 毒薬持って無い。

 目つぶし用の砂利…そもそもここ船の上。

 

 カリオストロさん、片腕犠牲にしたら怒るかな。

 

 うん。まあ仕方ないよね。

 

 などと考えていると、ナルメアさんの斬撃が通り過ぎた。

 

 

 ここだ。ここしかない。

 

 刀が振り切られた瞬間に全力で左半身を前にしてナルメアさんに逼迫する。

 

 突如として動いたナルメアさんは僅かに険しい貌をする。

 問題なのは、表情が険しいだけで、一切の動揺などが見えない点だ。

 

 ちょっとぐらい驚いて欲しい。

 もしかして筋線維とかの動きで全部把握してたりする!?

 

 だったら詰みなんだけど、もういいや行こう。

 だってこの体勢で躊躇したら多分一刀両断される。

 

「左腕貰います」

 

 その言葉と同時、凄まじい剣閃が左腕に到達し、カリオストロさんが必死になって作り上げた最高級人形の左腕が宙を舞った。

 

「おいthsgjkpld」

 

 言葉にならない悲鳴を上げるカリオストロさんを尻目に、腕から溢れ出る人工血液をナルメアさんの目に向けて飛ばした。

 

 だがそんな小細工もナルメアさんは予想していたのか、その飛沫一滴に至るまで全てを見切り回避した。

 

 別にそれでいい。目潰し出来れば御の字だったけど、目的は僅かの間だけでも俺の右腕を隠す事だし。

 

「お兄ちゃん……内包出来るの斬撃だけじゃないんだね

 

 だからどうして口に出すんだジータぁぁアアアアア!

 

「!」

 

 ほらバレた。この一瞬で奥の手もう看破されたけど!?

 ええい構わん行け! 頑張れ俺! どうせ千日手で打つ手無いんだからもういい!

 

 

 刀の柄の下部分を持ち上半身をバネの様にして―――突くべし!

 この距離なら上下左右後方の回避は不可、受け流すのも大歓迎だ!

 

 そうだよ文字通り渾身の突き技だよ。

 まあそれも、ジータの言葉で全てを察したナルメアさんは対処してきた。

 

「迎撃させていただきます」

 

 まさか俺の突きに対して真正面から、同じ角度で突きを放ってくるとは。

 

 ……は?

 ちょ、え、待ってほしい。

 こちとら人形の体だから最悪損傷してもいいけど、そっち生身では!?

 

 

 などと考えている間に、互いの刀身の切っ先がぶつかり合った。

 

 その瞬間、とんでもない不協和音が鳴り響く。

 

 だが拮抗したのはほんの僅かなだけだった。

 

 突きの中に3つ内包させた。

 牙突という突き技は刀を使う人らは勿論知っているし、連続突きだって多用するだろう。

 

 格好をつけて言うなれば、牙突三段。

 でも所詮こっちの武器は大量生産品という事実は変わらない。

 対して向こうは世界に2本と無い一点もの超強力な物だ。

 

 俺の持っていた刀は衝撃に耐え切れず折れ、向こうは……あ、罅は入った。

 

 

 折れた刀を少し見た俺は、降参と手を上げた。

 

 失望されたかなとナルメアさんを見ると、刀身を見ていた。

 だが下を向いたまま直ぐに鞘に刀を戻した。

 

 そうして顔を上げたナルメアさんは、この上無く嬉しそうに嗤っていた。

 

 

 あ、駄目だこの人。

 

 

 

「ヌー、ネー」

 

 カリオストロさんがぬとねの区別が着かない顔で斬り飛ばされた左腕を見てる。

 

 かわいそう。

 

 かわいそうではあるんだが、これ正気に戻った時の反動が一番怖いじゃないですかやだー。

 なんだこれ、嵐の前の静けさか!?

 

「その、ね。ほら材料費とか追加の研究費とか公庫から出すから」

 

 多分なんだけど、材料自体が洒落にならない程の希少性なんじゃないかな。

 ほらカリオストロさんって4桁年前の材料とか持ってるけど、その中でも特に希少だったとか。

 

 あれ、それ考えたら俺のやってる事やばくね?

 勝手に体を乗っ取っただけでも大概なのに、文句言いながら使うの認めてくれた人に対して、物損を突き付けた訳だ。

 

 しかも故意的に。

 

 居た堪れなくなって来たからカリオストロさんを抱きしめよう。片腕だけど。

 ぎゅっと抱きしめると、目が合った。

 

 うわ目怖い。ハイライト無いし段々口が弧を描いて来た。

 

 さっと離れてジータの後ろに身を隠す。

 

「お兄ちゃん。さっきの技なんだけど」

 

 お前マジでちょっと空気読んだ方がいいぞ!?

 お世話になってるカリオストロさんに兄妹共々ここまで迷惑掛けてんだからさ!

 

 どうするよこの人騎空団の中で1、2を争うぐらい常識的な人なのに、そんな人怒らせるってヤバいぞ。

 

「いや兄貴、カリオストロが常識人は無いぜ」

 

 ビィ何で今それ言った!? なんでそんな火に油を注ぐ事言った!?

 

「ちょっと、お話しよっか☆」

 

 その可愛い声と同時、急に辺りが暗くなった。

 何ぞやと顔を上げると、カリオストロさんの相棒である龍が大口を開けて―――

 

 俺はそのままごっくんと飲み込まれた。




次辺りで完結させたい
初期と矛盾点多いですね

今後お兄ちゃんは喋るべきか

  • 喋る
  • 喋らない(身振り/手振り/無表情)

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