【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒 作:春風駘蕩
奥義1:スイッチ・オン!
西暦三◯××年、世界はマルハーゲ帝国が支配していた。
炎に包まれる村に広がるのは、阿鼻叫喚の地獄。
逆らうものは殺され、圧倒的な勢力の差に屈した者たちは自らの髪の毛を引きちぎられるという屈辱を受ける。
「ヒャーハハハハハハハ‼︎ 毛狩り隊のお通りだぁ‼︎」
「全員残らず狩り尽くせぇ‼︎」
マルハーゲ帝国帝王、ツル・ツルリーナ3世は己の権力の象徴として『毛狩り』制度を施行した。
『毛狩り』とは人間の新鮮な毛根をブチ抜く事で、征服した人間に屈辱と無力感を与える行為であった。
蛮行にふけっているのは皆、一本の毛も生えていない頭皮に凶悪な人相の男たち。
全員で揃えられた凶悪な見た目のユニフォームに身を包んだ彼らは、泣き叫ぶ人々から容赦なく毛髪を奪い去って行く。それは老若男女見境なく、まさに悪魔の所業と言えた。
マルハーゲ帝国は強大で、自ら逆らおうと思うものはいない。
だが、そんな時代にただ一人。
「ひぃぃぃぃ狩らないでぇ〜〜‼︎ 僕うさぎなのに〜〜〜‼︎」
「ギャハハハ……あ?」
どう見てもコスプレをしたおっさんにしか見えない自称兎の耳を掴み、ぶちぶちと直に毛を引きちぎっていた毛狩り隊の一人だったが、不意にその哄笑が途切れた。
毛狩り隊が集まっているある村。そこから見える荒野に、もうもうと砂埃が立ち込めていたのが見えたからだ。
ドヨドヨと毛狩り隊員たちがどよめき始め、毛刈りの手を止めて砂埃を凝視し始めた。
「おい! 何か近づいてきてるぞ‼︎」
「な、何だありゃぁ⁉︎」
毛の自由と平和を守るために戦う、一人の漢がいたーーー。
「ぐああああああああああああああ‼︎」
「何事ーーーーーー⁉︎」
土煙の中に見えたのは、バイクに乗った無数の野菜たち。サングラスをかけ、タバコを吸ったり傷跡があったりと、どう見ても柄が悪そうな連中が徒党を組み、荒野を爆走している。
そのバイクの後ろには縄が繋がれていて、さらにそれは一人の男の足首にくくりつけられていた。高い背丈に長い足、筋骨隆々の肉体に金髪の立派なアフロを有した男が、全身にピーマンをくくりつけられながら引きずり回しの刑にあっていた。
西部劇よろしく引きずられ、血とピーマンでボロボロになって悲鳴をあげるアフロ頭の男の姿に、毛狩り隊の男たちは目を向いて驚く他にない。
すると、毛狩り隊の一人が何かに気づき、アフロの男を指差して声を上げた。
「あ……アイツはボーボボだ! ボボボーボ・ボーボボだ‼︎」
「何⁉︎ あれが我ら毛狩り隊の宿敵、鼻毛真拳使いのボボボーボ・ボーボボか⁉︎」
猛威を振るうマルハーゲ帝国だが、抵抗しないものばかりではない。毛の自由のために戦う戦士が抗い続けていた。
その一人が、彷徨える毛の貴公子ボボボーボ・ボーボボ。
帝国の脅威とも呼ぶべき男が都合良く引きずられてきていることに困惑しながら、男たちは殺気をほとばしらせる。
そんな彼らをよそに、野菜の暴走族のヘッドである人参が怒号をあげてボーボボを睨みつけた。
「鼻毛男ォ‼︎ てめー今度ピーマン残したらタダじゃおかねぇって言っただろうが‼︎ 何回言ったらわかんだよこの生ゴミが‼︎」
「ちくしょぉぉぉやっぱりピーマン食えなかった〜〜〜‼︎
どうやらピーマンを残した事で野菜たちの怒りを買い、バイクでの引きずり回しの刑に合わされているらしい。死ぬほどしょうもない理由だった。
ボーボボは大きくカーブした人参ヘッドのバイクに引きずられ、振り回されるようにして荒野を転がって行く。その際ブチッとロープが引きちぎれ、ボーボボは毛狩り隊のいる方へと自ら投げ飛ばされることになった。
「何が何だか分かんねぇがこれはチャンスだ‼︎ あの男を殺せぇぇぇ―――‼︎」
「うおおおおおおおおおおおおお‼︎」
状況は全く理解できないが、マルハーゲ帝国の野望を邪魔する宿敵がわざわざやってきてくれたのだ。
毛狩り隊の戦士たちは歓喜の怒号をあげ、武器を手にし、ゴロゴロと転がってくるボーボボ に向かって突撃を開始した。
今の今まで引きずられ、その上縛られている男には、全く抵抗するすべもない。
「……鼻毛真拳奥義」
そんなわけがなかった。
「『鼻毛のアルペジオ』‼」
「ぎゃあああああああああああああ‼︎」
ボーボボの鼻の穴から伸びた黒い鞭ーーー鼻毛がしなり毛狩り隊たちを蹴散らしていく。
彼の毛こそ、彼の武器。毛を愛し、毛を護る彼こそが毛の王国の生き残りにして、鼻毛真拳の正統なる継承者である、最強の鼻毛使いなのだ。
「待て待て待て待て――――い‼︎ 主人公は俺だ―――――――‼︎」
彼だけではない。
もうもうと砂埃を巻き上げながら、毛狩り隊の元に別の影が乱入する。
オレンジ色のボールのような体に棘が生えた、生き物かすらも怪しい何か。
その名は首領パッチ。ハジケ組を率いる、ハジけリストの頂点に立つ男だ。
「殿に続け――――――‼︎」
「覚悟――――――‼︎」
それに続くのは、水色のプルプルした体を持つ人型の何かと、白い二足歩行する犬ではなさそうな何か。
元毛狩り隊Aブロック隊長にしてプルプル真拳の使い手・ところ天の助と、元Zブロック隊長田楽マン。紆余曲折あってボーボボの仲間となった二人が、なぜか老齢の鎧武者の格好で首領パッチの後を追う。
「いまいましき毛狩り隊どもめ‼︎ 我らが奥義を見るがいい、うおおおおおおお‼︎」
そう叫びながら、いつの間にか派手な甲冑を身に纏った首領パッチが毛狩り隊に躍りかかる。その格好が、一瞬で全く別のもの……半透明の守護霊的な存在を従えていそうな格好へと変わった。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ‼︎」
「ぐあああああああああああああああ⁉︎」
「オレは毛狩り隊をやめっ……ぎゃあああああああ‼︎」
凄まじい威力のラッシュ。だが悲しいことに格好は別の漫画の主人公であった。
「トロいぜ……カギ真拳奥義『ROCK』‼︎」
「ぎゃあああああああ⁉︎」
「くらえ! オナラ真剣奥義『如月』‼︎」
「くさあああああああ⁉︎」
「贖罪の時間だ。バビロン真剣奥義『ペルーの唄』」
「ぐああああああああ‼︎ うんこにやられた――――‼︎」
そこへ、金髪の男が次々に毛狩り隊員達に手に持った鍵を突き刺していき、その動きを完全に止めていく。
銀髪の少年の操る黄色いガスが、次々に毛狩り隊たちにヒットして地に転がして行く。かと思えば、茶色くとぐろを巻いた頭を持つ男が操る拳法が的確に急所を捉え、毛狩り隊を片っ端から制圧していく。
首領パッチを親分として慕う、ボーボボと同じ毛の王国の生き残りにしてカギ真拳の使い手、破天荒。
故郷を毛狩り隊に滅ぼされた元復讐者、オナラ真拳の使い手ヘッポコ丸。
敬虔にして高潔なるバビロン教の信者にして使徒、謎多きバビロン真拳の使い手ソフトン。
凄まじい力を持つ戦士達が次々に毛狩り隊員を討ち取り、人々を解放していく。
その姿は、まさに英雄であった。
「クソォ……なんて強さだ‼︎」
「これが……ボーボボとその仲間の力……」
鬼神の如き暴れっぷりを見せつけるボーボボ達に、毛狩り隊員達は完全に逃げ腰になり、這う這うの体で逃げ出していく。
散り散りになっていく毛狩り隊員たちを睨みつけ、ボーボボはキランとサングラスを輝かせた。
「毛の自由と平和を脅かす悪党どもめ‼︎ 毛加減しねぇぜ!!!」
襲撃された村の者は歓声をあげ、ボーボボ達を賞賛し、褒め称える。
この世界にボボボーボ・ボーボボがいる限り、毛狩り隊の支配は続かないのであった。