【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒   作:春風駘蕩

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奥義10:ただいま修行中

「ぐぎゃらばらべらぼらああああ!!?」

 

 号泣しながら悲鳴をあげるボーボボたちが、ものすごい水流の中を吹っ飛ばされて行く。

 普通なら無重力空間に近いプールでの訓練のはずだが、やたらと難易度が上がった激流コースに変貌していた。

 

「宇宙空間では様々な緊急事態が想定されます。この訓練ではロケットが如何なる状況に陥っても対応できるよう、体を慣らしてもらいます」

(うわ〜、見るからに辛そ〜…)

 

 いまにも死にそうなほどに辛い目にあっている仲間達を見守り、ビュティは悲痛そうに顔を歪める。

 が、本人たちはというと、サングラスをかけたりジュースを飲んだりと、訓練中にもかなりくつろいでいた。

 

「フライハ〜イ♪」

「びばのんの〜ん♪」

「ってアレ⁉︎ みんなそんなに苦しそうじゃない⁉︎ どういうこと⁉︎」

「バカだなぁ〜ビュティは。そんなの決まってんだろ」

 

 なぜか激流の中でも浮き輪に乗っている首領パッチが、やれやれと腹の立つ笑顔で答えた。

 

「ボーボボに毎日ボロカスにされてる俺たちにとっちゃ、こんなの朝飯前だぜ☆」

「あの暴挙がまさかのここで役にたった!!?」

 

 普段からひどい目にあっている首領パッチたちにとって、この程度の試練は苦痛でもなんでもないらしかった。

 

「ていうかこの訓練、ビュティもやるんだぞ」

「あ⁉︎ そうだった‼︎」

「まぁ心配するな。お前のために俺が……」

 

 愕然とするビュティに、首領パッチはゲスな笑顔でビシッと指をさす。

 

「とびっきりエグいおもちゃを選んでおいたからよぉぉぉ!!! アーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!」

「いやああああああ!!!」

 

 訓練機の中でも特に危険そうな装置の山々に連れていかれそうになったビュティが悲鳴をあげる。

 するとそれを見ていたハルミが、がっしりと首領パッチの両手をつかんだ。

 

「それではみなさんは、もう少し先のステップに進んでもらっても良さそうですね!」

「え?」

「ここまでついて来れる人は初めてです! 前代未聞の最高の宇宙飛行士が誕生するかもしれません!」

 

 そのまま彼らを装置に乗せて、ハルミは何かのスイッチを押す。

 するとその瞬間、全ての装置がガシンガシンと変形を始め、とてつもなく殺傷性の高そうな形状に変化した。

 

「訓練機超レベルアップ‼︎」

 難易度幻想級(ルナティック)・超絶ハードモード発動!!!

「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」

「きゃああああああああほとんど拷問みたいなステージに強制的に連行された―――――!!!」

 

 熱湯の激流、音速で回転する椅子、ものすごい勢いで流れて行く超大型ルームランナーなど、完全に殺しに来ているとしか思えない機械の数々が首領パッチたちに襲いかかった。

 

「なんの――――!!! まだまだ生ぬるい‼︎ 俺たちの力はまだまだこんなもんじゃね――――!!!」

「いややだやめて! もうこれ以上は勘弁して‼︎」

「なんかあの子たち怖いんだから刺激したりしないで‼︎」

 

 なぜか対抗意識を燃やすボーボボに、首領パッチも天の助も涙目で止めにかかる。

 だがそんなものでこの男が止まるはずもなかった。

 

 難易度神話級(ミソロジック)・ハイパー無敵アスレチック『HAJIKE(ハジケ)』発動!!!!

「自分で難易度最大限まであげちゃった―――!!!」

 

 訓練装置はまるでSAS○KEのセットをさらに凶暴にしたようなアスレチックに変貌し、仲間たちをみるみるうちにボッコボコにする。

 おびただしい量の血が、アスレチックを真っ赤に染め上げていった。

 

「ぎゃあああああああああ!!!」

「ボーボボてめー後で覚えて……ぎぃやああああああ!!?」

「生まれてきてごめんなさ―――――い!!!」

「みんな――――――!!!」

 

 これには普段から暴虐に離れているはずの首領パッチたちもたまらず、切り刻まれ叩き潰されながら悲鳴をあげる。

 

(こんなのイザヨさんだって……!)

 

 あの理不尽の塊のボーボボの妹分でさえどうなるか、そう思ったビュティが振り向くと。

 

「いぃぃぃりりりやっほぉぉぉぉ―――――――!!!!」

「満面の笑顔で突破してる―――――!!? もはや人間業じゃね―――――!!!」

 

 熱湯の激流の上をボードでサーフィンしている女の姿に、ビュティは今度こそ目を疑って叫ぶ。

 空いた口が塞がらないビュティの肩に、ポンとハルミの手が置かれた。

 

「さ、あなたも負けてられませんよ!」

「いやあああああああ!!!」

 

 泣いても叫んでも遠慮はなく、地球を守る戦士たちの悲鳴はいつまでも響き渡っていた。

 

 

「みなさん全種目をクリアしましたね。お見事です!」

「ここから先は私がご案内します!」

 

 全ての訓練機を何巡かし、ようやく解放されてぐったりとしているボーボボたちに、今度はシズカが話しかけた。

 

「宇宙飛行士には体力以外にも、困難な状況を乗り越える柔軟な思考力が必要です! それを鍛えるために、みなさんにはこれを用意しました!」

 

 シズカが手をあげると、ボーボボたちは一瞬で光に包まれ、気がついたときには見たこともない空間に囲まれていた。

 

超リアル脱出ゲーム『超次元大迷宮2020(トゥエンティ・トゥエンティ)』!!!

「なにぃぃぃ――――!!?」

 

 見渡す限り前後左右上下に続く迷路の中心に取り残されたボーボボたちが、ありえねぇとばかりに叫ぶ。

 一体どうやってこんなもん用意しやがったという問いも、この時は口にする余裕さえなかった。

 

「制限時間内にクリアしないと、その迷宮は崩壊して時空の彼方へ消滅してしまいます‼︎」

「もはや訓練じゃね――――――!!!!」

「それではスタートです‼︎」

 

 シズカがタイムウォッチのボタンを押した瞬間、ボーボボたちのいる場所の壁が少しずつ崩れて行く。

 消滅していく壁の向こう側に見える謎の青い闇に、ヘッポコ丸は愕然とした顔で頭を抱えた

 

「しまった! こっちにはバカしかいねぇ‼︎ どうやってもクリアできる未来が見えねぇ‼︎」

 

 どう考えてもこの状況に不向きな面子に絶望しかけるが、不安の原因たちは小馬鹿にしたように横目を向けた。

 

「フン、甘く見るんじゃねぇぞヘッポコ野郎」

「この場で必要なのは頭の良さじゃねぇ、ひらめきと機転だぜ!」

 

 勇ましく吠えた彼らは、いきなり通路を全力で走り始めた。

 

「ちまちま迷路を辿るなんてメンドクセェ‼︎」

「ようはこの場から出りゃいいんだからな!!!」

 

 すでに崩壊が進んで崩れかけた壁を蹴破り、ただただまっすぐに進んでいくバカ二人。

 仕方なくボーボボたちが追って行くと、奇跡でも起こったのか分厚い扉のようなものが現れた。

 

「こういうのはたいがい、抜け穴があるんだよ!!!」

 

 出口と確信した首領パッチは、鍵穴の部分にあった文章に目を通す。

 そこに書いてあったものとは。

 

『次の問いを解き、その答えでカギを作りなさい。

 任意のコンパクトな単純ゲージ群 G に対して、非自明な量子ヤン・ミルズ理論が 'R4 上に存在し、質量ギャップ Δ > 0 を持つことを証明せよ』

「ミレニアム懸賞問題だ―――――!!!!」

「解けるか―――――!!!!」

 

 今もなお答えが探され続けているという問題が壁となって立ちふさがり、ビュティとヘッポコ丸は絶叫する。

 というか何を求めているのか全く意味がわからなかった。

 

「これ無理みてるだけで頭爆発しそ…ごばぁ!!!」

「俺もぐばぁ!!!」

 

 案の定バカ二人は血を吐いて倒れ、他の面々も太刀打ちできず表情を歪ませる。

 まさに絶体絶命のピンチであった。

 

「イザヨさん、どうしよう! 誰も太刀打ちできないよ…」

 

 思わず残った二人に助けを求めるビュティだったが。

 イザヨの顔はハニワのような無表情になっていて、目と口の穴からぷすぷすと煙を吐いていた。

 

「ってすでに思考停止してた‼︎ 聞く相手間違えた!!!」

 

 先ほどは凄まじい身体能力を発揮していたイザヨだが、頭の方はやはり残念だったらしい。

 諦めかけたビュティは、もう一人救世主血なり得る人物がいることを思い出した。

 

「そうだ、メテオさんならもしかして……‼」

「折らなきゃ…! つる折らなきゃ…ほあちゃああああああああ!!!!」

「錯乱してる―――――!!!」

 

 頼みの綱のメテオは、切羽詰まった表情でひたすら折り紙を折っては叫び声を上げていた。

 

「メテオは閉所恐怖症なんだよ」

「誰一人役に立たね――――!!!」

 

 最後の希望が絶たれた一行に、迷宮の崩壊は容赦なく迫って行く。

 ついには、ボーボボたちがいる場所を残した全てが消滅してしまった。

 

「うわああああああああ!!!!」

 

 泣き叫ぶボーボボたち。

 しかしその中で、唯一の突破口を思いついたボーボボがサングラスを光らせた。

 

「こうなったら最後の手段だ‼ 鼻毛真拳……!!!」

 

 一縷の希望を託した奥義がボーボボたちを包み込み、その場から姿を消し去る。

 消滅して行く迷宮を見つめていたシズカは、その口元に意味深な笑みを浮かべていた。

 

「……見事です。これなら……」




「奥義『後書き出張コーナー』!!!」
「ハーメルンの形式を利用した荒業だ――――!!!」

 消滅してしまったかに見えたボーボボたちだったが、間一髪別の枠に移ったことで難を逃れていたのだった。

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