【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒 作:春風駘蕩
「………さてと、主人公の力を見せようじゃナ―――イ!」
棘だらけの肩パッドをつけた首領パッチが、コキコキと指を鳴らしながらゾディアーツたちを見据える。
そんな首領パッチに、ボーボボとイザヨが遠慮なくバズーカとランチャーで敵もろとも攻撃を開始した。
「見てぇ――――――!!!」
「ぎゃああああああああ!!?」
背後から爆撃された首領パッチが炎に呑まれる。
約一名が犠牲になっていたが、ともかくそれが開戦の合図となった。
「よし! この流れで一気に倒しましょうソフトンさん!」
「うむ」
「いやお前じゃなくて」
顔だけソフトンになった天の助が答えるがスルーされ、ヘッポコ丸が本物のソフトンとともに敵を迎え撃つ。
相対するのは、白と黒で彩られた道化師の様な格好の異形、
「小賢しい‼︎」
「踏まれても主人公ー!!!」
転がっていた首領パッチを踏みつけながら向かってくるジェミニに身構えていると、ヘッポコ丸の隣にメテオが歩み寄った。
「ボクも付き合いますよ」
「おう!」
「いくぞお前たち!」
ソフトンの腕が神々しい光を放ち、ヘッポコ丸の腕にオナラが、メテオの右腕に火星の様な炎の塊が生み出される。
ジェミニも二枚の赤と青のカードを抜き出し、両者が激しく激突した。
『バビロン真拳』+『オナラ真拳』+『星心大輪拳』‼︎
ゾディアーツ真拳奥義『
カードが引き起こした爆発が、三人の技によって相殺され凄まじい衝撃が生まれる。
が、三人の前に陣取っている天の助が、格好良さを全てを台無しにしていた。
「お前、じゃま」
「あ、イヤ! ゴメン‼︎ 流さないで――‼︎」
うざく感じたボーボボと首領パッチにトイレに落とされ、天の助は悲鳴をあげて流される。
ジェミニはひらひらとばかにする様に振り向き、ヘッポコ丸たちをあざ笑った。
「へっへーん♪ 当たんないよ、そんな攻撃」
見た目通りのコミカルな動作で挑発するジェミニだったが、不意にその背後が揺らいで見えた。
【
すると次の瞬間、機械の音声とともに突然イザヨがジェミニの真後ろに現れる。まるで忍者のようだ。
「背中がガラ空きだぜ、半分こ野郎!」
「なにぃ!!?」
ギョッと振り向くジェミニだが、その時にはすでにイザヨは次の攻撃の準備を終えていた。
左腕に備わった巨大なハンマーが、ジェミニに襲いかかったのだ。
【
「コズミック真拳超奥義『闘魂ハンマー・インパクト』!!!」
だるま落としでもやる様なフルスイングで打ち付けられ、ジェミニは軽く吹き飛び地面を滑って行く。
「くっ……ムカつく!」
かろうじて転倒は免れ、ジェミニは忌々しげにイザヨを睨みつけた。
が、その背後に突如洋式の便器が出現し、中からソフトンの顔をした天の助が飛び出した。
復活のパピロン!!!
「ぐわああああ!!!」
完全に予想外の攻撃をくらい、ジェミニはたまらずダメージを負って倒れこむ。
奇襲に成功した天の助は、調子に乗ってソフトン顔のまま決めポーズを取る。
「お前も後ろがガラ空きだぞ!!!」
ゾディアーツ真拳奥義『
「おぎゃああああああああ――!!!」
が、それがまずかったのか、地面の下を水中の様に泳ぐ
「おしり――――!!!!」
「手強いな…」
ゴロゴロと転がって騒ぎまくる天の助に構うことなく、ボーボボたちはなかなか敵を倒せずにいることに歯噛みする。
叫んでいた天の助はなぜかサングラスをかけ、拳銃を構えてあちこちへ銃口を向け出した。
「おしりはどこだ⁉ おしりはどこだ⁉」
「落ち着け!!!」
「ぶ‼」
好い加減鬱陶しくなってきたボーボボに蹴り飛ばされ、天の助はようやく大人しくなる。
すると、何かを思いついたボーボボが首領パッチの方へにじり寄って行った
「今です、主人公の首領パッチさん! 力を貸して下さい‼︎」
(主人公!)
やややさぐれていた首領パッチの耳がここぞとばかりに象のように大きくなる。
首領パッチはニヤリと笑みを浮かべ、嬉しさを誤魔化す様に悪ぶった顔つきになった。
「チッ、仕方ねぇな…」
「さすが主役」
「ちょ…やりすぎだよボーボボ‼︎」
すかさず首領パッチに爆弾やらダイナマイトやらを装着し、準備を整えて行くボーボボにビュティが待ったをかけるが、首領パッチは巻かれた目隠しを退けてビュティを睨みつけた。
「小娘、引っ込んでな。脇役ふぜいが」
「いきますよ主人公さん」
「あ――――ねたみって怖い怖い」
「……」
うざい口調のまま大砲にセットされる首領パッチに、ビュティはもう止める気も起きずにただ見送る。
そしてボーボボが、大砲に備えられた導火線に火をつけ、照準を合わせた。
「発射!!!」
「ぶ‼」
だが、首領パッチは全く見当違いの方向に飛ばされ、空港の壁に激突して跳ね飛ばされて行く。
やがて全身に付けられた爆弾にも火が付き、首領パッチを爆炎で包み込んだ。
「ぎゃあ!!!」
ボロ雑巾の様になった首領パッチが、ぼとりと地面に落ちて煙をあげる。
そしてすぐに、鬼の様な形相でボーボボの元に駆け込んできた。
「テメー‼ コラ、この野郎!!! 話が違うじゃねーか‼ 死にかけたぞ‼ おお!!? このノーコン野郎!!! ノーコン野郎!!! ノーコン野郎!!!」
「ベーコンやるから許して♡」
「ベーコンかよ!!!」
お詫びのつもりか、差し出された特大のベーコンを苛立ち交じりに近くにいたピスケスにぶつける。
「ベーコン通りま――す。ベーコン通りま――す」
もらったベーコンを頭に乗せて意味不明なことをする首領パッチは、とうとう怪人たちの怒りを買った。
「ゾディアーツ真拳『法王の断罪』!!!」
「ゾディアーツ真拳奥義『ネクタル・ウィップ』!!!」
「ぎゃああああ!!!」
コマの様に回転した首領パッチは、そのままくるくるとどこかへ飛ばされて行く。
「ああああああ!!!」
かと思えば、獅子舞の顔になったまま再びタウラスとアクエリアスの元へと突っ込んで行った。
「夢はきっと叶う――――――――――!!!!」
「ぐわあああ!!!」
ただコマの様に回っているだけだが、相当の威力があったのかタウラスとアクエリアスが血反吐を吐きながら吹き飛ばされる。
敵の二人をあしらったことで調子に乗った首領パッチは、さらなる見せ場のためにボーボボとイザヨを煽り始めた。
「おっしゃー‼︎ このままフィニッシュはオレが決めるぜ‼︎ サポートしろよ脇役太郎‼︎」
「ハイ! あの技をやるんですね」
「イザヨ! お前はビートかませ‼︎」
「よし来た‼」
【
イザヨが新たなスイッチを使うと、彼女の足にスピーカーが装着される。
するとそれから、ずんずんと響き渡るリズムが放たれ始めた。
「タン・タ・タン♪ タン・タ・タン♪ タンタ・タ・タン♪」
フラメンコダンサの格好になった首領パッチとボーボボが、ヘッポコ丸の方へと近づいて行く。
彼の背を敵に向けさせると、首領パッチは全力で腹に一撃を入れた。
「オ・レ‼︎」
「ぶっ⁉︎」
途端にヘッポコ丸の腹の中のガスが噴出され、ゾディアーツたちに甚大な被害を与える。
リズムに乗ったまま次に向かうのは、ギョッと後ずさる天の助の方だった。
「タン・タ・タン♪ タン・タ・タン♪ タンタ・タ・タン♪」
「何⁉︎ 何する気なの!!?」
「オ・レ‼︎」
怯える天の助の顔面にボーボボの長い足が炸裂し、弾丸の様に弾き飛ばす。
吹っ飛ぶタウラスの横で、今度はピスケスにソフトンの頭部がぶつけられた。
「カフェオ・レ‼︎」
立て続けに二体が倒され、ジェミニとアクエリアスが警戒を強める。
近づきさえしなければいいという考えだったのだろうが、そうは問屋がおろさなかった。
「さぁさぁフィニッシュだぜ――♪」
「ためてためて――――――♪ タン・タ・タン♪ タン・タ・タン♪ タンタ・タ・タン♪」
「オ・レ!!!」
そしてボーボボが一撃を叩き込んだのは、首領パッチだった。
蹴り飛ばされた首領パッチはそのまま、二体の怪人のど真ん中に激突して大きく吹き飛ばしてみせた。
「奥義『バカ爆弾』!!!」
「ぎゃあああああああああ!!?」
ボウリングのピンの様に吹っ飛ぶ怪人たちと首領パッチに、ボーボボはつまらなそうに鼻で笑った。
「バカの相手は疲れる…もっと骨のある奴らは他にいるだろう。サッサと出てこい」
「ザコばかり相手しててこっちは飽き飽きしてんだよ」
まだまだ余裕だと言わんばかりに指を鳴らすイザヨとボーボボは、怪人たちの中でも別格のオーラを放つ五体を睨みつけていた。
「もう我らと相対する気か………どうやら早死にが望みのようだな」
その中の一体、
ビュティもその凄まじさに、頬に冷や汗を垂らしていた。
(スゴいオーラ…‼︎ 幹部っていうやつらの中でも格段に強いの……!!?)
間違いなく簡単にはいかない相手に、ビュティはゴクリと息を飲む。
その真下で、息も絶え絶えな首領パッチがプルプル震えながら拳をあげた。
「じょ………上等だっての………オレが……主人……こ…う……ガクッ」
「どうした首領パッチ―――――!!?」
「………」
しかしシリアスな雰囲気は、ほとんど長く続かなかった。