【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒 作:春風駘蕩
「オラオラオラ―――走れ走れ―――!!! ヒャーッハッハッハ!!!」
「……」
猛スピードでウンコカーを引っ張るイザヨに向けて、ボーボボが悪人面で鞭を振るう。
何かが決定的に間違っている気がしたビュティだったが、言葉が何も思いつかなかった。
「でもこの速度なら間にあ……!」
できるだけポジティブに考えようと、そらしていた目を戻して進む方向を見る。
が、視界の端に見覚えのある足が見えて目を瞬かせた。
「ぎゃあああああ擦れる擦れる擦れてなくなる―――!!!」
「きゃああああ二人ともーーー!!?」
ウンコカーに乗り損ねたらしい首領パッチと天の助が、悲鳴を上げてガリガリ引きずられていた。
それに気づいたイザヨは、すぐさま左腕の装備を別のスイッチのものと交換した。
「二人とも―――‼ 今助けるぞ―――‼」
「ヤダヤダなんかいやな予感がする!!!」
「お前はもう何もするな!!!」
即座にロクでもないことしかしないと直感し、首領パッチたちはイヤイヤと首を振る。
しかしイザヨは構うことなく、二人にフック付きのワイヤーを巻きつけた。
「奥義『友情のウィンチアタック』!!!!」
「げぶらばぁ!!!!」
イザヨはそのまま二人を、カツオの一本釣りのごとき勢いで投げ飛ばす。
仲良く飛んで行った首領パッチたちは、前方で待機していた宇宙船の後部入り口に激突し大穴を開けてしまった。
「突入!!!!」
「ぶち破っちゃった!!!」
できた大穴にウンコカーも突撃し、そのショックでバラバラになった車内から全員が吐き出された。
甚大に被害をきたしながらも、イザヨはガッツポーズとともに立ち上がった。
「いくぜ、待ってろよ宇宙鉄人!!!」
「って後ろに大穴開いたままだよ⁉︎ このままだとみんな吹っ飛ばされちゃうよ‼︎」
「大丈夫だ。すでに塞いである」
穴の空いた宇宙船になど乗ってられるか、と目を剥くビュティに向けて、大工の格好の田楽マンがサムズアップで答える。…その手に工作道具の一式を持ちながら。
「セロテープで!!!」
「おバカ――――!!!」
下手くそな修理の後をさも自慢げに見せびらかす田楽マンに、ビュティはありえねぇとばかりに叫ぶ。
すると田楽マンを踏み潰し、ボーボボが大穴の前に出た。
「ならばオレの出番だ! 鼻毛真拳奥義…!!!!」
ボーボボが力を解放すると、無数の鼻毛が放たれて網を作り出す。
複雑に絡み合った鼻毛は、やがて一枚の布のようになって穴を完全に塞いでしまった。
「すごい、穴を塞いだ!」
「これで一安心……ん?」
思っていたのと異なり、ちゃんと真面目に非常事態を解決したことで、ビュティとヘッポコ丸は安堵のため息をつく。
が、ふと鼻毛の壁の合間に見える、あるものに気づいた。
鼻毛と一緒に壁の一部に組み込まれている、首領パッチの姿に。
―――組み込まれ
組み込まれ
組み込まれてる!!?
ちょっとしたホラーな光景に、ビュティはものすごい表情で凍りつく。
絶句する彼女に対し、ボーボボはやり切った感満載の笑顔で答えた。
「これぞ鼻毛真拳奥義『かさぶたパッチ』だ」
「やめてあげなよ⁉︎」
首領パッチを血液中の赤血球のように扱う暴挙にたまらずビュティが講義の声を挙げる。
が、本人からしてみれば非難は後回しにして欲しかったようだ。
「だれでもいいがらだずげでぐれええええええ!!!!」
「怖いよ‼︎」
貞子のように黒い毛の中から顔を覗かせられ、ビュティは背筋にぞわぞわっと震えを走らせていた。
「しょーがねーなー。ほら首領パッチ、つかまれ」
面倒臭そうに絡まった鼻毛を外してやろうと近づいて行く天の助。
角ばったプルプルの手が、鼻毛をかきわけようとしたその時だった。
「ハハハハハ……‼︎ 逃げられると思ったか愚か者どもが!!!」
ガッ‼︎と突然鼻毛の間から腕が飛び出し、天の助と首領パッチを捕まえてしまう。
続いて毛の間から覗いた一つ目、リブラの目を間近で見てしまい、捕まった二人は一斉に悲鳴を上げた。
「ぎゃあああああああああああ!!??」
「くっ…まさかあれだけ食らってまだ…‼」
十二体の怪人たちのうち、たった一体だけが爆散を逃れたのかと戦慄の声が上がる。
しぶとく生き残ったリブラは、二人の体に手を回していつでも仕留められることを示した。
「決して逃しはしない……動いてはなりませんよ⁉︎ さもなくばこの男の命は」
「ヘルプ! へループ!」
「おのれええええええ‼︎」
「首領パッチいいいい‼︎」
まともな戦法ではもはや勝てないと悟り、卑怯な手段に出たリブラをボーボボたちは鋭く睨みつける。
人質を取られてはもう手出しできない、と思われたが。
「君の犠牲は忘れない!!!」
「ぎゃああああ!!!」
ボーボボは一切ためらう様子も見せず、前に出された首領パッチごと鼻毛でリブラを叩きのめした。
「くっ…ならばこいつだ!」
「バカ! お前何見てたんだよ⁉︎ 殺される―――!!! ボーボボに殺される―――!!!」
首領パッチでは盾にならないと諦めたリブラが天の助を前に突き出すが、この後の展開を知っている天の助は涙目で喚く。
「今助けるぞ―――!!!」
ボーボボとは異なり、天の助を助けたいという善意100%のイザヨが、この窮地を乗り切るスイッチの力を発動させた。
【
「コズミック真拳奥義『この先行き止まり』!!!」
「ぎゃああああお前助ける気ねぇだろおおおおおお!!!」
イザヨの足に装着された巨大な筆が、空中に『止マレ』と字を書き、形を持ったそれが首領パッチと天の助もろともリブラを弾き飛ばした。
「そして」
すると今度は、いつの間にかボーボボのアフロが開き、中にスタンバイさせられた田楽マンがギョッと目を見開く。
「田楽ショット―――!!!」
「ぐばべらっ!!?」
ぼよーんとアフロの中でバネが弾け、中にいた田楽マンが弾丸として飛ばされる。
田楽マンはリブラの土手っ腹に命中し、鼻毛の壁をぶち破って全員まとめて吹き飛ばしてしまった。
「ぎゃあああああああああ!!!」
「みんな!!!!」
あっという間に遠く離れていく仲間たちと敵。
するとその間に、ボーボボたちの乗るロケットのブースターに火がつき、徐々に加速し始めた。
「ロケットが発射する! 急いで救出せねば‼︎」
「ボーボボ!」
とてつもない馬力を誇るブースターは、どんどん速度を上げていってしまう。
新幹線並みの速さを超えた段階で、ようやくボーボボが動いた。
「ならば鼻毛真拳奥義…」
ボーボボの全身に、鼻毛真拳のエネルギーが集まっていく。
そしてボーボボが手を前にかざすと、集まったエネルギーが一つの物質を作り出した。
積み重ねられた、札束を。
「『Run for MONEY 爆走中』!!!!」
「金で走らせる気だ―――!!!! 無理だよ流石にこれは!!!」
どこぞの番組のごとく、欲望をエネルギーに自力で戻ってこさせるつもりのボーボボにビュティがツッコミを入れる。
だがその数秒後、ビュティの目に信じられない光景が映った。
「金よこせええええええええ!!!」
「おれのだ―――‼︎」
「俺の‼︎」
「根性で戻ってきた!!! でも醜い!!!」
とんでもなく醜い形相で、首領パッチと天の助と田楽マンが全力疾走してきていた。
努力は認めるが、動機があまりにも情けなくてかける言葉が見つからなかった。
「逃がさんぞぉぉぉ!!!」
「あ! 敵もまだ諦めてない‼︎」
よだれを撒き散らして走ってくる首領パッチたちに、リブラはボーボボの鼻毛を掴んで追いすがっている。
敵を自分達の手で招き入れてしまったように見えたが、ボーボボとイザヨはそれに意味深な笑みを浮かべた。
「フン、飛んで火に入る夏の虫とはこのこと……文字通り踏み台になってもらうぜ‼︎」
「なに!!?」
驚愕するリブラの前で、ボーボボがくいっと自分に鼻毛を引っ張る。
その途端、首領パッチに巻きつけられた鼻毛がひとりでに外れ、リブラを空中に放り出してしまった。
【LIMIT BREAK】
慣性の法則でしばらく空中にとどまるリブラの前で、イザヨが拳を構えてベルトのレバーを倒す。
凄まじい気迫がイザヨの右腕に収束し、イザヨはそれを一気にリブラに向けて撃ち放った。
コズミック鼻毛真拳協力奥義『激情マッスルインパクト』!!!!!
「飛んでけ―――――!!!」
「こんな……ただの人間ごときにこの私がああああああ!!!!」
イザヨの拳が、リブラの顔面に炸裂して衝撃を生み出す。
強烈な一撃を受けたリブラは断末魔の叫びを残し、大爆発を起こした。
「しっかりつかまれ‼︎」
「うわああ!!!」
イザヨが叫んだ直後、ボーボボたちをとてつもない衝撃が襲う。
リブラが起こした爆発が、ロケットを押し出す新たな推進力となったのだ。
さらなる加速を得たロケットは、一気に滑走路を滑って天に向かって一直線に飛翔した。
「宇宙に…キタ―――――!!!!」
猛烈な轟音と爆煙を残し、人類の希望を乗せた方舟は遥か遠い空へと舞い上がったのだった。