【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒 作:春風駘蕩
奥義31:パチえもん ボボ太の宇宙鉄人
40のスイッチの光と一つになり、イザヨは新たな姿へと変貌していく。
青い特攻服を纏い、つばの長い学生帽を被り、白いロケットの形をした剣を構えた彼女は、スカイダインとグランダインに向かって拳を突き付けた。
「みんなの絆で……宇宙を掴む!!!」
「勝負だ、宇宙兄妹!!!」
同じくボーボボも、白いラインの入った黒のジャンパーを纏い、パワーアップを終わらせる。
それぞれが有する最強の形態へと変身し、凄まじい闘気を漲らせた。
「奴らをぶっ潰せば全部終わりってことだな!」
「上等だ。さっきのでエンジンも温ったまった」
「ぬめり」
首領パッチや天の助、ソフトンと魚雷ガール、メテオもなでしこも拳を鳴らし、正体を現した黒幕を睨みつける。
散々人を利用してくれた最後の敵に、彼らは一切の容赦を持つ気はなかった。
「連中をスクラップにするぞ!!!」
「おっしゃあ‼︎」
一同の咆哮が、XVⅡの内部に響き渡る。
しかしそんな凄まじい気合いを真正面から受けながら、宇宙鉄人に慄く様子は全くなかった。
『はたして…』
『そんなことが可能か? ふん‼︎』
二体が気合いを入れるようなしぐさを見せると、彼らの胴体の一部が開き、中が変形を始める。
すると、その中から無数のミサイルや銃器が顔を出し、ボーボボたちに照準を合わせ始めた。
『まずは歓迎だ、宇宙のゴミども』
ジェノサイドクラッシュ!!!
「「「「ぎゃああああああ!!!!」」」」
生み出された兵器が一斉に発射され、ボーボボたちに襲い掛かる。
あっという間に辺りは火の海になり、ボーボボたちは熱と爆風に翻弄されていった。
「こいつら…やっぱり強い!」
「最初から交渉の余地はなさそうだな」
思いっきり巻き込まれている首領パッチらを尻目に、間一髪逃れたソフトンとヘッポコ丸が敵を観察する。
黒こげになった天の助と田楽マンを足蹴にしながら、宇宙鉄人たちは不敵な笑みを響かせていた。
『ククク…存外堪えるな。いいだろう』
『我らの力の一端を見せてやろう』
そう言った直後、スカイダインとグランダインの纏う空気が一変する。
そして彼らの周囲に、無数の奇妙な幾何学模様のような何かが浮かび始めた。
〝アカシックコード〟
「なっ! 何だこれは!!!」
謎の現象に、ボーボボたちはそれらに取り囲まれながら狼狽の声を上げる。
その中で唯一、ヘッポコ丸のみがハッと何かに気づいたような表情を浮かべた。
「聞いたことがある……宇宙創造から終焉に至るまで全ての情報を記したデータバンクが存在すると……まさか奴らは、それに干渉することができるのか……!!?」
(…凄まじきバトルオタク)
ウソかホントかよくわからない情報を饒舌に語る少年に、ビュティが思わず戦慄の視線を向けていた。
『どうした? 恐ろしくて近づけないか?』
「なわきゃねーだろうが‼︎ いくぞオラ――!!!」
あからさまな挑発にまんまと乗り、ボーボボが怒号とともに宇宙鉄人に向かって進軍を開始する。
だが、言葉とは裏腹に、全員が警察隊のライフシールドに身を隠し、ちょこちょこと少しずつ進むという情けない姿を晒していた。
「メチャクチャ慎重だ――――!!!!」
さっきまでの威勢は何だったのか、とビュティが叫び目を見開く。
だがそんなボケをかましている間にも、宇宙鉄人たちの攻撃準備は着々と進んでいた。
『読み尽くす』
「マズイ! 何か知らんが止めないとマズイぞ!」
「何が起こるかわからんなら…」
向こうが何かをやる前に潰さねば、とボーボボたちは一斉に攻撃を開始する。
が、あまりの慌てぶりによって、ゲートボールのおじいちゃんやラジコン少年や着ぐるみなど、全員がよくわからない格好になってしまっていた。
「こっちだって何するかわかんね――――ぜ!!!」
(確かに――――――!!!!)
『もう遅い』
だがその時には既に、鉄人たちは計算を終え、動き出していた。
グランダインが持ち上げた手のひらの上に現れた一体の人形を見たとたん、首領パッチが驚愕で固まってしまったのだ。
「ヤッ君‼︎ いや違う⁉︎」
『スキだらけだ』
「おぶ‼︎」
「ぐはっ‼」
愛する人形とは微妙に違うと気付きながら、首領パッチは思い切り顔面をメテオに向かって叩きつけられる。
斃れる二人を見て、ボーボボとイザヨがさらなる怒りを燃やし突撃した。
「テメ――‼︎」
『ここから先は動く必要もない』
くいっ、とスカイダインが指を動かし、全く関係がなさそうな所にトゲの罠を設置する。
それ以上動こうとはしない二体を好機と見たボーボボが、ゲートボールのハンマーを振りかざす。だがそれは、首領パッチを踏んだことで大きく狙いを外してしまった。
「あ‼︎」
「ぶ!!!」
「ごげふ!!?」
ズレた一撃は、着ぐるみの天の助の顔面に炸裂して、彼はそのままイザヨの腹に向かって吹っ飛ばされる。
二人の勢いは止まらず、途中にいたなでしこまで巻き込んで、先ほど張られた罠に三人仲良く突き刺さった。
「ぎゃあああ‼︎」
「バカめ‼︎ まだオレが残ってるぜ‼︎」
ただ一人、まだ無傷のままのボーボボが再びハンマーを振り上げる。
だがその目前に、血管を顔中に浮き上がらせた首領パッチが拳を振り上げた。
「よくもオレを踏みやがったな―――!!!」
「ぶはぁー‼︎」
「何しやがんだ‼︎」
「テメーこそ‼︎」
踏み潰され、巻き添えを食らい、余計なけがを負わされた者達が仲間に向かって怒号を上げて襲い掛かる。
宇宙鉄人たちには一切の傷をつけられないまま、ボーボボたちは互いに醜い争いを始めてしまっていた。
(あ、あの一瞬でこうなることを予測……いや、未来を見たというの?)
(コイツら……一体どんな世界が見えているんだ…!!?)
たった一度の計算を終えただけで、これほどの結果を導き出した鉄人たちに、ビュティとヘッポコ丸は青い顔で身を震わせる。田楽マンにいたっては、今にも漏らしそうなほどにガタガタと震えていた。
「くっ…こんな力を持っていたとは…」
「ぐぐ…こうなったら…」
ようやく正気に戻った首領パッチらは、悠々と佇む宇宙鉄人たちを睨み、悔しそうに歯噛みする。
すると首領パッチは、いきなり周囲に浮かぶ幾何学模様に食らいつき始めた。
「この変な模様を全部食う!!!」
「ナイスアイデア♪」
「食べれるのそれ⁉︎」
気迫が見せた幻かなにかだと思っていたビュティが、食いつかれてゴムのように伸びる模様に驚愕の目を向ける。
すると突如、ボンッと白い煙が立ち上り、首領パッチは博士風の見た目に変貌した。
「頭良くなった‼︎」
難しそうな実験を嬉々として行う首領パッチだが、当然事態は何も好転していなかった。
「クソ、どうすりゃいいんだ‼︎」
「オレに任せろ」
冷や汗を流し、窮地に悩むボーボボの前に、おもむろに天の助が前に出る。
只ならぬ雰囲気を纏った彼は、全神経を研ぎ澄ませてその力を解放させ始めた。
―――奴らの〝アカシックレコード〟と互角に渡り合う手段はただ一つ。
ゴゴゴゴ…と大気を震わせながら、それは天の助の周囲に顕現する。
ところどころに『ぬ』の字が表れた、奇妙な幾何学模様の陣となって。
ぬ感覚
((ここにもスゴイ感覚の持ち主がいた―――!!!))
役立つかどうかはともかく、凄まじい見た目のそれを発現させた男に、ツッコミ役二人から戦慄の視線が集まる。
それを声援と受け取ってか、天の助はド派手なサンバの格好に変貌しながら鉄人たちに向かって突進していった。
「ぬ―――――!!! ぬ―――――!!!」
『話にもならん』
「ぎゃあ!!!」
無論、そんな攻撃が効くわけもなく、天の助は軽くあしらわれて吹っ飛ばされる。
だが彼の勇姿は、鼻毛の貴公子と宇宙の番長の闘志に火をつけたようだった。
「いい気になるなよ、宇宙鉄人‼︎」
「ならばこっちはキサマらの計算のさらに上を計算するぜ!!!」
勇ましく吠えると、ボーボボとイザヨは目を閉じ、集中を始める。
その脳裏に、無数の計算式が浮かび上がり、パズルのように解かれ始めた。
(2+1=3 5+2=7 3+3=6 6+3=9 3+4=7 8+7=15……)
「足し算だけ!!? ムリだよ‼︎」
内容のしょぼさに目を剥き、無謀だとビュティが待ったをかける。
確実に対抗できないであろう内容の薄さ。だが次の瞬間、ボーボボとイザヨの周囲にも、難しそうな幾何学模様が展開されていった。
「あれ⁉︎ なんか難しい感じの図形がいっぱい出た!!!」
「足し算で!!?」
「宇宙鉄人の計算を上回る動き、それは―――――」
計算を完了させた二人の戦士の目が、カッと見開かれる。
そしてその計算に従い、二人の戦士たちは走り出す。なぜか犬と猫の格好になって、ぐるぐると輪を描くように。
「「これだ―――!!!」」
「ウソ――――!!!」
「「鼻毛コズミックW真拳奥義『わんにゃん大回転』!!!」」
ドタバタドタバタとじゃれ合うように走り回るボーボボとイザヨ。二人はそのまま、宇宙鉄人たちに向かって突撃していった。
『くだらぬ時間稼ぎだ!』
『次の一撃で肉体を貫かれて死ぬがいい!』
「わんわんわんわんわんわん‼︎」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ‼︎」
虚仮にされたと思ったか、宇宙鉄人たちは腕から鋭い爪を備えて直接狙いにかかる。
ボーボボとイザヨは減速することなく、鉄人たちに真正面から向かっていく、そして。
凄まじい衝撃とともに、二人と二体の拳が同時に激突する。
ボーボボとイザヨ、双方の身体が貫かれることはなく、鋼鉄の兄妹は機械の目を大きく見開いた。
『何ィ‼︎ 我らの計算が外れただと‼︎』
『こんな事が…何故…⁉︎』
予想外の事態に、二体はその理由を考察する。
そして、彼らの足にしがみつく白い生物―――田楽マンの存在に気付き、怒りで視界を真っ赤に染め上げた。
『このためか…!!!』
「その重りの動きまでは計算できなかったようだな。オレたちの計算の勝ちだ」
「おっしゃ――――! 奴らの鼻を明かしてやったぜ―――!!!」
ようやく厄介な力を一つ封じる事ができたと、首領パッチたちは喜びをあらわにする。
だが、鋼鉄の兄妹に焦る様子は一切見受けられないことに、すぐさま愕然となった。
『ククク…おめでたいやつらだな』
『この程度、我らの力のごく一部でしかない』
カチーン、と驚愕で固まり、鉄人たちを凝視する首領パッチたち。
そんな中で、ボーボボはにやりと不敵な笑みを浮かべていた。
「奇遇だな。おれ達もまだ奥義は使ってないぜ」
「いや思いっきり使ってたよ」
ビュティの冷たいツッコミが、緊迫した空間にいやに響くのだった。