【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒   作:春風駘蕩

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奥義33:友情ジェノサイダーズ

 ―――22年前、毛の王国。

 

 まだ毛狩り隊の侵攻に脅かされる事なく、比較的平和な時間を過ごしていた、ある夜の事だった。

 

「…あー、アイドルになりてぇ」

 

 縁側から空に浮かぶ大きな月を見上げながら、ボーボボの父TUYOSI(ツヨシ)がそんな事をのたまう。

 そこへ、切り分けたスイカを持ったボーボボと、兄姉であるベーベベとブーブブがやってきた。

 

「父ちゃん! スイカ切ってきたぜ、兄さん達も一緒に食べよう!」

「おー、ボーボボ。よし食おう」

 

 優しい息子の気遣いに笑顔を浮かべ、ツヨシは息子達と並んで縁側に座る。

 そして、美しい夜景を肴にいざ食した途端、ツヨシとベーベベが口から真っ赤な火を吹いた。

 

「タバスコ仕込んでみました♪」

「ぼべらぁ!!?」

「きゃあああああ何やってんのよあんた!!!」

 

 目を飛び出させて悶絶する二人に、ブーブブが驚愕で悲鳴を上げる。お茶目な顔で舌を出す弟の顔が、ものすごく腹立たしく感じた。

 

「野郎ふざけやがって‼︎」

「てへ☆ お茶目なジョークなの」

「ジョークで兄貴を殺そうとしてんじゃねーよ!!!」

 

 全く反省する様子のないボーボボに、ワカメ髪を逆立たせたベーベベが怒号を上げて掴みかかる。

 ツヨシがそれに巻き込まれ、ギャーギャーと毛の一家の夜が騒がしくなる。そんな、ありふれた日常の一頁の中だった。

 

「…ん? ねぇ、待って。アレ何かしら」

「あ?」

 

 父と弟達のケンカに呆れた視線を向けていたブーブブが、ふと訝しげな声を上げて顔を上げる。

 釣られて空を見上げたボーボボたちは、その視線の先に一つ、星空の中で妙に目立つ光があることに気がついた。

 

「なんか…こっちへ……近づいてきて………!!?」

 

 最初は星だと思っていたそれが、徐々に大きく見えてきて、一家はだんだんと慌て始める。

 その直後、光はどごーん‼と凄まじい音を立てて庭に落下し、凄まじい衝撃をあたりに飛び散らせた。

 

「何じゃこりゃあああああああ!!??」

「何⁉︎ 何が起きたの⁉︎」

 

 突然の現象に、毛の兄弟はバタバタと狼狽し走り回る。防災頭巾代わりにタライを被ったりカツオを担いだりと、やることが無茶苦茶になるほどに。

 そんな中、いち早く立ち直ったベーベベが爆心地に目を向け、ハッと息を呑んだ。

 

「…なんかいるな」

「何!!? それは間違いなくエイリアンだ‼︎ 誰かプレデター呼んでこい‼︎ ここは地獄になっちまうぞ!!!」

「プレデター呼んだ方が地獄よ!!!」

 

 黒電話を片手に、宇宙において最強最悪の掃除屋を呼ぼうとする弟に、ブーブブが慌てて待ったをかける。

 やがて、ボーボボたちの見つめる先で、爆心地から煙が晴れていく。その中から現れたのは、予想だにしない存在だった。

 

「赤ん坊だと…⁉︎」

「親方―――‼︎ 空から赤ちゃんが―――!!!」

「お前さては昨日ラピュタ観たな⁉︎」

 

 真っ赤に燃える抉れた地面の上で、すやすやと眠る小さな赤子。

 ゴーグルと帽子をかぶった、つぎはぎだらけのコスプレをしたボーボボが叫ぶと、つられたように赤子は鳴き声を上げ始めた。

 

「おーおー、かわいそうに。惑星ベジータから逃げてきたのか〜?」

「サイヤ人⁉︎」

「どれどれ、わしが抱っこしてや…あ、腕ねぇからムリだ」

「何しに出てきたの⁉︎」

 

 何者かは知らないが、このままにしておくのはかわいそうだ、とツヨシが率先して抱き上げようとして失敗する。

 それに突っ込んでいたブーブブは、次の瞬間驚愕に目を見開いた。

 

「オギャ―――――ッ!!!」

「毛ゃああああああっ!!?」

 

 ひときわ強く泣き叫んだ赤子が、ツヨシの毛を掴んで思いっきり引き千切ったからだ。

 体の一部を直にブチ切られたツヨシは、断末魔の叫びをあげて地面を転がっていった。

 

「父ちゃ―――――ん!!!」

「ぐふっ……ボ、ボーボボ…ブーブブ、ベーべべ………わしはもうダメだ…この子のことを頼んだぞ………ぐふっ!!!」

「いや押し付けてるだけだろそれ!!! 自分の子供に何させようとしてんだ!!!」

 

 息も絶え絶えに、ギャン泣きする赤子を託そうとするツヨシにベーベベがふざけるなと吠える。気持ちはわかるが息子に丸投げするなと。

 そうこうしているうちに、今度は赤子はボーボボのアフロを掴み、力尽くで上下に引き裂いてしまった。

 

「ぎゃ―――ん!!!」

「ぎゃあああああオレのアフロがー!!!?」

「もげた!!!?」

 

 まさかこれが、20年後に度々彼のアフロが開閉するようになったきっかけになったなど、誰も想像できまい。

 阿鼻叫喚の地獄の中、縁側を通り過ぎようとした目つきの悪い少年に、ツヨシは希望の眼差しを向けて呼び止めた。

 

「おお‼︎ ビービビ‼︎ ちょうどいいところに来た!!! 助けてくれ!!! わしらこの赤子に殺されてしまう!!!」

「あ?」

「いいから‼︎ 早くしないと本当に殺され…ぎゃああああ!!!」

 

 自分の次男に助けを求めたツヨシが、今度は残った毛を掴まれてぶんぶん振り回される。

 それを見た少年・ビービビはちっと舌打ちし、気だるげに赤子に近づいた。

 

「ちっ…しょうがねーな」

 

 何で自分がそんな役目を、と不満げにぼやき、ビービビは赤子を抱き上げる。

 その途端、あれほど盛大に叫んでいた赤子はピタリと泣き止み、ビービビを見上げてにっこりと満面の笑みを浮かべ始めた。

 

「…キャハハッ‼︎」

「なんだよ、おとなしいじゃねーか」

「「「「何―――っ!!?」」」」

 

 拍子抜けした様子で佇むビービビに、ボーボボたちは信じられないとばかりに絶叫し、二番目の兄を凝視した。

 

「驚いたのぉ…あんな暴れん坊がこうもあっさり……」

「ビービビ兄ィすげぇ…‼︎」

 

 満身創痍のツヨシが、やや硬い仕草で赤子をあやすビービビを見つめて感嘆の声をこぼす。ボーボボなど、それ以上声も出ないようだった。

 

「よし、お前が育てろ」

「はぁ!!?」

「なんかお前に一番なついてるみたいだし、いいだろ。ていうかお前以外ムリだろこれ」

 

 ツヨシのムチャぶりの様な提案に、他の兄弟たちはうんうんと同時に頷く。

 それにイラッとした表情を見せるビービビだったが、赤子が自分の指をつかんで離さないのを見て、やれやれと肩を竦めた。

 

「…ったく、めんどくせーな」

 

 そういうものの、ビービビの顔には確かな慈愛の表情が滲んでいたことに、彼自身気付いていないようだった。

 

 

 そして時は、現代に戻る。

 宇宙鉄人たちはその事実を、呆然とした様子で立ち尽くす女番長に、嘲りの視線とともに告げるのだった。

 

「……そうして生まれたのがお前だ。如月イザヨ」

 

 愕然としているのは、イザヨだけではない。

 ビュティやヘッポコ丸、その場にいた全員が、鋼鉄の兄妹の口にした真相に目を見開き、絶句していた。

 

「あたしが生物じゃないって…どういうことだ!!? あたしは毛の王国の人間だ!!!」

『否‼︎ 貴様は地球外から飛来した存在………どこから来たかも何者なのかも不明な、完全なるUMAだ!!! それを人間などと…笑わせる!!!』

 

 イザヨは顔を青ざめさせ、信じるものかと声を荒げる。

 だが宇宙鉄人は、イザヨのその反論さえ一蹴する。どれだけ否定しようとも、自分達が伝えたことは純然たる事実なのだと、そうはっきりと告げていた。

 

「ボ…ボーボボ⁉︎ 本当なの!!?」

「ウソだろ、ボボ兄……ウソだと言ってくれよ」

 

 ビュティが隣でずっと黙ったままのボーボボに尋ね、イザヨが縋るように悲痛な目を向ける。

 だがそれでも、唯一真実を知る男は貝のように口を閉ざし、答えようとはしなかった。

 

『残念ながら、きちんと観測されたデータがある』

『宇宙から飛来し、一個の物体として確立した存在が毛の王国にあるとな』

「…黙れ」

 

 追い立てるように、宇宙鉄人たちはさらなる情報を提示し、イザヨはそれに低く唸るような声を返す。

 それでも構わず、スカイダインとグランダインは嘲るような調子で残酷な真実を告げ続けた。

 

『キサマは人外でありながら、ずっと王国の者を騙していた』

『そして王国もまた、貴様の正体を隠し続けてきたのだ』

「黙れ…!」

 

 ギリリ、とイザヨの歯が軋みを上げる。

 自分の存在の根底、その全てが揺るがされ、彼女を支えていた全てが脆く崩れていく。その感覚に、女番長はこれまで見たことがない怯えを見せていた。

 

『『お前に我々を悪と断じ、人類を守ると豪語する資格など最初からありはしないのだ!!!』』

「だまれぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

 限界を迎えたイザヨが、自身が持つ剣に青い光を纏わせながら斬りかかる。

 真実をこれ以上聞きたくない、すべて否定したいという意志のままに、イザヨは宇宙鉄人たちを排除しようと無謀な突撃を行ってしまった。

 それは彼らにとって、望み通りの展開だった。

 

『『京大(キョーダイ)デストラクター!!!!』』

 

 ガシン、と合わさったスカイダインとグランダインの手から、眩い光が迸る。

 とてつもないエネルギーが溢れ、飛び掛かり剣を振り上げたイザヨに向かって、激流の用に襲い掛かっていった。

 

「ぐぅっ…ガハッ!!!」

 

 イザヨは咄嗟に、剣を盾に防ごうとする。だがエネルギーの奔流はそんな事では止まらず、イザヨをあっという間に呑み込んで覆い尽くす。

 そして光が収まった直後、イザヨの全身から夥しい量の血が噴き出し、空中に真っ赤な花を咲かせた。

 

「「「「「イザヨ―――――――!!!」」」」」

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