【完結】ボボボーボ・ボーボボ ハジケウォーズ/フォースの覚醒 作:春風駘蕩
「ガハッ!!!」
イザヨはついに限界を迎え、大量の吐血とともに変身が解除されてしまう。
纏っていた40のスイッチは全て彼女のもとから離れ、地球の重力に引かれてどこかへと落下していってしまった。
『ハハハ! 全てのコズミックエナジーを使い果たしたようだな!』
『もはや今のキサマは、ただの地球人‼︎』
「ぐぅ…!」
元の学ラン姿で、痛みに呻くことしかできないイザヨ。
宇宙鉄人たちはそれを見下ろし、XVⅡの巨大な腕をゆっくりと伸ばしていった。
『せめてもの慈悲だ』
『ここで楽にしてやる』
巨人の手が、弱り切った戦士を握りつぶそうと残酷に開かれる。
だがその時、宇宙鉄人の視界に荒いノイズが走り、巨人の腕もそれにつられてピタリと停止していた。
『⁉︎ 何だ、今のノイズは…!!?』
すぐさまノイズを振り払い、我に返る二体。
だがその時には既に、イザヨの姿は宇宙空間から影も形もなくなってしまっていた。
『…チッ、おかげで奴を見失った』
『…まぁいい』
『そのうち処分すれば事足りる』
もはやあの人間には何もできまい、と宇宙鉄人は結論付け、計画の再開に着手する。
それが、間違いだとは一切思わずに。
XV2内部の奥、どことも知れない資材置き場のような場所。
宇宙鉄人の魔の手から何とか逃れたボーボボたちは、救出したイザヨの手当てを行っていた。
「ヤベーぞ! イザヨの血が止まらねえ‼︎」
「そんな時は傷口にワサビをぬるんだ」
「はっ! その知恵は『おばあちゃんの知恵袋』か‼︎」
どくどくと流れ出すイザヨの血に焦っていた天の助は、耳に届いた何となく知恵に富んだ声に期待に目を輝かせる。
が、そこに現れたのは、変な袋を持ったおばあちゃん顔の首領パッチだった。
「残念、『オバーナ・チャンの堪忍袋』だ‼︎」
「なんじゃそりゃ!!?」
何がしたいのか意味がわからん、とビュティが目を剥き叫ぶ。
構わず首領パッチは、仰向けに寝かされたイザヨの傷口の上に、バカデカいチューブから大量の練りわさびを絞り落とした。
「オバーナ・チャンの堪忍袋〜〜〜〜♪」
「ごばぁ!!!!」
「あっ、ヤベェマジで出しすぎた」
「何やってんだテメ――――!!!」
「おぶ‼︎」
盛大に吐血するイザヨの姿に、ボーボボが怒りの鉄拳を首領パッチに食らわせる。
イザヨはそれで完全に目を覚ましたのか、苦しげな表情のまま体を起こした。
「大丈夫かイザヨ。無理をするな」
「この程度のキズ……‼︎」
【
悔しさによるものか、険しい顔でイザヨは、手元に残った数少ないスイッチのうちの一つをベルトに挿し、発動させる。
かすかな光とともに、左腕に備わったモジュールが働き、イザヨに応急処置を施してみせた。
「どーすんだよあいつら‼︎ マジで人類滅ぼされちまうぞあんなヤベーの!!?」
「お前らは人類じゃないけどな」
弱々しいイザヨや傷ついたボーボボたちを見て、田楽マンがさっそく弱気になる。ツッコミを入れるヘッポコ丸だが、不利な立場にあることは確かだった。
そんな中、呻き声とともにイザヨが膝をつき、立ち上がろうとする姿が全員の目に入った。
「大丈夫…だ。この身体がある限り……オレはまだ、戦える………!!!」
「ムリだ‼︎ いまのお前が行ってもただ死ぬだけだぞ!!!」
「もうこれ以上!!!」
メテオが慌てて、戦友を止めようと掴みかかるが、イザヨは強い叫び声でそれを押しとどめる。
その目に宿る悲痛な光に、メテオはハッと息を呑んで引き下がっていた。
「オレはもう…失いたくないんだ! あんな思いを……したくないんだ…‼︎」
それは、1ボーボボ達が毛の王国を脱出する1年前。
マルハーゲ王国の侵攻が激しくなり、毛の王国が徐々に追い詰められ始めた時期の事だった。
「毛狩り隊の脅威が…こんなにも早く及ぶとは‼」
「オレ達はまだ戦える……だが、戦えない女子供は早々に離脱させるべきだ」
国内にいても聞こえてくる破壊音や悲鳴。
さらなる窮地が近づきつつあることを察し、ベーベベやブーブブは決死の覚悟を決めようとしていた。
「脱出用ロケットはもう完成してる! いつでもいけるぜ、兄さん‼︎」
「いやホントにこれでいけるの!!? どう見てもただの工作なんだけど!!?」
「飛べるよ」
ぐっ、とサムズアップをして自慢げに言うボーボボと、彼が作った前衛アートのようなロケットを見てブーブブがツッコむ。
ため息をついたベーベベは、傍らに立つ小さな少女の肩に手を置いた。
「そういうわけだ…わかってくれるな、イザヨ」
「イヤだ!!!」
目に涙をこらえ、ボーボボたちを見つめていた少女は、ベーベベの言葉を全力で否定する。
幼い姿のイザヨは、吹けば飛ぶような小さな体で地面を踏みしめ、断固として動かない意志を見せていた。
「イザヨもいっしょにたたかう‼ ここはイザヨのこきょうなんだもん!!!」
「だがお前は子供だ…! オレ達と一緒に戦ったら、お前の命が危ないんだ」
「あぶなくないもん‼ イザヨつよいもん!!!」
決して大好きな兄たちと離れるものか、とイザヨは徹底して抵抗の意志を見せる。しばらく言い合いを続けていた二人だったが、とうとうベーベベの堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしろイザヨ!!! オレ達を困らせるな!!!」
「!!?」
ベーベベの怒鳴り声に、イザヨはびくっと身体を振るわせて黙り込む。
傷ついた表情で見つめてくる、血のつながらない妹の姿に、ベーベベの胸中に航海が浮かぶ。
だが彼は心を鬼にし、イザヨの肩を押してロケットの方に促した。
「さぁ…早くこの脱出ロケット(?)に乗れ‼」
「…………やだ」
「!!? お前、まだそんな事を……!!!」
俯き、ぶるぶると肩を震わせるイザヨにベーベベがまた言い放とうとする。
だがそれよりも先に、イザヨはベーベベにはっしと抱きつき、決して離れるものかとしがみついた。
「ヤダヤダヤダヤダァ!!!! イザヨひとりにげるなんてヤダあああああ!!!!」
「ぎゃああああああああ!!!!」
「ベーべべ兄さ~~~ん!!?」
途端に、ベーベベの全身からベキベキバキバキと凄まじい音がし、口から耳を塞ぎたくなるような絶叫が上がる。
慌てて止めようとしたボーボボとブーブブだったが、今度はイザヨは二人に駆け寄り、ぽかぽかと何度も叩き始めた。
「ボボにいたちはイザヨがキライなんだ!!! だからどこかにやっちゃおうとするんだあああ!!!」
「ごばぁっ!!?」
「ぶべら!!!」
ボーボボとブーブブはたった一撃で地面に叩きつけられ、その後も拳を叩きつけられ見る見るうちにめり込んでいく。
その様子を凝視しあわあわと慄いていたツヨシは、ギン、とイザヨの目が自分に向いたことで「ヒィッ」と悲鳴をこぼした。
「イザヨもいっしょにいくんだもん!!! イザヨもやくにたてるんだもん!!!」
「アメマアアアアアア!!!」
毛先を掴まれ、ツヨシはイザヨにブンブンと思い切り振り回される。
もはや駄々の域ではない。齢2歳の幼女による一方的な虐殺劇であった。
「押し込め‼ 無理矢理にでもロケットに入れちまえ!!!」
「急げ‼ 殺されちまう‼」
「うわ~~~~ん!!!」
ボコボコにされたボーボボたちだったが、何とか隙を見つけてイザヨを拘束する。
そして泣き叫ぶ彼女をロケットの中に押し込み、安全確認もそこそこに急いで発射スイッチを押していた。
「ボボにい~~~~~~!!!!!」
(((((悪は去った…!!!)))))
白煙を残し、天空高く跳んでいく脱出ロケット。
その光景にボーボボたちが抱いていたのは、例えようもないほどの安堵だった。
「…もう、あんな思いは…!!!」
(…ボーボボたちの尽力がなかったら、毛の王国はもっと早くに滅亡してたんじゃないかな…)
やはりとんでもないイザヨの過去話に、ビュティは冷や汗を流しながらそう思う。見れば、思い出したのかボーボボも青い顔で震えているのがわかった。
どうしたものか、と飴をなめながらぼーっとしていた天の助は、自分のすぐ近くにふよふよと浮いている何かに気づき、ギョッと目を見張った。
「⁉︎ な、なんだコイツは!!?」
「ぎゃああああああああ!!! ついに見つかった〜〜〜!!!」
自分達を見つめてくる、まるで眼球のような物体に、ボーボボたちは警戒心を全開にする。
だがただ一人、インガだけが落ち着いた様子でその物体を見つめて口を開いた。
「……あんた、XVⅡそのものね?」
「⁉︎」
インガの言葉に、信じられないといった様子で全員が絶句する。
あの鋼鉄の巨体からは考えられないほど小さな姿に、開いた口が塞がらなかった。
「ウソだろ…⁉︎ こんな目玉が!!?」
「そうか…本体であるメインコンピュータから自我を切り離し、別の端末に避難していたのか…‼︎」
「でも…どうしてここに?」
ソフトンの考察に納得するも、それがここにいる理由は全く分からない。
困惑の視線が集まる中、イザヨが不意に前に出て、XVⅡに向けて深々と頭を下げた。
「……すまねぇ。オレ達がお前の真意に気づけなかったから、こんな事に…‼︎」
悔しくて、申し訳なくて仕方がないと、イザヨは歯を食い縛り声を絞り出す。
それを横目に、ビュティはボーボボに真剣な表情を向けた。
「ボーボボ、XVⅡは何か伝えようとしてるのかも」
「そのようだな」
頷くボーボボは、空中に浮くXVⅡに視線を移し、その真意を問う。
するとXVⅡは向きを変え、壁に向かって中心から光を投射し始めた。
「…!!? これは…!!!」
「何だ? なんかの設計図か?」
壁に映し出されたそれに、一同はざわざわと戸惑いの声を上げる。
じっと目を向けていたなでしこは、映し出されたものの正体に気づき、思わずハッと息を呑んだ。
「これは、新たなコズミックスイッチ…!!?」