40m級恐竜型怪獣 タイラノス 他、登場
そもそもいつ、奴らは地球に現れ始めたのだろうか。
はっきりしていることと言えば、2000年になった瞬間、新たな千年紀《ミレニアム》の到来に世間が湧いていた時、即ち人類が皆セカンドミレニアムの到来に浮かれていた時、奴らは静かにその進軍を着実に進めていたのだろうということだ。
もっとも、2015年現在になっても、未だに怪獣の正体はおろか、どこから来るのかさえ分かってはいないのだが。
初めての怪獣出現の一報は公式の見解では2001年、ブラジルはリオ・デジャネイロに出現した巨大生物―現在でのカテゴリー付けで言えば40m級の怪獣、その容姿からかの恐竜の名をもじって『タイラノス』と呼ばれるものが初めてである。
確かに、人類にとっての脅威たる存在として確認したと言えば納得だ。
ただ表面の皮膚が厚く既存の戦力がほぼ通用しないだけではなく、その耳まで裂けた口から放射される超高熱の息、そして強靭な足。
息がかかればありとあらゆる兵器がドロドロに溶け、その足で一歩踏めば地面が陥没し戦車がスクラップと化す。
この過去に一度たりとも遭遇したことのない未知の存在を相手にブラジル軍は奮戦するも、怪獣はそれらのことごとくを蟻を散らすようにあっさりと蹴散らしてのけたのだ。人類種の天敵と容認されるのも無理はない。
結局このタイラノスはリオの町を散々荒らした挙句、海に消えた。それゆえに、大西洋に面している国々はこれまでに類を見ないぐらいの緊迫した状態となった。いつ襲ってくるかもわからない、さながらジョーズで船が鮫に襲われる数秒前といった所だろうか。
それぞれの国が、互いに疑りあいを続ける。もしかしたら、今度狙われるのは時刻なのではないかと、疑心暗鬼に陥る。一番怪しまれたのは、大国にしてブラジルにも近いアメリカだった。きっとあの国の生物兵器か何かに違いない、と。
言いがかりも酷いところだった。当たり前だ。確かに第二次大戦以降の技術は著しく発展はしたが、そこまでの技術は持ち合わせてなどいないのだから。
ついに大国アメリカが、その重い腰を持ち上げた。他ならぬ、自らにかけられた疑いを晴らすために。
手始めに彼らは持ちうる技術を結集し、アメリカに汚名を着せたあの憎き巨大トカゲを葬るための兵器作成に着手した。新型戦闘機に新型戦車、それらを製作するためにアメリカは高い金を支払って軍事企業に兵器を2年間の内に作らせた。
....もっとも、その当時の兵器でまともに怪獣の相手をできたのは核ミサイル以外になく、ようやく相手取れるようになったのはそれから5年後の事である。
次に彼らは、怪獣が今どこにいるのかを衛星等をフル活用することで発見しようとした。だが、これが中々見つからない。発見したと思ったらそれがただの島だった、なんて話はざらにあったほどだ。
やっとの事で怪獣を発見した頃には、既にイギリス海軍が海中を移動するタイラノスを相手に戦闘を始めていた。その時の戦いは結局、執拗に戦力である戦艦や戦闘機を落とそうとするタイラノスを大西洋のど真ん中辺りに誘導、最終手段たる核ミサイルを1発お見舞いしたことで決着がついた。だが奇怪なことに、倒したはずの怪獣の死体はどこを探しても見当たらなかった。
次に怪獣が現れたのは2002年、5月。南米アマゾンでの出来事だった。
巨大なカマキリのような怪獣がアマゾンのジャングルに出現、しかし大きさは前回現れたタイラノスよりも小柄な20mと、この怪獣を倒すのには大した労力も必要はなかった。しかし各国はその警戒を緩めることはなく、むしろその警戒を強めていった。
新たな怪獣が現れたという事は、他にもいるのではないのか。
そんな考えに至った各国首脳は国際連合の緊急会議の場において、「今こそ世界が一丸となってこれに対応すべきではないのか」と主張。自衛隊しか持たない日本もまた然り、「警戒するに越したことはない」と、この意見に賛成。
その結果、世界中の軍隊を一つに纏めた防衛組織、地球連合軍―EUFが誕生した。
そしてその翌年から、EUFと怪獣達の壮絶な戦いが各地で繰り広げられた。
ある時は中国は上海。ある時はアメリカ西海岸。またある時は太平洋上と、様々な地が戦場と化した。
2002年以降、一年間に出現する怪獣の数は年々増加。それに対応するためにEUFが雇った企業と技術者が兵器を作り出し、それを用いて怪獣を倒すという一連のテンプレのような流れが、いつからか出来上がってしまっていた。
だが、人類側に怪獣を圧倒できるような戦力がなかったわけではない。
積極的に対怪獣兵器を製造しているアメリカは2007年、その年までに確認されている怪獣の中で最も大きい50m級を上回る大きさを誇る巨大人型戦闘兵器の1号機『ジャスティスオブアメリカ(以下、JoAと呼称)』を建造。同年に出現した40m級の怪獣1体を相手に試験運用を敢行し、これを見事撃破。しかしパイロットの安全面までは考慮しておらず、結果的に1号機はそれ以降アメリカに怪獣が現れなかったためにそのまま廃棄同然に放置され、更に性能面やパイロットの安全面において安定感のある2号機の製作に着手した。
中国も怪獣の中では最小クラスである5m級対処の為に2006年に有人二足歩行型機動兵器の製造し量産、各国に配備される予定だったが、時同じくしてヨーロッパの企業も同様の兵器製造を行っていたことでまさかの企業間での軋轢が発生。ユーラシア大陸の中でも小型怪獣が頻繁に出現する南インドにおいてトライアルが実施された。
その他にも兵器開発秘話はごまんとあるがここでは割愛する。
そうして人類が怪獣相手に徹底抗戦を挑み、そして善戦しだしたのは2010年、タイラノスとの初交戦からかれこれ10年も後の事だった。だが、その優位も長くは持たなかった。
内陸部に直接出現する怪獣の出現である。
突然だが、全ての怪獣が一体どこからやってくるかお分かりだろうか?
EUFは、これまでの怪獣出現地域を調べた結果、全ての怪獣が海からやってくるという事で解決したつもりでいた。だが、実際には違った。
内陸部の方であるアマゾンのジャングルに突如出現したカマキリ型も、EUFは海からアマゾン川に入り、そこから出現したとばかり思っており、実際にそう断定してしまっていたのだ。
実際には怪獣の由来はよく分かっていない。ただわかることがあると言えば、人類やその他の生物に対しての明確な殺意のようなものがあるという事だけ。
人類は怪獣との戦いで優位に立ったことでおごり高ぶっていた。そのツケが、今となって脅威という形で来たのだ。
そして運命の2012年。
オーストラリアに突如大量の怪獣が出現。サイズも5m級から50m級までがいるというこの事態に対処すべく、EUFは持ちうる戦力のほとんどを投入。激しい戦いの中、人類は更なる悪夢の体現と対峙することになる。
これまで確認されたことのない60m級及び70m級、それらの同時出現は人類を、そしてEUFを絶望させるには十分すぎるほどのインパクトをもって襲い掛かってきた。
結果からいえば、さんざんたるものだったとしか言いようがなかった。総戦力の60%の喪失。そして何よりも、数少ない巨大怪獣と対峙できる機体2機の内の1機であるJoAを失った事が大きかった。
一度は廃棄されながらも、存続を望む声の為に改修に改修を重ね、2号機『リバティーオブアメリカ(以下、LoAと呼称)』に匹敵する機体と化したJoAが今作戦での大破により修復不可能な状態に追い込まれ、事実上巨大怪獣とまともに相対できるのがLoAのみとなってしまったのだ。対怪獣戦闘という分野において世界の先を行っていたアメリカにとって、この損失は非常に痛かった。
しかし怪獣は、そんな人類の弱体化を憐れむことはない。
その後も世界各地に相次いで出現する怪獣共に、遂にEUFという組織は組織であることの意味を失ってしまう。各国とも、それどころではなくなってしまったのだ。
それぞれの国に出現する怪獣を倒すのがやっとなのに、他の国に救援に向かうなど以ての外だった。
やがてEUFは、各国代表が通信によってのみ繋がりのある状態に陥り、事実上の解体状態となってしまった。
そして海に面している国々のほとんどは海からやってくる怪獣から自国を守るべく、最終プランである防護壁を急ピッチで完成させ文字通りの鎖国状態を築き上げたのだった。
だが、正直言って彼ら人類の中には、壁に対する不安しかなかった。一度も怪獣に対しての実験を行ったことがないが為に、国民の中にはこの防護壁に対しての不信感が募っていた。しかし、それ以外にいい方法があるかと言えば、あるにはある。だが、その安全性が確保されていない事の方がよっぽど重要だった。
結局のところ、アメリカのような頼りがいのあるタフガイのいない国々は防護壁と頼りない防衛チームに頼るしかなかった。
そして歴史的大敗から約3年後の2015年。
人類の歴史の停滞は、衛星が捉えた日本に急速で飛来する謎の影により終わりを告げる事となる。
ドーモ、閲覧者=サン。作者のKです。
今回の話は第一話ではなく、序章が始まるまでに何があったかの退屈な説明回となってしまいました。大変申し訳ありません。しかしここ以外でどこでこれまでの歴史を説明するんだ?と思った次第でありまして。
次回から本格的に本編突入となります。また次回は前編後編に分かれております。
粗雑な文章ですが、宜しくお願いします。
次回、第一話 胎動するモノ
50m級有翼怪獣 バド、登場