ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
が、それでも良いのでしたらどうぞ!
俺達が使用人によって案内されたのは、異様な雰囲気が漂う場所だった。
眼前には昨日に会った面々――魔王サーゼクス・ルシファーがいた。彼以外にもセラフォルー・レヴィアタン、そしてアジュカ・ベルゼブブとファルビウム・アスモデウスもいる。
これがプライベートだったら「よう。昨日はどうも」と砕けた挨拶をしてるところだが、今回は堅苦しい公の場なのでそれは出来ない。四人もそれを察してるように、現れた俺達を指定された席へ座るよう示唆した。
現四大魔王が目の前にいる事によって、俺の後ろにいるイッセーとアーシアは緊張してるのか、オーラに乱れが生じていた。ま、それは当然と言えば当然か。サーゼクスとセラフォルーは緊張を解そうとしてるのか、二人に優しい笑みを浮かべているし。
その他に下の段の席には上級悪魔のお偉方がいた。俺達を見た途端に一瞬不愉快そうな顔をしていたが、それを誤魔化すかのように視線を別の方へ移す。彼等が見てるその先には、低い位置に若手悪魔の面々がいた。その中には当然リアス達がいる。
俺達が席に座ったのを見ていたリアスはジッと俺達――正確にはイッセーの方を見ている。それに気付いたイッセーは手を振ろうとするが、公の場で軽々しい行動をしてはいけないのを思い出して、すぐに手を引っ込めた。
他の若手悪魔達もリアスと同様にコチラヘ視線を送っていた。ソーナやサイラオーグは問題無いが、残りの悪魔達は不快そうに、興味深そうに等々。
だけどもう一人の悪魔は少し別だった。紳士的な感じがする緑髪の悪魔が、ジッとアーシアの方へと視線を向けている。その視線はまるでアーシアを狙ってるように、歪んだ欲望を感じる。
あの悪魔は確かディオドラ・アスタロトで、アスタロト家の次期当主だな。何のつもりで妹分のアーシアを見てるのかは知らんが、もし手を出そうとしたら、
「よく、集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認する為。此処へ集まってもらった。これは一定周期ごとに行う、若き悪魔を見定める会合でもある。尚、今回は魔王サーゼクスさまより、ゲストとして先日の和平に貢献した協力者――兵藤隆誠殿とその一行をお連れした」
初老の男性悪魔が威厳の声で言う。俺達の紹介には若干嫌そうに、仕方ないと言う感じが含まれてるが取り敢えず無視だ。
「さて、今回はゲストを呼んだにも拘らず、さっそくやってくれたようだが……」
次に髭のある男性悪魔が皮肉げに言い放つ。下にいる六名の若手悪魔の内の一人――ヤンキーのような男を見ながら。ソイツの頬は腫れていて、まるで強い何かに殴られたような生々しい痕だ。ああなったのは……恐らくサイラオーグだろう。その当人は如何でもよさげな感じだが。
「キミたち六名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」
今度はサーゼクスがそう言う。
この会合は此処にいる若手悪魔達が顔合わせをする他に、レーティングゲームをしてもらう為の知らせでもある。いずれ当主となる若手悪魔達を向上させようと言う事で。
「では我々もいずれ『
サイラオーグが突然ストレートな質問をしてきた。魔王相手に凄い事を尋ねるもんだ。
「それはまだ分からない。だが、私は出来るだけ若い悪魔たちは投入したくはないと思っている」
サーゼクスがそう答えるも、サイラオーグは納得出来ないように眉を吊り上げた。
「何故です? 若いとは言え、我等とて悪魔の一端を担います。そちらにいらっしゃるゲスト――兵藤隆誠殿の背後に控えてる彼等も依頼によって戦に投入される筈です。彼等だけに任せ、我等が何もしないと言うのは――」
「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし、無謀でもある。何よりも成長途中のキミたちを戦場に送るのはなるべく避けたい。それに何か勘違いしているようだが、隆誠殿たちが協力者になってるとは言っても、戦の依頼などそう簡単にしない。キミが注目している赤龍帝も、キミたち次世代の悪魔と同じくまだまだ成長途中だ。そうですよね、隆誠殿?」
「ええ。
突然振られたサーゼクスに、俺はそれに合わせるように答える。サイラオーグが抗議するのは何となく予想していたので、俺とサーゼクスは昨日の会合で事前に台詞を用意していた。
サーゼクスと俺の言葉にサイラオーグも「わかりました」と一応の納得をした。それでも不満はあるようだが。
ついでにイッセー、『普段から俺を実戦に投入してる兄貴が何言ってんだ?』みたいな抗議の視線を送るのは止めてくれ。これはあくまで公の場で言ってるだけなんだからさ。
その後、お偉方のお言葉やサーゼクスからの今後のゲームについて等の長い話が続いた。多分イッセーとアーシアは頭がパンクしそうになってるんじゃないかと思う。二人からすれば難しい話だからな。
「では最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」
締めは若手悪魔達にさせようとする為に、サーゼクスは彼等に問う。その問いに最初に答えたのはサイラオーグだった。
「俺は魔王になるのが夢です」
………おおう、これはまた凄い目標だね。
『ほう……』
お偉方も正面から迷い無く答えたサイラオーグの目標に感嘆の息を漏らしていた。
「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」
お偉方の男性悪魔の一人がそう言う。
「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう。ですがその前に……今は名を申せませんが、
サイラオーグが言った『ある者』と聞いてここにいる全員は不可解そうな顔をしてるが、俺とサーゼクスはすぐに気付いた。サイラオーグの真の目標は『
――サーゼクス、すまないが……。
――勿論分かってるよ、隆誠くん。
俺がここでイッセーの名を上げないで欲しいと視線を送ると、サーゼクスは小さく頷く。
誰もがサイラオーグに疑問を抱いてる中、次はリアスが言う。
「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝する事が近い将来の目標ですわ」
堅実な夢だね。まぁ、それがリアスらしいと言えばリアスらしいか。
もし俺だけに言うとしたら、『イッセーより強くなって正式な眷族する』と強く意気込むだろうな。今のアイツはイッセーに完全ベタ惚れ状態だから、何が何でも自分の正式な眷族にすると思う。
その後も若手悪魔達が夢や目標を口にし、最後に残ったのはソーナだった。
ソーナの目標は――
「冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」
何と学校を建てる事だった。
俺は興味深そうに聞いていたが、お偉方の上級悪魔達は眉根を寄せていた。
「レーティングゲームを学ぶところならば、既にある筈だが?」
確認するお偉方の問いに、ソーナは淡々と答える。
レーティングゲームは爵位持ちの悪魔が眷属にした下僕同士を戦わせて競い合うゲームだ。それを学ぶ事が出来るのは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみだけ。当然それ以外の悪魔――下級、中級、転生の悪魔達は受ける事が出来ない。
だからソーナはどんな悪魔でもレーティングゲームを学べるように、差別が一切ない学校を建てようと理由を述べている。
それを聞いた俺は是非ともやって欲しいと思う。匙なんて誇らしげにソーナの夢を聞き入ってるし。
だが――
『ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!』
古き時代を生きたお偉方にとっては戯言としか捉えておらず、思いっきり大笑いしていた。
聞くに堪えない笑い声に俺は思わず顔を顰めるも、向こうは気付いてないように嘲笑を浮かべながら口々に言う。
「それは無理だ!」
「これは傑作だ!」
「なるほど! 夢見る乙女と言うわけですな!」
「若いというのはいい! まさかシトリー家の次期当主ともあろう者がそのような夢を語るとはな」
不愉快な連中だ。いい歳した大人が、そうやって若者の夢を摘み取るような言い方をするのはどうかと思うぞ。ま、コイツ等にそんな事を言ったところで理解しないだろうが。
「ったく、胸糞悪いなあのクソ爺ども……!」
「イッセー、分かってるだろうが出しゃばるなよ」
「けどよ。あそこまで会長をバカにするのは――」
「アレが本来の上級悪魔だという事を知ってる筈だ。前に会ったライザー達がいい例だろ?」
「そりゃそうだけど……」
今にも飛び出しそうなイッセーを俺が何とか宥めてる中、ソーナはお偉方に真っ直ぐ言おうとする。
「私は本気です」
ソーナの発言にセラフォルーがうんうんと力強く頷いていた。彼女は魔王と言う立場上、妹を応援する事は出来ないからな。それでもシスコンのセラフォルーが、いつ爆発してもおかしくはないが。
そこから先はお偉方の一人がソーナに悪魔の伝統やら誇りを語ってると、途中で匙が抗議してきた。けれど匙の抗議も虚しく、お偉方は匙を窘めるどころか、ソーナに下僕の躾がなってないと言い放った。
ソーナが反論せずに謝罪すると、匙は納得出来ないと声を荒げる。結局はソーナに窘められて、納得出来ないまま口を閉ざしたけど。
匙、納得出来ない気持ちは分かる。
すると、我慢の限界が来たのか、セラフォルーが突然提案してきた。ソーナがゲームに勝ち続ければ文句は無いだろうと。その後には涙目で悪魔のお偉方に脅しも同然の抗議をしていたが。ソイツ等は反応に困っていたが、ソーナは恥ずかしそうに両手で顔を覆ってるし。
結局のところ、セラフォルーの提案もあって、サーゼクスがリアスとソーナを戦わせようと決めた。尤も、サーゼクスは初めからそうするつもりだったけど。