ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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第七話

 翌日。俺達はグレモリー家の庭の一角に集合していた。

 

 全員の服装はジャージ。俺やアザゼルも同様にジャージを着てる。庭に置かれているテーブルと椅子に全員座って修行開始前のミーティングとなった。

 

 イッセーとアーシアについては俺が説明する事になってるが、先ずはリアス達を担当してるアザゼルからだ。アザゼルは前以て用意した資料やデータを持って説明を始めようとする。

 

「先に言っておく。今から俺が言うものは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。全員が必ず同じ結果になる訳じゃない。ただ、お前らは成長中の若手だ。方向性さえみ見誤らなければ良い成長をする筈だ。さて、先ずはリアスからだ」

 

 アザゼルが最初に呼んだのはリアスだった。

 

「お前は初めから才能、身体能力、魔力全てが高スペックの悪魔だ。修行をしなくてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補は確実だ。だが、未だにイッセーとは実力差があり過ぎるが故、正式な眷族に出来ないから今以上に強くなりたい、それがお前の望みだな?」

 

 敢えてリアスのコンプレックスとしてる事を突くように問うも、当の本人は気にしてないどころか力強く頷く。

 

「ええ。イッセーの主となる私がいつまでも弱いなんて許されないわ」

 

 今まで男に全く興味が無かった名家のお嬢様が、大好きなイッセーの為に強くなろうとするは。本当にイッセーは幸せ者だなぁ。

 

 アザゼルも俺と同じ事を考えてるのか、意味深な笑みを浮かべながらイッセーを見てるし。

 

「なら、この紙に記してあるトレーニング通り、決戦日直前までこなせ」

 

 アザゼルから手渡された紙を見るも、リアスは疑問を抱くように首を傾げる。

 

「……ねぇ。これって特別凄いトレーニングとは思えないのだけれど?」

 

「そりゃそうだ。お前は基本的なトレーニング方法でいいんだ。全てが総合的にまとまっている。問題は――」

 

「ちょっといいか、アザゼル」

 

 アザゼルが説明してる最中、俺は割って入るように言った。いきなりの事にアザゼルだけじゃなく、リアス達も俺の方を見てくる。

 

「なんだよ。今は俺が説明してるってのに」

 

「スマンスマン。ちょっと俺から少しばかり、リアスのトレーニングメニューを追加しようと思ってな」

 

 顔を顰めてるアザゼルに、俺は謝罪しながら意見を言う。

 

「はぁ? 追加なんて必要ないだろ。さっきも言ったが、リアスにはそこまでやる必要はねぇぞ?」

 

「彼女の意気込みを聞いて、少しばかり手を差し伸べたくなったんだ。何しろリアスは、弟のイッセーの為に強くなろうとしてるからな」

 

 俺の台詞を理解したのか、リアスは頬を赤らめていた。イッセーも同様に。

 

 だがアザゼルはそれでも不満のようで、未だに顔を顰めている。

 

「だとしても、今更メニューを変える訳にはいかないぞ。これは俺が考えたリアスの最適なメニューなんだからな」

 

「安心しろ。リアスにはアレ(・・)を付けたままトレーニングをやってもらうだけだ」

 

「? アレってなんだ?」

 

 ああ、そう言えばアザゼルに教えてなかったな。

 

 リアスだけでなく、イッセー達は俺の台詞を聞いて何かを思い出した様子だ。

 

「リューセー、アレってまさかあの時の――」

 

「正解。これの事だ♪」

 

 俺が笑みを浮かべながら収納用異空間から出したのは、以前ライザー戦に備えた修行合宿の時に使った俺手製のバンドセットだ。

 

 それを見たリアス達は以前の合宿を思い出したのか、かなり苦い顔をしている。

 

「何だ、そのリストバンドとフットバンドは?」

 

「コレはな――」

 

 以前の合宿でリアス達に説明した内容をそのまま教えると、アザゼルは興味深そうにバンドを見る。

 

 因みにバンドの事を知らないギャスパーは恐ろしげに見ており、ゼノヴィアは物凄く欲しそうな顔をしていた。修行好きなゼノヴィアにとっては欲しくてたまらない物なんだろう。

 

「成程。道理で魔力がかなり上がっていた訳だ。映像記録でリアスが終盤で見せた強力な大技を撃てた理由が漸く分かったぜ。にしても、その頃から随分と悪魔のリアス達に肩入れしてたんだな」

 

「まあな」

 

 俺としてはリアスがグレモリー家とフェニックス家が決めた政略結婚をさせるより、愛し合うもの同士の恋愛結婚を望んでいた。更にリアスはイッセーに好意を抱いていたから、彼女の応援をしようとトレーナーをやった訳だし。

 

「ってな訳でアザゼル。リアスにこれを付けさせようと思うんだが、どうだ?」

 

「………まぁいいだろう。それで更に力が高められるんなら構わねぇよ」

 

 少し考えるアザゼルだったが、結果的には問題無いと判断して許可してくれた。

 

「だそうだ、リアス。あとはお前の判断次第だが、付けるか? それとも遠慮するか?」

 

「勿論付けるわ。イッセーに近づく為には、それ位やらないとダメだと思っていたところよ」

 

 どうやら付ける気満々のようだ。俺としては非常に好都合だよ。

 

 取り敢えずリアスにバンドセットを渡し、使い方は前と変わらない事を教えておいた。

 

「さてリアス、話を続けるが――」

 

 説明を再会するアザゼルは、トレーニング以外にも『(キング)』としての資質を高めるように指示する。レーティングゲームの記録映像、記録データ、それらを全て叩き込むようにと。

 

 アザゼルの指示内容を聞いていた俺は確かに必要な事だと内心頷いていた。『(キング)』として一番重要なのは頭脳だ。それが無ければ如何にリアスが強くなったところで意味がないのは充分分かっている。

 

 だからアザゼルはリアスに、どんな状況でも打破できる思考と機転、そして判断力をつけさせる訳だ。『(キング)』は眷族が最大限に力を発揮させるのが一番の仕事だからな。

 

「次に朱乃」

 

「……はい」

 

 リアスの次に朱乃を呼ぶアザゼル。呼ばれた朱乃は不機嫌な様子。父親のバラキエル絡みの事もあってか、朱乃はどうにもアザゼルが苦手のようだ。

 

 だがアザゼルはそれを気にせず、真正面からこう言う。

 

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

 

「――ッ!」

 

 アザゼルのストレートな発言に顔を顰める朱乃。だがアザゼルは構わず続ける。

 

 ライザー戦のレーティングゲームを見ていたアザゼルは、朱乃の評価は低かった。俺の修行で魔力が上がってたとはいえ、朱乃の本来のスペックなら敵に『女王(クイーン)』を苦もなく打倒出来たと。

 

 それについては俺も思い当たる所はある。朱乃は――

 

「何故、堕天使の力をふるわなかった? 雷や雷の鞭だけでは限界がある。鞭の方は恐らくリューセーに教わったんだろうが、俄仕込みの武器なんかじゃ牽制程度にしか使えない。光を雷に乗せ、『雷光』にしなければお前の本当の力は発揮出来ない」

 

 そう。アザゼルの言うとおり、もし朱乃が堕天使の力を使えば状況が大きく変わっていた。

 

 知ってのとおり、悪魔にとって光の力は効果的だ。雷と光を乗せたら、威力は桁違いに上がる。

 

「……私は、あのような力に頼らなくても」

 

 だが、朱乃は複雑極まりない様子だ。

 

「否定するな。自分を認めないでどうする? 最後に頼れるのは己の身体だけだぞ? 否定がお前を弱くしている。辛くとも苦しくとも自分を全て受け入れろ」

 

「朱乃、俺は修行の時にお前が堕天使の血を引いているのは既に分かっていた。だけどお前がそれを使わなかったのは深い事情があるんだろうと、敢えて何も言わなかった。だが今はハッキリと言っておく。お前が否定している堕天使の血を乗り越えない限り、どんなに修行したところで、強くなれないどころか、今後の戦闘で邪魔扱いされるのがオチだ」

 

「まぁそう言う事だ。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

 

「………………」

 

 アザゼルと俺の言葉に朱乃は応えなかった。何も言い返さないって事は、やらなきゃいけないと言う事だけは流石に理解してるだろう。

 

 ま、朱乃がこの先どうするかは朱乃次第だ。

 

「それとリューセー、ここから先は俺が何か言うまで割って入らないでくれ」

 

「はいはい」

 

 リアスに続いて朱乃にまで口を出してきた俺に、アザゼルから釘を刺されてしまった。

 

「次は木場だ」

 

「はい」

 

「先ずは禁手(バランス・ブレイカー)を解放している状態で一日保たせてみせろ。それに慣れたら――」

 

 アザゼルは祐斗に修行内容を説明する。要約すれば、禁手(バランス・ブレイカー)維持と基本トレーニングがメインだ。あと神器(セイクリッド・ギア)の扱い方はアザゼルが直々にマンツーマンで教えるんだと。

 

「アザゼル先生、出来れば僕もリューセー先輩のバンドを使いたいんですが」

 

「ダメだ。お前の修行は状態維持がメインだからな。まだ禁手(バランス・ブレイカー)に慣れてないままでバンドを付けたら、無駄に燃費を悪くさせる。今は一日でも長く維持出来るようにしていくのがお前の目的だ」

 

「……分かりました」

 

 残念そうに落ち込む祐斗を見るも、俺は敢えて何も言わなかった。

 

 今回の祐斗の修行でバンドは却って邪魔になるから、俺もアザゼルに賛成だ。

 

「あと剣術の方は……お前の師匠にもう一度習うんだったな?」

 

「ええ、一から指導してもらう予定です」

 

 そう言えば祐斗の師匠は誰なのかを聞いてなかったな。もし機会があれば一度会ってみたいよ。

 

 祐斗の説明を終えると、アザゼルは次にゼノヴィアを呼ぶ。

 

「次はゼノヴィアだ。お前は聖剣デュランダルを今以上に使いこなせる様にする事と――もう一本の聖剣に慣れて貰う事にある」

 

「もう一本の聖剣?」

 

 ゼノヴィアはアザゼルの言葉に首を傾げる。

 

「ああ、ちょいと特別な剣だ。もうついでに言っとくが、リューセーのバンドは使わせないからな」

 

「ぐっ……私も使ってみたかったのに……!」

 

 俺の方を見てるゼノヴィアにアザゼルがバンドを使わないよう釘を刺した。それを聞いた瞬間、ゼノヴィアも祐斗と同様に落ち込んでいる。

 

 アザゼルがゼノヴィアに何の聖剣を用意するのかは知らないが、それでもゼノヴィアの為になる事は確かだ。

 

「次にギャスパー」

 

「は、はいぃぃぃぃ!」

 

 あれま、ギャスパーが今以上に怖気づいてるよ。考えてみれば、冥界に来てからギャスパーにとって辛い時間だったからな。

 

 んで、アザゼルがギャスパーに課した修行内容は……ぶっちゃけ引き篭もり改善だった。それは当然、是非ともやって欲しい事だった。

 

 ギャスパーはソレさえ解消すれば、『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』を完全に安定させる事が出来て、戦力も大幅にアップと一石二鳥どころか三鳥にもなる。

 

「って事で、先ずは町へ行って人前に出てもらうぞ。そうだ、ついでにリューセーのバンドを付けといた方がいいな。基本トレーニングが無い分、バンドで身体能力も向上させておけ」

 

「それはいい。と言う事でギャスパー、早速だけどコレを付けて――」

 

「いやぁぁぁぁぁっ! そんなの付けたら僕は動けませんからぁぁぁぁぁっ!!」

 

「……おい、だからって俺の後ろに隠れんなよ」

 

 一瞬でイッセーの背中に隠れるギャスパー。相変わらず危険回避に関しては素早いな。

 

 ギャスパーにバンドを付けさせるのは無理だと分かった俺とアザゼルは諦める事にした。

 

「次は小猫」

 

「……はい」

 

 呼ばれた小猫は相当気合の入った様子だ。昨日までと違って、今日は妙に張り切ってるな。 

 

 アザゼルは気付いてるかどうかは分からないが、そのまま話を続ける。『戦車(ルーク)』としての素養や身体能力も問題なく、ついでにリアスの眷族にオフェンスが多いと。それらを聞いていた小猫は悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「リアスの眷族でトップのオフェンスは現在イッセーが断トツで、次には木場とゼノヴィアだ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁手(バランス・ブレイカー)の聖魔剣、聖剣デュランダル、凶悪な兵器を三人が有してやがるからな」

 

 そう、オフェンスはイッセーが断然上だ。龍帝拳を使えるイッセーだと、祐斗とゼノヴィアが二人掛かりでも勝つ事は出来ない。

 

「小猫、お前も他の連中同様、基礎の向上をしておけ。同時にリューセーのバンドを使っても構わない。その上で、お前が自ら封じているものを曝けだせ。これは朱乃と同じだ。さっきリューセーが言ってたように、自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしねぇのさ」

 

「………」

 

 小猫は何も答えなかった。「曝けだせ」の一言で一気に消失してしまっているから。

 

 どうやらアザゼルは知っているようだ。小猫の力を。

 

「小猫、もし力の制御が出来ないなら俺が少し教えようか?」

 

 力の制御方法を教えようと、俺が近づきながら言おうとしてると――キツく睨んできた。

 

「……そんな、軽く言わないで下さい……っ。簡単に力を使えるあなたとは違うんですから……っ」

 

 俺に反抗的な態度を取ってくる小猫を見た誰もが驚いた。

 

 ふむ……。どうやらフォローするつもりが、逆に小猫の心を傷つけてしまったようだ。

 

 空気が多少重くなった中、アザゼルは敢えて気にせず俺に話しかける。

 

「リューセー、次はお前の番だぞ」

 

「……ああ、そうだったな」

 

 アザゼルに言われた俺は一先ず小猫は後回しにしようと話題を変えた。

 

 




 本当でしたらイッセーとアーシアの修行内容も載せる予定でしたが、長くなりそうなので途中で切りました。
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