ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
「さて、ここからは俺だ。先ずはアーシア」
「は、はい!」
俺が気を取り直すように呼ぶと、気合が入った声で返事をするアーシア。
「内容は以前の合宿と同様に基本的なトレーニングで、身体能力の向上だ。そしてメインは
アーシアの修行内容を聞いた一同は不可解な表情をしていた。特に後者の方を。
「色々と突っ込みたそうな顔をしてるようだから、先ずは強化の方を説明するよ。知ってのとおり、アーシアの『
確認するように言うと、リアス達はコクンと頷いてる。アザゼルはもう気付いてるようだが。
「だがそれは相手に『触れる』のを前提としてる。味方が怪我をしてるのに、態々負傷者の所まで行かないと回復作業が出来ない」
「もしかして、アーシアの
俺の言いたい事が分かったのか、リアスが代表するように問う。
「正解。これは応用と言うより裏技も同然なんだが、『
「って事は、アーシアの
イッセーの問いに俺は頷く。その直後にイッセーは驚いた顔をしてるよ。
「やはりそう考えてたか。俺達の組織が出したデータの理論上では可能と思ってたが、改めて
「そうだ。と言うか、それを独学で調べたアザゼルもホントに凄いな」
流石は
「となると、ソレには当然問題もある筈だ。そうだろ、リューセー?」
「ああ。察しのとおり、オーラを発したら下手すれば味方だけじゃなく、敵も回復させてしまう恐れもある。これはアーシアの生来のもの故だから……ちょっと不安でな」
「おい兄貴、アーシアの何が不安なんだよ?」
不安と聞いて顔を顰めながら問うイッセーに、俺は真剣な面持ちで言う。
「『優しさ』だよ。アーシアは敵や味方とか関係無く、怪我をした相手を見た途端、思わず回復してやりたいと心中で思ってしまうところがある。それが敵味方判別の
これには
「だからそこで俺は考えた。もう一つの可能性――回復のオーラを飛ばす力を」
「そ、それは、ちょっと離れたところにいる人へ、私が回復の力を送るということですか?」
アーシアが何かを飛ばすジェスチャーをする。可愛いジェスチャーを見て俺は思わず笑みを浮かべそうになるも、何とか堪えることにした。
「そう、直接飛ばす感じだ。回復能力を飛び道具として使えば、直接触れなくても回復出来るようになる」
「そ、そりゃ、すげえ! アーシア大活躍出来るぜ!」
大活躍出来るアーシアの姿を想像したのか、イッセーはアーシアの手を取ってはしゃいだ。アーシアもアーシアで思いがけない情報に驚きながらも喜んでいる様子だ。
「まぁその分、回復力は落ちるが、それでも遠距離の味方を回復出来るのは戦略性が広がる。前線で誰かが負傷してる時、後方で回復のアーシアとアーシアの護衛する誰かを配置する。単純だが、それでも強い戦術フォーメーションだ」
俺の意見にリアスが同意する。
「確かにそうね。通常、味方を回復する術なんてフェニックスの涙か、調合された回復薬ぐらいだわ。アーシアの
「そう言う事だ。悪魔をも治す『
俺が最後に呟いた台詞を聞いたリアス達が怪訝そうな顔をする。
「これらはアーシアが回復を専念させる為に、必ずアーシアを守る仲間がいる事を前提とした話だ。敵からすればアーシアは厄介極まりない危険な存在だから、早めに潰しておくべきだと認識する。お前達だって、もしアーシアが敵だったとしたら、そう考える筈だ」
アーシアが敵側と考えたのか、リアス達は複雑そうに顔を歪めてる。アーシアを大事にしてるイッセーでさえも。
「理解はしてるようだな。そして敵がやるとしたら、アーシアを潰す為には先ず仲間の護衛を引き離そうと策を練る。今度のゲームで戦う予定となってるシトリー家――ソーナはアーシアの
「……確かに策士タイプのソーナなら考えそうね」
親友のソーナの性格を考えたリアスは同意する。俺の言うとおり、アーシアを先に潰すかもしれないと。
それらを聞いていたアザゼルは俺に質問してくる。
「で、アーシアが引き離された際の対策として、自衛スキルの出番ってわけか?」
「そう言う事だ」
「けどよ、言っちゃ悪いがアーシアに自衛スキルは向かないと思うぞ。リューセーも知ってのとおり、『やさしさ』のあるアーシアじゃ相手を傷つける事なんか出来ねぇだろ」
「別に自衛と言っても、必ずしも相手に傷を負わせる訳じゃない。ライザー戦のレーティングゲーム終盤で、アーシアがライザーの動きを止めたのを見ただろ?」
「「……ああっ!」」
イッセーとリアスは思い出したのか、揃って突然大声を出した。アザゼルも同様に思い出したようで、納得するように頷く。
「成程な。何も攻撃せずとも、前にリューセーが用意した閃光玉とかで相手の動きを止めさせるって事か。確かに今後の事を考えれば、アーシアは自衛だけじゃなく、仲間をサポートする役割も出来るって事か」
「そゆこと。ま、アイテムは俺の方で次のレーティングゲームが始まるまでに用意しとく。尤も、それを使いこなす為の練習もさせておく必要はあるがな」
昨日の会合前に時間潰しでやった『ドラハン』のサポート武器をリアルに使ってもらう為にな、と内心付け加える。
アーシアの修行内容はここまでなので、次にイッセーの方を見る。
「最後になったがイッセー、お前の修行は――」
「いつものように兄貴と実戦式のバトルをするんだろ?」
「「っ!」」
イッセーの台詞を聞いた祐斗とゼノヴィアが驚いたような顔をする。
俺と二十日間もバトルをする事に聞き捨てならなかったんだろう。この二人は今回の修行で一番に俺と手合わせしたかったみたいだし。
だが俺は敢えて二人を気にせず話を続けようとする。
「それも良いんだが、生憎今回の相手は俺じゃない。お前もよく知ってる
「アイツ? ……おい、まさか」
俺が空を見上げると、イッセーは気付いて同様の行動をする。
アザゼルやリアス達も空を見上げると、突然大きな影が現れた。それはこちらへ猛スピードで向かってくる。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
地響きと共にそれは目の前に飛来し、大きく地面が揺らいだ。
土煙が舞い、それが収まった後、眼前に現れたのは――巨大なドラゴンだった。
十五メートルある巨大ドラゴンにリアス達が驚いてる中、イッセーは懐かしむように大声を上げようとする。
「やっぱりタンニーンのおっさんか!!」
「久しいな、兵藤一誠。前に会った時より一段と強くなってるようだ。そして……」
巨大ドラゴン――『
彼は元龍王の一角で、嘗ては『六大龍王』だった頃の龍王の一匹だ。悪魔になった事で、『六大龍王』から『五大龍王』になった。今は転生悪魔の中でも最強クラスで最上級悪魔だ。
そんな凄い経歴を持っているタンニーンはイッセーに挨拶をした後、次に俺の方へ視線を移す。
「兵藤隆誠も変わらずで何よりだ。いや、この場合は『聖書の神』と呼ぶべきか?」
「呼ばなくていい。今までどおりの呼び方で構わないから」
「ではそうしよう」
正体がバレた度に呼び方を確認してくるのは本当にメンドくさい。俺としては神と呼ばれるより兵藤隆誠で通したいんだけどなぁ。
俺たち兄弟とタンニーンの会話を見ていたアザゼルが尋ねようとする。
「何だリューセー、タンニーンとは既に会ってたのか?」
「ああ。前に冥界へ来た時、ドライグを通じて知り合ったんだ。ついでにタンニーンの領地で少しばかり世話にもなった」
「おいおい、そんな報告は聞いてねぇぞ。と言うか
アザゼルだけでなく、リアス達も聞きたそうな目をしていた。するとタンニーンが睨むようにアザゼルを見る。
「堕天使の総督殿、悪いが詮索は止めてくれ。こちらとしては彼に色々と恩がある身なんでな」
その台詞に俺は少し目を見開きながらタンニーンを見る。
恩とは大袈裟だな。俺が思い当たる事といえば、アレに少し手を加えただけなんだが……まぁいいか。
少し威圧感を発しながら警告するタンニーンを見たアザゼルは、お手上げと言うように嘆息する。
「分かったよ。何か深い事情があったって事で、これ以上は聞かないでおく」
アザゼルが引いたのを確認したタンニーンは安堵するような顔をした後、再び俺の方へ視線を向ける。
「それで兵藤隆誠。話はサーゼクスを通して聞いたが、俺が兵藤一誠の修行相手をする事に間違いないんだな?」
「ああ。以前やったドラゴンの修行――実戦方式で頼む。言っておくが以前と同様に少しは手加減してくれ。あの頃より強くなったとは言え、まだまだお前には及ばないからな」
「分かった、そうしよう」
「って、ちょい待ち兄貴! 俺は二十日間もタンニーンのおっさんと修行するのか!?」
頷くタンニーンとは別にイッセーが待ったを掛けようとする。
「そうだ。その期間内で龍帝拳を10~20倍まで使えるようにしておけ」
更に欲を言えば
「相変わらず無茶言うなぁ……」
「
「っ……。分かったよ、やってやらぁ!」
「結構」
ヴァーリと聞いた瞬間、イッセーのあの時の戦いを思い出したのか、やる気を出してくれた。
「それと無事に修行期間を乗り越えたら、俺からちょっとしたご褒美でもやるよ。……例の限定版エロDVDとか」
「………OK。ぜってー乗り越えるから」
こっそりと褒美の内容を聞いたイッセーが今以上にやる気を出していた。
前の合宿で知ってのとおり、スケベなイッセーには前以てスケベな物を垂らしておけば、やる気の度合いが格段に上がる。
『おいタンニーン、俺からも言っておくがちゃんと手加減してくれよ。もし相棒に死なれでもしたら、白いのと再戦出来なくなるからな』
すると、イッセーの左手の甲が光った途端、ドライグが周囲の者にも聞こえるようタンニーンにそう言った。
「分かっているさ、ドライグ。死ななければいいのだろう? 任せろ」
「………ちょっとちょっとお兄さま、タンニーンのおっさんが俺を死ぬ寸前まで追い詰めそうなんですけど?」
タンニーンの台詞が聞き捨てならなかったのか、イッセーが俺に小さく抗議してくる。
「いきなり気色悪い呼び方すんな。………ま、取り敢えず頑張れ。さっきも言ったように、ちゃんと褒美は用意するから」
「……絶対だぞ」
念を押すイッセーは俺から離れ、そのままタンニーンに近づいて話しかける。
「取り敢えず今日からよろしく頼むな、おっさん」
「ふっ。前と違って逃げる素振りを見せないとは、かなり成長したようだな」
そりゃあ中学時代の時は、初めて見るお前と相手をしろと聞かれたら逃げたくなるよ。イッセーにそうやるよう言い出したのは俺だけど。
修行する気概を見せるイッセーの姿に感心するタンニーンは、リアスに視線を向ける。
「リアス嬢。急ですまないが、あそこに見える山を貸してもらえるか? こいつをそこに連れて行きたいんだが」
タンニーンが指で遥か先の山を指差す。
「ええ、構わないわ」
見事に商談成立した。今のイッセーの実力でタンニーンと戦うとなると……あの山に複数の大きな穴がポッカリとあかなければいいんだけどねぇ。ま、リアスが承諾したんだから、例えそうなっても問題ないだろう。
「では行くぞ、兵藤一誠。今のお前の力を俺に見せてくれ」
「あんまり期待されても困るんだけど……んじゃお先に!」
「む!?」
ドゥンッ!
フライングするように先に飛んだイッセーは猛スピードで山へと向かっていった。イッセーの突然の行動にリアス達やタンニーンは予想外と言わんばかりに目を見開き、呆然とするように固まる。
「おやおや、まさかイッセーがあんな事をするとは……。これは一本取られたな、タンニーン」
「…………………」
恐らくイッセーの事だから、以前の扱きに対しての仕返しを込めてやったんだろうな。
タンニーンは俺の声が届いてないのか、未だに呆然としている。
「おうおう、イッセーは随分と思い切った事をしやがったな。んで? 元龍王のタンニーンさまは、赤龍帝の挑発をどう受け取るんだ?」
「……ク、ククククク……」
アザゼルが問うと、タンニーンは急に笑い始めた。同時に獲物を見るようにギラギラした目にもなってる。
「この俺を出し抜くとは随分いい度胸をしているではないか……! 逃がさんぞ、兵藤一誠!!」
ドオオオオオンッ!!
一瞬で翼を広げたタンニーンが即座に飛び、猛スピードでイッセーを追おうとする。
何かタンニーンの奴、まるで地の果てまでもイッセーを追いかけそうな感じだな。どうやらイッセーは元龍王のプライドをかなり刺激させてしまったようだ。
さて、こっちはこっちで修行を始めますか。先ずはアーシアに
ナレーション風で
――修行前に挑発するイッセーに対し、プライドを刺激されて猛スピードで迫るタンニーン。果たして、イッセーはタンニーンとの修行期間を無事生き延びられるのであろうか!? 修行期間終了まで、残り二十日!――
もうついでに、連日投稿は今日で終わりです。