ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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番外編 中編

 暗雲漂う曇り空の中、俺たち兄弟は水着から元の服装に戻って館の庭に出ていた。安倍の父親をかれこれ数分待っている。

 

 すると、門から馬と思われる蹄の音がパカラパカラと立てながら、何か異様なものが近づいてくる。

 

 そこからは何やら相手を圧倒させるようなオーラを振りまいて現れたのは、巨躯の男性だった。

 

 大きな黒馬に乗っており、角のついた兜を被り、マントを羽織っている。更にはギラリと眼光が鋭い。

 

 ……おいおい。もしかして安倍の父親って、かなりのコスプレ好きなのか? あの格好や仕草はどう見ても、暴力が支配する国の世紀末覇者としか見えないんだが……。

 

「うぬが我が娘と付き合っているという不届き者か?」

 

 おお、声もそっくりだな。もう根っからの拳王的なお方に憧れてる大ファンじゃないかと思うほどに。

 

 イッセーも俺と似たような事を考えているだろうが、彼の睨みにタジタジな様子だ。俺はイッセーと安倍から少し離れて見守っているが、それでもビシビシと伝わってくるよ。

 

 そんな俺たち兄弟の反応を余所に、安倍はイッセーの腕に絡みつく。

 

「そうですわ、お父さま。彼が私の彼氏、兵藤一誠くんですわ」

 

 あ、イッセーが腕に当たってる安倍の胸に意識を集中し始めているな。

 

 もし此処にリアスがいたら、笑顔のまま紅いオーラを纏って見ているだろう。勿論、それは嫉妬の意味で。

 

 一先ず、だらしない顔になりそうなイッセーに、俺が軽くオーラを発して睨んだ。それに気づいたイッセーはハッとするように、元の表情へと戻る。

 

 安倍の父親は巨馬から下りもせずにこう言い放つ。

 

「よかろう。うぬが安倍家に相応しい婿か否か、このわしが直々に計ってくれようぞ」

 

 凄っ。台詞だけで安倍の父親の後ろで雷光が怪しく光ったぞ。あくまで、俺がそう見えただけだが。

 

 そして、ついに対決が始まった。安倍の父親が圧倒的に有利な魔物対決が。

 

 第一戦目は陸の魔物対決だ。庭にライン引きされた長方形のバトルフィールドがあり、その中で戦いが開始される。

 

「わしが先ず出すのはこれだ。出てこいッ!」

 

 安倍の父親の叫びによって現れたのは――何とクリスティよりも一回り大きな体つきの雪女だった。

 

 体中が傷だらけで、如何にも歴戦の強者と言う貫録を見せている。それに、どことなくクリスティに似ている気がするのは俺の思い過ごしだろうか?

 

「安倍先輩、あのイエティのオス、凄い迫力ですね……。クリスティが勝てるかどうか……」

 

 イッセーが安倍に尋ねるが、何故か首を横に振った。その仕草にイッセーが怪訝に思った表情をする。

 

 俺も何故かと思っていると、安倍はすぐに答える。 

 

「あれはクリスティの姉、ステファニーですわ」

 

 …………ああ、道理でクリスティに似ていたって訳か。うん、納得したよ。

 

 しかし俺と違ってイッセーはすぐに認めようとせず、再度尋ねようとする。

 

「……姉? ステファニー? ちょ、ちょっと待って下さい。あれって……メスなんですか?」

 

「ええ、乙女ですわ」

 

「メスしかいないのか、雪ゴリラは!」

 

 どうやら姉妹対決になるようだ。

 

「まぁ、考えてみればアレでも一応“雪女”だから、メスなのは当然――」

 

「だから兄貴! アレを雪女って呼ばないでくれ!」

 

 俺の呟きを聞いたイッセーが即座に振り向いて注意してくる。

 

 未だにイッセーはアレ等を雪女と認めたくないようだな。本当に往生際の悪い奴だ。

 

 まぁ取り敢えず、俺は俺の仕事をやるとしよう。

 

「え~、審判は俺、兵藤隆誠が行います。安倍のお父さんはもうお気付きでしょうが、俺はイッセーの兄ですので」

 

 サポートをする俺が審判をしたら不味いと思われるだろうが、それについては既に手を打っている。

 

 安倍が父親を迎えに行ってる最中、俺は密かに分身拳を使って、もう一人の俺がイッセーの背後に潜んで姿を消している。

 

 サポート内容としては、イッセーの使役する魔物が攻撃や反撃の際、相手側に気付かれないよう分身の俺が衝撃波を加えての二重攻撃をさせる事だ。卑怯だと思われるだろうが、今回の勝負はイッセーが絶対に勝つのは不可能なので、安倍の婚約破棄をさせるにはこれしか方法がないからな。もしも、今回の勝負がイッセーが得意な格闘戦だったら一切手を出すつもりはないんだが。

 

「あい分かった。それにしてもお主………ただならぬ何かを感じるな。わしなどとは比べ物にならないほどの何かが……」

 

 フィールドの中央に立った俺がそう言って雪女二匹をフィールドに招いてると、安倍の父親が意味深そうに言ってくる。

 

 お? この人、妙に鋭い。聖書の神(わたし)の正体に気付いていないけど、それでも俺が普通の人間とは違う何かを感じ取ったようだ。

 

「? お父さま、一体何を仰っていますの?」

 

 娘の安倍は父親が何を言ってるのかは全く分からずに首を傾げてるけど。

 

 さてさて、そんな事は如何でもいいから仕事仕事っと。

 

 イッセーと安倍の父親はフィールドの端に立ち、そこから指示を送ってバトルを動かす事となっている。

 

「では第一試合……始め!」

 

 俺の掛け声とともに陸の魔物対決がスタートする。

 

「ステファニー! まずはドラミングだ!」

 

「ホッキョォォオオオッ!」

 

 先に指示をしたのは安倍の父親で、雪女のステファニーが胸を叩き始めた。

 

 確かゴリラとかがやるドラミングって、相手を威嚇する行為だったような……。もしかして妹のクリスティに身内同士の争いをさせない為の指示か?

 

「雪女のドラミングは自身の攻撃力を高める効果があるのだッ!」

 

 あ、俺が知ってるドラミングとは全く違う物だった。解説どうも。

 

「じゃあ、こっちもドラミングだ、クリスティ!」

 

「ウホホホホホホ!」

 

 

 ドドドドドド!

 

 

 雪女がやるドラミングの意味を知ったイッセーが指示するも、クリスティが無視して突然フィールドを駆け回り出した。

 

 おいおい、早速命令無視かよ。ってか、クリスティは何やってんだ? 分身の俺はいきなりの事に戸惑っているし。

 

「あれは雪女の特殊技、雪分身ですわ」

 

 と、いつの間にか俺の近くにいる娘の安倍が呟いた。

 

 確かに安倍の言う通り、クリスティが二匹、三匹、四匹、終いには無数のクリスティがフィールドを支配したよ。

 

 これにはイッセーも驚いているようだが、アイツの事だからクリスティだらけになってる事に最悪の風景だと思ってるだろう。イッセーの物凄く嫌そうな顔を見れば一目瞭然だ。

 

「しっかしまぁ、見た目とは裏腹に凄い技を使うんだな。あれって雪女が元々持ってるスキルなのか?」

 

「いいえ。日本アルプスに住む雪女のみが習得できる高度な秘技よ。極めれば本体と違う動きも再現できるわ」

 

「……あ、そう」

 

 日本アルプスの雪女限定の技だったのね。やはり日本の妖怪は全く分からないな。

 

「ぬぅ! やるではないか! ドラミングと指示しておきながら、雪分身とはこしゃくな!」

 

 唸る安倍の父親。完全にクリスティの命令違反の筈なんだが、向こうは盛大な勘違いをしているようだ。

 

「ステファニー、こちらも負けておられん! 冷凍撲殺棒で反撃に出ろ!」

 

 随分と物騒極まりない攻撃技だな、おい。すると、ステファニーは身に付けていたバッグからゴソゴソと何かを取り出したのは……バナナだった。何故?

 

 俺が思わず首を傾げてると、ステファニーがバナナを冷凍ブレスで瞬時に凍らせた直後に空中高く放り投げた。一体何がやりたいんだ? 安倍の父親が物騒な技名を言ってたから、てっきりバナナを媒介にして攻撃力抜群の冷凍棒でも作ると思っていたんだが。

 

「ウホッ!」

 

 冷凍バナナに視線を釘付けにされたクリスティは分身ごと空中高く飛び上がっていった。

 

 もしかしてクリスティの奴、バナナに反応したのか? ………まぁ、アレは一応雪女でもゴリラと同類だから反応するのは仕方ないかもしれないが。ってか、戦いの序盤からして既におかしな方向へと突き進んでいるな。

 

 クリスティがバナナに飛び掛かった為に、さっきまであった雪分身が消えて隙だらけとなっていた。それを見たステファニーが間髪を容れず本体のクリスティに強烈なタックルをかます。

 

「ウボァッ!」

 

 ドゴンッと凄い音が出て、タックルを直撃したクリスティはフィールドの外に放り出され、地面に勢いよく落下してしまった。

 

「くっ! やってくれましたわね、お父さま。雪女の大好物である冷凍バナナでクリスティの視線を釘付けにさせ、その隙にステファニーが攻撃を加えるなんて……! 雪女は本来バナナの魅力に勝てず、その場で食べてしまうのに、それをアイテムとして活用するなんて……。どうやらステファニーはバナナの欲に打ち勝つ修行をさせたのでしょうね」

 

 ……安倍さん。分かり易く解説をしてくれるのはありがたいんですが、ツッコミ処が満載過ぎて逆にツッコメないよ。

 

 そんな中、地面に突っ伏したクリスティは物の見事にバタンキューとなって戦闘不能だった。

 

「え~、クリスティが戦闘不能の為、勝者はステファニー。よって、第一戦は安倍のお父さんの勝利となります」

 

 第一線を見て早々やる気を失くしてしまったが、それでも仕事はやろうと審判役を徹した。事務的に。

 

「ふふふ。他愛もない。これでは娘との逢引きも許可出来んな」

 

 俺の宣言にイッセーは(色々な意味で)悔しがってる中、安倍の父親は不敵な笑みを見せていた。イッセーは何とかして勝とうとしてるようだが、俺からしたら負けても良いんじゃないかと思う。余りにも下らな過ぎる勝負内容だったから。

 

「次は海の魔物で対決だな。あのプールが対決の場となるか。さて、その前にうぬらにわしの魔物を見せてしんぜよう」

 

 雷鳴轟く中、稲光に照らされて巨大な魚型モンスターが姿を現した。

 

 巨大な鮫のフォルムに……足の付いた人魚、で良いのか? もう見た感じエステリーナの鮫バージョンだな。

 

 だがエステリーナと違って、鮫の方はかなり強そうだ。これは第二戦も負けるのは確実になってきたよ。

 

 と思ったんだが………鮫の魔物は動く様子を全くなかった。大きく口を開け、ただ立ち尽くすだけだ。

 

「………」

 

 不思議に思った安倍の父親が馬の上から触れてみると――

 

 

 バタン!

 

 

 と、鮫は地面に横たわってしまった。おいおい、まさかこれって。

 

「あ、鮫だから常に泳いでいないと死ぬんだった」

 

「「おい!」」

 

 間の抜けた父親の一言にイッセーと俺は揃って叫んだ。勿論、安倍の父親に向かって。

 

 取り敢えず俺も確認しようと近づいて、鮫の状態を診てみると……本当に死んでいた。

 

「………はぁっ。第二戦の勝者はイッセーです」

 

 もう完全にやる気のない声で判定を下した。

 

 本当だったら、第二戦から本格的にイッセーのサポートをしようと思ってたんだが……意味の無いものになってるな。

 

 因みにプールサイドでイッセーを待っていた人魚のエステリーナも鮫と同様、酸欠で死んでいた。

 

 後日の食卓に大トロとフカヒレが並んだりしたが、それは後の話で気にしない。

 

 あっと言う間に第二戦まで進み、ついに最終戦となるんだが……正直言って不安だらけだ。




 余りにも下らなすぎる戦闘展開となっている為、リューセーの心労が溜まり続けています。
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