ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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第十四話

 リアスの追求を無視してると、エレベーターは一階まで降りた。俺とイッセーは出て、すぐに小猫の後を追おうと走り始めてホテルを出る。

 

「ちょ、ちょっと貴方たち、小猫がどこへいったか誰かに聞かないの!?」

 

 走りながら問うリアスに――

 

「大丈夫です。俺や兄貴は小猫ちゃんのオーラを探知してるんで」

 

「アイツは今このホテル周辺にある森に向かってるよ」

 

「……そ、そう」

 

 イッセーと俺が返答に答えると、何やら呆れた感じな様子を見せた。

 

 ホテルから出て、闇夜の森を俺たち兄弟とリアスは走り抜く。森が多少整備されてる事もあって、それなりに走りやすかった。以前にサバイバル生活もしていたから、森の中の走行移動は大して問題ない。

 

「ねぇリューセー、小猫のオーラを探知してるなら、転移を使えば良いんじゃないの?」

 

「そうしようかと思ったけど、小猫が何であんな事をしてるのかが少し気になってな」

 

 確かにリアスの言うとおり、森に向かおうとする小猫を阻止するのは造作も無い。しかし、小猫の目的も分からないまま阻止したところで、また同じ事をやる可能性があった。今度は俺が目を離した隙を突いて逃げ出すんじゃないかと。

 

 実はこの前の言い合い(注:第九.五話参照)で俺は小猫に嫌われている。昨日の集まりに、小猫は俺と目が合った途端すぐに顔ごと逸らす。更には近づいて話しかけようとしても、すぐに距離を取られて無視される始末。もしこれが妹分のアーシアにされていたら……俺は確実にショックを受けて寝込んでいるんじゃないかと思う。

 

 まぁそれはともかくとしてだ。小猫には暫く何を言ったところで無駄だから放置しておこうと思った矢先、まさかこうなるとは思わなかったよ。

 

 森を進んで数分後、小猫のオーラが急に動きが止まった。俺がすぐに足を止めると、イッセーも倣うように同じ事をしながら、リアスの動きを止めるように腕を引く。突然の事に転びそうになるリアスだったが、イッセーが咄嗟に抱き止めた。リアスは思わず抗議しようとするも、イッセーに抱き止められてると認識して顔を赤らめながらも静かになる。好きな男の腕の中にいたら、そりゃ静かになるな。ま、俺としては好都合だ。

 

 俺がイッセーとリアスに少し先にある大きめ木の陰に隠れるよう指示する。コクンと頷いた二人を見た俺は、オーラと気配を完全に消して接近する。そこに着いて少しだけ顔を覗かせると、その先には小猫がいた。

 

 小猫は何かを探してるように森の真ん中をキョロキョロと首を動かしていると、何かに気付いたように視線を移す。俺達も子猫の視線の先に目を向けると――

 

「久しぶりじゃない?」

 

 聞き覚えのない女の声がした。

 

 音も立てずに現れたのは、黒い着物に身を包んだ女だ。その女の頭部に猫耳がある。

 

 ――お、おい兄貴、まさかアイツは……!

 

 ――今は黙って見てろ。

 

 何かに勘付いたイッセーが俺に視線で訴えてくるが、すぐに静観するよう指示する。

 

「ハロー、白音(しろね)。お姉ちゃんよ」

 

「黒歌姉さま……!」

 

 女の登場に小猫が酷く驚いたようで全身を震わせていた。

 

 昨日の報告会の後にリアスから聞いたが、白音とは小猫の本名だったな。当然、小猫の素性も聞かせてもらった。本当は訊く気はなかったんだが、リアスが今後の為に知って欲しいと向こうから教えてくれた。小猫の過去や、あの黒歌と言う小猫の姉が以前の主を殺して「はぐれ悪魔」になった事を全てな。

 

「会場に紛れ込ませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃー」

 

 成程、小猫はあの女の足元にいる黒猫を見てここまで来たようだな。

 

「……姉さま。これはどういうことですか?」

 

 怒気が含まれていた小猫の問いに、女は微笑むだけだった。

 

「そんな恐い顔しないで。ちょっと野暮用なの。悪魔さんたちがここで大きな催ししているっていうじゃない? だからぁ、ちょっと気になっちゃって、にゃん♪」

 

 手を猫みたいにして可愛らしいウインクをする女。それを見たイッセーが少しだらしない顔をしているも、少し怒り気味のリアスに頬を抓られてる始末。弟よ、他の女に目移りするのはどうかと思うぞ。益してやリアスの前で尚更な。

 

「ハハハハ、こいつ、もしかしてグレモリー眷族かい?」

 

 今度は聞いたことのある声だ。姿を現したのは以前に会った男――孫悟空の美猴だった。アイツが気さくに話しかけながら隣に立ってるって事は、恐らくあの女もヴァーリの仲間で『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員なんだろうな。

 

 そう思ってると、ふいに美猴の視線が俺達の方に向けられる。まさか気付いたのか?

 

「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術知ってると、気の流れの少しの変化だけで大体わかるんだよねぃ」

 

 変だな。俺とイッセーは気配だけじゃなくオーラも完全に消した筈なのに……あ、リアスか。

 

 ――どうする兄貴?

 

 ――取り敢えず、お前とリアスだけで行け。

 

 確認してくるイッセーにそう指示する。

 

 そしてイッセーとリアスは意を決して、小猫達の前に姿を現した。二人の登場に、小猫は驚いている。

 

「……イッセー先輩、部長」

 

「よう、初めまして。兄貴から聞いたが、お前が孫悟空の美猴か?」

 

「そうだぜぃ。この前はおまえさんが気絶してて挨拶出来なかったけど、よろしくな。にしても、まさかおまえさんまでいたとは驚きだぜぃ。気が全然感じ取れなかったねぃ」

 

「だってよ、兄貴」

 

「良かったぁ。完全にオーラを消してた俺に気付いてたら、少し傷付くところだったよ」

 

 後ろを振り向きながら言ってくるイッセーに、俺は安堵しながら姿を現した。

 

 俺の登場に小猫だけでなく、美猴もギョッとするように驚く。小猫の姉はキョトンとして見ているが。

 

「やぁ、美猴くん。ヴァーリは元気かい?」

 

「おいおい、まさかアンタまでいたなんて完全に予想外だぜぃ。ヴァーリは元気どころか、この前の戦いで負けた赤龍帝と再戦する為に修行中だぜぃ」

 

「あの野郎……!」

 

 ヴァーリもイッセーと同じく修行、か。『次に戦う時には一切慢心せずに全力で戦って俺が勝つ』と言ってたからな。

 

 イッセーはこの前の事を思い出してるのか、苦々しい顔をしてるし。コイツの事だから、向こうが勝手に敗北宣言したヴァーリに腹が立ってるんだろう。

 

「おい、クソ猿さんよ。何か勘違いしてるようだが、アレは俺が負けたんだ。勝手に自分の負けにすんなってヴァーリの奴に言っとけ」

 

「こっちもこっちで呆れるほどに強情だねぃ。傍から見てた俺っちから言わせれば相打ちだったんだがねぃ」

 

 仕方ないさ。イッセーは勝負に関しては拘りを持ってるから、兄の俺が言ったところで絶対に考えを改めないからな。

 

「それはそうと、何故『禍の団(カオス・ブリゲード)』の君達がここにいるんだ? まさかテロか?」

 

 ストレートに尋ねる俺に、二人は微笑むだけだ。美猴は苦笑いだが。

 

「いんや、そういうのは俺っちらには降りてきてないねぃ。ただ、冥界で待機命令が出てて、俺も黒歌も今日は非番なのさ。したら、黒歌が悪魔のパーティ会場を見学してくるって急に言いだしてねぃ。なかなか帰ってこないから、こうして迎えに来たわけ。OK?」

 

 無駄に話しているが、嘘じゃないようだ。尤も、嘘を吐いていたらすぐに分かるけど。

 

「美猴、この二人は誰?」

 

 小猫の姉が俺たち兄弟に指をさして美猴に訊く。

 

「聖書の神と赤龍帝。因みにこの二人は兄弟だぜぃ」

 

 それを訊いて、小猫の姉は目を丸くしていた。

 

「本当にゃん? へぇ~、この二人が。エリガンが今もお熱な人間に転生した元聖書の神と、ヴァーリを退けたスケベそうな現赤龍帝なのね」

 

 俺たち兄弟の事を知っても焦る様子を見せない小猫の姉。

 

 ってか、エリーが俺にゾッコンな事は『禍の団(カオス・ブリゲード)』も知ってるのかよ。どうせアイツの事だから、自分で言いふらしたんだろうけど。

 

「スケベそうで悪かったな………まぁ否定は出来ないけど」

 

 小猫の姉に否定しないどころか開き直ってるイッセー。スケベなのは事実だからな。

 

「黒歌、ここは帰ろうや。どうせ俺っちらはあのパーティに参加出来ないんだし、無駄さね。それに聖書の神がいる以上、目的は達成できそうにもないぜぃ」

 

「そうはいかないわ。白音は絶対にいただくにゃん。あのとき連れていってあげられなかったからね♪」

 

「仮に連れ帰ったとしてもヴァーリ怒るかもだぜ?」

 

「この子にも私と同じ力が流れていると知れば、オーフィスもヴァーリも納得するでしょ?」

 

「そりゃそうかもしれんけどさ」

 

 どうやら小猫の姉――黒歌はどうしても妹を連れ帰りたいようだ。

 

 ソイツは目を細めると、小猫はソレを見て小さな身体をビクつかせる。どうやら姉が相当怖いようだ。

 

 すると、リアスが憤怒の表情で前に出る。

 

「黒歌、この子は私の眷族よ。指一本でも触れさせないわ」

 

「あらあらあらあら、何を言ってるのかにゃ? それは私の妹よ。上級悪魔さまにはあげないわよ」

 

「何か小猫を連れて行くのを決定事項となってるようだが……」

 

「俺達がそんな事を黙って見過ごすと思ってるなら大間違いだぞ。小猫ちゃんは俺達の大事な仲間なんだからな」

 

 リアスと黒歌に睨み合いに割って入るように、俺とイッセーが前に出て威嚇する。特にイッセーの方は黒歌の勝手な言い分に頭にきてるのか、少しばかり闘気(オーラ)が昂ぶっている。

 

「あちゃ~、やっぱこうなるのかねぃ。なぁ黒歌、いくらおまえさんでも聖書の神相手じゃ分が悪すぎるぜぃ。ここは大人しく帰ろうや」

 

 美猴は相当聖書の神(わたし)を警戒してるようだ。その反面、イッセーは問題無いように見てる感じがする。

 

「だったら美猴は聖書の神の相手をしてちょうだい。倒せなくても時間稼ぎぐらいは出来るでしょう?」

 

「とは言ってもねぃ……俺っちが生きて帰れるかどうか不安だぜぃ」

 

 そう言ってる割には俺と戦いたそうな感じがするな。

 

 どうやら向こうは退く気はない、か。仕方ない、あんまり気乗りはしないが相手をするか。と、その前にだ。

 

「リアスに小猫、一先ず君達は安全な所へ転移させ――」

 

「そんな事はさせないにゃん♪」

 

 俺が二人に転移術を使おうとする前に、黒歌が森に結界を張った。それでも俺は気にせず二人に転移術を使ったが……失敗した。

 

「これ、兄貴が使ってる結界と似てるな……」

 

聖書の神(わたし)の転移術を弾かせるとは……どうやら君は空間を操る術も使えるようだな」

 

 イッセーの呟きを無視して俺の問いにリアスが驚いてる中、黒歌は得意気な顔となる。

 

「時間を操る術までは覚えられないけどねん。空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。だから、ここでど派手な事をしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくる事もない。あなたを殺すことが出来なくても、小猫を連れ帰れば後はグッバイにゃ♪」

 

 成程、小猫を逃がさないよう俺たち森ごと閉じ込めたって訳ね。

 

 援軍は来なくても良いんだが、一番の問題は小猫の姉である黒歌と戦う事だな。俺としては戦うより、少しばかり話がしたいよ。黒歌が以前の主を殺した本当の理由をな。

 

 すると、空中高くから声が聞こえてくる。

 

「リアス嬢と兵藤兄弟がこの森に行ったと報告を受けて急いで来てみれば、結界で封じられるとはな……」

 

 見上げるとそこには、何とタンニーンがいた。




今回は原作と大して変わりません。
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