ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

21 / 53
第十五話

「タンニーンのおっさん!」

 

 俺達を追ってきたタンニーンの登場にイッセーが驚くように叫ぶ。俺もまさかタンニーンが来るとは思っていなかったがな。

 

「おうおうおう! ありゃ、元龍王の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンじゃないかぃ! 聖書の神に続いてあんなのが来たらもう大問題だぜ、黒歌!!」

 

「うれしそうね、お猿さん」

 

 美猴がタンニーンを見て嬉しそうに戦いたがってる様子を見た黒歌が呆れた表情をする。俺の時は若干逃げ腰だったのに。

 

「悪いが黒歌、俺っちはあっちをやらせてもらうぜ! (きん)()(うん)ッッ!」

 

 叫ぶ美猴の足元に金色の雲が出現し、そのままタンニーンのいる空へ飛び出していく。

 

 そして手元に長い棍が現れ――

 

「伸びろォォォッ! 如意棒ッッ!」

 

 

 ギュゥゥゥゥンッ!

 

 

 孫悟空お馴染みの武器――如意棒でタンニーンに攻撃しようとする。対してタンニーンは問題無い感じで、巨体に似つかわしくない速度で回避する。

 

「もう一丁!」

 

 再度攻撃をしようと美猴は長く伸ばしたままの如意棒を横薙ぎに振るい、回避したタンニーンを追撃。だがタンニーンは翼を上手く使って中で回転し、更に回避した。そのまま回転した状態のタンニーンが口を大きく開き、大質量の火炎が空一面を覆い尽くす。

 

「凄いな、アイツ。加減してるとは言え、おっさんのブレスをモノともしてねぇよ」

 

「流石は孫悟空の末裔。伝説の妖怪の血を引いてるだけはあるな」

 

 観戦するように空を眺めてる俺たち兄弟。

 

「タンニーンには悪いが、一先ず美猴は彼に任せるとしよう。さて――」

 

「あら?」

 

 俺とイッセーが揃って視線を空から地上へと降ろし、眼前にいる黒歌を見る。俺たち兄弟の視線に、黒歌は余裕そうな態度を見せるも若干警戒した様子を見せる。

 

「どうする兄貴?」

 

「う~ん、そうだなぁ……」

 

「全く、あのお猿さんときたら勝手な事しちゃって……。よりにもよってこの兄弟を相手にしなきゃいけないなんて、ついてないにゃん」

 

 俺たち兄弟を前にしても黒歌は逃げ出そうとしない。それどころか、やる気満々でドス黒いオーラを全身から滲みだしてる。それだけ小猫を連れ帰りたいって事なんだろうか。

 

「じゃあここはアレで決めようか、イッセー」

 

「は? アレって……ああ、そう言う事か」

 

『?』

 

 俺とイッセーの会話にリアスと小猫、そして黒歌が揃って不可解な表情をする。

 

 リアス達の反応を気にしない俺達は真剣な表情のまま対峙してすぐ――

 

「「最初はグー! ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ!」」

 

『………は?』

 

 ジャンケンを始めた。言うまでもなく、勝ったら先に相手と戦うと言う取り決めだ。

 

 完全に予想外だったのか、リアス達は目が点になるように呆然としてる。けれど俺達は気にする事無くジャンケンを続けていた。

 

 あいこでしょが十回近く続くも――

 

「よっしゃぁ! 久々に俺の勝ちだぁ!」

 

「むぅ……くそっ。まさか負けるとは……」

 

 イッセーがグー、俺がチョキを出した事によって勝敗が決まった。今回はイッセーの方に運が向いたか。

 

 ま、いいや。リアス達を守るついでに、イッセーの修行の成果を見れるいい機会だと思えば。

 

「んじゃ、俺が行くぜ。兄貴は部長達を守っててくれ」

 

「はいはい。分かったよ」

 

「…………って、待ちなさいリューセー!」

 

 イッセーが前に出て俺が下がると、さっきまで呆然としていたリアスが意識を取り戻したかのように俺に詰め寄る。

 

「まさかイッセーだけで黒歌の相手をさせる気なの!?」

 

「ああ。だからさっきジャンケンで決めただろうが」

 

「……ねぇ、聖書の神」

 

 すると、リアスと同じく呆然としていた黒歌は対峙してるイッセーを無視するように俺に話しかける。

 

「一体どういうつもり? 全員で挑めば私に勝てるのに、現赤龍帝だけ戦わせるなんて、ふざけ過ぎにも程があるわよ……!」

 

 バカにされてると思ってるのか、凄まじい怒りを見せる黒歌。ドス黒いオーラからはかなりの殺気も含まれている。

 

「別にふざけていないさ。一人だけで戦わせる理由はちゃんとあるよ」

 

「だとしても、確実に勝てる戦いを自ら不意にするのは――」

 

「どうせ君のことだ。仙術や妖術、更には幻術も使って、戦ってる俺たち兄弟をリアスと小猫から引き離そうとでも考えてるんだろ?」

 

「っ!」

 

 俺の推測が当たってたのか、黒歌はさっきまで怒りを見せていた表情を一変して目を見開く。

 

 思った通り、やはりアイツはどうあっても小猫を連れ帰りたいようだ。

 

「その顔を見る限り大当たりのようだな。それだけ自分の大事な妹を取り返したい、と言ったところか?」

 

「っ……。……違うわ。今回は手駒が欲しいから白音が欲しくなっただけよ」

 

「ふぅん」

 

 果たしてそれは本心で言ってるのかねぇ? 問いに答える間が若干あったんだけど。

 

 (イッセー)妹分(アーシア)がいる兄の俺から見れば、黒歌はまるで必死に隠そうとしてる感じがするな。

 

 ま、どうせ今のアイツに何を言ったところで否定するだろうから、これ以上どうこう言うつもりは無い。黒歌の魂胆が分かった以上、俺がリアス達の傍から離れるわけにはいかないし。

 

「イッセー、念のために言っておくが――」

 

「分かってる。兄貴は俺のこと気にしないで、部長と小猫ちゃんを守るのに集中してくれ」

 

 俺が言おうとする前に、黒歌と対峙してるイッセーは片手を軽く振りながら言い返してくる。良く分かってるじゃないか。流石は俺の弟だ。

 

 そして準備万端と言わんばかりに、イッセーは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出すと同時に――

 

 

 ドゥンッ!!

 

 

 すぐに全身から赤い闘気(オーラ)を解放した。

 

 へぇ。思っていた以上に闘気(オーラ)の量が上がっているな。タンニーンとの修行がかなり良かったようだ。

 

「つー訳だ、お姉さん。小猫ちゃんを取り返したかったら、先ずは俺と戦ってもらうぜ」

 

「……良いわ。聖書の神には後悔させてあげるにゃん。自分の弟を見殺しにした事をね!」

 

 そう言った黒歌から薄い霧らしきものが発生する。それは徐々に広がり、イッセーや離れている俺達のもとに届く。更に霧は留まらず、森全体を覆い尽くそうとしていた。

 

「この霧は……そう言う事か」

 

 霧を見て分析を終えた俺がパチンと指を鳴らすと、俺やリアス達の周囲を結界が覆う。

 

「リューセー、黒歌が出した霧ってまさか……!」

 

「ああ、察しのとおり毒霧だ。あとちょっと遅かったら、リアスと小猫は毒霧で苦しむところだったよ」

 

 油断の出来ない奴だ。イッセーと戦う仕草をしておきながらこんな事をするとはな。

 

「ちっ。気付かれたようね」

 

「おいおいお姉さん。俺が相手するつってるのに、何やってんだよ。にしても、随分と悪趣味な霧だな。ひょっとしてこの霧で相手を苦しませて、じわじわと殺そうって寸法だったか?」

 

「そうにゃん。この霧は、悪魔や妖怪にかなり効く毒霧だけど、人間にもそれなりの効果はあるわ」

 

 黒歌はいつのまにか高い木の枝に座ってイッセーや俺達を見下ろしている。術を使って移動したってところか。

 

「でも、どうしてあなたには効かないのかしら? 結界を張ってる聖書の神と違って毒霧を吸ってるはずなのに。普通の人間なら、もうとっくに苦しんでるわよ?」

 

「生憎だけど、俺に毒関連は通じねぇよ」

 

 イッセーの言うとおり、この毒霧は通用しない。理由は簡単。イッセーは聖書の神(わたし)が課した修行によって毒などの耐性がある他に、今は聖書の神(わたし)が施した加護で完全に効かない状態だ。

 

 冥界の空気は人間にとって毒その物なので、毒の耐性と環境の適応が必要だ。その為、人間のイッセーとアーシアは冥界へ行く際に聖書の神(わたし)の加護が必須とも言える。因みに人間となってる俺は神の能力(ちから)でとっくに防いでいるので問題無い。

 

「それはそうと、これから俺と相手するのに……兄貴はともかく、俺の目の前で部長と小猫ちゃんを狙うとは良い度胸してるじゃねぇか!」

 

 おいコラ、俺は良いのかよ。

 

 俺が内心ツッコムのを他所に、イッセーは片手から放ったオーラ波を撃ちだす。

 

 

 ドンッ!!

 

 

 イッセーの一撃は黒歌にヒットするも、その体は霧散していく。

 

「くそっ、やっぱアレは幻術か」

 

 手応えがないのを分かっていたイッセーは舌打ちをしながら周囲を見る。

 

「中々良い一撃ね。もし生身で受けたら、私でもただじゃすまなかったわ。でも無駄無駄。幻術の要領で自分の分身ぐらい簡単に作れるわ」

 

 黒歌の声が森に木霊する。毒霧の中に人影が次々と生まれ、その全てが黒歌だった。言うまでもなくアレ等は黒歌が幻術で作り出した分身だ。俺が使う分身拳とは全く違う偽者の分身で幻だ。

 

 当然あの分身の中には本物が混ざっている。けれどイッセーには判断が出来ないだろう。相手のオーラを探知できるイッセーでも、黒歌の分身たち全員は体にオーラを覆わせているから、本物と区別が付けるのはかなり難しい。

 

「…………そこか!」

 

 本物の黒歌の位置が分かったのか、イッセーは再びオーラ波を撃つ。

 

「残念。それは幻影にゃん♪」

 

 予想通りと言うべきか、やはり今のイッセーでは黒歌を見つけるのは難しいようだ。

 

 因みに俺は本物の黒歌がどこにいるのかは既に把握している。なら教えれば良いだろうと言われるかもしれないが、それではイッセーの為にならない。聖書の神(わたし)の弟なのだから、これ位は乗り越えてもらわないと困るし。

 

「今度は私が撃たせてもらうにゃん♪」

 

 黒歌の幻影の一つが手を突き出し、魔力弾らしきものをイッセー目掛けて撃ち出してきた。

 

「んなもん喰らうかよ!」

 

 

 パアンッ! ドッゴォォォオオオンッ!

 

 

 イッセーは難なく黒歌の魔力弾を片手で弾き飛ばす。弾き飛ばされたソレはあさっての方向へ飛んでいくと、地面に激突したのか爆発が起きた。

 

「へぇ、やるじゃない。ならコレならどうにゃん♪」

 

「げっ!」

 

 今度は全ての幻影達が手を突き出し、イッセー目掛けて魔力弾を撃ってきた。複数の魔力弾を同時に弾くのは無理だと判断したイッセーは超スピードで回避する。

 

「あら、かなり素早いわね。でも、回避したところで、気を操れる私の前じゃ避けても無駄にゃん♪」

 

「っ! くそっ!」

 

 イッセーが超スピードの後に現れる位置を捉えているのか、黒歌の幻影達はすぐその場所に目掛けて魔力弾を撃つ。

 

 防御と回避をしてるイッセーは、何とか本物の黒歌を見つけてオーラ波で反撃する。だが結局は偽者の幻影に当てただけで防戦一方となる。

 

「ふむ……。今回の相手はイッセーにとって相性が悪すぎたな」

 

 知ってのとおり、イッセーは直情の戦士タイプだ。余りにも真っ直ぐ過ぎる為に、搦め手を好む相手との相性は悪い。仮に相性の悪い相手と戦ったとしても、持ち前の闘気(オーラ)と近接格闘戦で難なく倒してきた。

 

 しかし、黒歌のように様々な術を搦め手のように扱って攻める高術者には会った事がないから、如何せん思うように反撃出来てない。場合によっては、イッセーが黒歌に負けてしまう可能性も充分にある。

 

「リューセー、私たちも援護しないと!」

 

 イッセーの不利な状況を見たリアスが俺にそう言ってくる。主として黙って見過ごせないようだ。

 

「今この結界を解いたら、お前と小猫がこの毒霧で即行ダウンするだけだ。二人が倒れたなんてイッセーに知られたら、俺が後で怒られてしまうよ」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! イッセーがやられてしまうかもしれないのに、どうしてあなたはそんな悠長に見てられるの!?」

 

「心配するな。イッセーはあれくらいで音をあげてしまうほど柔な奴じゃない。アイツもアイツで、黒歌に勝てないようじゃヴァーリに勝つなんて無理だと思ってる筈だ」

 

「でも、だからって……!」

 

「リアスがイッセーを心配する気持ちは大いに理解してるさ。けれど、お前は未だイッセーに対する信頼度が低い。だからここでいっその事、『(キング)』として眷族候補のイッセーを信頼して見守ってみたらどうだ? いずれイッセーの主となるお前がいつまでもそんなんだと、周囲からは形だけの眷族としか見られなくなってしまうぞ」

 

「っ……」

 

 俺の言葉がかなり効いたのか、さっきまで激昂していたリアスは嘘のように静まった。

 

 結構キツイ言い方をしてしまったが、リアスはイッセーを正式な眷族に迎え入れる事に変更は無い。しかし、事あるごとに眷族を心配してるようでは『(キング)』としての器が知れる。

 

 いくらリアス――グレモリー家が眷族思いでも、信頼と言うものがなければ大して意味の無いモノだ。それは当然リアスも分かっているからこそ、俺に何も言い返そうとはしなかった。

 

 リアスには今後、『(キング)』としての在り方をキチンと理解してもらわなければ聖書の神(わたし)が困る。眷族を大事にするだけでなく、眷族を信頼し最後まで見守ると言う『(キング)』としての器量をここで見せて欲しいものだ。尤も、それはあくまで戦いに関してなので、日常生活についてどうこう言うつもりは無い。

 

「イッセー、頑張って……!」

 

 意を決したかのように、リアスはイッセーを心配するのを耐えるように見守り始めた。『(キング)』としてはまだまだ未熟だが、それでもギリギリ及第点ぐらいは与えるとしよう。

 

「……リューセー先輩」

 

 リアスがイッセーを見守ってる中、今度は小猫が俺に話しかけてくる。

 

「何だ、小猫。先に言っておくが、『今すぐに戦いを止めて下さい。自分は姉さまと一緒に行く』、なんて言ったところで受け付けないからな」

 

「……どうして、分かったんですか?」

 

「顔を見ただけで分かるよ」

 

 大方、イッセーは黒歌には絶対勝てないと自己完結したんだろうな。姉の力を妹の自分がよく知っているから、と言う理由で。

 

「君もリアスと同様、仲間であるイッセーを信頼してみたらどうだ? それと同時に君がイッセーを応援したら、アイツは今以上にやる気を出すぞ」

 

「……無理です。イッセー先輩では姉さまに勝てません……。いくら赤龍帝であっても幻術と仙術に長けてる姉さまを捉えきれるとは思えません……」

 

 どうやら小猫は姉の力を理解してると同時に、恐ろしさも知ってるからそういう結果になると思ってるようだ。

 

 更には黒歌の力を間近で見てた事もあって、猫又の力を使いたくないという気持ちが強いからな。

 

「だったら、君が猫又の力を使ってイッセーをサポートしたらどうだ? そうすれば黒歌に勝てるんじゃないのか?」

 

 俺の言葉に小猫は首を横に振る。

 

「……イヤ……あんな力を使いたくない……黒い力なんて使いたくない……人を不幸にする力なんて使いたくない……」

 

「小猫……」

 

 ふるふると震え、涙をポロポロと溢し始めた。するとリアスはすぐに小猫を抱きしめる。

 

「……私は……私は……!」

 

 やれやれ、ここまで来るとなると……少しばかり荒療治が必要かもな。

 

「はぁっ……リアス、悪いけどちょっと小猫から離れてくれないか?」

 

「え?」

 

 小猫を抱きしめてるリアスを離れさせると、俺はイッセーと黒歌が戦ってるのを気にせず小猫と向き合う。

 

「ゴメン小猫、先に謝っておく」

 

 

 パアンッ!

 

 

「……え?」

 

「……は?」

 

 俺が小猫の頬に平手打ち――ビンタをやると、それを受けた小猫だけでなくリアスも放心する。

 

「……は? え? え? お、おい兄貴、小猫ちゃんに何を……?」

 

「……はぁ? な、何で白音が聖書の神に叩かれてるの……?」

 

 言うまでもなく戦闘中のイッセーと黒歌も、俺が小猫にビンタしたのを見て、思わず動きを止めて唖然としていた。因みに上空で戦闘中のタンニーンと美猴は気付いていないが。




予想外な展開だと思われるでしょうが、当然コレには理由がありますので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。