ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
「あ~らら、森から更地になっちゃった。後で俺の方で戻しておかないと不味いな」
「「…………………………」」
イッセーが放った
ついでに黒歌が周囲に撒き散らしていた毒霧も吹っ飛ばされ、霧散しているから結界も解いた。
それにしてもイッセーの奴、以前とは比べ物にならないほど威力が上がったな。確か
あれほどの爆発となると、イッセーはこれまでかなりの不満と怒りが溜まっていたようだ。その原因はこれまであった出来事によって蓄積されたんだろう。もしかしたら案外、俺に対する不満もあったりするかも。
ま、それは今どうでもいいとしてだ。問題はこの惨状を作った当の本人は――
「あ~~、久々にやってスッとしたぁ~」
スッキリしたような顔になって安堵の息を吐いていた。
「あ、危なかった……! 本当に死ぬかと思ったわ……!」
黒歌はイッセーの技を防ごうと、喰らう直前に防御結界を張って何とか凌いでいた。あそこにいるのは当然本物の黒歌で、他の黒歌の幻影達は爆発によって消えたのは言うまでもない。
「ハハハハ! 驚いたぞ、この赤い一撃ッ! 兵藤一誠! この周囲にある森が全て消え去ったぞ! ついでにこの周辺を覆っていた結界も吹き飛んだ!」
上空のタンニーンがそう言った。確かにタンニーンの言うとおり、黒歌が張った結界は既に無くなっている。恐らく黒歌は爆発から身を守る為に防御結界の方に集中させたんだろう。
「フハハハハハッ! 未だ
タンニーンは随分と上機嫌だねぇ。イッセーの爆発に巻き込まれたっていうのに、普通は怒るところなんだが。アイツからしたら、イッセーが更に成長してる事に喜んでるってところか。
しかし、結界が消えたとなると、会場やその周辺にいる悪魔達もここが知られた筈だ。もうじき誰かが駆けつける事になるな。
「イッセー、早くケリを付けろ!」
「っと、そうだった」
さっきまで気が緩んでいたイッセーはすぐに引き締めて黒歌の方を見る。
「どうだった、お姉さん?
「ハッ! やってくれるじゃないの! だったらこっちは、妖術仙術ミックスの一発お見舞いしようかしら!」
お返しをしてやると言わんばかりに、黒歌の両手がそれぞれ違う力を纏い始める。
ドゥッ!!
そのまま両手から二種類の波動をイッセーに撃ち出してきた。イッセーは避けようとしないどころか周囲の
「かああっ!!!」
ボッ!!
何と気合だけで消し飛ばした。お見事。しかも十倍の龍帝拳も完璧に使いこなしてる。あの様子から見て、まだ更に出力を上げる事が出来るな。
「で、お姉さんの全力はこんなもんか?」
イッセーのノーダメージに黒歌は表情を一変させ、驚愕していた。
「かき消した!? 嘘でしょ。かなりの妖力を練り込んだのよ!」
ピシュッ!
驚く黒歌の反応を他所に、イッセーは超スピードで黒歌の懐に入る。
「なっ!?」
余りにも速くて見えなかったのか、イッセーが接近してる事に気付かずに動きが止まる黒歌。
イッセーはその隙を狙うように、黒歌に強烈なパンチを繰り出そうとする。が、それは黒歌の鼻先で止まった。パンチを止めた余波によって周囲の空気が振動する。
「俺のかわいい後輩、モノ扱いしてんじゃねぇよッ!」
「――ッ」
「次にまた自分勝手な理由で小猫ちゃんを狙ったら、この一撃を止めない。あんたが女だろうが、小猫ちゃんのお姉さんだろうが、俺の敵だッ! 俺の大事な(後輩である)小猫ちゃんに指一本触れさせねぇ!」
……おいコラ。お前また肝心な部分を抜かしてるぞ。
俺の隣にいる小猫がお前の台詞を聞いた途端、顔が真っ赤になってるよ。リアスはリアスでイッセーを睨んでいるし。
「……クソガキがっ!」
毒づきながら距離を取ろうと下がる黒歌だが、恐怖してるように見えた。イッセーが放ってる
それを見ていた美猴が哄笑をあげる。
「ヒャハハハハハハ! こりゃ面白いや! もういっそのこと本格的に楽しまないと損だぜぃ! ヴァーリには悪いが、赤龍帝は俺っちが倒すぜぃ!」
イッセーの爆発技によって自棄になったのかは分からんが、美猴は戦闘継続の意思を見せる。アイツもヴァーリ同様に戦闘好きのようだ。
さて、ここからは俺も参戦するか。毒霧が晴れた以上、リアスと小猫を守る必要も無いからな。
俺たち兄弟とタンニーンなら、いくら黒歌や美猴でも勝ち目は限りなく低い。それにもうすぐ異変に気付いた悪魔達が加勢するだろうから、アイツ等が捕縛されるのは時間の問題だ。
「二人とも、ここで待って――ん?」
リアスと小猫に待機してるように言ってる最中、イッセーの目の前の空間に裂け目が生まれる。
その裂け目から姿を現したのは、背広を着た若い男性だ。手に極大なまでに聖なる
厄介な相手が現れたと分かった俺は、すぐに超スピードでイッセーの下へ駆けつけて隣に立つ。
「そこまでです、美猴、黒歌。悪魔が気付きましたよ」
俺がイッセーの隣に現れた事に眼鏡をしてる男性は慌てる様子を見せず、美猴と黒歌にそう言った。
二人に話しかけてる男も、やはり『
俺がそう思ってると、美猴が空中から降りてきた。
「どうしたアーサー、おまえはヴァーリの付き添いじゃなかったかい?」
美猴の問いに男は眼鏡をクイッと上げて言う。
「黒歌が遅いのでね、見に来たのですよ。そうしたら何故か美猴までいる。全く、何をしているのやら」
黒歌と美猴に溜息を吐く男。
「リアス嬢と塔城小猫、そいつに近づくな! 手に持っているものが厄介だぞ!」
後ろから俺達に駆け寄ろうとするリアスと小猫に叫ぶタンニーン。
「兄貴、アイツが持ってる剣って」
「察しの通り、聖剣だ。しかも聖王剣コールブランド。またの名をカリバーン。文字通り地上最強の聖剣だ。恐らくアイツはヴァーリの仲間だろうな」
「マジかよ……。ヴァーリの野郎はどんだけすげぇ奴を仲間にしてるんだよ」
それは俺も同感だ。
すると、男は俺を見た途端、手を胸に当てながら紳士の礼をする。
「お初にお目に掛かります、聖書の神。私はアーサー・ペンドラゴンと申します。今は
「ご挨拶どうも」
男――アーサーは黒歌と違って俺の事を知っているようだ。ヴァーリから聞いたんだろうな。
「もし良かったら教えて貰いたいんだが、その鞘に収めてるもう一つの聖剣――『
俺の問いにイッセーが驚く。
エクスカリバーは大昔の戦争で壊れて七本になっているが、最後の一本――『
俺がイッセーを連れて修行の旅をしてる時に捜していたんだが、結局は見付からなかった。それがまさか彼が所持しているとは予想外だよ。
「流石は聖書の神、ご明察恐れ入ります。仰るとおり、これは最近発見された七本中最強のエクスカリバー――『
おやおや、素直に教えてくれたね。
「ちょっとアーサー、そんなに話して平気なの?」
黒歌の問いにアーサーは頷く。
「ええ、実は私もそちらのお仲間さんに大変興味がありましてね。聖書の神に赤龍帝殿、聖魔剣の使い手さんと聖剣デュランダルの使い手さんによろしく言っておいて下さいますか? いつかお互いいち剣士として相まみえたい――と」
ほう。大胆不敵な発言だな。祐斗とゼノヴィアが聞いたら、果たしてどんな反応をするのやら。
アーサーがコールブランドで空を斬ると空間の裂け目が更に広がり、人が数人潜れるだけのものになる。
「さようなら、お二方」
アーサーがそれだけ言い残すと、三人は空間の裂け目に消えていった。
その後、騒ぎを嗅ぎ付けた悪魔達に俺達は保護され、魔王主催のパーティは『
☆
「失態ですね」
魔王領にある会談ルームで堕天使副総督シェムハザが、開口一番にそれを言った。
俺は久々に出会った堕天使の息子に「ほどほどにしておけよ」と心中で思いながら、アザゼルと同じくお茶を飲んでいた。
冥界指名手配中のSS級はぐれ悪魔『黒歌』がパーティで使い魔を寄越して見に来ていたなんて、誰も予想だにしなかっただろう。俺も全然気付かなかったし。
まぁそれでも、人間側の俺たち兵藤兄弟とリアスと小猫、そして最上級悪魔のタンニーンが接触して撃退。って事になってる。
取り敢えず事態は最小限に収まったのは良いんだが……パーティ会場の隙を突かれたのは悪魔側にとって痛手だ。他の勢力からみれば、悪魔の警戒心の有無を問うほどの一大事だからな。
ご覧の通り、堕天使側のシェムハザや天使側のセラフ達はお怒り中だ。加えて俺が撃退メンバーに加わった事を知ったセラフ達から物凄く心配された。
『父上、ご無事でしたか!?』
『神よ、お怪我はございませんか!?』
『神の御手を煩わせてしまい、誠に申し訳ございませんでした!』
とまあ、こんな風に一斉に詰め寄られた。しかもセラフたち全員だぞ。更には『やはり護衛を付けるべきです!』と言ってくる始末。当然、丁重にお断りさせてもらったよ。
因みに小言を始めようとするシェムハザを本当だったら総督のアザゼルが諌める筈なんだが、当の本人は何も言わないどころか口出しすらしなかった。
ふと疑問に思ったのでアザゼルにコッソリ聞いたところ――
『……ハメを外してカジノに夢中で気付かなかった。悪い
口出しをしない理由が良く分かったよ。と言うか、もし知られたら即協定違反とされて大変な事になる。
ハメを外し過ぎにも程があるだろうが、全く。……ま、もし俺も小猫の行動に気付かなかったら、アザゼルほどじゃなくてもパーティを楽しんでいただろうし。
そんな中、シェムハザがさらに報告した後、小言が本格的に始まった。更にセラフ達の小言も一緒に。
さて、俺はもう既に一通りの報告を済ませたから、この隙に退散するか。黒歌達と戦うより、
そう思った矢先、部屋の扉が開かれる。そこに姿を現す人物に誰もが度肝を抜かした。
「ふん。若造共は老体の出迎えもできんのか」
古ぼけた帽子を被った隻眼の老人は、白い髭を生やしており、床に付きそうなぐらいに長い。服装は質素なローブで杖を持っている。
まさか、あのご老人が冥界へ赴くとはねぇ。
「――オーディン」
誰かが呟いた名は、北欧の神々の主神オーディンだ。鎧を来た戦乙女のヴァルキリーを引き連れてのご来場だ。
「おーおー、久しぶりじゃねぇか、北の田舎クソジジイ」
アザゼルが足を運びながら悪態を吐くと、オーディンは髭を擦った。
「久しいの、悪ガキ堕天使。長年敵対していた者と中睦まじいようじゃが……また小賢しいことでも考えているのかの?」
「ハッ! しきたりやら何やらで古臭い縛りを重んじる田舎神族と違って、俺ら若輩者は思考が柔軟でね。煩わしい敵対意識よりも己らの発展向上だ」
「弱者共らしい負け犬の精神じゃて。所詮は親となる神と魔王を失った小童の集まり。尤も、人間に転生した神に未だ縋ろうとしておるようじゃが」
「独り立ち、とは言えないものかね、クソジジィ。ってか、その神はいざと言う時の助っ人だよ」
「悪ガキ共のお遊戯会にしか見えなくての、笑いしか出ぬわ。聖書の神も気の毒じゃのう。悪ガキ共のお守りをまだしなければならんとは」
ったくもう、この二人と来たら……! 何で会って早々に口喧嘩するのかねぇ。
その光景を見たサーゼクスとセラフォルーがオーディンに挨拶をする。どうでもいいが、セラフォルーはいつの間にか魔女っ子のコスプレをしてるし。
オーディンは魔女っ子のコスプレをしてるセラフォルーの姿が気に入ったのか、スケベ爺丸出しで主にスカートや脚を見ているし。
一先ず俺も挨拶をしようと、オーディンに近づいて声を掛ける。
「お久しぶりですね、オーディン殿」
「リューセーか。久しいの。数年ぶりじゃな。イッセーのやつは元気か?」
「ええ。相も変わらず元気いっぱいですよ」
「そうか、それは何よりじゃ。時にリューセーよ、イッセーにあの本を頼みたいんじゃが」
「エロ本が欲しいならイッセー本人に言って下さい」
俺がオーディンと親しげに話している中、周囲にいる誰もが驚いた様子で見ている。
「オーディンさま、フレイさまに言われた筈です! 卑猥なことはいけません! ヴァルハラの名が泣きます!」
「全く、相変わらずおまえは堅いのぉ。そんなだから新しい
「何だロスヴァイセ。正式な
「うぐ! こ、これには事情があるんです! 私だって、ちゃ、ちゃんとした彼氏欲しいのにぃ! リューセーさんみたいに素晴らしい男性が全然いないんですよぉ!」
俺を基準に探してるのかよ。君より強くて、仕事や家事が全て出来る男なんか簡単に見付からないぞ。決して自慢じゃないんだが。
それにロスヴァイセって器量は良くても堅いからなぁ。ま、ヴァルキリーの大半は純情で奥手だから、そう簡単に
泣き出すロスヴァイセに、俺とオーディンは嘆息する。
「おい
すると、話を聞いていたアザゼルが訝るように問う。
「何じゃリューセー、まだ話しておらんかったのか?」
「『
「リューセーさん! 最後の部分は言わなくて結構ですから!」
さっきまで泣いていたロスヴァイセが復活するように、顔を赤らめながら俺に言ってきた。
バンッ!
突然、扉が開いた音がした。何事かと思って全員が振り向いた途端――
「リューセー!」
ギュウッ!!
「おわっ!」
何かが猛スピードで俺に接近し、そのまま抱き付いて来る。いきなりの事に俺は倒れそうになるも、何とか踏ん張って耐えれた。全員が驚いている中、オーディンとロスヴァイセは嘆息している。
一体誰かと思って見ると、俺の胸板に顔を埋めていたのは亜麻色の長髪で――
「久しぶり、リューセー! 会いたかった!」
「フレイヤ!? 何でお前が此処に!?」
北欧の女神フレイヤだった。
「此奴がどうしてもお主に会いたいと言って聞かなくてのぉ。フレイだけは何とかヴァルハラに留める事が出来たのじゃが」
言うのを忘れていたのか、オーディンは申し訳なさそうな感じで俺に簡単に説明する。ってかフレイも来るつもりだったのかよ。ラディガンみたく歪んではいないが、アイツは妹のフレイヤを溺愛してるからなぁ。
まぁ、それはそれとして。問題は今の状況だ。美を司り、誰もが見惚れる端正な顔立ちをしてるフレイヤが俺に抱きついたらどうなるだろうか?
その答えは――
『えええぇぇぇぇえええ~~~~~~~!!??』
言うまでもなく周囲が驚きの絶叫をあげる事になるんだよなぁ。
はぁっ。どうやらこの場にいる三大勢力に説明しなければならないようだ。凄く面倒くさいんだけど。
~余談~
「ッ!」
「? どうした、エリガン? 修行中に余所見とは感心しないな」
「ごめんなさい。けれど何か今……悪い虫がダーリンに纏わりついてるような気がして」
「はぁ?」
「いえ、何でもないわ。それじゃヴァーリくん、続きをしましょ」
「そう言ってる割には何やら落ち着かない様子だが」
「…………」