ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
「ててて……おい兵藤! いきなりアレはねぇだろう!?」
「アホか。あんな攻撃されたら即行で迎撃するに決まってんだろ」
あと少し気になってるんだが、匙の右腕が……黒い蛇が何匹もとぐろを巻いている状態だった。以前見た時と全く違うな。前はデフォルメなトカゲの頭部がくっ付いているだけだったが、修行によって変化したかもしれない。
確か匙の
もしもさっきの奇襲でバカ正直に防御でもしてたら、匙はラインと思われる黒い蛇を俺に繋げようとしてたかもしれない。
「にしても匙、お前随分と
本気で撃ってはいないが、それでも並みの下級悪魔が受けたらダメージを受けるのは確実だ。けれど匙はダメージが無いどころかピンピンしてる。
「まあ、俺も修行したってことさ。おかげでコレも変わって、身体も結構タフになったんだ。で、天井から店内の様子を見ようとラインを天井に引っ付けて上がってみたら、遠くの物陰に隠れてる二人が見えたんだ。けどお前に気付かれた挙句、名指しまでされたから、ターザンごっこで奇襲を仕掛けたってわけだ」
結局迎撃されて奇襲は無意味になっちまったが、と匙が少し自虐的に言ってくる。
……俺に気付かれても敢えて奇襲を仕掛けたってのが何か妙だな。バレてるのが分かってても奇襲を仕掛けるって、普通に考えてやらない筈だ。玉砕覚悟でも俺とラインを繋げたかったと言う理由なら納得出来るが、何故かそれだけで収められなかった。
まぁ、頭の悪い俺がどう考えても答えが見付からないから、一先ず後回しだ。今は目の前の敵を倒す事に集中するか。
「こっちも結構修行したぜ。ま、今回は
「兵藤、本気を出せないところを悪いが、勝たせてもらうぞ。会長の夢の為に」
申し訳無さそうに言ってくる匙だが、表情が真剣だった。
これは俺も覚悟して匙と戦わないといけないかもしれないな。ああ言う奴ほど厄介な相手はいないし。
匙の熱意に応える為に気合いを入れてる最中、突然信じられないアナウンスが俺達の耳に届いた。
『リアス・グレモリーさまの「
おいギャスパー! お前何やってんだよ!?
因みに此処にいる同じ『
「どうやらギャスパーくんは引っ掛かったみたいだな」
「引っ掛かっただと?」
鸚鵡返しに言う俺に匙は説明をする。
どうやら会長達にもギャスパーが
余りにもふがいないやられかたをしたギャスパーに、俺は物凄く呆れまくった。
「シンプルな倒し方だろう? ま、これは本陣の位置から出来た偶然の発想だったけど、それでも撃破は撃破だ」
「……確かにそうだな。はぁっ……」
匙の台詞に言い返せない俺は嘆息した。ってかギャスパー、いくらニンニクが嫌いでも我慢ぐらいしろよな! 初っ端からギャグ張って撃破されんなよ! 多分だけど、兄貴もメチャクチャ呆れてると思うぞ!
よし! 後でギャー助にはニンニク克服の練習するよう兄貴に頼もう! アイツのこれからの主食をガーリックライスかガーリックトーストを作ってもらうようにな!
ギャスパーのお仕置きメニューを一通り考えた俺は、次に目の前にいる匙達に意識を向けて構え始める。
すると、俺の構えを見た匙が右腕を伸ばした。その直後に右腕に巻かれてる何匹かの黒い蛇が俺に向かってくる。
「ちぃっ!」
繋がれたら面倒な事になると思った俺は躱そうとジャンプする。
「逃がすかよ!」
「げっ!」
匙の声に反応したのか、一直線に向かっていた黒い蛇達――ラインが意思を持ってるように俺目掛けて上に向かってくる。相性の悪い匙の
ジャンプして動きが止まった俺に、向かってくるラインは噛み付く感じで俺と繋がろうとした。
「よし、取った!」
動けない俺を見た匙が捕まえたと思って笑みを浮かべ――
フッ!
「なっ、消えただと!?」
――ていたが、俺が超スピードで躱した途端に驚愕していた。
「アイツ、一体何処に……!?」
「お前の後ろ、だ!」
「がぁっ!」
戸惑ってる匙の背後を取った俺は、即座にお返しと言わんばかりに回し蹴りを決める。背中をモロに喰らった匙は蹴りの衝撃により少し吹っ飛ぶが、すぐに体勢を立て直そうと両足を地面に付けて俺を見る。
「~~~~~! お前、
「そりゃガキの頃から兄貴に徹底的に鍛えられたからな」
匙は片手で背中を擦って痛がる顔をしながら言ってくるも、俺はさらりと言い返す。
修行する前までの俺は普通の人間だったが、聖書の神である兄貴が課した修行によって、超人的な身体能力を得る事が出来た。超人的と言っても、兄貴の知り合いであるオカマのローズさんに比べられたらまだまだだけどな。
因みに、さっき俺を追撃していた複数のラインがいつのまにか匙の右腕に戻っていた。俺が急に姿を消したからかな? ま、そんな事はどうでもいいが。
「匙、お前は何か勘違いしてるようだから今の内に教えとく。確かに俺は今まで『
「いや、なんつーか……。お前、普段学校じゃバカやって女子達からは変態三人組の筆頭と蔑まれてるのに、裏では過酷な日々を送ってたんだなって」
「……お気遣いどうも」
確かに俺は学校ではバカやってるが、別に表と裏の性格なんか一切無い。どっちの生活も普段の性格のままで過ごしている。もうついでに言わせてもらうと、俺は自分から強くなりたいって兄貴に頼んだから、それが辛かったなんて思っちゃいねぇし。
「そんな事より、今は戦いに集中したらどうだ? 俺に同情したところで手は抜かないぞ」
「っ……。そうだったな」
俺の指摘を聞いた匙はすぐに顔を引き締めて構え始める。
「さっきまでのやり取りで何となく分かったよ。兵藤が
「それで?」
匙は実力差がある事が分かっても、一歩も退く姿勢を見せようとしない。寧ろ何か覚悟を決めてる感じだ。
「だけどな兵藤、それでも俺はお前を倒す。絶対にな!」
「――っ」
匙の瞳は決意に満ちていた。凄まじいまでの本気度が伺える。
すると、匙は俺に手を向けて魔力弾を放とうとしていた。
ドンッ!
放たれる魔力弾。大きさはそこまで大したことない。建物を出来るだけ破壊しないルールに従ってるんだろう。
俺が咄嗟に身体をずらして躱すと、魔力弾はその先にあった店舗に当たって破壊された。
何だあの威力は? 聞いた話じゃ、匙にはあそこまで魔力は高くはない筈だ。ウィザードタイプの部長や朱乃さんほどじゃないにしろ、それでもかなりの威力だ。あそこまで上げてる要因は一体……っ! まさかアイツ!
俺はすぐに匙の魔力が上がった要因が分かった。匙の
「おい匙! お前! お前は自分の命を……魔力に変換してやがるのかッ!?」
「そうだ。魔力の低い俺が高威力の一撃を撃ちだすにはこれしかなかった。
「お前バカか!? 今すぐ止めろ! いくらお前が悪魔でも、そんな事したら本当に死ぬぞ!」
レーティングゲームは実戦形式のゲームだが、それでも自分の命を使ってまで勝とうとするなんてバカげてる!
俺が止めろと叫ぶが、匙は真剣な眼差しで笑んでいた。
「ああ、死ぬ気だよ。死ぬ気でおまえたちを倒すつもりだ。なぁ兵藤、おまえに夢をバカにされた俺たちの悔しさがわかるか? 夢を信じる俺たちの必死さがわかるか? この戦いは冥界全土に放送されてる。俺たちをバカにしてた奴らの前でシトリー眷族の本気を見せなきゃいけない!」
「………………」
匙の発言に俺は咄嗟に言い返すことが出来なかった。
確かに俺は前の会合の時、悪魔のお偉いさん達が会長の夢を聞いた後に大笑いしながらバカにしていたのを見て凄く腹が立っていた。ぶっ飛ばしてやりたいと思ったほどに。
匙が命をかけて俺達を倒そうとする気持ちは分からなくもない。俺も俺でコカビエルが本気で駒王町を滅ぼそうとしてたのを見て、命をかけて部長達を守りたいと思ってたからな。
だが、それはあくまで駒王町が滅ぼされ、部長達が殺されそうになった場合の話だ。身の安全が保障されてるゲームの為に、自分から命をかけてまで俺を倒そうだなんてバカげてる。
俺はすぐに止めさせようと
俺と匙が戦ってる中、横では小猫ちゃんと匙の後輩が攻防を始めていた。アーシアは小猫ちゃんの傷をいつでも治療出来るようにスタンバイしてる。
格闘に秀でてる小猫ちゃんに相手の女子も上手く食い下がっていたが、すぐに変化が起きた。
仙術を使ってると思われる小猫ちゃんが匙の後輩に攻撃を当てると、あの子から感じるオーラに凄い乱れが生じていた。多分、あの状態じゃ魔力を練るのは無理だ。
アレが小猫ちゃんの本来の戦い方か。兄貴から聞いた話だと、アレは相手の肉体だけじゃなく、体内を巡る気脈にまで打撃を与える一撃は敵のオーラを根本から折る事が出来るんだったな。
「……匙先輩、ゴメンなさい」
小猫ちゃんの仙術と格闘で動けなくなった後輩は一言漏らすと、体が光り輝き、この場から消えてなくなる。かなりのダメージを負った為、リタイヤとして転送されたんだろう。
『ソーナ・シトリーさまの「
グレイフィアさんのアナウンスも聞こえてくる。これでお互いのチーム、一名欠いた事になる。
「……私は
どうやら小猫ちゃんは俺がゲーム開始前に考えた渾名を気に入ってくれたみたいだな。お兄さんは嬉しいよ。
さて、小猫ちゃんが格好良く決めてくれたから、俺もいい加減に腹を括るか。
さっきまでは匙の自殺行為を止めろと何度も叫んだんだが、アイツは聞く耳持たずで、それどころか本気で俺を倒そうとしていた。これ以上は匙の決意を踏み躙ると思った俺は、アイツの思いに応える為に本気でやろうと決めた。
「ハァハァ……ハァハァ……くそっ、一発も当たらねぇ……!」
魔力弾を撃ち続けてる匙に対して、俺はさっきから超スピードで躱していた。このまま続けてれば匙は何れぶっ倒れるだろうが、んな事はしない。もしやったら匙が本当に死んでしまうからな。けどあの様子からして、あと十発撃てるかどうかってところだろう。
「……イッセー先輩、加勢します」
小猫ちゃんが間に入ろうとするも――
「大丈夫だ、小猫ちゃん。君はアーシアの傍にいてくれ」
俺がそれを拒否したが、すぐに首を横に振った。
「ダメです。いくらイッセー先輩が強くても、これはチーム戦。ここは協力すべきです」
「小猫ちゃんの言う事は尤もだ。確かにこのままやれば確実に匙を倒せる。けどアイツはその気になれば、さっきまで戦ってた小猫ちゃんにラインを飛ばして力を吸うことも出来た筈だ。そうしなかった理由は……もう分かるだろ?」
「……それは分かっていますが」
未だ納得した様子を見せない小猫ちゃん。
「ここは敢えて俺に任せてくれ。頼むよ」
「……分かりました。ですがその代わり、人間界へ戻った時にスイーツを奢ってください」
「OK。それで手を打とう」
拳を収めた小猫ちゃんが条件を出したので、俺は快く受け入れた。けどまぁ、流石に値段が高いスイーツは勘弁して欲しいけど。
距離を取った小猫ちゃんを見た俺は次に匙の方へと視線を向ける。
「匙、少しは休めたか?」
「ハァハァ……お蔭さまでな。にしても兵藤、ありがとな。態々俺に付き合ってくれて」
「気にすんな。けどなぁ匙、俺がこうするからには、
「分かってる。俺は、俺たちの夢は本気だ。学校を建てる。差別のない学校を冥界につくる。そして俺は先生になるんだ……。お前が眷族候補とは言え、同じ『
俺に向かって言ってくる匙の眼差しは強く、一切の曇りも陰りもなかった。
「そうかよ。じゃあ見せてやる。今の俺の力をな! はぁぁぁぁぁぁっ!」
グゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
俺が
本当だったらもう少し
「かぁっ!」
ドゥンッ!
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
「……これは、凄いオーラの量です」
俺から発した衝撃の突風によって匙やアーシアが怯み、小猫ちゃんだけはふら付いてるアーシアを支えようとしてる。
「待たせて悪かったな。これが今の俺の
「……そうかよ。なら来い、兵藤! 俺はお前を倒す!」
匙は少し怯えた顔をしていたが、すぐに顔を引き締めて構える。
そして俺も匙と同じく構えた直後――
バキィッ!
「ぶっ!」
超スピードで相手の懐に入ってすぐ、匙の顔面にパンチを当てた。それを受けた匙はあっと言う間に吹っ飛んで店舗の一つに激突する。
「匙、こっから先は俺の一方的なリンチ同然になっちまうが、手は抜く事なんかしねぇよ。覚悟しやがれ!」
そう言って俺は店舗に激突した匙を追撃しようと、低空飛行のまま猛スピードで迫った。
原作では互角の戦いを見せたイッセーと匙ですが、こちらではイッセーの方が圧倒的に実力は上です。