ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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今回は観戦側の視点です。


第二十一話

「随分不機嫌そうだな、リューセー」

 

「……まぁ、ちょっとな」

 

 眉を顰めてるのを見たアザゼルが俺――兵藤隆誠にそう言ってきた。

 

「何と。現赤龍帝は神器(セイクリッド・ギア)無しでもあれほどの力を出せるとは」

 

「流石は聖書の神の弟君と言うべきか、あのままでも悪魔を圧倒するとは」

 

 観戦している重鎮達は、力を解放したイッセーが一瞬で匙の懐に入って攻撃し、更に吹っ飛ばした事に驚嘆の声をあげている。そしてイッセーは倒れてる匙に容赦のない攻撃をしようと、猛スピードで接近する。匙も匙で応戦しようとすぐに立ち上がって魔力弾を撃ったが、イッセーが即座に片手で弾いたのを見て驚愕していた。それが隙となってしまい、イッセーが再び匙の懐に入り、今度はパンチとキックによる連続攻撃が始まった。もう匙は完全に防戦一方となってきている。

 

 匙には申し訳ないが、正直言ってイッセーの相手にはならない。匙が数ヶ月前に転生悪魔となって夏休み中に本格的な修行をして強くなったとは言っても、聖書の神(わたし)から見れば付け焼刃も同然だ。対してイッセーは十年以上も前から聖書の神(わたし)が徹底的に鍛え上げ、多くの実戦経験も積ませている。分かり易いように言えば、レベル1の匙元士郎(ビギナー)がレベル100の兵藤一誠(エキスパート)に挑んでいるみたいなもんだ。極端な例えだが、それだけ匙とイッセーには力の差がある。

 

 とは言え、今のところイッセーが圧倒してても、確実に勝利出来ると言う訳ではない。命を捨ててまで相手に勝とうとする奴ほど、恐ろしいものはいない。今の匙が正にそれだ。イッセーもそれを分かっているように一切油断せず、容赦のない攻撃を匙に浴びせ続けている。

 

 その戦いとは別に、立体駐車場で戦っている祐斗とゼノヴィアは優勢なイッセー達と違って不利な状況となっている。

 

 修行の成果によって、アスカロンにデュランダルのオーラを纏わせたゼノヴィアがシトリー眷族の『騎士(ナイト)』――(めぐり)と『戦車(ルーク)』――由良(ゆら)相手に最初は善戦していた。因みにゼノヴィアがイッセーが所有してるアスカロンを持ってるのは、アザゼルが提案した修行によって貸している。それは無論イッセーも了承済みだ。

 

 由良が攻撃を仕掛けようとしたゼノヴィアに割って入り、「反転(リバース)!」と言った瞬間に戦況が変わった。アスカロンに纏わせていた聖なるオーラが魔のオーラに変化し、由良はアスカロンをそのまま白刃取りをして弾き飛ばした。予想外のカウンターを喰らった事にゼノヴィアは少し戸惑ってる中、祐斗は戦う相手をチェンジさせようとした。因みに祐斗が戦っていたのはシトリー眷族の『女王(クイーン)』――真羅だ。

 

 しかし、それは完全に失策だった。ゼノヴィアが真羅に止めを刺そうと、再度聖なるオーラを纏わせたアスカロンの斬戟を振り下ろした瞬間、真羅が神器(セイクリッド・ギア)を展開させた。真羅の神器(セイクリッド・ギア)――『追憶の鏡(ミラーアリス)』は斬戟によって粉砕されると、割れた鏡から波動が生まれてゼノヴィアに襲い掛かった。それによってゼノヴィアは鮮血を辺り一面に噴出させていた。祐斗とゼノヴィアが圧倒的不利な状況だと誰もが思っていたが、二人の連携技――『デュランダル・バース』によって由良と巡を撃破する事で難を逃れた。真羅は即座に撤退して撃破出来なかったが。

 

 まさかシトリー眷族の中にカウンター使いが複数いたとはな。別にカウンター使いが一人だけとは限らないが。けれど真羅はともかくとして、由良が使っていた「反転(リバース)」が少し気になった。確かアレは堕天使勢が研究していた物のようだが、聖書の神(わたし)から見れば諸刃の剣だった。後でアザゼルに問題がある事を言っておこう。

 

「っ……!」

 

 そんな中、画面でイッセーが強烈なボディーブローをして、匙が口から血を吐いてるのを見たセラフォルーが必死に耐えるように見ている。今の自分はソーナの姉じゃなく四大魔王だと言うのを自覚しているのか、セラフォルーは俺に抗議する素振りすら一切しなかった。

 

「観戦中に悪いがセラフォルー、ちょっと良いか?」

 

「……何かしら?」

 

 俺が声を掛けると、彼女は何でもなさそうに笑みを浮かべた顔で俺を見る。感情を抑えるために少し間があったのは、敢えて気にしないでおこう。

 

「匙の発言を聞いて、ソーナやその眷属達は夢を叶える為に命がけでレーティングゲームに挑んでいるのは分かった。けど、俺にはとてもそんな風には見えないな」

 

「リューセーくん、それって私に喧嘩を売ってるのかな?」

 

 俺の発言にセラフォルーは笑みを浮かべながらも全身から魔力が少し漏れ始めた。ソーナ達を侮辱してると思ったんだろう。

 

 セラフォルーの様子にアザゼルだけじゃなく、他の重鎮達も少し引き気味となっている。

 

「何か勘違いしてると思うから言っておくが、俺はソーナ達を侮辱してるんじゃない。やり方に些か問題があるって意味で言ったんだ」

 

「え? どう言うこと?」

 

 さっきまで出ていた魔力が急に霧散させたセラフォルーが俺に再度問う。

 

「シトリー眷族達は命がけで戦ってると言うより、命を捨てる覚悟で戦ってるようにしか見えない。特に匙が正しくソレだ。アイツは神器(セイクリッド・ギア)で自分の命を魔力に変換してまで、死ぬ事を前提としてイッセーに勝とうとしている。いくらソーナの夢の為だからと言って、自分を犠牲にする戦い方はどうかと思うぞ。正直に言わせて貰うが、匙のやってる事は自殺行為も同然だ」

 

「それは……」

 

 セラフォルーも何か思うところがあったのか、俺の発言に反論しなかった。分かってはいても言い返せないってところか。

 

「俺としてはソーナの夢を応援してるし、口を出す気もない。だが、これだけは言わせてもらう。ゲームで命を捨てるぐらいなら――」

 

「もうそこまでにしとけ、聖書の神」

 

 俺が言ってる最中にアザゼルが割って入るように言ってきた。

 

「こんな所で説教なんかおっ始めようとすんなよ。他勢力の重鎮達がいるんだぞ」

 

「………そうだったな。すまなかった、セラフォルー」

 

 どうやら聖書の神(わたし)とした事が少し熱くなっていたようだ。周囲の重鎮達の中には少し迷惑そうな感じがしてる。

 

 セラフォルーに謝罪した俺は、自粛しようと何も言わず観戦しようとする。俺の行動を見た重鎮達は気を取り直すように、再び観戦しようと画面の方へ視線を移し始めた。

 

「ったく、何やってんだよ。らしくない行動だぞ」

 

「本当にすまん。なにぶん人間に転生した所為か、匙の行動を見て少しばかり感情的になってしまってな」

 

「……まぁ確かに、聖書の神(おやじ)の言いたい事は分からなくもないが」

 

 アザゼルも匙の行動に問題があるのは分かってはいるみたいだ。実力差があるイッセー相手に、本気で命を捨てる覚悟で挑もうとする匙の行動に。

 

「それとアザゼル、由良が使っていた『反転(リバース)』についてだが――」

 

「分かってる。今後のゲームでは使用禁止にするべきだと進言する予定だ。俺としても、未だ研究段階のもので若い芽を潰したくはないからな」

 

 周囲に会話を聞かれないよう小声で話す俺とアザゼル。どうやらアザゼルもアレの危険性を知っていたようだ。

 

「そもそも、何でアレをシトリー眷族達が使ってるんだ?」

 

「恐らくだが、アルマロスかサハリエル辺りがゲームでデータを取るのを条件に提供したんじゃないかと思う。何が起きてもおかしくはないんだが……それを承知でソーナ・シトリーと眷属達は使用してると見ていいだろう」

 

「絶対に勝つ為に危険は覚悟してる、ってところか。あんな未熟な若い内から、リスクを背負った戦いなんてして欲しくはないんだがな」

 

「イッセーに『龍帝拳』なんて危険なブースト技を使わせてる聖書の神(おやじ)が言える台詞じゃねぇよ」

 

「……ま、否定はしないよ」

 

 確かにそうだが、それは師である聖書の神(わたし)がイッセーの実力や今後の成長を考慮のうえ使用許可している。もしイッセーが大怪我や後遺症によって身体がボロボロになっても、聖書の神(わたし)が責任持って治療すると決めてるからな。

 

 と、聖書の神(わたし)が口にした瞬間、さり気なく此方に聞き耳を立てているセラフ達が黙っちゃいないだろうな。『神よ。いくら彼が神の弟君とは言え、たった一人の人間にそこまで寵愛を与え続けるのは如何なものかと』って抗議してくるだろう。

 

 そう言えば、サイラオーグは今頃どうしてるかねぇ。前のライザー戦みたく、戦いたい衝動には駆られてはいないだろうが……それでも何か仕出かさないかと少し不安だ。

 

 もうついでに、この試合をどこかで隠れて観戦してるであろう某白龍さんは、神器(セイクリッド・ギア)を使えない状態で戦ってるイッセーを見てどう思ってるのやら。

 

 

 

 

 

 

「流石は今代の赤龍帝だ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が無くとも、あれほどの実力を見せてくれるとは……!」

 

「サイラオーグさま」

 

 隆誠達とは別の部屋でリアス・グレモリーVSソーナ・シトリーのレーティングゲームを観戦してるサイラオーグ・バアルとその眷属達。観戦しながら再びイッセーと戦いたい衝動に駆られているサイラオーグに、彼の『女王(クイーン)』――クイーシャ・アバドンが無礼だと思いながらも諌めようとする。

 

「分かっている、クイーシャ。もう以前のような事はしない」

 

「なら良いのですが……」

 

 自重してると言うサイラオーグだが、未だに安心出来ない感じで返すクイーシャ。以前のライザー戦で落ち着かせるのに物凄く大変だったので、彼女が信用しないのは無理もない。

 

 二人とは別に、クイーシャ以外の眷族は一誠の実力を見て驚くばかりであった。最初は神器(セイクリッド・ギア)が使用禁止である事を知って、一誠の本気を見る事が出来ないとつまらなそうに見ていたが、余りにも予想外な展開に内心恥じていた。自分の主――サイラオーグが注目している今代の赤龍帝を甘く見過ぎていたと。

 

「兵藤一誠には驚かされているが、奴と戦っているシトリーの『兵士(ポーン)』も中々やるな。実力差があると分かっていながらも、必死に立ち上がって挑み続けるとは大した奴だ」

 

 一誠が繰り出す強烈な攻撃を受けて倒れる匙だが、すぐに立ち上がって再び挑もうと雄叫びをあげながら突撃する。匙の攻撃に一誠は一切の油断を見せる事無く、超スピードで回避しては反撃と言う行動を繰り返している。更には匙が魔力弾を撃とうとする直前、一誠はまるで使わせないよう素早く闘気(オーラ)弾を連続で撃って命中させる。

 

「状況から見て兵藤一誠の圧勝だが……それでも油断は出来んな。兵藤一誠もそれを理解してる」

 

「それはつまり、彼が赤龍帝に勝てる方法があるのですか?」

 

「さあな、俺には分からん。だが少なくとも、あの『兵士(ポーン)』が必死に自分の神器(セイクリッド・ギア)を兵藤一誠に繋げようとしてると言う事は、何か理由がある筈だ。兵藤一誠もそれに気付いてるからこそ、奴の攻撃を防御せず回避に専念している」

 

「赤龍帝がそこまで警戒しているのなら、一気に決着を付けた方が良いのでは? 以前のゲームで使っていた、ドラゴン波とやらで」

 

「確かにそうだが、アレはかなりの威力がある技だ。今回のルールで『バトルフィールドは破壊し尽くさないこと』となっている。いくら兵藤一誠が本気では無いとは言え、もしあの技を使ってしまえばルール違反となって即リタイヤとなる」

 

「……仰るとおりですね」

 

 自分の見方が甘かったと謝罪するクイーシャに、気にするなと言い返すサイラオーグ。そんな中、一人の眷族がサイラオーグに話しかけようとする。

 

「少し宜しいですか、サイラオーグさま」

 

「ん? どうした、レグルス」

 

 珍しく声をかけてきたのが自身の『兵士(ポーン)』――レグルスに、サイラオーグは少し意外そうな顔をしながら彼を見る。

 

「サイラオーグさまが赤龍帝を注目していらっしゃいるのは充分に分かっております。ですが敢えて問わせて下さい。今の彼は私を使えるほどの強者ですか(・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「………さぁな。奴と直に戦ってみなければ分からん」

 

 レグルスからの問いにサイラオーグは明確な返答をしないまま、モニターに視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 またもや場所が変わり、ここはとある一室。モニターで観戦してるのは――

 

「お~。予想してたけど、赤龍帝は神器(セイクリッド・ギア)無しでも強いねぃ」

 

「当然だ。俺の宿敵(ライバル)が、あんなザコに遅れを取るわけがない」

 

「私としては、聖魔剣使いと聖剣使いの戦いが実に興味深いですね」

 

 現在『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属しているヴァーリ達だった。因みに黒歌は三人に「私は興味無いからゆっくりしてるにゃん」と言ってこの場にいないが、実際は別室で密かにゲームを見ていた。特に小猫の戦いを。

 

「そういやよぉ、ヴァーリと修行していたエリーの姉ちゃんはどうしたんだ?」

 

「さぁな。急に用事が出来たといって、どこかへ行った。あの次期当主の名(・・・・・・・・)を口にしてたから、恐らく奴に急な呼び出しをされたんだろう」

 

「今更ですがヴァーリ、エリガン・アルスランドをこのまま貴方の修行相手にさせて大丈夫なのですか? 旧魔王派に属してる彼女が、我々を監視する為に送り込んだ間諜である可能性は充分に高いと思いますが」

 

「絶対に無いとは言い切れん。だが、あの女は俺と同様に強くなろうとしてる事に嘘を吐いていない。それに俺と奴はあくまで強くなる為、互いに利用しあってるだけに過ぎないからな」

 

「そうは言うけどよぉ。あの姉ちゃんってば黒歌に時折ちょっかい掛けてるぜぃ。その所為でストレスが溜まってる黒歌が、俺っちに不満ぶつけてくるから堪ったもんじゃないぜぃ。何とかしてくれよぉ」

 

「俺の知った事じゃないな。美猴がどうにかしろ」

 

 美猴のお願いをバッサリと切り捨てるヴァーリは、引き続き観戦に集中し始めるのであった。




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