ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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第二十三話

 匙との勝負も終わり、喉が渇いてる俺は近くの自販機の扉を打ち破って、中のペットボトルを煽った。アーシアと小猫ちゃんも水分補給している。

 

 しっかしまぁ、匙は中々に手強かったな。やり方を間違っていたとは言え、誰かの為に命を捨てて戦う相手ほど厄介な相手はいない。思っていた以上に闘気(オーラ)を消費しちまった。ドラゴンカリバーが予想以上に俺の闘気(オーラ)を食ったからな。と言っても、もう戦えないほどじゃないが。

 

 さっきのアナウンスで、俺達の『騎士(ナイト)』一名撃破されたみたいだ。やられたのは……オーラが感じられないゼノヴィアか。念の為に祐斗達がいる場所を探知してみると、そこには祐斗だけのオーラしか感じられない。本命が一名やられたのは痛手どころじゃねぇな。

 

 対して相手側も『騎士(ナイト)』と『戦車(ルーク)』が一名ずつ撃破されている。

 

 こちらは残り六で、あちらが四。数はコッチが上でも油断なんか出来ない。まだ闘気(オーラ)が残ってる俺がどこまで戦えるかが不安だ。このゲームで赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)のありがたみが良く分かった。

 

 そう思ってると、通信機器に連絡が入る。

 

『オフェンスの皆、聞こえる? 私たちも相手本陣に向けて進軍するわ』

 

 部長からの通信だ。部長もついに動くって事は、ここらで勝負を付けるつもりだな。俺としてもそれは賛成だ。

 

「二人とも、行こうか」

 

 アーシアと小猫ちゃんも頷き、俺達は最後の決戦に赴いた。

 

 

 

 

 ショッピングモールの中心に中央広場のような所がある。ここは買い物に疲れた客が休憩代わりによく使われる場所だ。

 

 けれどそこには、予想外の客――ソーナ会長が眼前にいた。ま、会長のオーラは既に察知してた、もういるのは分かってたけど。 

 

「ごきげんよう、兵藤一誠くん、塔城小猫さん、アーシア・アルジェントさん。流石は赤龍帝と言うべきですね。神器(セイクリッド・ギア)が無くても、あれほどまでの波動を感じさせたのは完全に私の計算ミスでした。更には隆誠くんから武器を授かっていた事にも」

 

 冷淡な口調で言ってくる会長。

 

 会長は結界に囲われていた。結界を発生させてるのは、彼女の近くにいる生徒会メンバーの『僧侶(ビショップ)』二人だ。俺が強襲されないよう防御でもしてるってところか? 

 

 にしても、あの会長からは何か妙な違和感を感じる。結界に囲われている所為か、会長のオーラが曖昧で中々感じ取れないな。

 

 少しすると、眼鏡の副会長さん、真羅先輩が姿を現す。この人も中々の美少女さんなんだよな。部長ほどじゃないけど、グラマーな体つきだ。

 

 それを追うように祐斗も俺達が来た方向とは逆から現れた。思った通り、ゼノヴィアがやられていたな。

 

「……ソーナ、大胆ね。まさか貴女が中央に来るなんて」

 

 部長の声がした。振り返ると、朱乃さんを連れている部長も到着していた。

 

「そういうあなたも『(キング)』自ら移動しているではありませんか、リアス」

 

「そうね。でもどちらにしてももう終盤でしょう? それにしても、お互いに考えていた予想とは随分違う形になったようね」

 

「ええ。完全にやられました」

 

 そう言いながら部長や会長が俺を見てくる。確かに部長の予定では祐斗とゼノヴィアで会長を倒す目的だった。俺はその為の囮だったんだが……派手にやらかした上に、兄貴から貰った武器を披露したからな。

 

 多分部長の事だからこう思ってるだろう。『どうして私に前以て教えてくれなかったの?』って。

 

 本当だったらゲーム開始前に部長に教えるつもりだったんだけど、兄貴から黙っておけって言われたんだよな。『敵を欺く為に先ずは味方からって言う兵法があるだろ?』って。

 

「もっとも、それは聖書の神――リューセーくんに言えることですが」

 

「そうね。今回のゲームでイッセーは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使ってはいけないルールになっているけれど、『それ以外のモノを使ってはいけない』なんて一切言われてないわ。まぁ、このゲームが終わった後、リューセーにはジッッックリと話を訊かせてもらうけど」

 

 うわぁ……。部長は完全に兄貴とOHANASHIするみたいだ。取り敢えず兄貴にはご愁傷様と言っておこう。

 

「会長、俺から訊きたい事があるんですけど、ちょっといいっすか?」

 

「……何でしょう」

 

 一先ず訊きたい事がある俺は、少し声を低めで問うと会長はコッチを見る。

 

「匙の奴が神器(セイクリッド・ギア)で自分の命を魔力に変換してましたけど、アレは会長の指示ですか? もしそうだと言ったら俺は……怒りでアンタの綺麗な顔をマジでぶん殴りたくなる……!」

 

 途中から段々言葉遣いが悪くなってる俺は、身体からも怒りの闘気(オーラ)を醸し出している。俺の闘気(オーラ)を感じた部長達は驚くように見てるけど敢えて気にしない。

 

「兵藤くん、いくら今は敵でも会長に向かってその発言は――」

 

「良いのです、椿姫。彼の怒りは至極当然なのですから」

 

 そんな後輩の俺の言動に真羅先輩が咎めようとするも、会長が彼女を制止する。

 

「この状況で言ってもあなたは簡単に信じて頂けないでしょうが、サジがそのような手段を取ったのは私にとって予想外でした。ですが、こうも考えられます。サジはそれだけあなたを倒したかったのだと」

 

「じゃあ何か? 『アレは匙が勝手にやった事だから自分は全く関係ない』とでも言いたいのか?」

 

「そう受け取って貰って構いません」

 

 

 ピシッ!

 

 

 淡々と答える会長に俺は怒りの闘気(オーラ)が沸々と湧き上がり始めてきた。その所為で俺が立ってる地面の周辺に罅が入る。

 

 匙が命を張ってまで俺に戦いを挑んだってのに、それをこの人は……!

 

「ソーナ、いくらなんでもそれは余りにも……!」

 

 部長も聞き捨てならなかったのか、自分の親友である会長に口を出す。けれど当の本人は無視するように素知らぬ顔をしていた。

 

「たかがお偉方に夢を笑われたからって、こんなゲームなんで匙にあんな事させるなんてどうかしているぞ」

 

 俺が少し皮肉を込めて言い返すも、会長はポーカーフェイスのまま反論してくる。

 

「人間の兵藤くんに分からないでしょうが、悪魔の世界はかなり険しいのです。益してや私の夢は生半可に叶う事が出来ない上に、とても難しいものです。ひとつひとつ壁を崩していかなければ、解決の道が切り開けませんので」

 

「だからその為に、今後のゲームで他の仲間にも匙みたいな事をさせるつもりなのか?」

 

「絶対にしない、とは言い切れません。兵藤くんのように真っ向勝負で勝てない相手でしたら」

 

「……そうか。それがアンタの答えか」

 

 問いに答えた会長の返答に――

 

 

 ドンッ!! ゴゴゴゴゴゴッ!

 

 

『きゃあっ!』

 

 俺の怒りを象徴するように闘気(オーラ)が俺の全身から吹き溢れた。近くにいた部長達が悲鳴をあげている。

 

 シトリー眷族達が驚いている中、会長だけは未だに涼しい顔をしていた。

 

「ふざけんじゃねぇ! 夢を叶える為に自分の眷族を使い捨ての道具にしていい理由になんかねぇだろうが!」

 

「何故あなたがそこまで怒るのですか? これは私だけでなく、他の眷属達も了承してやっていると言うのに。無論サジも了承済みです」

 

「勝てないからって命を捨てようとするアンタのやり方が気に入らねぇんだよ! ダチの匙がまたあんなバカな真似をするのを考えるだけでな!」

 

 もう俺の怒りは頂点に達しそうだ。身の安全が保障されてるレーティングゲームで、自ら命を捨てようとする会長達の行動に。

 

「……リューセーくんから聞いてはいましたが、あなたは本当に優しいんですね。サジや私たちの為にそこまで怒るなんて」

 

 俺の言動に会長が何か深く感じるような顔をしているが、今はそんな事を気にしてる余裕が無かった。

 

「どういうこと? あんなのソーナらしくないわ。さっきからイッセーを刺激するような発言ばかりして……っ! まさか!」

 

 近くにいた部長がブツブツと呟いていたが無視だ。

 

「ですが、敢えて言わせて頂きます。私達は夢を叶える為ならば、この命を差し出す事を躊躇いはしません」

 

「そうかよ! だったら二度とそんなバカな真似をさせないよう、俺がここでアンタたち全員ぶちのめしてやる!!」

 

「ダメよイッセー! 一旦落ち着きなさい!」

 

 怒りが頂点に達した俺は全力(フルパワー)になろうとする中、部長が待ったをかけようとする。けれど俺は気にせず、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を出して龍帝拳を使おうと――

 

『リアス・グレモリーさまの「兵士(ポーン)」兵藤一誠さま、ルールにより「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」を解放しましたので反則と見なします』

 

 ――あっ、やべぇ! 使用禁止にされていた赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を思わず出しちまった!

 

 グレイフィアさんからのアナウンスによって、さっきまでの怒り状態が一気に冷めて後悔する。まさかこんな事になっちまうなんて!

 

「漸く出してくれましたね。伸るか反るかの大博打でしたが、上手くいって何よりです」

 

 すると、さっきまでポーカーフェイスだった会長が非常に安堵したような顔をしていた。まさか、会長の狙いは……!

 

「ソーナ、あなた、イッセーに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出させる為に態と煽ったわね……!」

 

「ええ。今の我々では、どうやっても兵藤くんに勝てる要素は一つもありませんでした。ですが、それはあくまで真っ向勝負をする場合です。それ以外の倒し方をさがせばいくらでもあります。兵藤くんには物理的でなく、ゲームのルールで倒せばいいのですから。今回のルールで使用禁止にされた『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を使わせれば良いのだと」

 

 うわぁ……返す言葉が見当たらねぇ。確かに考えて見れば、あの会長が俺にあんな挑発するのには何か理由があると見るべきだった。けれど俺は怒りによって、何の考えもなく赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出しちまったからなぁ。それ故に俺のリタイヤが確定だ。もう完全にやられた。

 

 くそぅ。せめてリタイヤされる前に何かやっておかないと不味い。このままだと兄貴にどやされちまう。

 

 そういえば会長と話してる最中に何となく分かったけど、あそこにいる会長は本物じゃない。多分アレは立体映像か何かだ。いくら結界に覆われても、対象の身体から発してるオーラを全く感じないなんてあり得ない。俺の探知能力はどんなに微弱なオーラでも感じ取る事が出来るからな。

 

「兵藤くん、確かにあなたは強い。けれどそれとは別に、余りにも真っ直ぐ過ぎます。感情を押し殺す事も戦術の一つです」

 

「……ご指摘どうも。じゃあリタイヤ前に俺から最後の悪足掻きをさせてもらいます。部長、あそこにいる会長は偽者です。このフィールドの上――屋上に本物の会長がいると思います。微弱ですけど、屋上から会長のオーラを感じますので」

 

 俺の悪足掻きを伝えると――

 

『ルール違反によって、リアス・グレモリーさま「兵士(ポーン)」一名、リタイヤ』

 

「イッセーさん!」

 

 グレイフィアさんからのアナウンスで姿が消え始めると、アーシアが駆け寄ってくるが間に合わなかった。




ソーナの策略により、イッセーはリタイヤとなってしまいました。
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