ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
最終戦は空の魔物対決。安倍の提案により、ここからは場所を変え、人気のない山奥となった。俺が転移術で全員纏めて移動させてな。俺が転移術を使った事に安倍は勿論、安倍の父親は物凄く驚いていたが敢えて気にしない事にした。
んで、今いる山奥はゴツゴツとした岩が多いけど、人目を気にせずに思う存分魔物を飛ばせる事が出来る。
その岩がある所で、イッセーと安倍の父親は対峙している。地上戦だとやり辛い場所だが、今回は空を一望出来るほどに広く見渡す事が出来る空中戦なので、何の障害にもなりはしない。
「お互いに魔物の上に乗り、空中決戦を行う。良いな?」
安倍の父親がルールを告げる。よく見ると、彼は巨大な怪鳥を用意していた。
「ギャオオオオオンッ!」
恐ろしげな方向をあげてイッセー達を威嚇している。随分と鋭い大きな嘴だな。もしアレでつつかれでもしたら、どてっ腹に大穴が開くかもな。尤も、ああ言う類の怪鳥はイッセーと旅をしてる際に遭遇後に倒したこともあるので、今更驚きもしない。以前に腹が減った時、アレと似たような巨大怪鳥を倒した後に解体して鳥料理を作った。鳥の唐揚げとか焼き鳥とか色々作ってみたけど、全部美味かったなぁ。
まぁそれは如何でもいいとして、今回の勝負で勝てるかどうか問題だな。イッセーだけなら苦戦する事無く勝てるんだが、今回はパートナーがメインで戦うからな。空の魔物担当である高橋が。ソイツはイッセーをおんぶして背に乗せている。と言うか、さっさと飛んだらどうなんだ?
「ふふふ、少年。いい塩梅だな。この風、この肌触りこそ
「ああ、そうですか……。ってか俺、もう帰りたくなって来たんですけどね……」
「いまの私は言うなれば風見鶏といったところだな!」
「ちょっと兄貴~、俺はこの鳥をどう扱えば良いんでしょうか~?」
意味の分からない発言をしてる高橋に、イッセーは審判の俺に助言を求めてくる。
「………今の俺は審判なので、選手に肩入れは出来ませんので悪しからず」
――お前の背後に控えさせてる分身の俺がいつでもスタンバイしてるから、ソイツがどうしようもなくなった時はすぐに呼べ。
口では公正な審判として言うも、目ではいつでもヘルプ出来ると伝えておいた。イッセーは嘆息しながら残念がるも、目では『了解』との返事をした。
そんな中、安倍の父親は怪鳥と共に空を舞っている。しかも馬に乗ったままな。馬ごと怪鳥に乗るって……そこは普通に馬から下りろよ。どこぞの拳王みたいに、完全に自分が認めた相手じゃなければ馬から下りようとしないのか?
安倍の父親の行動に呆れつつも、審判の俺は両者の中央に立って宣言する。
「それでは最終戦。はじめ!」
俺の宣言直後に、怪鳥がバッと空を高速で飛び回る。デカいのに随分と早いな。普通の人間があの速さで激突してきたら、良くて大怪我、悪くて即死だな。
「おい高橋さん、早く空に行こ――」
「うおおおおおおおっ!」
「…………は?」
イッセーが指示してる最中、高橋は猛スピードで地上を走り始めた。
………あの鳥人は一体何やってるんだ? もしかして飛ぶ事が出来ないのか?
念の為にイッセー達の背後に潜んでる分身の俺と聴覚をリンクして、向こうの会話を聞いてみるか。
「ちょ、ちょっと高橋さん!? なんで全力疾走なんですか!? アンタ鳥人でしょう!? 飛ばないと空の対決なんて出来ませんよ!?」
「ふっ。私は鳥人だが、名古屋コーチンの鳥人なのでね。基本的に飛べん!」
……おいおい、マジで飛べないのかよ。ってか名古屋コーチンってなんだよ。確かお前は神戸の出身だろ。
「嘘だろ!? つーか、名古屋コーチンって! アンタ、神戸の出身じゃなかったか!?」
「神戸も広いからな!」
兵庫県を無視したな。もうやだ、あの似非鳥人。アレはもう本物のバカになってるよ。イースター島にいる先祖が知ったら、さぞかし嘆くだろうな。
「自由にもほどがあるだろうが! ていうか、スカイって名前のくせに飛べねぇって詐欺だろうが!」
「
「誰がんなこと言った、このアホ鳥野郎ォォォォッ!」
「隙アリだ!」
イッセーと高橋が口論している中、安倍の父親が駆る怪鳥が二人目掛けて突っ込んできた。
「おっと!」
だが高橋は軽やかに避けた。どうやら飛べなくても、回避能力はそれなりにあるようだ。
「やりおるわ! だが、まだまだだ!」
安倍の父親が怪鳥に何か指示したみたいだ。
その瞬間、怪鳥が大きく口を開くと――
ゴオオオオオオッ!
そこから特大の火炎球を吐き出した。
ドォォォオオンッ! ドオオオオンッ!
イッセーたち目掛けて火炎球が落下していく。
タンニーンが放つ火炎球と比べて全然大した事ないな。以前戦ったコカビエルのペット――ケルベロス並みだろう。なのでイッセーがアレを喰らってもダメージを大して受けはしない。
「あれを喰らったら私は文字通り焼き鳥になってしまうな、ハハハ!」
「だろうな。俺は
「出来ればそのオーラとやらで私も守って欲しいな!」
「じゃあ焼き鳥になりたくなけりゃ、今すぐ全速力で逃げろ!」
我が身が大事だったのか、高橋はイッセーの指示に従い、襲い掛かる火炎球を懸命に避けながら逃げ回っていた。
何気に高橋を上手く誘導させてるな。尤も、アレが飛べない時点で全く役に立たないが。
イッセーが
見失った安倍の父親と怪鳥は二人を探して空を飛び回っている。
あの二人が発見されるのは時間の問題だな。あそこなら今の内に分身の俺を呼んでくれるとありがたいんだけど。
「こういう時は冷静にならないとな。我が家の家訓では、三歩進んで二歩下がると頭がクリアに……っと、私は一体何をしているんだろうか? ここはどこだ? 君は誰だ? 親戚の吉田さんに似ているが……」
「……兄貴、悪いけどヘルプ。この鳥頭野郎、もう使えねぇわ」
さて、やっと分身の俺の出番だな。
☆
ダメだこりゃ。この鳥頭野郎、記憶がクリアした所為で俺――兵藤一誠の事を忘れちまってる。
これはもう分身の兄貴に頼むしかねぇよ。
「やれやれ、このバカ鳥人は予想以上に役立たずだったな。逃走以外は」
俺のヘルプを聞いたと思われる兄貴が突然目の前に現れた。言うまでもなく分身拳を使ったもう一人の兄貴だ。
ってか、どこから現れたんだ? 俺の背後に控えさせてるって言ってたけど、そんな気配は全く感じなかったぞ。
「不可視の術と同時に気配も消していたんだよ。お前が気付かないのは当然だ」
またしても心を読まれたし。弟の考えはお見通しってか?
とまあ、今はそんな事はどうでもいい。さっさと作戦を立てねぇと、あの怪鳥が俺達を見つけちまうからな。
「どうすりゃいい? このまま俺一人で怪鳥を倒せって言うならやるけど」
あの怪鳥は恐ろしいほど強そうに見えるが、以前戦った元龍王タンニーンのおっさんと比べたら大した事はないし。それでもある程度本気でやらねぇといけねぇが。
「確かに手っ取り早い手段だが、今回は魔物対決だから無理だ。このバカ鳥人と一緒に倒さなきゃ意味が無い」
「つっても、この鳥頭野郎がでっかい怪鳥を倒す手段何か持ってねぇぞ。全然攻撃しないで逃げる一方だし」
きょろきょろと辺りを見回している鳥頭野郎は、今の不利な状況を全く理解してねぇし。更には分身拳使ってる兄貴がここにいるのにも拘わらず、全く理解してねぇ様子だ。多分兄貴が審判役をやっている事すら忘れていると思う。正直言って、この鳥頭野郎には何の期待も出来ねぇ。
「攻撃手段が無いんだったら、それ以外の手段で有効活用させるしかない。ってな訳で、コレの出番だ」
兄貴がどこからか取り出した物は……手の平サイズに収まる水晶玉だった。コレ、何かどっかで見た事あるな。
「この水晶玉って……もしかして、前にアーシアが使った
「正解。コレをアイツに持たせろ」
持たせろって……ああ、そう言う事。兄貴の考えてる事が読めた。
「高橋さん!」
意図が分かった俺は受け取った水晶玉を持って、高橋さんに近づいて呼びかける。
「なんだい、吉田さん」
吉田さんって誰だよ。まぁこの際だから、一々突っ込まないようにしよう。兄貴は呆れ顔になってるけど。
「この水晶玉を持ったまま、岩陰から出てあの怪鳥に向かって手を振って呼んでみて下さい」
「よく分からないが、吉田さんの頼みとあれば断る理由もない。おーい!」
怪鳥に追われている事を忘れているようで、躊躇なく飛び出していったよ。悪いな、高橋さん。アンタを利用させてもらうぜ!
その直後にすぐ発見される高橋さん。怪鳥が高橋さん目掛けて急降下していく。
「兄貴、怪鳥が来たぞ。ところで、あの水晶玉って誰かが持って太陽光って叫ばないとしないって言ってたけど」
「今回は俺の方で発動させとく。ってな訳で隠れるついでに、耳も塞いどけ」
「え? 耳?」
何故と訊こうとするも兄貴が指を鳴らす仕草をしたので、俺は一先ず言われた通りに光を見ないように隠れるついで、耳を両手で軽く塞いだ。
そして兄貴がパチンと指を鳴らした直後――
カッッッッ!!!! キィ~~~~~~~~~!!!!
「あああああ~~~~……! と、鳥肌が~~……!」
隠れた岩の周囲から溢れんばかりの太陽光が発しただけでなく、物凄くデカい嫌な音が聞こえた。こ、これは黒板とかガラスに爪を立てる嫌な音じゃねぇか……!
耳を防いでいたつもりだったが、手で軽く覆っていただけだったので、指の隙間を縫うように音が聞こえてしまった。それを聞いた所為で俺の全身が急速に鳥肌が立っちまってるよ!
因みに兄貴は指で耳穴を塞いで絶対に聞こえないようにしてるから、俺と違って悶えた様子を見せていない。ってか、あんな音が出るなら最初に言ってくれよ!
「ぐあぁぁぁぁああああ~~~! 目が~~! 鳥肌が~~!」
「グギャァァァァァァァァァァァ~~~~~~!!!」
太陽光と嫌な音をモロに喰らった安倍先輩のお父さんと怪鳥は苦しそうな声を上げたのを聞こえた俺が見てみると、悶えた様子を見せながら落下していた。あと下には………高橋さんも同様に悶えていた!
あ、そういや高橋さんには教えてなかったな。光と嫌な音のダブルパンチを喰らうのは当然だ。
その直後、地面に激突する安倍先輩のお父さんと怪鳥――
ドォォオオオオオンッ!
更には為す術なく落下に巻き込まれる高橋さんだった。
「コケェェェェェェッッ!」
名古屋コーチンの悲鳴が山に
「おい兄貴、先輩のお父さんと怪鳥は倒せたけど、高橋さんも巻き添えくらったぞ。これ引き分けじゃねぇの?」
「そこは大丈夫。向こうにいる審判役の俺が安倍の父親と怪鳥がダウンしてると確認した後、イッセーの勝ちって事にしとくから。お前自身が無事なら、そこは何ら問題ない」
あ、そういう流れにするんだな。
☆
俺――兵藤隆誠はイッセー達と一緒に山奥から再び安倍の自宅に戻ってきた。
「わしの負けだ。不本意だが娘との交際を認めるしかあるまい……。婚約を破談としよう」
全然納得していない様子を見せる安倍の父親。
あの後、俺が言った通りの流れとして、イッセーの勝利と言う事で幕を閉じた。
因みに激突した安倍の父親と怪鳥、そして高橋は俺が術を使って治療させておいた。
「今日は楽しかった。また戦場で巡り会いたいものだな、吉井さん」
イッセーに握手を求めてくる高橋。ついでにまた名字を間違えてるし。
「うん。ゴメンなさい。俺ん家の兄貴、今回は傷だけで鳥頭までは治してないからさ。てか、吉田じゃねぇのかよ! いや、俺、兵藤だけどね!」
イッセーが高橋と別れを告げると、そこへ安倍が来た。
「隆誠くん、一誠くん。今日はありがとうございました。お二人のおかげで婚約は破談となりましたわ」
「どういたしまして」
「いえ、何とかお役にたてたようで」
すると何やら、安倍がイッセーの方を見ながらもじもじ仕出した。
おや? もしかしてこれは……。
「急の申し出とはいえ、わ、私のために真剣に取り組んでくれまして、本当にうれしかったですわ」
「?」
ははは~、思った通り阿部はいつの間にかイッセーに惚れてしまったようだ。勿論LOVEな意味で。イッセーは安倍の異変に全く気付いてなくて首を傾げているが。
にしても安倍の奴、今まで高圧的な態度から一変してもじもじしてるから、随分と可愛らしくなっちゃってまぁ……。まるでどこぞのグレモリーさんを思い出すよ。
この流れから察するに安倍がデートを兼ねて食事の誘いをするかもしれないな。
「一誠くん、もしよろしかったら、今日私と一緒にお夕飯でも――」
Piririririri! Piririririri!
安倍が言いかけてる最中、イッセーから携帯の着信音が聞こえた。
「すいません。って、部長!?」
どうやらイッセーに電話を掛けてきた相手はリアスのようだ。相手がリアスだと分かったイッセーはすぐに電話に出ようとする。
「もしもし。部長、どうしました? 今どこにって……えっとですね」
イッセーはリアスとの電話に集中しようと、一旦安倍から離れた。
それを見た俺はすぐ安倍に話しかけようとする。
「安倍、悪いが既にリアスがイッセーに目を付けているから諦めろ。眷族候補と言うのは建前で、実際はもうイッセーにベタ惚れ状態だから。当の本人は未だに気付いていないけど」
「やっぱりそうだったのね。リアスさんが一誠くんに対する態度を見て何となく気付いていたけれど……やっぱり、勝ち目なし、みたいね」
「ま、そう言う事だ」
「だったら、貴方から後ほどスイーツを頼んで良いかしら? ふられて傷心した心を癒す為に」
「良いけど、やけ食いはしないでくれよ」
後日、安倍家に俺が作ったスイーツセットを宅配で送っておいたのはリアス達には内緒だ。
すると、電話を終えたイッセーが俺達に近づいてくる。
「すいません、部長から電話があったので。ところで、何か言いかけてたみたいですが……」
「何でもありませんわ」
そう言った安倍は俺達に別れの挨拶をした後、屋敷へ戻っていった。
用が済んだ俺達は安倍家を後にする。
「なぁ兄貴、安倍先輩は一体何を言おうとしてたんだ?」
「さぁな。俺にもさっぱり」
イッセーが訊いてくるも俺ははぐらかしておいた。これは流石に俺の口から言えないからな。
自分が望んだ返答が来ないと分かったイッセーは、次の質問をしてくる。
「ところで、安倍先輩に言ってた報酬はどうしたんだ?」
「既に各種魔物関連のアイテムを貰ったよ。今は俺の収納用異空間に収めてある」
「いつの間に貰ってたんだよ……」
呆れるように言ってくるイッセー。
「そう言えばリアスから電話があったみたいだが、一体何だったんだ?」
「えっと、兄貴との用事はまだ済んでいないのかとか、今日は部長が夕飯作るからなるべく早く帰って来て欲しいって……」
「ああ、すっかり忘れてた」
これは早く帰らないとリアスに色々と小言を言われてしまいそうだ。本当だったら今日はリアスがイッセーと過ごす休日だったので、それを俺が潰してしまったから、今のアイツはからなフラストレーションが溜まり続けている筈。
さっさと家に帰ってリアスにイッセーを差し出せば、すぐにフラストレーションは解消されるだろう。善は急げだ。
「よし、今日はもう早く帰ろう。と、その前に鯛焼き屋で人数分買っておこう。詫びの意味も込めて」
「だな。じゃあ支払いは半々って事で」
そして俺達は安倍の館から出て、帰路する前に鯛焼き屋へと向かった。
後日――
「ねぇ、兵藤くん。この前の事がちょっと気になって清芽さんに訊いてみたのだけれど……彼女がイッセーの話題になった途端、乙女の顔をするのはどうしてかしら?」
「さ、さぁ? 俺には全く心当たりないぞ、リア……グレモリーさん」
「兵藤くん、出来れば教えてくれません? 一体何があったんですの?」
「何であけ……んんっ、姫島まで訊いてくるんだよ」
昼休みの教室で、俺が昼食の弁当を食べる直前にリアスと朱乃がやってきて尋問される破目になってしまった。二人はニコニコ顔だが、怒気のオーラが纏っているのは言うまでもない。結局弁当が食えなかったよ、畜生。
因みに尋問後、駒王学園のアイドル二人が俺と親しく話していたのを見ていたクラスメイト達(特に男子)からも詰問される羽目となった。ったく、今日はちょっとした厄日だよ。
次回は本編を更新します。…………あくまで予定ですが。