ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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第二十四話

 ゲーム終了後、俺――兵藤一誠は医療施設で一通りの治療を終えた。大した怪我は無いんだが、それでも治療するのが決まりとなってるみたいだ。

 

 人間の俺が冥界の医療施設で治療するのは初めてだな。

 

 それはそうと、今回のゲームで俺達は勝った。

 

 けど、ゼノヴィア、ギャスパー、そして眷族候補の俺がリタイヤとなり、ゲーム前に圧倒的と言われていたグレモリー眷族は評価を下げてしまったようだ。

 

 特に開始早々ギャスパーを失ったことと、注目の的だったらしい赤龍帝である俺がやられた事は特に評価を下げたらしい。ってかギャスパーはともかく、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を封じた俺も負けたからって評価下げるっておかしくねぇか? 元々はお偉方が俺にハンデを課したってのに。何か納得いかねぇ。

 

 ………まぁいいや。今更あのお偉方に文句言っても意味はねぇ。俺は会長の挑発に乗ってしまい、禁止されていた筈の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出しちまったからな。

 

 部長は、心底悔しそうだった。結果的にエース級の奮闘ぶりを見せた祐斗の活躍があって勝ちを収めた。最後は『(キング)』同士の直接対決で勝ったからな。

 

 公式ゲームの初勝利がこれじゃあな。多分、兄貴の事だから苦い顔をしてるだろう。

 

 一先ず頭を切り替えた俺は、匙の病室に行く事にした。アイツの怪我も既に完治してる。ゲーム中は敵同士だったが、一度終わればいつものダチだからな。

 

 さてさて、あいつにゲーム中言えなかった部長のおっぱい自慢でも――

 

「もうゲームで二度とあんなバカな真似はするなよ」

 

 匙の病室から兄貴の低い声が聞こえてくる。少しだけ開いている扉から、中の様子を伺う。中には兄貴、会長、ベッドの上の匙がいる。

 

 兄貴は怖い顔をして匙を睨み、匙と会長が気圧されるように顔を伏せている。説教でもしてたんだろう。内容は恐らく、命を捨てるやり方についてってところか。

 

 すると、説教を終えた兄貴は怖い顔から一変して元の顔に戻った。

 

「ま、俺が言いたいのはそれだけだ。それと今回のゲームで悪魔の上層部はお前達を高く評価しているんだと。特にソーナ、これは君宛だ」

 

 そう言って兄貴は手に持っていた高価そうな小箱を会長に渡す。それを受け取った会長は小箱を空けて中身を見ると少し驚いたような顔をする。

 

「会長……?」

 

「これはどういうことですか、リューセーくん……?」

 

 渡された物が予想外だったのか、会長は兄貴に尋ねる。

 

「レーティングゲームで優れた戦い、印象的な戦いを演じた者に贈られる勲章だそうだ」

 

 兄貴がそう言うが――

 

「す、凄いじゃないっすか、会長……!」

 

「私はリアスに負けたのですから、これを受け取れる立場ではないと思いますが?」

 

 匙は喜ぶも、会長が納得出来ない表情だった。

 

「文句を言いたければ、お偉方に言ってくれ。俺は代理で渡してるだけにすぎない。君は結果的にイッセー――赤龍帝を倒した。それを果たしたから、向こうは君にソレを与えたんだ」

 

「それはどう言う意味です? その言い方はまるで……勝敗に関係無く、ただ目的だけを達成すれば良かったとしか聞こえません」

 

「察しが良いな。正にソーナの言うとおりだ。向こうは君の覚悟や結果なんかより、イッセーをリタイヤさせるだけで充分なんだよ」

 

「なっ……」

 

 兄貴の発言に会長は信じられないように目を見開く。

 

 お偉方が俺をリタイヤさせるだけで充分って酷くねぇか?

 

 すると、匙がベッドのシーツを握りながら兄貴を睨む。

 

「何すか、それは……? 兵藤をリタイヤさせるだけで勲章って、一体何の冗談すか……?」

 

「俺がこんな場面で冗談を言わない事くらい、匙だって理解してる筈だ」

 

「だからって! 何で会長にそんな――」

 

「お止めなさい、サジ!」

 

 兄貴に食って掛かろうとする匙だったが、すぐに会長が大きな声を出して制止する。

 

 初めて見たな。会長が怒鳴るなんて。

 

 匙を止めた会長は感情を押し殺すような無表情で、再び兄貴に尋ねようとする。

 

「リューセーくん、もしご存知なら教えて下さい。悪魔上層部は、どうして弟の兵藤君をリタイヤさせる事にこだわっていたのですか? それに何故彼に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の使用禁止までのハンデも付けさせたのです?」

 

「それはソーナも薄々気付いてる筈だ。君は見た筈だろう? リアスとライザーのレーティングゲームの映像記録を」

 

「リアスとフェニックス家三男の……っ。なるほど、そういうことでしたか……!」

 

 全てを察した会長は急に肩の力が抜けたように瞑目する。

 

「え? え? 会長、そういうことって……どういうことっすか?」

 

「…………………………くっ……!」

 

 会長は答えたくない感じで無言だった。そして我慢の限界が来たのか、会長の開いた両目から涙が流れ始める。

 

「ちょ!? 何で泣いてるんすか、会長!?」

 

「さて、俺の用件は済んだから、ここで失礼するよ」

 

 そう言って兄貴が病室を出ようとしたので、俺は思わず覗き見を止めて扉から少し離れた。すると、部屋の中から匙が待ったを掛けようとする。

 

「待って下さい! どうして会長が泣いてるんすか!? 兵藤先輩が泣かしたんなら、俺はアンタでも許さ――」

 

「サジ、違うのです……。彼は、何も悪く、ありませんから……」

 

「え? え?」

 

 今度は殴りかかろうとする匙だったが、また会長が止めた。今度は弱々しく。そんな会長に匙はもう戸惑うばかりだ。

 

 そんな会長を見た兄貴は――

 

「こんな時に言うのも何だが、敢えて言っておこう。ソーナ、今後あのクソ爺共が何を言ってきても信用しない方がいい。それと……聖書の神(わたし)は君の夢を笑ったりはしない。何年、何十年先になってもソーナの理想――誰でも学ぶ事が出来るレーティングゲームの学校を絶対に建てるんだ。その時は、聖書の神(わたし)の名にかけて君を全面的に支援しよう」

 

 そう言った後に病室を出てバタンと扉を閉めた。

 

「はぁっ……。覗き見は感心しないが、場所を変えるぞ」

 

「あ、ああ……」

 

 兄貴は嘆息した後、顔を俺の方へ向けてそう言ってきた。どうやら俺が覗き見していたのは最初からバレてたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 兄貴の後を付いて行くと、着いたのは誰もいない休憩所だった。俺と兄貴は自販機にあるジュースを飲んでいる。

 

「つーか兄貴、いくらなんでもアレは言い過ぎだろ。会長、泣いてたじゃねぇか」

 

「ああでも言っておかないと、ソーナは悪魔上層部を完全に信じきってしまう恐れがある。俺の大事な友人を、あのクソ爺共に都合良く利用されるのは我慢ならんからな……!」

 

「おいおい、段々口調が悪くなってきてるぞ」

 

 兄貴がこうも口汚くなるって事は相当頭にきてる証拠だ。もしかしてVIPルームで観戦中に何か遭ったのか? ってか、ここまでなるってのはよっぽどの事だ。

 

「まさかとは思うが、俺が途中でリタイヤした事にお偉方が喜んでいたとか?」

 

「正解」

 

 マジかよ。まぁそんな事だろうと思ってたけど。

 

「イッセーが匙を圧倒して倒した事に、連中は匙やソーナを役立たずのように蔑んで見ていたよ。が、ソーナの機転によってお前がリタイヤした瞬間、掌を反すように今度は彼女を褒め称えていたんだよ。俺はもう呆れを通り越して、殺してやりたいほどの殺意を抱いたぞ」

 

「それ普通逆じゃねぇか?」

 

 殺意抱くほどかよ。もしお偉方が敵だったら、兄貴は情け容赦無く大技使って消し飛ばしてるだろうな。

 

 兄貴の話を聞いてる内に会長が段々気の毒に思えてきたぜ。悪魔のお偉方に笑われ、命がけの覚悟を見向きもされなく、挙句の果てには俺をリタイヤさせただけ事しか評価されなったって酷すぎる。何か俺も兄貴と同じくイラついてきたな。いっそ抗議でもしてやろうか?

 

「あのクソ爺共に何を言ったところで無駄だ。それは却って俺の立場を悪くなるから止めてくれ」

 

「……俺の考えを読まないでくれよ」

 

(おれ)(おまえ)の考えを見抜けない訳ないだろうが」

 

 元神さまの兄貴が言ってもなぁ。

 

 そう思ってると、急に懐かしいオーラが此処にやって来る。帽子被った隻眼の、長い白髭をしてるお年寄りが。

 

「やっと見つけたわい、リューセー。全く、年寄りに捜させるでないわ」

 

「じいさん!?」

 

 予想外の人物の登場に俺が驚いていると、北欧主神――オーディンのじいさんが俺を見る。

 

「おお、イッセー。久しぶりじゃのう。何じゃお主、ワシが来とる事をリューセーから聞いとらんかったか?」

 

「悪ぃ。今日のレーティングゲームで頭がいっぱいだったから」

 

 ゲーム前夜に聞いたけど、すっかり忘れてた。じいさんもいるって事は、多分あの人もいるんだろうな。

 

「そうか。ワシも試合見ておったぞ。神器(セイクリッド・ギア)無しであそこまでやるとは成長したのう。じゃが、まだまだ詰めが甘い。今後も更に精進する事じゃ」

 

「う、うす」

 

 じいさんのアドバイスを素直に受け止める俺だったが――

 

「ところで……サーゼクスの妹の乳は中々デカかったのぉ。ワシは観戦中、何度も目が行ってしまったぞい」

 

「おおおおーい! このクソジジイ! 部長のおっぱいは俺んだ! やらしい目つきで見てんじゃねぇ!」

 

 猥談になると急に口が悪くなってしまった。

 

 

 スッパァァンッ!×2

 

 

 すると、いつの間にか現れた鎧着たキレイな女の子が俺とじいさんの頭をハリセンで叩く。

 

「オーディンさま! 卑猥な事は禁止だと、あれほど申したではありませんか! イッセーくんも、病院内で卑猥な単語を大声で叫ばないで下さい!」

 

「ててて……あ、相変わらずですね、ロスヴァイセさん」

 

「……まったく隙のないヴァルキリーじゃて」

 

「ロスヴァイセじゃないか。毎回お仕事ご苦労さん」

 

 俺とじいさんが頭を擦ってると、黙ってみていた兄貴がヴァルキリー――ロスヴァイセさんに声を掛ける。

 

「あ、りゅ、リューセーさん、どうも……」

 

 兄貴を見たロスヴァイセさんが急に余所余所しくなった。ま、一時的とは言え、兄貴はロスヴァイセさんの元勇者――ぶっちゃけ元カレだからな。

 

「そういや、新しい勇者(かれし)は――」

 

「イッセーくん、それは訊かないで下さい」

 

「――あ、はい。すんませんでした」

 

 有無を言わさず俺を黙らせるって事は、まだ新しい勇者出来てないんだ。

 

 次に会うまで紹介するって意気込んでたのに……。まぁ、ロスヴァイセさんの性格を考えたら、新しい勇者を見つけるのは難しいだろう。

 

「ところで、何故お二人がこのような所へいらしたのです?」

 

 話題を変えたかったのか、兄貴がオーディンのじいさんとロスヴァイセさんに問う。ナイスだ兄貴。

 

「な~に。お主を捜しにいくついで、此処におるイッセーの顔でも見ようと思ってな」

 

「リューセーさん、堕天使総督アザゼルさまからの伝言です。これから天使、悪魔、堕天使、北欧のオーディンさま、ギリシャのゼウスさま、須弥山の帝釈天さま、そして聖書の神であるリューセーさんとテロリスト対策の話し合いをするので至急お戻り下さい、との事です」

 

「そういうことじゃ。お主が戻らんと会談が始まらんらしいぞい」

 

 どうやら兄貴を連れ戻す為にじいさん達が来たようだ。兄貴は聞いた途端に嫌そうな顔をしてるし。

 

「ったく。俺抜きでやろうって気はないのか、アイツ等は……! いい加減に隠居させてくれ」

 

「ワシより若いお主が何を抜かしとるか」

 

「う……」

 

 じいさんの突っ込みで何も言い返せなくなった兄貴。

 

 そして兄貴はじいさんとロスヴァイセさんと同行する事となり、休憩所をあとにする。

 

 何かまるで嵐が過ぎたような感じで俺がボーっとしてると――

 

「ここにいたのね、イッセー。捜したわよ」

 

「あ、部長」

 

 今度は部長がやってきた。俺のところまで近づいて椅子に座り、そのまま談笑する事となった。

 

 何か久しぶりだな。部長と二人っきりで話すのって。




原作と違って、ソーナには隆誠が厳しい指摘をしました。

次回で漸く原作五巻のエピローグです。
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