ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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またもやフライング投稿です。


二十七話

「今日はここまでだ。帰ったらすぐに風呂入って寝るぞ」

 

「はぁっ、はぁっ……おう」

 

 深夜の広い空き地。イッセーとの実戦式バトルの修行を終えた俺は、防音と視覚阻害と人払いの結界を解除して、家に戻ろうと歩いて帰宅する。

 

 今回の修行では流石に家の地下トレーニングルームでやる訳にいかなかったので、こうして外に出ていた。いつもは影武者を用意しているが、自宅にはリアス達がいるので、両親に上手く誤魔化してくれるから問題無い。

 

 因みに歩いて帰っているのは、修行で疲れているイッセーの呼吸を整える為だ。それに加えて、家に向かう途中にある自販機でジュースを買いたいし。

 

「……なぁ兄貴、何度も思ってるんだけどさ」

 

「ん?」

 

 歩いている最中、少しずつ息が整い始めてるイッセーが尋ねてくる。

 

「上級悪魔ってさ、人間を見下してる上に同族の悪魔も見下してるよな。主に転生悪魔、下級悪魔とかをさ。部長とその親御さん達は全く別として、何であそこまで無駄にプライドが高いんだ? 人間の俺から見ても、時々バカじゃねぇかって思う事があるんだけど」

 

「確かに人間(おまえ)からすれば当然の疑問だ。知ってのとおり、奴ら上級悪魔は長い歴史を持ち、古き伝統を遵守する集まりだ。そんな連中からすれば、それを全く無視するように幅を利かせようとする者達――転生、下級悪魔が気に入らないんだ。自分達が遥か昔から持っている既得権益を、どこぞの馬の骨とも知れない身の程知らず共に奪われるのは我慢ならん! って感じでな」

 

「要するに、偉大な上級悪魔様を常に崇める事をしねぇバカが嫌いだって事なんだろ? ついでに俺みたいな礼儀知らずでバカな人間も含めて」

 

「……まぁ、そんなところだ」

 

 イッセーなりの分かりやすい理由に、俺は思わず苦笑した。と言うかソレ、ほぼ大正解だ。

 

 確かにイッセーの言うとおり、古き時代を生きた上級悪魔達は選民思想が強い。長い歴史を鼻に掛ける悪魔ほど、自分より弱い相手を徹底的に見下すからな。

 

 もしイッセーが転生悪魔になっても、お偉方の上級悪魔共はそう簡単にイッセーを認める事はしないだろう。然るべき手順を踏まなければ認めないってな感じで。だがしかし、今は柔軟な思考を持った四大魔王がいるから一先ずは安心だ。尤も、彼等でも古き悪魔たち全てを掌握しきれる権力はないがな。

 

 そんな会話をしてると、途中で自販機を見つけた。修行で疲れたイッセーを労おうと、俺はスポーツドリンクを二本買った。その内の一本をポイッと投げると、受け取ったイッセーは直ぐに蓋を開けてグイッと(あお)る。

 

「ぷはー。やっぱ修行の後のスポーツ飲料がうまい。あんがと兄貴。家に戻ったら金払うから」

 

「良いよ。俺の奢りだ」

 

 気にするなと言いながら俺もスポドリを飲んでいると――突然の気配に俺とイッセーは飲むのを止めた。

 

 気配を感じたその先は、ラフな格好をした男――

 

「おひさ、お二人さん」

 

「どこかで感じたオーラかと思えば、やっぱり美猴か」

 

「何でお前がここにいるんだよ?」

 

 爽やかな顔をした孫悟空だった。今回は中華風の鎧じゃなく、チャラチャラした一般人の格好でのご登場だ。

 

 彼の登場に俺とイッセーは特に驚いた様子を見せる事なく、呆れた感じで見ている。

 

「ま、相棒の付き添いでさ」

 

 そう言って美猴が後ろに顔を向ける。

 

 そこから現れたのは――

 

「二ヶ月ぶりだな、聖書の神。そして、兵藤一誠」

 

 白ワイシャツ姿のヴァーリだった。

 

「ヴァーリ……」

 

 イッセーはさっきまでの様子とは打って変わるように、既にスポーツドリンクを飲んで空にしたペットボトルをグシャリと握りつぶしながら睨んだ。多分、この前の戦いを思い出したんだろうな。

 

 そんなイッセーの様子を見たヴァーリは何やら嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

「未だ禁手(バランス・ブレイカー)に至っていないとは言え、また随分と腕を上げたな。ライバルとして嬉しく思う」

 

「相変わらずの上から目線だな。喧嘩売ってんなら買うぞ」

 

「まさか。俺は純粋にキミを賞賛したんだ。だが、そう受け取ってしまったなら謝罪する」

 

「………えっと、いきなり謝られると調子狂うな」

 

 本心で謝罪するヴァーリの姿勢を見たイッセーが、さっきまでの荒々しい闘気(オーラ)が静まった。

 

「少し見ない間、君のイッセーに対する評価が随分変わったようだ。それだけ、この前の戦いが心に響いたという事かな?」

 

「俺はこの前の敗北で、もう絶対に慢心しないと決めたからな。俺の宿敵(ライバル)――兵藤一誠に敬意を払うのは当然だ」

 

「んな事言われると、何かすげぇ気味悪いぞ! それに……って、ちょっと待て!」

 

 大事な事を思い出したと言うようにイッセーがツカツカとヴァーリに近寄る。

 

「おいヴァーリ、テメェこの前の戦いで何勝手に自分の負けにしてんだよ!? 俺が先に敗北宣言したんだから、アレは誰がどう見ても俺の負けじゃねぇか!」

 

「キミは何を言っている? あの勝負は慢心した俺の負けだ。あんな無様な姿となった時点でな」

 

「勝手に決めてんじゃねぇ! アレは俺の負けなんだ! 今すぐ訂正しろ!」

 

「理解に苦しむな。如何考えても俺の負けに決まってるじゃないか。キミこそ訂正すべきだ」

 

「それはテメェが――」

 

「だからキミが――」

 

 互いに自分の負けだと主張する赤龍帝(イッセー)白龍皇(ヴァーリ)。今までに見た事のない言い争いだ。

 

 普通は勝ったのは自分だと言い張るものなんだが、この二人は全く真逆の事をしている。お互いに負けを主張する二天龍なんて初めて見たよ。

 

「「…………………」」

 

 余りの展開に俺だけじゃなく、美猴も無言で呆れ顔となっている。

 

「はいはい、こんな深夜にそんな言い争いしたら近所迷惑だから止めてくれ」

 

「聖書の神の言うとおりだぜぃ、ヴァーリ。と言うか今日は助言する為に来たんだろ?」

 

 一先ず言い争いを止めさせようと、俺と美猴は二人の間に割って入る事にした。イッセーが未だ不満そうな顔だが、ヴァーリは美猴の台詞で一旦落ち着いた様子を見せる。

 

「助言とはどう言う事だ?」

 

 美猴の発言が気になった俺が問うと、ヴァーリは答えようと口を開く。

 

「レーティングゲームをするそうだな? 相手はアスタロト家の次期当主」

 

 やはりと言うべきか、どうやらコイツは冥界の情報を入手しているな。恐らくリアスとソーナのゲームも見ている筈だ。

 

「それがどうしたんだよ?」

 

「奴には気をつけたほうがいい」

 

 怪訝に思ったイッセーは再度ヴァーリに訊こうとする。

 

「……どういうことだよ?」

 

「映像記録は見たのだろう? アスタロト家と大公の姫君の一戦を」

 

 その台詞に、俺はその記録を思い出した。

 

 ディオドラが帰った後、俺やグレモリー眷族達はディオドラ対シークヴァイラの記録映像を見た。

 

 あの試合内容を見た俺はディオドラに対して………物凄く不愉快に思った。そして同時に知った。アイツがイッセーに対してあそこまで強気な態度を見せた理由を。ここでそれを語るには、まだ確証はないので敢えて省かせてもらう。

 

 端的に言ってあの試合は異常だった。ディオドラが急激に魔力が増大してシークヴァイラを圧倒していたから。それは俺だけでなく全員が訝しげに思っていた。何故ディオドラがあそこまで急激なパワーアップをしているんだと。

 

 試合を直接見たアザゼルや、映像記録を見たリアスも疑問を感じていたようだ。ディオドラはあそこまで強い悪魔ではなかった、とな。

 

「まあ、俺の言い分だけでは、上級悪魔の者たちに通じないだろうけど。キミや聖書の神が知っておくぐらいはいいんじゃないかと思ってね」

 

「情報提供ありがとう。そんな君達には……ほれ」

 

 俺は自販機の缶ジュース二本買い、片手で一本ずつ二人に向かって放り投げた。受け取ったヴァーリと美猴は意外そうな顔をしている。

 

「安物のジュースで悪いが、取り敢えず聖書の神(わたし)からの礼って事で」

 

「……ふっ。神が悪魔に礼をするとはな。折角貰ったんだから、頂こう」

 

「これは天使達が知ったら俺っちら嫉妬されるかもねぃ。ありがとな、聖書の神。丁度何か飲みたかったんだ」

 

 俺が渡したジュースを二人は礼を言いながらプルタブを開けて飲み始める。

 

「おい兄貴、アイツ等は一応敵だぞ? んな事して良いのか?」

 

「そういうお前こそ、さっきまでヴァーリと負けの主張をしてただろ?」

 

「そ、それを言われるとなぁ……」

 

「ま、ここはお互い様って事で……ん?」

 

 言い返せないイッセーが複雑そうな顔をしてる時だった。ふいに彼の闘気(オーラ)を感じた俺は振り向く。イッセーだけじゃなく、ジュースを飲んでいたヴァーリと美猴も予想外だったのか、俺と同じ方向へ視線を向けていた。

 

 ぬぅっと闇夜から姿を現したのは――

 

「これは神さま、お久しぶりですにょ」

 

「おやおや。、本当に久しぶりですね、ミルたん」

 

 あり得ない質量の筋肉に包まれたゴスロリ巨漢のミルたんだった。相変わらず頭部には猫耳が付いている。

 

「………あの、兄貴。この人は……?」

 

 彼の姿を見たイッセーは目を見開きながら俺に訊いてくる。そう言えばまだ教えてなかったな。

 

「この人はミルたん。俺が初めて悪魔稼業をやった一人目の依頼人だ。前に聞いただろ? 魔法を撃てるよう杖に術式を施したって」

 

「……あ、ああ~……この人だったのね。ローズさんが言ってた……」

 

 イッセーは思い出したのか、若干ドン引きしながらも作り笑いをしている。俺が近くにいなかったら即行で逃走してるだろうな。

 

「ミルたん、コイツは俺の弟――イッセーだ」

 

「にょ? あなたが神さまの弟? 初めましてにょ。あなたもミルたんの事をミルたんって呼んでにょ♪」

 

「ど、どうも……ミルたん」

 

 イッセーは引き攣った笑顔でミルたんと挨拶をする。

 

 そんなやり取りをしてる中、ヴァーリはミルたんを二度見していた。恐らく、我が目を疑ったと思う。

 

「では神さま、弟くん。ミルたんは帰るので失礼するにょ。あ、神さま。もしお時間があったら、魔法少女の杖を一度見て欲しいにょ」

 

「了解。じゃあ近い内に電話するんで」

 

 ミルたんはペコリと頭を下げた後、すたすたと歩いて再び闇夜へと姿を消した。

 

「何だあれは? 聖書の神と知り合いのようだが、頭部から察するに猫又か? 近くに寄るまで俺でも気配が読めなかった。もしや仙術か?」

 

 ミルたんを見たヴァーリが真剣な面持ちで美猴に尋ねている。

 

 猫又じゃないし、仙術も使っていないぞ。彼は純粋な人間で、気配を上手く消していただけだから。と、俺は内心ヴァーリにツッコミを入れていた。

 

「いんや、あれは……トロルか何かの類じゃね? ……猫トロル? つーか聖書の神、一体あれは何だぃ?」

 

 美猴も首を捻って答えに困っていたのか、俺に答えを求めようと訊いてくる。

 

「まぁ敢えて答えるとしたら……彼は一度聖書の神(わたし)を殺しかけたほどの強者だ」

 

『っ!!!』

 

 これは完全に予想外だったようだ。ヴァーリと美猴だけじゃなく、何とイッセーもこれ以上ないほど驚愕を露にしていた。

 

 言っておくが嘘じゃないぞ。俺は抱擁されたミルたんに絞め殺されかけたんだからな。あの時はローズさんが止めてくれなかったら、本当に死ぬかと思ったよ。

 

「ソレが本当なら是非とも奴と戦ってみたいが……まあ、取り敢えず今は止めておこう。帰るぞ、美猴。聖書の神、馳走になった」

 

 ヴァーリはそう言って、美猴と共にこの場を後にしようとする。

 

「ちょっと待て。情報提供とは言え、君はそれだけを言いに俺たち兄弟に会いにきたのかい? 態々ここに来てまで?」

 

 尋ねる俺にヴァーリは笑う。

 

「偶々近くに寄っただけだ。ああそれと、飲み物を頂いたついでに教えておこう。アスタロト家の次期当主に気をつけろと言ったが、それは聖書の神にも関係している」

 

「何だと?」

 

「奴には自由気侭で強力な後ろ盾がいる。あなたにとって面倒な後ろ盾がな」

 

 ……何故だろうか。ソレを聞くだけで凄く嫌な予感がするんだが。本当だったら問い詰めたいところなんだが、それを聞いたら碌な事にならないような気がする。

 

「俺からは以上だ。そして兵藤一誠。また上から目線な物言いをしてすまないが、次に俺と戦うその時まで是非とも禁手(バランス・ブレイカー)に至ってくれ」

 

「じゃあな、聖書の神に赤龍帝。なあ、ヴァーリ。帰りに噂のラーメン屋寄って行こうや~」

 

 用件を終えたヴァーリは美猴を引き連れて、夜の闇へと消えていった。 

 

 そしてこの場に俺とイッセーだけになった瞬間、急に静かな夜へと変わっていく。

 

「……なぁ兄貴。アイツって俺達とは敵同士の筈なのに、何でああも気軽に俺達の前に現れたんだ?」

 

「ヴァーリは旧魔王派のバカ共と違って、オーフィスと同様に世界や覇権に一切興味が無いからな。恐らく、本当にただ偶然俺達と会っただけだと思う」

 

「完全に気軽な散歩感覚じゃねぇか! アイツはマジで何考えてんだよ!? おまけに俺に対して気味悪いほど気ぃ遣ってくるし!」

 

「それだけライバルのイッセーを気に入った証拠って意味なんだろう? 良かったじゃないか」

 

「野郎に気に入られても嬉しくねぇよ!」

 

 

 piririririri!

 

 

 怒鳴ってくるイッセーに俺がからかい混じりに笑っていると、突然俺のケータイから着信音が鳴った。

 

 すぐに懐から取り出して発信者を見ると、何とアザゼルだ。アイツがこんな時間帯に連絡するなんて珍しいな。

 

「はい、もしもし」

 

『悪いな聖書の神(おやじ)、こんな時間にかけちまって。まだ修行中だったか?』

 

 電話を繋げると、思ったとおりアザゼルだった。

 

「いいや、もう終わって今は家に帰ろうとしてるところだ。んで、どうしたんだ?」

 

『急で悪いが、直ぐに俺のマンションへ来てくれないか? ちょっと聖書の神(おやじ)に確認したい事がある』

 

「……分かった。すぐに向かう」

 

 こんな真剣に言ってくるって事は、何か重大な何かを掴んだから聖書の神(わたし)に確認したいって事だろう。

 

 了承した俺は電話を切り、イッセーに向かってこう言う。

 

「イッセー、悪いけど野暮用が出来たから、このまま一人で帰ってくれ」

 

「あ、ああ。分かった」

 

「なんだったら、俺が直ぐにお前の部屋へ転移させようか?」

 

「遠慮しとく。久しぶりにドライグとも話したいし」

 

 ドライグと話したい、か。

 

『ほう。相棒がそんな事を言うとは珍しいじゃないか』

 

 すると、イッセーの手の甲が光りだすと同時にドライグの声も聞こえた。

 

「そうか。言っておくが寄り道なんてせずに真っ直ぐ帰れよ」

 

 そう言って俺は転移術を使って、現在アザゼルが住んでいるマンションへと向かう事にした。

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