ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
イッセーと別れた俺は現在アザゼルが住んでいるマンションにいて、その家主であるアザゼルと確認の意味を込めた相談を受けていた。
「それじゃ
「ああ。あの増大の元は間違いなく
「確かに。すまねぇな、こんなことの為に呼び出しちまって」
「気にするな。
「一応これも訊いておくが、もしイッセーが強化されたディオドラと戦う事になったら、どっちが勝つと思う?」
「………さぁな。どんな結果になろうとも、事が終えればディオドラは
「最後が一番の理由だろうが。ったく。嘗ての聖書の神とは思えない発言だな。特にガブリエルが聞いたらショック受けるんじゃねぇか? アイツはミカエルにも負けないほど
「ガブリエルは
「モテモテだな。ハーレムに憧れてるイッセーからすれば嫉妬ものじゃねぇか?」
「勘弁してくれ。
「ちっ。シェムハザの野郎、余計な事を……。どいつもこいつも焦りやがって。何よりも俺に黙って裏で他勢力の女とよろしくやっていたなんて、初めて聞いた時は驚いたよ……。クソ、そろそろ独り身は俺だけか!」
「お前もそろそろ結婚したらどうだ?」
「嫌だね。俺は趣味に生きる男だ。……お、女なんていくらでもいる! ソレを言うなら
「今の俺は人間の学生なのでまだ結婚は出来ません。と言うかフレイヤと結婚する気もありませんので。――それはそうと、
「これからサーゼクスに通信する。その時に今度のゲームについて説明するが、リアス達に少々悪い事をするって事を先に言っておく」
「……ま、それも大体予想はしていたよ」
――――――――――
皆さん、こんにちは。俺――兵藤一誠は冥界にいます。何でそうなったかの経緯については、この前の夜から始まる。
兄貴と別れて家に着いた俺が玄関に入った瞬間、部長を除く朱乃さん達がエッチなコスプレ衣装を着て、突然のコスプレ大会を開催した。何でそうなったかを尋ねると、朱乃さんが修行で疲れた俺を癒そうと企画したようだ。身体を癒すどころか、(良い意味で)疲れそうな気がしたよ。
更には途中から現れた部長も負けじとエッチな衣装に着替えて俺を癒そうとしていた。けれど、途中から朱乃さんが部長と口喧嘩に発展して中止になっちまったけどな。壁越しからでも聞こえてくるほどの口喧嘩だった。まぁ、喧嘩するほど仲が良いって証拠なんだろうが。と言うか、兄貴がいなくて良かった。もしいたら、『そういう事はイッセーの部屋でやってくれ。あとなるべく静かにな』と呆れながら言ってただろうし。
まぁ、そんなエロ展開よりもだ。朱乃さんと口喧嘩を終えた部長から急に話しがあった。若手悪魔特集で冥界のテレビ番組に出演する事になったと。
いきなりの事に部長と朱乃さんを除く俺たち全員、驚きの余りに叫んじまったよ。誰もテレビ出演するなんて予想だにしなかったからな。
人間の俺とアーシアも出演するのかと聞いてみると、どうやら俺達も参加しなければいけないようだ。部長へ連絡が来たグレイフィアさん曰く『グレモリー眷族全員出演だから、眷族候補の二人も参加は当然』なんだと。
とまあ、ざっくりした内容だが、こうして俺が冥界へ来ているって訳だ。因みに兄貴も一緒にいるが、別の場所で待機している。何でも冥界の新番組製作に携わっているみたいだ。いつの間にそんな事をしていたんだと俺や部長がツッコむも、兄貴は口笛を吹きながらそっぽ向いてたし。
今は部長達と一緒に転移先の冥界の都市部にあるビルの地下から、プロデューサーの人に連れられ、エレベーターを使って上層階へ向かっている。
上層へついて廊下を歩いていると、その先から見知った人が十人ぐらい引き連れて歩いてくる。
あの人は確か――
「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」
そう、部長が声を掛けたのはバアル家の次期当主サイラオーグさんだ。
この前に会ったきりだけど、本当に全然隙がない。貴族服を肩へ大胆に羽織り、ワイルドな様子は今もお変わりないようだ。もし俺が攻撃とか仕掛けようとしても、即座に迎撃態勢に移ろうとするだろうな。
それと後ろに付いている金髪ポニーテールのお姉さんはサイラオーグさんの『
「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」
「ええ。サイラオーグは終わったの?」
「これからだ。恐らくリアス達とは別のスタジオだろう。それと――試合、見たぞ」
サイラオーグさんの一言に部長は顔をちょっと顰めた。
「お互いに新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな」
苦笑するサイラオーグさんを見て、俺は部長を励ましているような感じがした。
すると、今度は俺の方へと視線を移す。
「兵藤一誠。
「は、はぁ、どうも……」
相変わらず、この人は俺に対して高評価だな。匙を倒しても会長の挑発でリタイヤになったのに。
内心不思議そうに思ってる俺に、サイラオーグさんはポンッと俺の肩をたたく。
「もしおまえと戦う時には、何のハンデも一切無い一対一の真剣勝負をしたい」
サイラオーグさんはそれだけ言って去っていく。
……さっき軽くポンと叩かれた肩。あの人の手から俺と戦いたいって言う強い思いが伝わっていた。
何か俺、凄く期待されているな。若手ナンバーワンの悪魔ともあろうお方が、人間の俺にそこまでの思いを抱いてるなんて。もしかして前に見たレーティングゲームで、俺と戦いたい衝動にでも駆られでもしたのか?
サイラオーグさんとの挨拶後、俺達は一度楽屋に通され、そこに荷物を置いた。
因みに今回の参加者は候補を含めた俺たちグレモリー眷族のみだ。アザゼル先生は他の番組に出演していなく、イリナは家にお留守番となっている。
その後、スタジオらしき場所へ案内され、中へ通される。準備中なのか、局のスタッフさん達が色々と作業をしていた。
そんな中、先に来ていたと思われるインタビュアーのお姉さんが部長に挨拶をする。
二人が軽い挨拶を終えると、すぐに番組の打ち合わせを始める。
ってかこのスタジオ、よく見ると凄かった。観客用の椅子なんて大量に用意されてるし。多分お客さんありの放送なんだよなぁ。
不味い。今更だが物凄く緊張してきた! 戦いに関する事だったら大丈夫だけど、こういうテレビ関連の出演なんて初めてだからな。
「……い、イッセーせんぱぁい、ぼ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼ、僕、帰りたいですぅぅぅぅ……!」
「……まぁ、その気持ちは分からなくもないな」
俺の背中に隠れるように引っ付いて震えているギャスパー。普段だったら『男ならシャキッとしろ!』と言ってるけど、今回みたいなテレビ出演となれば話は別だ。と言うより、引き篭もりにテレビ出演は酷だ。だけど、今回は俺だって緊張してるんだから、『取り敢えず何とか我慢しろ』とだけ言っておく事にした。
すると別のスタッフが俺達に緊張しないよう声を掛けてくれるが、それでもちょっと無理だった。
「えーと、木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいますか?」
「あ、僕です。僕が木場祐斗です」
「私が姫島朱乃ですわ」
スタッフに呼ばれた祐斗と朱乃さんが手をあげる。
「お二人に質問がそこそこいくと思います。お二人とも、人気上昇中ですから」
「マジっすか!?」
俺が思わず驚きの声をあげると、スタッフは頷く。
「ええ、木場さんは女性ファンが、姫島さんには男性ファンが増えてきているのですよ」
ああ~、言われてみりゃ確かに。イケメンと美女だもんな。そりゃ人気が出るわ。
となると、祐斗と朱乃さんに人気が出たのはシトリー戦ってところか。何か二人に負けた気がするから複雑な気分だ。
二人にどう言えばいいか悩んでると、朱乃さんが俺に向かって微笑んでくる。
「心配しなくてもいいですわ。私にとっての一番はイッセーくんですもの」
朱乃さんが俺の手を優しく握ってくれる。
おおう。なんて眷族思いのお姉さまだ。思わず気分がハイテンションになるよ!
と思った瞬間、鋭い視線を感じた。その視線の元は――思ったとおり部長だ。俺と朱乃さんを睨んでいる。相も変わらず主様は自分の下僕チェックが厳しいな!
「えっと、もう一方、兵藤一誠さんは?」
「あ、俺です」
お? もしかして人間の俺も人気あるのか?
俺が手をあげてると、スタッフさんはこっちを見た。
「今回は出演して頂き、誠にありがとうございます」
「どうも。と言うか、ちょっと疑問に思ったんですけど、人間の俺やアーシアが参加しても大丈夫なんですか? 悪魔って人間に対してはあんまり良いイメージが無さそうな感じがするんですけど」
「ご心配には及びません。お二人は聖書の神――兵藤隆誠さんの側近であり、リアス・グレモリーさまの眷族候補でもあります。ですのでお二人が人間だからと差別をするような事は致しませんので」
なるほど。元神さまの兄貴や部長の
「それに、お二人がレーティングゲームに参加されたことで人気も上昇しています。特に兵藤一誠さんは」
「え? 俺が?」
「はい。何せ、『
「拳龍帝ぇぇぇぇぇっ!?」
何それ!? 全く知らない二つ名に驚愕の声を出していた。
スタッフさんは嬉々として続ける。
「特に子供に凄く人気になっているんですよ。子供たちからは『ファイタードラゴン』と呼ばれているそうです。シトリー戦で
うそ!? 俺、あの戦闘で冥界のガキんちょの間でフィーバーしてんの!?
しかし、ファイタードラゴンって……。まぁ確かに俺の戦闘スタイルは
やっぱり子供って、ああいう高速戦闘に引きつけられるのか。って、俺も前にドラグ・ソボールを見て、あの超スピードや格闘戦に憧れたから人のこと言えねぇか。
『ふっ。中々面白い二つ名じゃないか、相棒』
俺の中でドライグがそう言ってきた。ドライグ、もしかして気に入ったのか?
『二天龍と称された俺が赤龍帝と呼ばれ、多くの者に畏怖されてたが、これはこれで中々に興味深い。もし最低な如何わしい二つ名とかだったら、ショックを受けて泣いてるところだ』
……まぁ確かに。これがもし……そうだな。例えば俺がおっぱい好きなのをカミングアウトされて、もし『
「では、兵藤さんは別のスタジオへ。ご案内します」
スタッフに専用の台本を渡された俺は、別のスタジオに移動した。
「来たか、イッセー。早速だが――」
着いた先には兄貴がいて、スタッフに渡された台本の中身について詳しい説明をされた。
「あー、マジで凄ぇ緊張した!」
収録後、俺達は楽屋でぐったりしていた。
皆はもう楽屋に着いて早々壁にもたれたり、テーブルに突っ伏していたりしていた。ついでに兄貴は別スタジオでプロデューサーとまだ話し合ってるみたいだ。
番組は部長メインの質問だったが、部長は笑顔で淡々と答え、ずっと高貴な振舞いをしていた。俺じゃ絶対あんなこと出来ねぇな。
その後、祐斗に質問がいくと、女の子達から黄色い歓声。朱乃さんの時は男性ファンから「朱乃さま」って叫んでたよ。
そして俺の時はお客の子供達から「けんりゅーてー!」とか「ファイタードラゴン」って声をかけられた。更には「あの赤いブワ~ッとしたの見せてー!」ってリクエストされたよ。その「赤いブワーッ」ってのは恐らく、俺が力を解放させた
あの
恐らくだけど、別スタジオで撮影する時に兄貴が『力を抑えた状態で
「ところでイッセー、別のスタジオで何を撮ったの? そこにはリューセーもいるって聞いたのだけど」
部長が楽屋のお菓子を摘まみながら訊く。
「すいません。スタッフの人や兄貴にも本放送までは出来るだけ身内にも教えないでくれって言われたんで」
俺が少し申し訳無さそうに言った。
「そう、ならいいわ。放送されるのを楽しみにしましょう」
少し残念な感じを見せる部長だが、それでも期待してくれている様子だった。
そろそろ帰ろうかと思ったその時、覚えのある魔力の持ち主が楽屋に近づいて来た。その直後には楽屋のドアがノックされ、入ってきたのは――
「イッセーさまはいらっしゃいますか?」
「レイヴェル・フェニックスじゃないか。どうしてここに?」
思ったとおりレイヴェルだった。一瞬、パァッと顔が輝いたかのように見えたが、すぐに不機嫌な表情に変わる。なんつーか、極端な反応してるな。
すると、手に持っていたバスケットを俺へ突き出す。
「こ、これ! ケーキですわ! 一応、この前貸して頂いたハンカチのお礼です!」
「そ、そうか。ありがとな」
別に俺は礼目的の為にハンカチを渡した訳じゃないんだが……まぁ折角貰ったから、頂くとしよう。
バスケットを受け取った俺が中身を確認すると、美味そうなチョコケーキが入っていた。ほー、見事なもんだ。
けど、何で恥ずかしそうにバスケットを突き出したんだ? こんな見事に出来ているのに。
「もしかしてこれ、お前が作ったのか?」
「え、ええ! 当然ですわ! ケーキだけは自信がありますのよ! そ、それにこの前、ケーキをご馳走すると約束しましたし! それとリューセーさまの分もあると言っておいてください!」
ああ。そう言えばこの前、パーティーの時に言ってたな。
「ありがとう。兄貴もチョコケーキ好きだから喜ぶと思うぞ。でもさ、お茶の約束の時でも良かったんじゃねぇか?」
「ぶ、無粋なことはしませんわ。アスタロト家との一戦が控えているのでしょう? お時間は取らせませんわよ。ただ、せめてケーキだけでもと思っただけです。あ、ありがたく思ってくださいな!」
強引なんだか、謙虚なんだか。相変わらずコイツの性格がいまいち分からん。
でもまぁ、態々ここまで足を運んでくれたのは嬉しい。
「で、では、私はこれで――」
レイヴェルは用事を終えたと言わんばかりにすぐ帰ろうとしたので――
「ちょっと待て! 祐斗!」
すぐに引き止めて、祐斗に小型のケーキ用ナイフを創ってもらった。
そしてバスケットのケーキを少しだけ切って、そのまま口に運ぶ。
……うん。以前兄貴が作ったチョコケーキに負けず劣らずの美味さだな。
「美味いぞ、レイヴェル。ありがとな、家に戻ったらゆっくり食べさせてもらうから。次に会えるのはいつか分からないから、今の内に感想と礼をいま言おうかと思ってな。前にも言ったけど、やっぱりレイヴェルって俺好みの可愛い女の子だな。もし俺の彼女になってくれたら、こうして毎日ケーキを食わせて欲しいよ」
シュボンッ!
俺が言った直後、レイヴェルは目を潤ませ、噴火みたいな音を出して顔を特大級に紅潮していた。顔色がもう部長の紅髪みたいだ。
……あれ? そう言えばコイツの性格を考えると、「私を彼女にしたいですって? 余りにも図々しいですわ!」って返すと思っていたんだが……。
「……い、いっしぇーしゃま、こんどのしあい、おうえんしてましゅ!」
様子がおかしいレイヴェルは酔ったように呂律が回らなくなっていたが、物凄いスピードで去っていった。
どうしてああなったのかを部長に訊こうと思ったが、その選択は失敗だった。
何故なら部長が身体から紅い魔力を放出し、眉を顰めて俺を睨んでいたから。更には雰囲気の恐い女子部員達も俺を睨んでいる始末。
な、なぜ皆して、そんなすげぇ恐~い顔で睨んでいるんですか……? 少し怯えながらも怪訝に思う俺だが、取り敢えず取材も終わり、ディオドラとの一戦が間近に迫っていた。
余談だが、後日テレビ局から撮影した俺の映像が届いた。一緒に見た兄貴は良い出来だと言ってたが、俺は恥ずかしい気分だった。
……ほ、本当にこんなの放送しても大丈夫なのか……?
正直言って、これは部長達に言って良いのかどうか判断に迷っていた。