ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

39 / 53
今は波に乗ってるんで、こうして連日書けている状態です。

それではどうぞ!


三十話

「そろそろ時間ね」

 

 部長がそういい、立ち上がる。

 

 決戦日。俺たちオカ研一同は旧校舎の部室に集まっていた。アーシアがシスター服、ゼノヴィアは教会の戦闘服。

 

 あと俺も今回は別の衣装を着てる。修行の時に使っている赤の武道着だ。コスプレだと思われるけど、コレ着るとマジで気合いが入る。初めて見た部長達は似合っていると言われたけど、それでもちょっと恥ずかしかった。因みに他は駒王学園夏の制服だ。

 

 中央の魔法陣に集まり、転送の瞬間を待つ。

 

 相手はディオドラ・アスタロト。現ベルゼブブを出した御家の次期当主。映像記録で見た限り、絶大な魔力を持って短期突入も出来る悪魔。

 

 例えどんな力を持っていようが関係ねぇ。俺は全力を出してディオドラを倒す! ただそれだけだ。

 

 そう固く決意してると、隣にいるアーシアが不安げな様子で俺の手を握ってくる。

 

 一先ずは不安を無くしてあげようと、無言で微笑みながら手を握り返してやった。

 

 アーシアをあんな野郎に渡してたまるか。兄貴からも『あの思い上がったお坊ちゃんに力の差を徹底的に見せ付けてやれ!』って言われてるからな。

 

 そして魔法陣に光が走り、転送の時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……着いたのか?」

 

 魔法陣の眩い輝きがなくなったので、目を開けてみると……そこはだだっ広い場所だった。

 

 ……周囲には一定間隔で石造りの太い柱が並んでいる。地面も石造りだ。あと後方に巨大な神殿の入り口がある。

 

 けれど、俺からすればフィールドなんかどうでも良かった。問題はこの後の流れだ。いつもなら各陣営がフィールドに着いた際、必ず審判役の人からのアナウンスが流れるはずだ。にも拘らず、それが全く届いて来ない。

 

「部長、これ何かおかしくないですか?」

 

「やっぱりイッセーも私と同じ考えのようね」

 

 俺の問いに部長も不審に思っていたようだ。

 

 けれどそれは俺や部長だけじゃなく、他のメンバーも同様で怪訝そうにしていた。

 

 すると、神殿と逆方向から複数の魔力を感じた直後に魔法陣が出現する。

 

 咄嗟に部長達の前に出た俺はいつでも迎撃出来るように構えると、異常な数の魔法陣が出現していた。辺り一面、俺達を囲むように出現していく。

 

 それにこの魔法陣は――

 

「……アレはアスタロトの紋様じゃない!」

 

 そう。剣を構えてる祐斗が言ったとおり、アレ等は全く見覚えのないものばかりだった。

 

「……アレらの魔法陣全て共通性はありませんわ。ただ一つ言えるとするなら――」

 

「全部、悪魔ね。しかも私の記憶が確かなら、アレらは全て――」

 

 手に雷を走らせながら言う朱乃さんに続き、紅い魔力を纏いながら呟く部長。二人は厳しい目線を辺りに配らせていた。

 

 そして魔法陣から現れたのは大勢の悪魔達だ! 全員、敵意や殺意を漂わせながらのご登場だった! 俺達を囲んだ直後に激しく睨んでくる!

 

 既に周囲には数えるのもバカらしく思えるほどの悪魔達がいる。辺り一面悪魔の団体様ご到着だよ!

 

「魔法陣から察するに『禍の団(カオス・ブリゲード)』の旧魔王派に傾倒した者たちよ」

 

 部長の言葉に俺は何となく理解した。

 

 あの悪魔達からは部長や会長、四大魔王様達と違って憎悪を帯びた魔力を感じるからな。

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリー。そして下等な人間へと堕落した聖書の神の血縁者、兵藤一誠。貴様らにはここで散ってもらおう」

 

 囲む悪魔の一人が部長と俺に挑戦的な物言いをする。旧魔王を支持する悪魔共が現魔王に関与する者達が目障りなのは分かるが、俺も兄貴の血縁だからって標的にしてるのかよ。ってかアイツ、兄貴が堕落したって何訳の分かんねぇこと言ってんだ?

 

 あの悪魔の発言に不可解そうに思ってた俺が動きを止めてると――

 

「キャッ!」

 

 途端にアーシアの悲鳴が聞こえた!

 

 アーシアの方向へ振り向くと、そこにアーシアの姿がなかった!

 

「イッセーさん!」

 

 空から声がしたので、すぐに上を見上げると、そこにはアーシアを捕らえたディオドラの姿があった! あ、あの野郎ォォォォォオオオオッッ!!

 

「やあ、リアス・グレモリー。そして赤龍帝。アーシア・アルジェントはいただくよ」

 

 ふざけた事を爽やかにほざいてくれる!

 

「おいテメェ! 今すぐにアーシアを放せ! つーか、一体どういうつもりだ!? 俺と勝負するんじゃなかったのか!?」

 

 俺の叫びに、ディオドラは初めて醜悪な笑みを見せた。

 

「バカじゃないの? 薄汚い人間のキミと勝負なんてしないさ。キミたちはここで彼ら――『禍の団(カオス・ブリゲード)』のエージェントたちに殺されるんだよ。いくら力のあるキミたちでもこの数の上級悪魔と中級悪魔を相手に出来やしないだろう? ハハハハ、死んでくれ。速やかに散ってくれ」

 

 俺と同く激しい怒りを抱いているのか、部長は纏う紅い魔力を荒々しく波立てながらディオドラを激しく睨む。

 

「あなた、『禍の団(カオス・ブリゲード)』と通じたというの? 最低だわ。しかもゲームまで汚すなんて万死に値する! 何よりも私のかわいいアーシアを奪い去ろうとするなんて……ッ!」

 

 今の部長は凄まじい程の魔力を盛り上げる。もう完全にキレて大技――『滅びの爆裂弾(ルイン・ザ・バーストボム)』をディオドラにブチかましたい筈。そりゃそうだ! 俺だってぶちギレ寸前で20倍龍帝拳のドラゴン波をぶっ放してぇよ! あの野郎は絶対に許さん!

 

「彼らと行動したほうが、僕の好きなことを好きなだけできそうだと思ったものだからね。ま、最後のあがきをしていてくれ。僕はその間にアーシアを正式な眷族にした後に契る。意味は分かるかな? 赤龍帝、僕はアーシアを自分のものにするよ。感謝するよ、リアス・グレモリー。アーシアを悪魔にさせず人間のままにしてくれるなんて。僕にとっては何もかも良いこと尽くめだよ」

 

 

 ドンッ!!!

 

 

 ディオドラが嘲笑する中、我慢の限界を越えた俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を開放直後、龍帝拳を発動させた。

 

 俺が力を開放させた事にディオドラ達だけじゃなく、部長達も驚きを露にしている。

 

「このクズ野郎が!! テメェの欲望の為にアーシアは人間のままにさせてねぇんだよ!!」

 

「なっ!?」

 

 俺がギュオッと猛スピードで接近するのが予想外だったのか、ディオドラは驚愕する。

 

「ここから先はいかせん!」

 

「貴様には死んでもらう!」

 

 旧魔王派の悪魔達がディオドラを守るかのように俺の進行を阻もうとする。

 

 余りにも鬱陶しいから急停止して――

 

「テメェ等、邪魔だぁ~~~~!!!!」

 

 

 ズオッッッッ!!!!!

 

 

 目の前のザコ共を一瞬で片付けようと、両手から闘気(オーラ)波を出して吹っ飛ばす。俺の闘気(オーラ)波を受けた悪魔達は悲鳴を上げることなく消滅していった。

 

「ば、バカなっ! 上級悪魔たちを一瞬で消し飛ばしただと!?」

 

 ディオドラが信じられないように言ってくるが、俺にはそんな事どうでもよかった。

 

「今の俺は、あんなザコ共なんかどうでも良いんだよ! 覚悟しやがれ、ディオドラ!」

 

「く、来るなぁ!」

 

 俺の気迫に押されたのか、ディオドラが少し後退する。その直後に威嚇のつもりか、俺に魔力弾を撃ってきた。

 

 そこら辺の悪魔からすれば強力な一撃だろうが、俺にとっちゃ豆鉄砲も同然だ。だから片手でパアンッと簡単に弾く。

 

「ま、待て赤龍帝! いま僕に攻撃すればアーシアにも当たるんだぞ!?」

 

「そんな心配する必要なんかねぇよ! テメェだけしか当てねぇようにするだけだ!」

 

 俺がアーシアにまで攻撃するヘマなんかするか! 俺だけじゃなく兄貴も同様だ!

 

 ディオドラがまだ何か叫んでいるが、俺は気にせず超スピードで迫る!

 

「イッセーさん!」

 

「ヒィッ!」

 

 俺の接近にアーシアが喜んだ顔をして、ディオドラは情けない悲鳴をあげる。

 

 そして俺はディオドラの顔面に向けて闘気(オーラ)を最大に込めた拳を繰り出して――

 

 

 ダァンッッッッ!!!

 

 

「だから言ったじゃない。目的を達成したらすぐに退きなさいって」

 

 当たるかと思った直前、突然目の前に現れた悪魔が俺の拳を受け止めた。

 

「お、お前は……!」

 

「久しぶりね、イッセーくん。ちょっと見ない間に随分と強くなったじゃない」

 

「エリガン・アルスランド!」

 

 驚いてる俺を余所に現れた夢魔(サキュバス)――エリガン・アルスランドが久しぶりの友人に会ったような挨拶をしてくる。下にいる部長も完全に予想外と言わんばかりに驚きの声を出している。

 

「くっ!」

 

 本当はすぐにアーシアを助けたかったが、エリーがどれだけ危険な相手である事を知ってるので、俺は即座に離れようと距離を取った。

 

「あら? すぐに私から距離を取るなんて、怒ってた割には冷静ね。それにしてもイッセーくん、本当に強くなったわね。さっきの一撃は確実にディオドラくんの頭が吹っ飛ぶほどの威力だったわ。私が修行してなかったら――」

 

「遅いぞエリガン! 今まで何をしていた!?」

 

 エリーが喋ってる最中、ディオドラが急に怒鳴り散らしてきた。すると、エリーは呆れた顔で振り向く。

 

「助けてもらった相手に向かって随分な言い草ね。礼の一つくらい言ってほしいわ」

 

「お前は僕の用心棒だろう! 僕を助けるのは当然だ! 誰のお陰で指名手配中のお前の身を隠せていると思っている!?」

 

「はいはい、分かりました」

 

 礼を求めた自分がバカだったと諦めるように言うエリーだが、二人の会話を聞いてた俺は聞き捨てならない内容があった。

 

 エリーがディオドラの用心棒? 指名手配中のアイツがディオドラの所で身を隠しているって……まさかコイツは!

 

「おいエリー! ディオドラの『自由気侭で強力な後ろ盾』ってのはお前の事か!?」

 

「へぇ、よく気付いたわね。もしかしてヴァーリくんにでも聞いたのかしら?」

 

 俺の問いにエリーは否定しないどころか、逆に問い返してきた。やっぱりヴァーリが言ってた後ろ盾はコイツだったか!

 

「ま、そんな事は今更どうでもいいわ。ほらお坊ちゃん、私がイッセーくんを抑えてる間にさっさと行きなさい」

 

「お、お前に言われなくても分かってる!」

 

「んな事させるかぁ!」

 

 ディオドラがアーシアを連れ去るのを阻止する為に超スピードで接近しようとするが、エリーが一瞬で俺に接近して来た。

 

「そこをどけ!」

 

「フフフ。ほんのちょっとだけ、私の相手をしてもらうわよ、イッセーくん♪」

 

「ざけんな! 俺じゃなくて兄貴と相手でもしてやがれ!」

 

 兄貴が聞いたら嫌がる台詞を気にせず言う俺は、エリーを引き離そうとするも――

 

「そぉれ!」

 

「ぐおっ!」

 

 即座にエリーが俺の腹部に魔力弾を撃ってきた。モロに喰らった俺は魔力弾ごと地面に向かい――

 

 

 ドガァァァァンッッッ!!

 

 

『イッセー(さん・くん・先輩)!』

 

 そのまま地面に激突した直後に、魔力弾も爆発した。俺が被弾した事でアーシアや部長達が大きな声を出す。

 

「ちぃっ! あの野郎、ふざけたマネを……!」

 

 だが俺は龍帝拳の闘気(オーラ)で守られていた為、大したダメージが無く殆ど無傷だったので直ぐに起き上がった。

 

 エリーの奴、一体どういうつもりだ? いくら俺が龍帝拳で防御してたからって、さっきの魔力弾を全力で撃てば、焦っていた俺に深手を負わせる事が出来た筈なのに……。

 

「ははははは! 無様だな、赤龍帝! お前如き、コイツの足元にも及ばないのさ!」

 

「イッセーさん! イッ――」

 

 助けを請うアーシアだが、「ぶぅぅん」と空気が打ち震え、空間が歪んでいく。

 

 ディオドラとアーシアの身体がぶれていき、次第に消えていった。

 

「アーシアァァァアアアアアッ!!」

 

 俺は消えたアーシアを呼ぶが、言うまでもなく返事なんかこなかった。

 

「やれやれ、やっと行ったわね。さて、イッセーくんの足止めを終えたから帰らせてもらうわ」

 

「エリィィィィィィッッ!!! テメェよくも邪魔をしやがって!!」

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!

 

 

 ディオドラをぶっ飛ばす邪魔を作った原因であるエリーに、完全に頭に来た俺は無数の連続闘気(オーラ)弾をぶっ放した!

 

「よっ! はっ! ていっ!」

 

 けれどエリーは両手で簡単に弾くだけじゃなく、華麗に避けやがった。避けられた闘気(オーラ)弾は他の悪魔達に被弾して落ちていく。

 

「本当に凄いわね、イッセーくん。このまま君と戦うのも面白そうだけど、ダーリンとの挨拶もしないといけないから、ここは素直に退くわ。じゃあね♪」

 

「待て! 逃げんじゃねぇエリー!」

 

 俺が叫ぶも、エリーはすぐに姿を消した。

 

 助けるべきアーシア、ぶっ飛ばすべきディオドラ、邪魔されたエリーがいなくなった事に俺は――

 

「く、くっ……! ちきしょう、ちきしょう、ちきしょう、チキショ~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 

 ドゴッッッッッ!!!!

 

 

 近くにあった太い柱に向かって拳を思いっきり当てた。その柱は一瞬で粉々に吹っ飛ぶ。

 

 アーシアを守るって兄貴に約束した筈なのにッ! また俺は! 俺は!

 

「イッセー! 今は落ち着きなさい!」

 

「部長の言うとおりだよ、イッセーくん! 冷静になれ! いまは目の前の敵を薙ぎ払うのが先だ! そのあと、アーシアさんを助けに行こう!」

 

 柱を殴った後にくずおれる俺に、駆けつけた部長達が檄を入れてくれる。

 

 ……部長と祐斗の言うとおりだ。要は、このザコ共をさっさと片付けて、ディオドラのもとへ行って奴をぶん殴ってアーシアを取り戻せばいいだけの話だ!

 

 ディオドラのクソ野郎がァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ! テメェだけは泣いて謝っても絶対に許さねぇからな!!

 

 取り敢えず今は何とか心を落ち着かせないと………よし、何とか抑え込んだ。

 

 シトリー戦が終わった後、兄貴から感情を抑える方法を教えてくれたから、何とか出来た。その方法は解放した闘気(オーラ)を一旦ゼロにして深呼吸すること。簡易的だけど、今の俺なら充分に抑えれるやり方だ。

 

 さて、それよりもだ。さっき旧魔王派の悪魔達をザコ共と罵ったが、如何せん数が多すぎる。さっき俺が倒したのは一割にも満たしてない。悪魔達の手元が怪しく光って、魔力弾を一斉に放つつもりだ!

 

 ここは俺が盾役になって、部長達が各個撃破しやすいようにすべきか? それとも無視して一気に神殿に入るか?

 

 打開策を模索中に一触即発の中、「キャッ!」と悲鳴があがる。 

 

 朱乃さんの声がしたので、何事かと思って視線を向けると……前に会った隻眼クソジジイ――オーディンの爺さんが朱乃さんのスカートを捲ってパンツを覗いていた!

 

「うーん、良い尻じゃな。何よりも若さゆえの張りがたまらんわい」

 

「このエロジジイ! いきなり現れて何やってやがんだゴラァ!」

 

 俺が即座に爺さんから朱乃さんを引き離した。このシリアスな空気で何やってんだよアンタは!

 

「オーディンさま! どうしてここへ?」

 

 部長が爺さんの登場に驚きながら訊いていた。

 

「爺さんがここへ来たって事は、まさか旧魔王派の連中がゲームを乗っ取ったのか?」

 

「ほっほっほ。その通りじゃ。まぁ正確には『禍の団(カオス・ブリゲード)』の連中じゃがな」

 

 俺も訊くと爺さんは顎の長い白髭を擦りながら言う。

 

 やっぱりそうなってたのかよ! 何でこう毎回嫌な予感だけは当たるんだ?

 

 因みに俺がオーディンの爺さんと親しげに話してることに、部長達が意外そうな感じで見ている。

 

「ディオドラ・アスタロトが裏で旧魔王派の手を引いていたのを分かったのじゃ。更に先日の試合での急激なパワー向上も、オーフィスに『蛇』をもらい受けたと言う事もリューセーの奴が解明してのう。このままじゃとお主等が危険なので、救援に駆けつけようとワシがここへ来たと言う訳じゃ。本当ならもう数人連れてくる予定だったのじゃが、このゲームフィールドごと、強力な結界に覆われてのう、そんじょそこらの力の持ち主では突破も破壊も難しい。特に破壊は厳しくてのう。内部で結界を張っている者を停止させんとどうにもならんのじゃよ」

 

「だからこの手の魔術に長けた爺さんが来たって事か。その片目の義眼を使って」

 

「よく分かっておるじゃないか、イッセー。正にその通りじゃ」

 

「そりゃ以前、兄貴の近くで聞いていたからな」

 

 前にヴァルハラへ来た時、兄貴はオーディンの爺さんから魔術に関する授業を受けていたから、近くにいた俺も偶々聞いていた。専門的な魔術は分からなかったけど、爺さんの片目にある水晶の義眼がとんでもないモノである位は知っている。

 

「相手は北欧の主神だ! 討ち取れば名が揚がるぞ!」

 

 旧魔王派の連中は一斉に魔力弾を撃ってくる。

 

「うわ~。アイツ等、あの程度の攻撃で爺さんを倒そうとしてるわ」

 

「全く。ワシも舐められたもんじゃわい」

 

 部長達が焦っているのを余所に、俺とオーディンの爺さんだけは呆れたように呟く。すると、オーディンの爺さんが杖を一度だけトンと地に突くと――

 

 

 ボボボボボボボボンッ!

 

 

 こちらへ向かってきていた無数の魔力弾が中で弾けて消滅した。

 

 爺さんの実力をある程度知ってる俺から見れば、あんなのは児戯も同然だ。

 

 悪魔達も爺さんの凄さを理解したのか、顔色を変えていた。ま、爺さんにとっちゃ、ここにいる上級悪魔達なんて唯のザコ共にすぎないし。

 

「しかし爺さん。爺さんがその気になれば、さっき言ってた強力な結界を打ち破れるんじゃないのか? その水晶の義眼を使って」

 

「そのつもりだったんじゃが、この結界は予想外に厄介でワシがここに入るだけで精一杯だったんじゃ。相手がどれほどの使い手なのか気になるところじゃわい。と、忘れておった。これをとりあえず渡すようアザゼルの小僧から言われてのぅ。全く年寄りを使いに出すとは――」

 

「爺さん、小言は俺達じゃなくてアザゼル先生の前で言ってくれ」

 

 少し長くなりそうな小言を俺が一先ず阻止した。と、爺さんから渡されたのはグレモリー眷族の人数分の小型通信機だ。

 

「ほれ、ここはこのワシに任せて神殿のほうまで走れ。ジジイが戦場に立ってお主等を援護すると言っておるのじゃ。めっけもんだと思え」

 

 爺さんが杖をこちらに向けると、俺達の身体を薄く輝くオーラを覆う。

 

「お、防御魔法か。サンキューな爺さん」

 

「イッセーよ。ここまでしとるんじゃから、神のワシに何か献上すべきではないかのう?」

 

「へいへい。今度会った時にエロ本を用意しときますよ」

 

「うむ。楽しみにしとるぞ」

 

 エロ本と聞いてやる気が出たのか、爺さんの左手に槍らしきものが出現した。

 

「――グングニル」

 

 爺さん――北欧主神オーディンが持つ最強の槍であるグングニルの一撃を繰り出したその刹那――

 

 

 ブゥゥゥウウウウウウウウンッ!!!

 

 

 槍から極大のオーラが放出され、空気を貫くような鋭い音が辺り一面に響き渡った。

 

 ……すげぇな。初めて見たが、たったの一撃であれほどの威力とは。俺のドラゴン波が大した事ないように思えてくるぜ。流石は北欧主神さまだ。

 

「さっすが爺さん。でもまだ全然本気じゃねぇだろ? ひょっとして鈍ってたりする?」

 

「まぁの。このところ体が鈍りに鈍って運動不足だったんじゃわい。さーて、テロリストの悪魔どもよ。ここから先は全力でかかってくるんじゃな。この老いぼれはお主等の想像を絶するほど強いぞい」

 

 そりゃまぁ、兄貴とは違って現役の神さまだからな。

 

 さっきまで名を揚げようと躍起になっていた悪魔達は、爺さんの一撃を見て緊張の色を濃くしている。下手に攻め込んだら、グングニルの餌食になるのを恐れているからな。

 

「部長、ここは爺さんに任せましょう。俺達がいたら却って邪魔になります」

 

「オーディンさま! すみませんが、ここをお願いします!」

 

 部長はオーディンの爺さんに一礼すると俺達に言う。

 

「皆! 神殿まで走るわよ!」

 

 部長の言葉に応じた俺達は、神殿の方へ走り出して行った。

 

 その間にも後方では爺さんと悪魔達の戦い、ぶっちゃけ爺さんの一方的な蹂躙が始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。