ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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取り敢えず更新しました。


三十一話

 神殿の入り口に入ってすぐ、俺達は耳にオーディンの爺さんから譲り受けた通信機器を取り付けた。

 

 その直後、いつも聞いている声が聞こえてくる。

 

『お前等、無事か? こちらはリューセー。オーディン殿から渡されたみたいだな。本当はアザゼルが説明する予定だったけど、俺が代わりにやる事にした』

 

 言うまでもなく兄貴だった。

 

『色々と言いたい事はあると思うが、先ずは状況を説明させてくれ。もう知ってると思うが、このレーティングゲームは「禍の団(カオス・ブリゲード)」旧魔王派の襲撃を受けている。そのフィールドも、VIPルーム付近も旧魔王派の悪魔だらけだ。だけど、これは事前にアザゼルが予想していた。現在、各勢力が協力して旧魔王派のバカ共を撃退中だ』

 

 だろうな。んなこったろうと思ったよ。あの連中がここだけしか襲撃しない訳がない。けど、予想していたってのは気になるな。

 

『これはサーゼクス達から聞いた話だが、ここ最近、現魔王に関与する者達が不審死するのが多発していたらしい。それをアザゼルが調べた結果、裏で動いていたのは「禍の団(カオス・ブリゲード)」旧魔王派みたいだ。グラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしたのも、旧魔王派の奴等が手にかけてたんだと』

 

 ……そう言えば、さっきの悪魔共は部長を狙っていたな。部長が現魔王の血筋だからか。

 

『首謀者として挙がっているのは、旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫。アザゼルが倒したカテレア・レヴィアタンと同様、旧魔王派の連中が抱く現魔王政府への憎悪は大きいようだ。んで、今回のゲームにテロを仕掛ける事で世界転覆の前哨戦として、現魔王の関係者を血祭りにあげる算段だとさ。今丁度、現魔王や各勢力の幹部クラス、更に聖書の神(わたし)も来ているしな。奴等からすれば、襲撃するのにこれほど好都合なものはないからな。アザゼルがここまで予見できたのは、先日に見たアスタロト対シークヴァイラの一戦の疑惑からだ』

 

 なるほどな。つまり俺達の試合は最初から旧魔王派に狙われていたって訳か。敵のターゲットは現魔王の血縁者――部長と聖書の神(あにき)の弟――兵藤一誠(おれ)。そして、観戦しに来た各勢力のボスに、現在戦闘中のオーディンの爺さんって事ね。

 

「なら、あのディオドラの魔力が以前よりも上がった源は、オーディンさまが言ってたオーフィスの『蛇』なの?」

 

 と、部長が確認の為に訊く。

 

『ああ、そうだ。オーフィスの蛇を身体に取り込むと、力が急激に増大する。ディオドラが調子に乗ってソレをゲームで使ったのは奴等も計算外だったろうな。それ故にアザゼルは、グラシャラボラス家の一件と併せて、今回のゲームで何か起こるかもしれないと予見が出来たんだ。普通に考えたら中止にすると思うけど、それでも奴等は作戦を途中で覆す事をしなかった』

 

 あのクソ野郎、他人の力を使ってパワーアップしてやがったのか! そんなズルをして試合にも勝っただと!? ふざけやがってぇぇぇっ!

 

「ま、あっちからすればこっちを始末出来れば結果オーライなんだろうな。尤も、俺達からしても絶好の機会だ。あの世界の傍迷惑極まりない旧魔王派を潰すには丁度良いからな。現魔王、堕天使幹部、天界のセラフ達、オーディン殿、ギリシャの神、帝釈天や仏達も出張ってテロリスト共を一網打尽にするつもりだ。念の為にアザゼルが確認したところ、もう全員即行でOKしてくれたってさ。久しぶりに戦える機会があってか、旧魔王派の悪魔達相手に暴れまくっているよ」

 

 確かにオーディンの爺さんもやる気満々だったな。となれば、旧魔王派はほぼ全滅するだろう。

 

「……つまり、このゲームは既にご破算ってわけね」

 

『それに関してはすまない、リアス。本当なら、せめてリアスやイッセーだけでも教えるべきだと俺やサーゼクスが言ったんだが……アザゼルがな。どうしても旧魔王派の連中を燻り出したくて、相手に気取られないよう黙っておいたほうが良いと説得されたよ』

 

「じゃあもし、俺や部長達が万が一にも死んじゃったら、アザゼル先生はどうするつもりだったんだ?」

 

 念の為に訊いてみると、兄貴は少し嘆息しながら答えた。

 

『もうそうなったら、アザゼルは相応の責任を取るそうだ。堕天使総督の首で済むならそうする、だとさ』

 

 ……そっか。アザゼル先生は死ぬ覚悟で、旧魔王派の奴等を引き寄せたのか。

 

 まぁそれも大事だが、一先ず重大な事を兄貴に報告しなくちゃいけねぇ!

 

「兄貴、今更だけどすまねぇ! アーシアがディオドラに連れ去られちまった! 更にはディオドラの後ろ盾としてエリーもいやがった!」

 

『……っ。やはりか。ディオドラが聖書の神(わたし)やイッセーに矢鱈と強気でいたのは、オーフィスの蛇とエリーがいたからか。取り敢えずエリーの方は俺が何とかしておこう。どうせアイツの事だから、また俺の前に姿を現すだろうし。イッセーはディオドラを片付けておけ。恐らくアイツは神殿にいて、今頃は歯軋りしながらお前を待っている筈だ。ついでにそのフィールドは「禍の団(カオス・ブリゲード)」所属の神滅具(ロンギヌス)所持者が作った結界に覆われてて、入るのは何とか出来るけど、出るのは不可能に近い。神滅具(ロンギヌス)絶霧(ディメンション・ロスト)」って言う厄介な神器(セイクリッド・ギア)でな。結界や空間に関する神器(セイクリッド・ギア)の中でも抜きん出ている為に、術に()けているオーディン殿でも破壊出来ない代物だ。本当なら聖書の神(わたし)がいけば何とかなるんだが、旧魔王派の悪魔の大半がさせまいと足止めされてて動けないんだ』

 

「兄貴も戦場に来てるのか?」

 

『ああ、今も通信しながら戦ってるよ。例えば俺の家族をバカにした複数の上級悪魔共を光の剣と光の槍で串刺し刑で消滅、ってな』

 

「そうかい。じゃあ、アーシアは俺が救ってくるよ」

 

『是非ともそうしてくれ』

 

「ちょっと待ちなさい、リューセー!」

 

 俺が兄貴と話してる中、急に部長が割って入るように言ってくる。

 

「あなた、どうしてそんなに落ち着いているの!? アーシアがディオドラに連れ去られて眷族にされているかもしれないのに!」

 

『ああ、それについては大丈夫だ。前以て聖書の神(わたし)がアーシアに渡した腕輪の力で、「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」を無効化させているから』

 

「う、腕輪? そう言えば、アーシアが見慣れないアクセサリーを付けていたような気が……」

 

 やっぱりそうだったか。アーシアが付けている腕輪はシトリー戦が始まる前、兄貴に渡されたモノだ。

 

 兄貴から聞いた話だと、その腕輪は所有者が誰かに攻撃された瞬間、即座に光のオーラに覆われてあらゆる攻撃を防ぐらしい。自衛スキルはあっても防御手段を用いてないアーシアには必須アイテムだと言ってたが、俺から言わせれば兄貴が大事なアーシアに傷を負わせない為の過保護的な行動だ。ま、俺も俺でアーシアに傷を負って欲しくないから何も言わなかったけど。

 

『その腕輪には加護が施されているんだ。悪魔の力を防ぐ「退魔の加護」を、な。聖書の神(わたし)直々の加護だから、ディオドラ程度の力でアーシアを眷族にするのは絶対無理だ。例え「変異の駒(ミューテーション・ピース)」を使ってもな』

 

 だろうな。いくらあのクソ野郎がズルで魔力増大したところで、ラスボス級の力を持った聖書の神(あにき)から見れば唯のザコだ。

 

『そのついで、あの腕輪には聖書の神(わたし)の映像付き伝言(メッセージ)も施しておいた。「アーシアを眷族にしたければ、イッセーと戦って勝つ事だな」ってな。イッセーがディオドラに敗北した瞬間、聖書の神(わたし)の加護が消えてしまう仕組みになっている。そうなればアーシアはもうディオドラの所有物になってしまう。念の為に訊くがイッセー、お前はディオドラに勝つ自信は無いか?』

 

「んな分かりきった事を訊いてんじゃねぇ! 俺があのクソ野郎に負けるわけねぇだろうが! アーシアは救う! 必ずな!」

 

『と言う訳だ、リアス。アーシアはイッセーがディオドラと戦うまでは一先ず安全だ』

 

 尤も、あくまで力を防ぐだけだが。と、兄貴が妙な事を言っていたが、俺がそれを知るのにはディオドラの元へ駆けつけた時だった。

 

「そういう理由なら分かったわ。だけど、せめてそれ位は私たちに言って欲しかったわね。前にイッセーが使っていた武器の時のように」

 

『スマンスマン。もし万が一に悪魔のお偉方の耳にでも入って、ゲーム前に何かしらの言いがかりを付けて没収されたくなかったから敢えて黙ってた。あの連中は人間側の俺達を気に食わない存在として内心思ってるからな。悪魔の面子にこだわって、この前のシトリー戦では特例参加を認めた人間のイッセーに、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)使用禁止のハンデを付けさせる程だからな』

 

「……否定出来ないわね。まさかこんな事になるまで味方に足を引っ張られるなんて」

 

 理由を聞いた部長はお偉方に対する不満を抱いている様子だ。

 

「念の為に訊くが兄貴、そのお偉方は今どうしてるんだ?」

 

『アザゼルの提案を了承した後、安全な場所に避難してるよ。襲撃が終わるまで絶対出てこない』

 

「はぁ!? この前は人前で俺達に散々偉そうな事を言っといて、いざ戦いになったら隠れるのか!? ちったぁ戦う姿を少しぐらい見せろよな!」

 

『仕方ないさ。お偉方の仕事は(まつりごと)がメインだからな。戦いなんていう野蛮な行為を嫌っているし』

 

 爽やかな感じで思いっきり皮肉を込めて言う兄貴に、俺や部長達は相当頭にきていると言う事がよく分かった。

 

『ま、取り敢えずお偉方は引っ込んでて今回の件は何にも口出し出来ない立場だから、俺達は好きにやらせてもらっているって訳だ。それとリアス、どうせお前の事だ。このまま眷族の朱乃達も連れて、イッセーと一緒に付いていくつもりなんだろう?』

 

 兄貴の問いに部長が不敵な笑みで言う。

 

「当然よ。私たちもこのままイッセーと一緒に神殿に入ってアーシアを救うわ。ゲームはダメになったけれど、ディオドラとは決着をつけなくちゃ納得出来ない。何より、私の可愛い眷族候補を奪うということがどれほど愚かなことか、教え込まないといけないのよ!」

 

 おおう、部長も俺と同じくやる気満々だ!

 

 そこへ朱乃さんが続ける。

 

「確認しますがリューセーくん。私たち、三大勢力や協力者のリューセーくんたちで不審な行為を行う者に実力行使をする権限がありますよね? 今はそれを使ってもよろしいんでしょう? ディオドラは現悪魔勢力に反政府的な行動を取っていますし」

 

 あっ、そう言えばそんな権限あったな。

 

『勿論だ。今回は限定条件なんか一切ないから、お前等のパワーを抑えるモノなんて何もない。だから……存分に暴れてこい! 特にイッセー! 赤龍帝の真の力をディオドラに見せ付けてやれ!』

 

「こっちは元からそのつもりだ!」

 

 俺は即座に気合の入った一言で答えた。

 

『あと最後にこれは大事なことだから聞いていけ。旧魔王派はこちらに予見されている可能性も視野に入れておきながら事を起こした筈だ。つまり、多少敵に勘付かれても問題のない作戦でもあるって事だ』

 

 ああ、そう言われれば。って事はつまり―― 

 

「相手が隠し球を持ってテロを仕掛けてきていると?」

 

 そうそう、部長の言うとおり何かしらの切り札がある筈だ。

 

『恐らくな。それが何かは俺やアザゼルもまだ分かってないが、フィールドが危険な事に変わりはない。だからゲームは停止しているから、リタイヤ転送は一切無い。もしお前等が危なくなっても助ける手段はないから肝に銘じておくように。俺からは以上だ。ここから先は充分に気をつけてくれ』

 

 確かに相手側も自信があるから、今回のテロが予想されても強引に仕掛けてきたんだ。向こうが何をするか分からないが、それでも俺達がすべき事は単純明快だ!

 

 ディオドラをぶっ飛ばして、アーシアを救ったら、どこか安全な場所へ避難するってな!

 

「イッセー、小猫。アーシアは神殿にいるってリューセーが言ってたけれど、位置は分かる?」

 

 部長が俺と小猫ちゃんにサーチするよう促した。俺はすぐに周囲のオーラを探知し、小猫ちゃんは猫耳を頭部にぴょこりと出す。その数秒後、俺と小猫ちゃんは同時に神殿の奥を指で示す。

 

「……あちらからアーシア先輩とディオドラ・アスタロトの気配を感じます」

 

「その他にディオドラの眷族悪魔達と思わしき魔力も感じますね」

 

 あと何か変なものも混じってるな。悪魔の魔力なのか人間のオーラなのかが全く分からない、嫌なものが混ざり合った力を感じる。一体コイツは何なんだ?

 

 俺は内心疑問に思いながらも、部長達と一緒に神殿の奥へ向かって走り出していった。




今回はリューセーからの状況説明のみでした。
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