ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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三十二話

 神殿の中は、広大な空間だった。大きな広間がずっと続く感じで、広間に巨大な柱が並ぶぐらいで特に目立ったものはない。

 

 神殿の奥へ奥へと進んでいる最中、いくつかの魔力を感じた。

 

 俺達は足を止めて一斉に構えると、前方から現れたのは……フードを深く被ったローブ姿の小柄な人影が十名。恐らくディオドラの眷属達だろう。

 

『やっと来たね、リアス・グレモリーとその眷族の皆』

 

 神殿中に不機嫌そうなディオドラの声が響く。あの野郎の魔力は周囲に感じない。一種の通信魔術を使ってるんだろう。

 

「随分と不機嫌そうじゃねぇか、ディオドラさんよぉ。兄貴から聞いたぜ。アーシアを自分の眷族に出来なくてイラついてるんだろ?」

 

『――ッ! 全く。あの堕神は本当に余計な真似をしてくれたよ。僕の計画を台無しにしてくれて不愉快極まりないね』

 

 やっぱり自分の思い通りに行かなくてイラ付いていたようだな。

 

 それとアイツの台詞の中に少し気になる事があった。

 

「おいディオドラ、お前や旧魔王派の悪魔共は兄貴の事を『堕神』呼ばわりしてるな。何の根拠でそんな呼び方してんだ?」

 

『決まっているだろう。愛と言う下らないモノを知る為に下等な人間に転生した神など、堕落したも同然だ。加えて神本来の能力(ちから)もまともに使えない中途半端なアレは、最早堕ちた神も同然。尤も、それは僕や旧魔王派だけでなく、他の悪魔達も同様に思っているだろうね』

 

「へぇ~」

 

 そう言う理由で兄貴を堕神呼ばわりしてるって訳ね。ここにいる悪魔の部長達は兄貴の事をそんな風に思っちゃいないけどな。

 

 確か以前に駒王学園で兄貴が真実を話してた時、転生した事による条件として、神としての能力(ちから)の大半を使えなくなったって言ってたな。

 

 けど、それを抜きにしても、今の兄貴の実力はここにいる俺達やディオドラなんかと比べても天地の差がある。それなのに、ディオドラの野郎はよく兄貴をバカに出来るもんだ。

 

 ……恐らくだけど、今まで不倶戴天の敵だった嘗ての神さまを知ってる悪魔達からすれば、そんな風にしか思えないんだろう。今の兄貴はもう嘗ての神さまとは違って、物凄く幻滅したってな。

 

 ま、人間の俺から言わせれば、そんな事は如何でもいい。兄貴が元神さまだろうがなんだろうが、俺の家族に変わりはないからな。

 

『まぁそれはそうと、仕方なく赤龍帝と戦わざるを得なくなったとはいえ、それだけじゃ面白くない。ここは一つ、遊ぼうじゃないか。中止になったレーティングゲームの代わりだ』

 

 あの野郎、この状況でよくそんな事を抜け抜けとほざきやがるな。

 

 ………とは言え、アーシアが今のところは無事だからって、ディオドラに捕らわれている事に変わりない。ここで下手にアイツの機嫌を損ねて、アーシアに何かされても困る。

 

「イッセー、分かっているとは思うけれど……」

 

「ええ。アーシアが捕らわれている今はディオドラの要求を呑むべき、でしょう?」

 

「それならいいわ」

 

 俺が確認するように問うと、その通りだと言うように頷く部長。どうやら俺が奴の言動にキレて、そのまま無視して突っ込んでいくと危惧したんだろう。

 

 すると、ディオドラがゲームの内容を説明し始める。

 

『お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。一度使った駒は僕のところへ来るまで二度と使えないのがルール。あとは好きにしていいんじゃないかな。但し、赤龍帝だけは全て参加してもらうよ。言っておくけど、そっちに拒否権はないからね』

 

 どうやらディオドラの野郎は、俺を全ての試合に出させて疲弊させたいようだ。自分と戦う時は楽して勝とうって魂胆が見え見えにも程がある。尤も、俺はそれに従わざるを得ないので、どうしようもないが。

 

『先ずは第一試合、僕は「兵士(ポーン)」八名と「戦車(ルーク)」を出す。ちなみにその「兵士(ポーン)」たちは皆すでに「女王(クイーン)」にプロモーションずみだ。ハハハ、いきなり「女王(クイーン)」八名だけれど、それでもいいよね? 何せ、リアス・グレモリーは強力な眷族を持っていることで有名な若手なのだから』

 

 最初から自分に有利なルールばっかりだな。ま、あのクソ野郎が正々堂々の勝負なんてしないのは、アーシアを捕らえた時点で既に予想済みだ。

 

 因みにディオドラの眷族はフードを深く被って顔を隠していたが、もう既に性別は知ってる。『兵士(ポーン)』八名全員女の子だ。ライザーと同様にハーレム眷族しやがって……! っと、いかんいかん。今はそんな事を考えてる場合じゃない!

 

「いいわ。あなたの戯れ言に付き合ってあげる。私の眷族、そして眷族候補のイッセーがどれほどのものか、刻み込んであげるわ」

 

 お、部長が快諾した。

 

 まぁ当然だな。応じておかないと、人質となってるアーシアが不味いし。

 

 すると部長は第一試合のメンバーを言おうとする。

 

「先ずこちらはイッセー、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーを出すわ」

 

 四人でか。強制参加の俺は別として、部長が三人を選んだのには何か理由があるんだろうな。

 

 俺、小猫ちゃん、ゼノヴィア、ギャスパーは部長のもとに集まって、耳打ちされる。

 

(『戦車(ルーク)』二名はゼノヴィアに任せるわ。思いっきりやっていいから。全部ぶつけてちょうだい)

 

(了解。いいね、そういうのは得意だ。だったらイッセー、私にアスカロンを貸してくれないか?)

 

(いいぞ。俺は今回使う気ないからな)

 

 一先ず赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に収納されてるアスカロンをゼノヴィアに渡した。パワータイプのゼノヴィアがデュランダルと更にアスカロンを持てば、攻撃力は更に増すからな。

 

(『兵士(ポーン)』相手のオフェンスはイッセーと小猫。相手が昇格した『女王(クイーン)』八名とは言え、イッセーの実力を考えれば問題ない筈だわ。小猫は仙術で練りこんだ気を相手に叩き込んで根本から断って。ギャスパーはイッセーの小猫のサポート。イッセー、ギャスパーに血を飲ませてあげてちょうだい)

 

(了解です、部長!)

 

(……了解)

 

(了解ですぅ!)

 

 部長の指示に俺達はそれぞれ頷いた。けれど、何故か俺だけ部長に呼ばれる。

 

(イッセー、あのね……)

 

 ふんふん。……な、なん、だと……?

 

 俺は部長からあの技を使って良い許可を貰った瞬間に内心歓喜した! マジですか! いいんですね? 使っていいんですね!?

 

 念の為にもう一度確認を取ると、部長は頷いてくれた!

 

 よっしゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ! 久しぶりにアレを使うぜぇぇぇぇっ!!!

 

 こんな時に不謹慎だが、再びあの技を披露出来るとなると気分が物凄く高揚してくる!

 

『じゃあ、始めようか』

 

 ディオドラの声と共に奴の眷族が一斉に構えだした。

 

 俺はすぐに祐斗が造った剣で指を軽く切ってもらい、ギャスパーに血を与えた。

 

 

 ドクンッ!!

 

 

 ギャスパーの胸が脈打ったのが分かった。その直後、ギャスパーから異様なオーラが出て体を包んでいた。更には紅い双眸も怪しく輝き始めている。このギャスパーを見るのは久しぶりだな。取り敢えずこれで準備万端だ!

 

 そしてゼノヴィアはデュランダルを解放し、アスカロンと二刀流の構えをして『戦車(ルーク)』二名の方へと歩み出した。

 

「アーシアを返してもらうぞ」

 

 ゼノヴィアの全身から、かつてない程のプレッシャーが放たれていた。眼光も鋭い。

 

「……嘗て教会に居た頃、友と呼べる者を私は持っていなかった。そんなものがなくても生きていけると思っていたからだ。神の愛さえあれば生きていける、とな」

 

 ゼノヴィアの言葉を無視するように、『戦車(ルーク)』二名が走り出した。

 

 かなりの速度で迫ってくるも、ゼノヴィアは全く動じずに独白を続けている。

 

「そんな私にも分け隔てなく接してくれる者達が出来た。特にアーシアはいつも私に微笑んでくれていた。この私と『友達』だと言ってくれたんだ。そして人間に転生した主――隆誠先輩は私を信徒ではなく『後輩』とだと言ってくれた」

 

 ああ、おまえは俺達の仲間で友達だよ、ゼノヴィア。兄貴はお前の事を仲間で(ちょっと手の掛かる)可愛い後輩だと言ってたぞ。

 

 『戦車(ルーク)』二名の激しい打撃を躱しながら、ゼノヴィアは憂いの瞳を見せていた。

 

「……私は最初に出会ったとき、アーシアに酷い事を言った。主である隆誠先輩の目の前で。魔女だと。異端だと。でも、アーシアは何事もなかったように私に話しかけてくれた。それでも『友達』だと言ってくれたんだ!」

 

 ……どうやらゼノヴィアはずっと気にしていたようだな。

 

「だから、助ける! 私の親友を! 隆誠先輩の妹を! アーシアを! 私は助けるんだ!」

 

 

 ドンッ!

 

 

 デュランダルから吐き出される絶大な光の波動が『戦車(ルーク)』の二人を弾き飛ばした!

 

 ゼノヴィアはデュランダルを天高く振り上げ、涙混じりに叫んだ!

 

「だから! だから頼む! デュランダル! 私に応えてくれ! アーシアがいなくなったら、私は嫌だ! アーシアを失ったら私は……もう隆誠先輩に顔向けが出来ないッ! お願いだ! 私に! 私に友達を救う力を貸してくれッ! デュランダァァァァァァルッッ!」

 

 

 ドゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

 

 すげぇ! まるでゼノヴィアの声に応えるようにデュランダルから発する聖なるオーラが何倍にも膨れ上がらせた! アレは並みの悪魔がまともに受けたら、姿形すら消滅されるほどのオーラだ!

 

 

 バキッ! ベゴンッ!

 

 

 デュランダルが放っている聖なるオーラの余波を受けた神殿の周囲に罅が入る。

 

「私にはデュランダルを上手く抑える事が出来ないと隆誠先輩に指摘された。木場のように静寂な波動を漂わせるようになるには長期間の特訓が必要だと。だが隆誠先輩はこう言った。『今は真っ直ぐに突き進め。そしてデュランダルの凄まじい切れ味と破壊力を増大しろ』とな」

 

 ゼノヴィアは宙でデュランダルとアスカロンをクロスさせた。アスカロンがデュランダルと共鳴するように、聖なる波動を莫大に発生させ、二刀が放つオーラの想像効果を促し始めた。

 

「さあ、いこう! デュランダル! アスカロン! 私の親友を助ける為に! 私の想いに応えてくれぇぇぇっ!」

 

 デュランダルとアスカロンは広大な光の柱を天高く迸らせていく! 当然、神殿の天井を突き刺さって大きな穴が生まれてる! そしてゼノヴィアはそれを『戦車(ルーク)』二名の方へと一気に振り下ろした!

 

 

 ザバァァァアアアアアアアアッッ!!

 

 

 二つの大波とも言える聖なる波動が混じり合い、『戦車(ルーク)』二名を飲み込んでいった!

 

 その直後に神殿が大きく揺れた。揺れが収まって、俺の視界に映ってるのは……ゼノヴィアの前方に伸びる日本の大きな波動の爪痕だった。神殿の半分以上が吹き飛んじまってるよ。

 

 これが加減無しのゼノヴィアの攻撃か。俺の最大ドラゴン波とタメ張れそうだな。因みに『戦車(ルーク)』二名は言うまでもなく完全に消滅だ。

 

 あの二人は記録で見た時は決して弱くはないが、今回は相手が悪かった。悪魔の弱点である聖剣を使っていたゼノヴィア相手だからな。

 

 もし前回のシトリー戦の時にゼノヴィアが聖剣を解放させていたら、即行で失格と同時に評価も最悪になっただろう。

 

 けれど、かなりの体力を消耗したのか、ゼノヴィアは肩で息をしていた。ま、あんな大技同然の一撃を連発するなんて無理だな。

 

 それはそうと、俺はアイツの一撃を見た直後、身体が疼いてる。ゼノヴィアと同じことをやりたいってな。

 

 ……よし。二人には悪いが――やるか!

 

「小猫ちゃん、ギャスパー! 俺の後ろにいろ!」

 

「「え?」」

 

 二人が何故と言うように俺を見るが――

 

「かぁぁぁっっっ!!」

 

Dragonicfighter(ドラゴニックファイター) LevelⅢ(レベル3)! 』

 

 

 ドゥンッッ!!

 

 

「わひゃぁ!」

 

「これは……!」

 

 龍帝拳を解放させた闘気(オーラ)によって、小猫ちゃんが少し吹っ飛びそうになるギャスパーの腕を掴む。

 

「いっくぜぇぇぇ!! 龍帝拳三倍の!」

 

 そう言って俺は闘気(オーラ)を解放したままあの構えを取る。

 

「ド…ラ…ゴ…ン……!」

 

 

 グゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

 

 『兵士(ポーン)』八名が阻止しようとするも、俺の闘気(オーラ)に気圧されてるのか動こうとしなかった。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい、イッセー!」

 

 部長が叫んでいるが、今の俺はそんなのお構いなしだ!

 

 そして――

 

「波ぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!」

 

 

 ドオオオォォォォォンッッッッッ!!

 

 

 龍帝拳三倍で解放した俺の最大必殺技――ドラゴン波が放たれた。

 

 巨大な闘気(オーラ)の塊となってるドラゴン波は『兵士(ポーン)』八名全員を悲鳴を上げる暇もなく飲み込んでいく!

 

 神殿が再び大きく揺れ、俺のドラゴン波が消えていくと……前方にある神殿の先に巨大な丸い穴が出来上がっていた。

 

 もうついでに、俺のドラゴン波を受けた『兵士(ポーン)』八名は全員倒れ、もう虫の息でピクピクとしか動いていない。三倍で撃ったとは言え、死なないようギリギリの威力で調節しておいた。いくらディオドラのクソ野郎の眷族だからって、あの子達に罪は無いからな。

 

「ふぅ~、久々に撃ってちょっとスッキリした~」

 

「……イッセー先輩、部長が立てた作戦が台無しです」

 

「ぼ、僕、頑張ろうと思ったのに……」

 

 俺が龍帝拳を解除して一息つくように言うと、ジト目の小猫ちゃん、涙目のギャスパーが見ていた。

 

 あ~……うん、ゴメン。二人の見せ場を奪っちまって。

 

「イッセー、あなた何やってるのよ……。この後の試合やディオドラと戦わなければいけないのに」

 

 背後に控えていた部長が呆れながら言った。朱乃さんや祐斗は苦笑していたが。ついでにゼノヴィアは少し呆然としてた。

 

「大丈夫っスよ。俺の体力はまだまだ有り余ってますから」

 

 とは言え、流石にこの後は止めておく事にしよう。無駄に体力を消耗させるのは良くないし。

 

「……まぁ良いわ。久しぶりにイッセーの大技を見て、私も少しはスッキリしたし」

 

 結果オーライと言うように部長が笑みを見せてくれた。

 

「あっ! いけねぇ! 折角部長から洋服崩壊(ドレス・ブレイク)の使用許可貰ったのに、あの子達に使うのをすっかり忘れてた!」

 

 肝心な事を忘れていた俺が両手で頭を抱えながら言ってると、「ゴンッ!」と一発小猫ちゃんに顔面パンチされた!

 

 ……い、痛い。凄く痛いよ、小猫ちゃん。

 

「……折角の頼もしい台詞が台無しです、どスケベ先輩」

 

 幻滅しましたと言わんばかりに侮蔑の眼差しを送ってくる小猫ちゃん。

 

 ゴメンなさい。だって俺、自他共に認めるどスケベだから。




原作と違って、イッセーが『兵士(ポーン)』を瞬殺しちゃいました。
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