ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~ 作:さすらいの旅人
「い、イッセー……?」
部長が呟く中、僕たちは目の前の出来事を見て信じられなかった。
いや、今でも信じられない。
ディオドラ・アスタロトと装置をイッセーくんが打倒し、アーシアさんの救出も無事完了して、僕――木場祐斗と眷族達はこの場から退避しようとしていた。
その瞬間、アーシアを突き飛ばしたイッセーくんが光った何かに左胸を貫かれ、血を吐いて倒れていた。
『イッセー(くん・さん・先輩)!』
ハッとしたように、僕を除いた皆がイッセーくんに駆け寄っていく。
「アーシア! イッセーに早く治療を!」
「はい!」
部長がイッセーくんを介抱し、アーシアさんがすぐに
「っ……ゴホッ! ゴホッ! あ、あぶな、かった……!」
すると、意識を取り戻したイッセーくんはまた血を吐きながら
よかった、本当に無事で、よかった……!
「イッセー、良かった……! 私、突然の事であなたが死んでしまったかと……!」
「すいません、イッセーさん……! 私を、庇う為に……!」
涙を流しながら言ってる部長とアーシアさん。アーシアさんはそれでも治療に専念している。
「咄嗟に身体をずらして急所は辛うじて避けたか。やはり人間と言うのは見苦しい上に意地汚いな」
突然、聞き覚えのない声がした。
そこへ視線を送ると、見知らぬ男性が宙に浮いていた。
イッセーくんを介抱してる部長がその男性に訊く。
「……誰?」
「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したと言うのにこのザマとは。しかも人間の赤い汚物に手を抜かれて敗北とは。あまりにも許し難い愚行だな、貴公」
こんなときに旧ベルゼブブが!? まさかアザゼル先生が仰っていた今回の首謀者がご登場なんて……。
すると、さっきまで気絶していたディオドラ・アスタロトは旧ベルゼブブの末裔――シャルバ・ベルゼブブの気配に気付いたのか、腫れあがっている顔を見上げる。
「しゃ……シャルバ、たしゅけておくれ! きゅ、旧魔王と現魔王が力を合わせれば――」
カッ!
シャルバが手から放出した光の一撃がディオドラを塵一つ残さないように消滅させた。
「愚か者が。偽りの血族とは言え、下等な人間如きに敗北した恥晒しなど生きる価値すらない」
嘲笑い、侮蔑を込めて吐き捨てるようにシャルバは言う。
さっきシャルバが見せた光の力は一体……? リューセー先輩と同じ光――違う。あの人の光はあんなに酷く歪んでいない。だけど悪魔なのに、どうやってあんな力を使っているんだ?
よく見ると、シャルバの腕に取り付けられた見慣れない機器が映る。……もしかしてあれが光を生み出す源か?
そんな中、イッセーくんはアーシアさんの必死な治療のお陰で、左胸を抑えながらも何とか立ち上がった。それでもまだ完全に回復しきってはいないが。
立ち上がったイッセーくんを見たのか、シャルバは部長に視線を移す。
「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には赤い汚物とともに死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋を全て滅ぼすため」
冷淡な声で言うシャルバ。瞳も憎悪に染まっている。あの様子を見るだけで、よほど現魔王に恨みがあるのだろう。
現魔王政府によって何もかも取り上げられ、冥界の端に追いやられた事を根深く恨んでいるのだろうね。リューセー先輩は自業自得だと言っていたけど。
「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーやイッセーを殺すというのね」
部長の問い掛けにシャルバは目を細める。
「その通りだ。貴公らの存在は不愉快極まりないのでね。私たち真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ。益してそこの人間の赤い汚物は、下等な人間に成り下がった堕神の血族だ。あのような見苦しい存在が嘗て我々が争った聖書の神などと、これも余りに不愉快なのでね」
シャルバは嘆息した。
「今回の作戦はこれで終了。業腹だが私たちの負けだ。まあ、それでも有意義な成果が得られたと納得しよう。クルゼレイが情けなくも堕神に殺されたが問題無い。私さえいれば充分に我々は動ける。ヴァーリなど必要ない。真のベルゼブブは偉大なのだから。さて、去り際のついでだ。サーゼクスの妹よ、赤い汚物と共に死んでくれたまえ」
「直接現魔王やリューセー――聖書の神に決闘も申し込まずにその血族から殺すだなんて卑劣だわ!」
「それでいい。まずは現魔王と堕神の家族から殺す。絶望を与えなければ意味がない」
「どこまでも外道ねっ! 正々堂々と戦っていたイッセーに卑怯な不意打ちをした罪! 絶対に許さないわッ!」
部長は激高し、最大までに赤いオーラを全身から迸らせた!
朱乃さんも顔に怒りを歪め、凄まじい雷光を身に纏い始めた。
僕だって許すつもりなんかない!
「ダメだ。部長、朱乃さん、祐斗……!」
すると、イッセーくんが前に出てきた。
「イッセー、まだ傷が……!」
「はぁっ……はぁっ……ふぅ。大丈夫です、もう粗方回復しました」
さっきまで重傷だったイッセーくんは何とか呼吸を整えて、部長に指示しようとする。
「それよりも部長、皆を連れて早く逃げて下さい。俺がアイツを何とか抑えますから」
「な、何を言ってるの!? ここで私たちが力を合わせれば――」
「それでも無理です。アイツもディオドラと同様、オーフィスの力を感じます。加えてあんなクソ野郎でも魔王クラスの力はありますから、部長達が束になっても勝てる相手じゃありません……!」
イッセーくんが凄く緊張した顔で冷や汗を流しながら部長や僕たちに言う。
グレモリー眷族の中で一番に強いイッセーくんがあんな顔をして言うって事は……事実なんだ。
僕だけじゃなく部長たちもシャルバの力を感じて理解したのか、さっきまで激高していた様子から一変して落ち着いていく。
すると、イッセーくんの分析を聞いていたシャルバが不快そうな目で見る。
「赤い汚物、誰が発言を許可した? あの堕神は碌な躾が出来てないようだな」
「生憎、俺が心から尊敬している魔王はサーゼクス・ルシファー様なんでね」
「……どうやら口の利き方もなってないようだ」
イッセーくんがサーゼクスさまを尊敬してると聞いた途端、シャルバは不愉快と言わんばかりに睨む。
「予定変更だ。先ずは赤い汚物、貴様から先に始末してやる」
「へっ! やれるもんならやってみろ! さっきみたいな不意打ちでもうやられねぇからな!」
イッセーくんがまるで僕たちを守るようにシャルバを挑発していた。
本当なら僕も加勢したい。だけど――
――祐斗、早く部長達を連れて逃げろ!
チラッと僕を見たイッセーくんの目がそう強く訴えていた。
傷が回復したイッセーくんはシャルバ相手に余裕を振舞った態度を見せているけれど、まだ完全に治りきっていない。僕でも分かる。あれは完全に虚勢だ。
シャルバに勝てないと分かっていながらも、必死に僕たちを逃がそうとしている。
イッセーくんに加勢したい気持ちを必死に抑え、僕は近くにいる部長や朱乃さんを下がらせるよう密かに行動を開始した。
「さぁ来やがれ! 自称魔王サマ!」
「この無礼者が………などと言って貴様の思惑通りにいくと思ったか?」
シャルバが突然イッセーくんから視線を外すと、後方の僕たちに視線を向けて手を向けた瞬間――
「きゃあっ!」
アーシアさんから悲鳴があがった。すぐにそこへ向けると、アーシアさんが何故か宙に浮かんでいた。シャルバの狙いはアーシアさんか!
でもどうして? 確かリューセー先輩からの話では、アーシアさんが身に付けている腕輪は悪魔に対する力を無効化させる筈なのに。まさか、シャルバが使っている腕輪から発する光の力で腕輪が認識していないのか!?
「シャルバ! テメエ、アーシアに何しやがる!?」
「その娘は貴様にとって大事な存在なのだろう? ならば先ずは絶望を教えてやろうと思ってな」
「アーシアを放せぇぇぇぇ!!!!」
叫びながらゼノヴィアがデュランダルとアスカロンでシャルバに斬りかかる!
「無駄だ」
ギャンッ!
シャルバは聖剣の二刀を光り輝く防御障壁で弾き飛ばし、ゼノヴィアの腹部へ魔力の玉を撃ち込んできた!
ドオオンッ!
「ああっ!」
地に落ちるゼノヴィア。聖剣も放り投げられ、床に突き刺さった。
「ゼノヴィア!」
「ゼノヴィアさん!」
彼女が負傷した事にイッセーくんとアーシアさんが叫ぶ。
「くっ………アーシアを放せ……。私の……友達を……っ!」
ゼノヴィアは床に叩きつけられても手元から離れていった聖剣を求め、握ろうとする。
「まだ生きていたか。人間の赤い汚物と同様、下劣なる転生悪魔も意地汚いな」
「テメェ! よくもゼノヴィアを……ぐっ!」
ゼノヴィアがやられた事でシャルバに攻撃しようとするイッセーくんだけど、突然痛むように左胸を手で押さえて動けなかった。
思ったとおり、やっぱりイッセーくんの怪我は完全に治っていない!
「止めなさい、シャルバ! アーシアをどうするつもりなの!?」
「そういえばグレモリーの姫君もこの娘を大事にしていたようだな。ならば貴公も知るがいい。絶望をな」
「きゃあああ!!!」
そう言ってシャルバはアーシアさんを宙に浮いてるアーシアさんを更に上げた。
「次元の彼方へ消えるがいい、堕ちた聖女よ」
「止めろシャルバァァァァ~~~~!!!!!!」
「イッセーさぁぁぁぁぁぁぁんっっっっっっ!!!!!!」
アーシアさんがイッセーくんの名前を呼んで手を伸ばすも、シャルバが開いていた手を閉じた瞬間――
カッ!
突如、僕達を眩い何かが襲った。そしてアーシアさんが光の柱に包まれ、それが消え去った時………そこにはアーシアさんがいなかった。
「……アーシア?」
彼女が消えた事にさっきまで叫んでいたイッセーくんが、急に静かになってポツリと呟いた。
「シャルバ! アーシアに何をしたの!?」
「聞いていなかったのか? 次元の彼方へ送ってやった。あそこは何もかも無にする世界。あの娘の身はすぐに消失する。つまり――もう死んだ、ということだ」
アーシアさんが死んだ? そんな、そんな事って……!
「安心しろ。貴様らもすぐにあの娘と同じ死を送ってやる。さて、次は赤い汚物にしようか?」
シャルバがイッセーくんに狙いを定めるように見ていると――
「ゆ……ゆ……ゆるさねぇ……。よ……よくも……よくも……」
「? なんだ?」
イッセーくんの様子がおかしくなった事に訝る。それはシャルバだけじゃなく僕たちもだ。
すると、突然イッセーくんの左腕から
『どうやら完全に至ったようだな、相棒。だがこれは、相棒にとって余りにも大きすぎる代償だったが』
ドライグの声。僕たちにも聞こえるように発生している。
それに至ったって……っ! まさか、イッセーくんは……!?
「ぐ……ぎぎ……!」
イッセーくんが呻くような声を出した直後――
『
ゾワッ!! ドゥンッッ!
見た事もない変化に、僕だけじゃなく部長たちも言葉を失っていた。
「な、なに……!? あれが
そして
「リアス、倒れているゼノヴィアや朱乃達を連れてさっさと逃げろ!」
今までのイッセーくんとは全く別人のように、なんと部長や朱乃さんを呼び捨てにしながら逃げろと言ってきた。
「え? え? い、イッセー、あなた……」
イッセーくんの余りの変わりように戸惑っている部長だったが――
「早くしろ! 俺の理性がちょっとでも残っている内にとっとと逃げるんだ!」
『リアス・グレモリー、相棒の言うとおり今すぐこの場を離れろ! こうなった相棒はもう止まらない!』
「……わ、分かった、わ」
イッセーくんの他にドライグも声も焦るように言ったので、部長は頷いた。
漸くイッセーが