ハイスクールD×D ~神(兄)と悪魔(弟)~   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新です!

けど久々の所為か、今回は短いです。


三十九話

「ば、化け物め! こ、これが本当に『禁手(バランス・ブレイカー)』だと言うのか!? 冗談ではない! わ、私の力はオーフィスによって前魔王クラスにまで引き上げられているのだぞ!? データ上の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)のスペックを逸脱しているではないか!」

 

 圧倒的な闘気(オーラ)を感じ取ったのか、シャルバの顔が徐々に恐怖に包まれた。先ほどまでの怒りが嘘のように消えており、瞳も怯えの色が強くなっている。

 

 そして同時に後悔し始めている。左胸を撃たれて重症だった時の一誠を早く始末しておけば良かったと。一誠に絶望を与えようと、堕ちた聖女(アーシア)を次元の彼方へ送るべきではなかったと。

 

「シャルバ、テメェは、テメェだけは絶対に……!」

 

 大して一誠は怯えながら後悔しているシャルバに手を緩める様子を一切見せようとしない。大事な存在であるアーシアを失った事によって激しい怒りによって禁手(バランス・ブレイカー)となり、凶暴性が増している為に一切の慈悲を与えるつもりは無いから。

 

「くっ! 私はこんなところで死ぬわけには!」

 

 己の状況を漸く理解したのか、シャルバは即座に転移用魔法陣を描こうとするが――

 

 

 ドズッ!!

 

 

「ごあッ!」

 

「俺がこのまま逃がすと思ったら大間違いだぞ!」

 

 いつの間にか接近した一誠が拳でシャルバの腹部に強烈な一撃を与えられた事で動きが止まった。

 

 撤退しようと描いていた魔法陣が消え、シャルバは一撃をモロに喰らった事で両手で腹部を抑えている。

 

「ば、バカな……ッ! 真なる魔王の血筋である私が……! こんな奴に……ッ!」

 

「言った筈だ! テメェだけは絶対に許さねぇってなぁ!!」

 

「ぶっ! ごっ!」

 

 逃がさんと言わんばかりに一誠が拳による凄まじい猛攻を始める。それは最早戦いとは言えなく、私刑(リンチ)も同然だろう。

 

 空孫悟のような武道家を目指してる一誠としては、相手を一方的に甚振って殺すような事をしない。しかし、今の一誠は何の躊躇いもない。禁手(バランス・ブレイカー)によって凶暴となり、アーシアを殺したシャルバへの怒りと憎しみが今も増大しているから。

 

(絶対許さねぇ! 絶対ブチ殺す!)

 

『相棒! 気持ちは分かるが、これ以上怒りと憎しみに呑まれたら……!』

 

 シャルバに攻撃をしている最中、一誠の理性が本格的に失おうとしている。その為にドライグが必死に宥めようとするも――

 

(アーシアの仇を打つんだ! 俺が付いていながら、あの子は死んだんだ! もう兄貴に顔向け出来ねぇ以上、コイツを殺すしかねぇんだ!!)

 

 一誠は聞く耳持たない状態だった。それどころか自分の不甲斐無さによる怒りもあるのか、何が何でもシャルバを殺そうと自棄にもなっている。

 

(待ってろアーシア! このクソ野郎を始末したら……!)

 

 シャルバを始末した後の展開を考えながらも、一誠は今もなお猛攻を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「これは……!」

 

 僕――木場裕斗は部長や眷族と一緒に神殿から脱出した後、イッセーくんとシャルバからかなり離れている位置から確認した途端に言葉を失っている。

 

 二人が戦っている神殿は完全に崩れ去っていた。アーシアさんを縛っていた装置だけが残っていたが、それも既に各所崩れ、罅だらけでボロボロだ。もう使う事は出来ないだろう。

 

 けれど、僕が言葉を失ってるのはそんな事じゃない。崩壊した神殿の上空で禁手(バランス・ブレイカー)となってるイッセーくんが、シャルバに止めを刺そうとしていたからだ。

 

 遠目からでもシャルバはかなり痛めつけられてボロボロになり、今も凄まじい闘気(オーラ)を放出してるイッセーくんに首を掴まれている状態だ。

 

 そしてイッセーくんはシャルバを放り投げた直後――

 

 

 ドォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッ!!!

 

 

 両手から巨大なドラゴン波を撃った。それを受けたシャルバは包まれ、まるで消滅するように光の中へ消え去っていった。

 

「……イッセー!」

 

「っ! 待って下さい、部長!」

 

 シャルバが消えたのを確認した部長はすぐにでも駆け付けようとするも、僕はすぐに阻止するように肩を掴んだ。

 

「イッセーくんの様子が変です!」

 

「え……?」

 

 僕の発言に部長がすぐにイッセーくんの方を見ると――

 

 

「うおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~!!!!!!!!!」

 

 

 ドドドドドドドドドォォォオオオオオオオオンッッッッ!!

 

 

『きゃあっ!!』

 

 遠く離れている筈なのに拘わらずにイッセーくんの咆哮が聞こえ、それと同時に彼の周囲から大きな闘気(オーラ)の弾丸が拡散した!

 

 イッセーくんが放った闘気(オーラ)の弾丸が崩壊した神殿や周囲の岩山に着弾すると、小規模な爆発が発生する。一発一発がとんでもない威力だった。此方の近くへ飛んできた弾丸の一部が爆発すると、僕達に爆風が襲い掛かってくる。それによって部長や朱乃さんが悲鳴をあげていた。

 

 そして、イッセーくんは今も闘気(オーラ)の弾丸を撃ち続けている。我を忘れているのか、イッセーくんは禁手(バランス・ブレイカー)を解除する気配はない。

 

 近付く事が出来ない事に僕を始め、部長や他の眷族もイッセーくんを見ているしかなかった。

 

「困っているようだな?」

 

 第三者の声が聞こえた途端、空間に裂け目が生まれた。人が潜れるだけの裂け目から現れたのは白龍皇ヴァーリだった。他には以前見た孫悟空の美猴、そしてもう一人は背広を着た見知らぬ男性だ。

 

 見知らぬ男性が手にしている剣は、神の姿になったリューセー先輩ほどではないが神々しいオーラを放っていた。

 

 すぐに分かった。彼はリューセー先輩からの報告にあった、聖王剣コールブランドの所有者であることを。

 

「ヴァーリ、どうしてあなたがここに……!?」

 

 部長はヴァーリの登場に驚きながらも、攻撃の姿勢を作り出す。僕達も同様に構えを取るも、ヴァーリ達から敵意は感じられなかった。

 

「そう身構えるな、やるつもりはない。見に来ただけだ。俺の宿敵(ライバル)――赤龍帝の『禁手(バランス・ブレイカー)』を。本当なら直接彼に会って賛辞の言葉を送るつもりだったんだが、怒りに呑まれた状態でな。あの彼が理性を失うほどになっているとは、相当な怒りがトリガーになった原因は……彼女かな?」

 

「ほらよ、確か聖書の神の身内なんだろ、この癒しの姉ちゃん」

 

 ヴァーリが言った直後、美猴が僕のもとに歩み寄る。その腕には見知った少女――アーシアさんが抱き抱えられていた!

 

「アーシア!」

 

「アーシアちゃん!」

 

 部長と朱乃さん、皆がアーシアさんのもとに集まる。外傷はなく、気絶しているみたいだけど……息はしている!

 

「大丈夫、生きています!」

 

 僕の声に皆が涙ぐんだ。本当に良かった!

 

「でも、どうして……」

 

 ボクが疑問を口にすると、コールブランドの持ち主が答える。

 

「次元の狭間を探索中、偶々この少女を見付けましてね。運が良かったですね。もし私たちが偶然その場に居合わせなかったら、この少女は次元の狭間の『無』にあてられて、消失していくところでした」

 

 そう言う理由だったのか。良かった。アーシアさんが無事で。

 

「うわぁぁぁぁあんっ!」

 

 アーシアさんの無事を確認したゼノヴィアが安堵したのか、その場に座り込んで泣きじゃくってしまった。僕は彼女のもとにアーシアさんを下ろすと、ゼノヴィアは大事そうに抱えている。

 

「――あとはイッセーね」

 

 部長がイッセーくんに視線を送る。イッセーくんが禁手(バランス・ブレイカー)に至ったのは、シャルバがアーシアさんを殺した事による怒りだ。アーシアさんの無事を伝えれば戻ると思っている筈。

 

「アーシアの無事を伝えれば、あの暴走状態を止める事が出来るかしら」

 

 部長がそう言うも、ヴァーリは首を横に振る。

 

禁手(バランス・ブレイカー)となっている今の兵藤一誠に、そう伝えただけでは止まらないだろう。まず先に力尽くで止めなければ――」

 

「その役目は聖書の神(わたし)がやろう」

 

『!』

 

 今度は聞き覚えのある事がした。この場にいる僕たち全員がそこへ振り向くと、本来の姿になっている聖書の神――リューセー先輩がいた。

 

 しかも様子が違う。落ち着いた顔をしつつも、先輩から感じる神々しいオーラからは途轍もない怒りを感じる。悪魔の僕や部長達も委縮するほどに。

 

「どわっ! い、いつからそこにいたんだよ、聖書の神! びっくりしたぜぃ!」

 

 どうやらヴァーリや美猴すらも、リューセー先輩の接近に全く気付いていなかったみたいだ!

 

「ついさっきだ。俺の大事な妹分――アーシアを手に掛けた不逞の輩(おろかもの)を成敗しようと来たんだが……どうやら一足遅かったようだな」

 

 リューセー先輩はアーシアさんを手に掛けた犯人がシャルバである事を知らないみたいだ。その当人はイッセーくんが倒したから、もう既にいないけど。

 

 アーシアさんが無事だと分かったのか、怒りを帯びている神々しいオーラが少しずつ消えている。

 

「りゅ、隆誠先輩、どうやってここに? 確か神滅具(ロンギヌス)の結界があった筈では……?」

 

「んなもん全部ぶち抜いてきたに決まってるだろう」

 

『………………………』

 

 ゼノヴィアの問いにアッサリと答えるリューセー先輩に、僕たちは思わず唖然としてしまった。

 

 多分だけどアーシアさんを失った怒りによって、結界を斬り裂いて駆け付けたんだと思う。その証拠にリューセー先輩の手からは、鋭いオーラの刃が微かに残っている。

 

 もしリューセー先輩が来てシャルバと遭遇したら……あっと言う間に終わってたかもしれない。場合によっては『終末の光』を使ってシャルバを存在ごと消していたと思う。

 

「そんな事よりも………今は敵対してるとは言え、アーシアを救ってくれた事に感謝する」

 

「……ふっ。元とは言え、神が悪魔に礼を言うとはな」

 

 ヴァーリは複雑そうな顔をしながらも、リューセー先輩からの礼の言葉を受け取った。

 

 そして次に、リューセー先輩はイッセーくんの方へと視線を移す。

 

「さて、ここからは聖書の神(わたし)がやろう。この際だからヴァーリも見ていくといい。聖書の神(わたし)と赤龍帝……いや、俺たち兄弟の戦いをな」

 

 そう言ってリューセー先輩は身体からオーラを発しながら、未だに闘気(オーラ)の弾丸を放出しているイッセーくんの元へ高速飛行していく。

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